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自動車評論家の塩見智氏がマイカーをEVシフト/充電難民がテスラ「モデル3」をポチるまで

自動車評論家の塩見智氏がマイカーをEVシフト/充電難民がテスラ「モデル3」をポチるまで

EVsmartブログ執筆陣の一人である自動車評論家の塩見智氏から、ついにテスラの看板電気自動車である「モデル3をポチったぞ」という知らせが届きました。住まいの集合住宅理事会に普通充電設備の導入を進言するも「時期尚早」と却下されていた困難をどう克服するのか。本人からのレポートです。

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いいなぁと思っても買えなかったBEV

日々、多くの国内外のニューモデルに試乗する。比率としてはまだICE、HEV、PHV、すなわちエンジン付きモデルのほうが多いものの、ここのところ急激にBEVを試す機会が増えた。日本の乗用車の新車販売におけるBEVの割合は、わずか1.5%程度なのだが、商品ラインアップは輸入車を中心に確実に増えている。BEVのシェアが(まだ)低い日本市場だからこそ、BEVのみで勝負するブランドもある。長年日本で商売をしてきたレガシーメーカー/インポーターも「何かが起こった時」に備え、売れないのがわかっていてもBEVラインアップをそろえている。

BEVに乗る度、いいなぁと思う。といっても私は意識高い系でもなければ、環境コンシャスでもない。BEVをいいと思う理由は、単純に静かでスムーズで力強いからだ。静かなこともスムーズなことも力強いことも、クルマが発明されて以来、ユーザーがずっと追い求めてきたことだ。同じレベルをエンジン付きモデルに求めたらとんでもない金銭的負担となるが、BEVならあっさり手に入る。

しかし現時点で私のプライベートカーは2台ともICEだ。そんなにいいと思うならなぜBEVに乗っていない? 理由はご想像の通りエネルギー補給の問題だ。エンジン付きモデルならその辺のガソリンスタンドへ行けば数分間で補給できるが、BEVだとガソリンスタンドほど見つけるのが簡単ではない(と思っていた)急速充電スポットへ行って、時間をかけて充電しなければならない。

充電難民にとってBEV購入はパラレルワールドの出来事

そう、私には基礎充電環境がない。集合住宅に住む「充電難民」だ。そんなもん基礎充電環境があったら、おそらくテスラモデル3(いわゆるローランドと呼ばれる前期型)が出た時点で買っていた。遅くともIONIQ 5が出た時点で買っていた。本当にもたもたしていたとしてもボルボEX30やBYDシールが出た時点で絶対買っていただろう。

魅力的なBEVがどんどん登場し、仕事で試乗して気に入ったとしても、充電難民である限り、自分ごととしてとらえることができず、パラレルワールドでの出来事のように感じていた。

BEVユーザーを羨ましいと感じていたが、ICE、HEV、PHVに決定的な不満があるわけでもなく、クルマのために引っ越すほどには心を動かされていなかった。4人家族の引っ越しってそこそこオオゴトだから。

性能だけでなく補助金なども魅力

提供元:Tesla, Inc. (※冒頭画像も)

しかしBEVのいいところは、前述したエンジン音のない静かさ、変速のない加減速のスムーズさ、発進と同時に最大トルクを発揮する力強さといったハード面だけではない。大盤振る舞いのCEV補助金および地方自治体の補助金(東京都民なので特に)というソフト面で気持ちを揺さぶってくる。税の三大原則のひとつ「公平の原則」はどこへいった? ま、だれでもBEVを買っていいんだから公平か。

加えて近頃は輸入BEVの出血必至の大幅値引きがエグい。それらを踏まえても高いか安いかは各自の価値観によるわけだが、例えばクルマの価値基準の代表的なひとつである最大トルクの値でBEVとエンジン付きモデルを比較すると、現状、BEVはすごく安いといえる。

このソフト面の攻勢はじわじわ心に響いてくる。ICEに課せられる税金を負担できないわけではないが、BEVを買えば補助金を得られる=減税されるような感覚が、BEVを買わない大多数の人を出し抜いているようで痛快だ。

裏返せばこれまでBEVユーザーをズルいという感覚で見ていた。この感覚は、燃料価格と電力価格にも当てはまる。たとえガソリンの暫定税率が廃止されようと、まだたっぷり税金が含まれている。

電力料金にはそれがない。それどころか街なかの充電器設置にも補助が出ているだろうし、僕には関係ないが、自宅で充電する電力には再エネ賦課金が含まれている。また出し抜くことができるのだ(笑)。この政策が日本国にとって正しいかどうかは判断できないが、小市民のライフハックとして利用したいと思うのは自然だよね。

自宅の近くに続々とスーパーチャージャーが開設

テスラ スーパーチャージャー 東京-豊玉

BEV欲しいな、でも充電が……、補助金羨ましいな、でも充電が……、日々堂々巡りしていた。ところが23年12月、練馬・豊玉のファミマ駐車場にスーパーチャージャーが開設された。最大250kW×4基。ここなら家から近い。ぐらりと気持ちが動く音が聞こえた。確かここはCHAdeMO充電器導入も早かった。オーナーの考えだろうか。

さらに今年4月、豊玉とは逆方向でほぼ同程度の距離の杉並にも最大250kW×4基のSCができた。

テスラ スーパーチャージャー 東京-杉並

在庫モデル3の値引きキャンペーンが助け舟

近所にSC2カ所が爆誕したことで、僕の心にある欽ちゃんの仮装大賞の電光グラフみたいなのが効果音とともにどんどん伸びた。しかし購入決定ラインまであとひとつというところでピタッと止まった。すぐに決めれば当時テスラが展開していた「SC充電5年間無料キャンペーン(確かその後3年間に短縮されてキャンペーンは続いたはず)」に間に合ったのだが、すぐに決断出来ない事情があった。現在乗っているうちの一台を「1年間は売りません」という約束で購入していたからだ。解除されるのが8月だった。

また堂々巡りか……と思っていたところ、欽ちゃんが体をくねりながら審査員に「なんとかしてあげてよ〜」と、助け舟を出してくれた。その助け舟とは、モデル3在庫車大幅値引きキャンペーンだった。モデルによって40万〜50万円にも及ぶ値引きがあった。これなら充電5年間無料に匹敵する。電光グラフがピコンとひとつ増え、購入決定ラインを超えた。テスラを買うことにした。モデル3ロングレンジAWDを有明ガーデンまで取りに行く日にちも決まった。実は近々モデル3になんらかの変化があるのは知っているが、もう堂々巡りは嫌だ。

充電難民がBEVを買うまでの逡巡をあらためて振り返ると、決断できない、仕事のできない男を見ているようで落ち込むが、実はこういう人は少なくないのではないかと思っている。

まだまだ読者と共有したい思いがたくさんある。数あるBEVのうち、なぜテスラなのか。数あるテスラのうち、なぜモデル3ロングレンジAWDなのか。次の機会に報告させていただきたい。

文/塩見 智

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先日自宅マンションが駐車場を修繕するというので各区画への普通充電設備の導入を進言したところ、「時期尚早」という返答をいただきました。無念! いつの日かEVユーザーとなることを諦めません!

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