テスラの2025年第3四半期(Q3)生産台数と納車台数が発表された。納車台数は49万7,099台で過去最高を記録。エネルギー貯蔵製品も過去最大の12.5 GWhと大きく伸びた。注目ポイントを速報で解説する。
過去最高の納車台数を記録
2025Q3/テスラの生産台数と納車台数
生産台数 | 納車台数 | |
---|---|---|
MODEL 3/Y | 435,826台 | 481,166台 |
Other Model | 11,624台 | 15,933台 |
合計 | 447,450台 | 497,099台 |
2025年10月2日(現地時間)、テスラが2025年第3四半期(6〜9月)における生産台数と納車台数の速報値を発表した。市場アナリストの推定では、約44万台から48万台超と、好調が予想されていたが、結果は49万7,099台の納車台数でコンセンサスを大きく上回り、過去最高の台数を記録(前年度同四半期462,890台/+7.4%)。生産台数は44万7,450台と今年前半の落ち込みから回復を見せた。また、エネルギー貯蔵製品も過去最大の12.5 GWh(前年度四半期 6.9 GWh/+81.2%)と大きく伸びた。
生産台数推移
納車台数推移

テスラIR資料より作成
連邦税クレジットの駆け込み需要と販売回復
今回好調だった最大の要因は、アメリカのEV連邦税クレジットの終了だろう。トランプ政権下ではインフレ抑制法(IRA)に基づく7,500ドルの補助金が9月30日で終了した。テスラはウェブサイトに大きくその旨を掲載していたし、消費者もこの機会の購買を急いだ。結果、第3四半期のアメリカでの販売が急増した。
中国市場では、競合との厳しい競争が続いているが、全体として回復傾向で、とくにモデルY L(6人乗りモデル)が中国専用で発売され、需要を喚起、納車台数向上に貢献している。中国での新車登録台数は四半期を通じて増加傾向にある。
さらに地域別では、ヨーロッパの需要回復も寄与している。年初の新型モデルYへの切り替え後もヨーロッパでは販売の停滞が続いていた。しかし、イギリス、フランス、ノルウェー、スウェーデンなど販売が回復したことがこれまで報道されており、モデルYパフォーマンスもヨーロッパで最初に発売され、認知向上に貢献したようだ。
エネルギー事業の成長は続く
加えて、エネルギー事業の成長が引き続き目覚ましい。

Megapack
第3四半期のエネルギー貯蔵製品の展開は12.5GWhに達し、前四半期の約9.6GWh(第2四半期実績)から約30%増。プロダクトはパワーウォールとメガパックが中心だが、9月にはメガパック3とメガブロックも発表された。今後もAIデータセンターの需要等は拡大していくため、将来性は高く、車両とエネルギーの多角化が進んでいる。
株価の推移
納車台数の発表前から、テスラ株はすでに高騰傾向だった。9月15日、イーロン・マスクが約10億ドルの自社株購入を公表したことをきっかけに株価は上昇している。年初の低迷から一転して、回復軌道に乗ったようだ。
10月2日、プレマーケットでは470ドル台まで高騰したが、最終的に436ドルで引けた。今後は11月6日にテスラの株主総会が予定されており、そこでは1兆ドルに及ぶ報酬パッケージやxAIへの投資などが判断される。この報酬パッケージはイーロン・マスクのCEOとしての長期的なコミットメントとテスラの市場価値成長が連動しており、可決されれば株価へポジティブな影響を与えるとみられている。
今後の製品展開見込み
最大の注目は、以前より噂されている廉価モデルの投入だ。最近、カリフォルニアでは公道をテスト走行するカモフラージュされたモデルYが何度か目撃されている。この廉価版はこれまでアクセスできなかったセグメントを開拓するモデルとして、価格は3万5,000ドル(約515万円程度)以下に抑えられると予想される。
2025年の第4四半期に投入が実現すれば、年内の納車台数の10から20%の増加は見込めるし、連邦税クレジット終了の需要減をカバーする役目を果たす可能性がある。
一方、サイバートラックの需要は停滞気味で、今回のデリバリーにほとんど寄与しなかったと思われる。しかし、今週にはチーフデザイナーのフランツ・フォン・ホルツハウゼンが小型のサイバートラックやサイバーSUVを検討中とアメリカのインタビューに答えていた。今後はサイバートラックにも派生モデルが登場し、2026年以降の販売を後押しするかもしれない。
10月22日(日本時間23日早朝)には第3四半期の決算発表がある。その焦点はマージンの改善やFSD収益の公開になるだろう、引き続き注視したい。
コメント