今年のラリー・ジャパンでは惜しくも総合4位が最高位
日本でも昨年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー2022-2023」においてそのユニークなデザインや性能が評価され、「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたヒョンデの電気自動車(BEV)『IONIQ 5(アイオニックファイブ)』。
販売台数的には、様々な理由から順調とはいえないかもしれませんが、地道にプロモーション活動を行い、日本導入第2弾EVである『KONA』もデビューして、日本でもヒョンデは着実に存在感を高めています。
昨年、日本で12年ぶりに開催されたFIA世界ラリー選手権(WRC)の日本大会「ラリー・ジャパン」では、圧倒的な強さで優勝を手にしたヒョンデ・モータースポーツのエースドライバー、ティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組。しかも2位にオット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組が入り、ヒョンデの1-2フィニッシュを飾りました。
先だって、11月16日〜19日に開催された「フォーラムエイト・ラリー・ジャパン 2023」では、ヒョンデはトヨタとともにゴールドパートナーとして協賛。総合成績はトヨタがトップ3を独占と、ヒョンデにとっては悔しい結果に。しかし、ますます大きな存在感を示していました。
ヒョンデのヌービル選手はSS1でステージ優勝を飾りましたがクラッシュなど不運が続いて総合13位。とはいえ、SS20やSS22などではステージ優勝を果たすなど速さは健在。ヒョンデチームの最高位はラッピ選手の4位でした。
そんなヒョンデの存在感は、ラリー・ジャパンのメイン会場である豊田スタジアムでも見ることができました。スタジアム正面入り口を入ってすぐの場所に設置された大きなブースは、ヒョンデNブランドのブランドカラーであるパフォーマンスブルーに彩られ、ひときわ目を引いていました。展示されている車は『IONIQ 5 N』と『IONIQ 5 N ドリフトスペック』の2台。観客が楽しめるシミュレーターが設置され、Nブランドのグッズも並んでいました。
メディア向けに「Nブランド」の説明会も
メディア向けに「Nブランド」の説明会も行われました。また、ラリー・ジャパン終了後には、豊田市からは少し離れた愛知県内のスパ西浦モーターパークにてIONIQ 5 Nの試乗会が行われました。
まずは「Nブランド」について。
「N」は2015年に誕生したヒョンデのハイパフォーマンスブランドで、「N」は自動車の聖地、ニュルブルクリンクの「N」に由来しているとのこと。モータースポーツで培った技術を市販車に導入しています。
IONIQ 5 Nは今年2023年7月、イギリスで開催されたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでお披露目されました。IONIQ 5は、シンプルでモダンなデザインのBEVで、フロントグリルに「パラメトリックジェネシスグリル」を備え、四角いピクセルと呼ばれるモチーフや直線的なデザインが特徴です。そのIONIQ 5をベースにNブランドらしくスポーティに仕立てられているのがIONIQ 5 N。大型のグリルやフロントバンパー、サイドスカートや大型のディフューザーを装備し、ボディサイズはアイオニック5より車高を下げ、一回り大きくなっています。(全長4715㎜、全幅1940㎜、全高1585㎜)また、ホイールベースは90㎜短くなり、タイヤは21インチに拡大するなどの変更が加えられています。
前後デュアルモーターの四輪駆動。バッテリー容量は84kWh。出力は448kW(609ps)。フロントのモーターは166kW(222ps)、リアは282kW(378ps)とIONIQ 5(フロント74kW、リア165kW)と比べて大幅にパワーアップ! さらに10秒間のブーストモード時の最高出力は478kW(650ps)となり、0-100㎞/h加速は3.4秒、最高速は260㎞/hという圧倒的な性能を与えられています。
サスペンションやブレーキシステムも強化されていて、ブレーキはフロントが400㎜の4ピストンキャリパー、リアが360㎜の1ピストンキャリパーに回生ブレーキで、よりスポーティな走りを目指しています。
操作に関わるシステムもいろいろで、まず、コーナリングを楽しくするために、前後のトルク配分を自由自在にできる「Nトルクディストリビューション」。回生ブレーキをドライビングに活用できる「Nペダル」。30分練習したら誰でもドリフトができるようになるという「Nドリフト・オプティマイザー」。さらに、サーキット走行をさらにを楽しくする「Nバッテリー・プリコンディショニング」、「Nブレーキ・リジェン」、「Nグリーンブースト」。そしていつでもスポーツカーらしさを楽しめる機能として「N e-シフト」と「Nアクティブサウンド」など、盛りだくさん。
SUVスタイルとは思えない俊敏な走り!
ステアリングを握ると、しっかりとした重みがありつつダイレクト感があり、運転の楽しさを予感させます。アクセルを踏み込むと瞬間に力強い加速がスタート! アクセル操作におもしろいほど俊敏に車が反応します。コーナーでの安定感も抜群です。
エコモード、ノーマルモード、スポーツモード、トラックモードがあり、スポーツモードではアクセルレスポンスやサスペンションのセッティングが変更され、よりスポーティに。さらにトラックモードではサーキット走行を楽しくさせるセッティング。さらにNモードを押せば、面白いようにパワーアップ。
3つの音を楽しめる「Nアクティブサウンド」は楽しめました。エンジン音、電気自動車の音、そして「スーパーソニック」では戦闘機の音を再現。パドルシフトでシフトチェンジをすると加速と連動して戦闘機のバックファイア(?)音に。ドライビングと連動しているので楽しい。やっぱり「アバルト500e」もそうですが、音、大事ですね~(笑)。
「Nドリフト・オプティマイザー」は使用する機会はありませんでしたが、ドリフトは「IONIQ5 Nドリフトスペック」の同乗で体験。もう少し試乗時間があれば、自分でも体験したかったのですが……これは次の試乗機会に。
ちなみに充電は、移動式の急速充電器を持ち込んでいて、ヒョンデ製の充電器かと思いきや、これは「JEVRA(日本電気自動車レース協会)」からのレンタルだそう。
ヌービル選手のドライビングテクニックも体感
同乗試乗できたのは、IONIQ 5 Nドリフトスペックのほか、水素燃料電池のプラグインハイブリッドモデル『N Vision 74』、『IONIQ 6』をベースにしたパフォーマンスモデル『RN22e』。この試乗会の後、日本でのレースに参戦したという『エラントラN TCR』、そしてメインは、今年のWRC参戦車両『i20 N Rally 1 Hybrid』などでした。
私は、ヌービル選手によるドライビングで『i20 N Rally 1 Hybrid』に同乗試乗。エンジンは1.6ℓのヒョンデモータースポーツ製直噴ターボエンジンにハイブリッドシステムを搭載。ターボエンジンで380hp、電気モーターで134hpの514hp。
走り出した途端、まさに轟音と共に素晴らしいドライビングパフォーマンス。コース上も迫力のある走りは素晴らしかったのですが、極めつけは最後のピットロードに入るところ。吉田由美史上、最高のテクニックに酔いしれました! ヌービル選手……素敵……♡
お昼休み、ヌービル選手はIONIQ 5 Nドリフトスペックで遊んでいましたが、めちゃめちゃ楽しそうでした。私もドライブしたかった―。こんなパフォーマンスは引き出せませんが。
IONIQ 5 Nは、2024年に日本導入されるそうです。楽しみ~。
取材・文/吉田 由美