お尻がキュッと上がったデザインが個性的
ジャガー『I-PACE』」は、「ジャガーで初めての電気自動車」というのがもちろん一番のトピックですが、ほかにも多くのチェックすべきポイントがあります。
まずは、エクステリアデザイン。ジャガーは「スポーツSUV」と呼んでいます。屋根が低く、クーペスタイルに近い…… というとありがちに聞こえるかもしれませんが、ボディタイプはクーペタイプのSUVというより、少し屋根を高くした大きめの5ドアハッチバックというほうがイメージにピッタリ。
そして『I-PACE』のリアのデザインにもジャガーらしい個性が表れています。トランクの上の角部分が少しだけ高くなっていることで、お尻自体がキュッと上がっている感じ。人間の場合「ヒップラインが1㎝上がると脚が3㎝長く見える」と言われますが、それと同じような効果なのかもしれません。
ただそのため、リアのガラスの傾斜角度が大きく、Cピラーが太くなるため、直視で斜め後方は見にくいのがネガティブポイント。
走りの楽しさを実感できます
そして車内が広い! 全長は4695㎜と、エンジン車のパフォーマンスSUVモデルである『F-PACE』より少し小さいのに、車内は『F-PACE』よりも広いという……。その理由は、エンジンが搭載されていないため関連部品が少なくなりスペースができたからです。
パフォーマンスも圧巻です。パワートレーンはフロントとリアのアクスルを一体化させたモーターを前後に2つ配置していて、アクセルを踏み込んだ瞬間、四輪にトルク配分を行い、294kW(400PS)の最高出力と696N・mの最大トルクを発揮します。0-100㎞/hはなんと4.8秒!
バッテリーは床下に432個のセル(12セル×26個)で90kWhのリチウムバッテリーを搭載し低重心に。車体の94%はアルミニウムを使用したアルミニウム・アーキテクチャーで軽量なのはもちろん、バッテリーパックの構造や床下に敷き詰めたレイアウトによって重量配分は50:50に。プレスリリースに誇らしく書かれた「ジャガー史上最も優れたねじり剛性を実現」は、実際に試乗してみるとなるほど、と実感できました。
WLTCモードで438㎞(EPA=約377km)という航続距離も十二分に実用的と言えるのではないでしょうか。
便利機能の設定方法が、少しわかりづらいかも
また、アクセルを離したときやブレーキを踏んだ時には積極的に発電させるように「回生ブレーキ」と「機械式ブレーキ」を一体化した「電動ブレーキ・サーボ」を搭載し、ブレーキの回生量は「high(高回生モード)と「Low(低回生モード)」の2段階から選べます。
ただしこれはクルマが駐停車している時しか操作はできません。
「high」モードにすると回生量が大きくなるため、BMW i3や日産ノートe-powerのようなワンペダルドライブが可能に。とはいえ、i3ほど強烈ではありませんが、慣れると病みつきアイテムです。
しかし、設定方法は、少しわかりづらいかも。私はクルマをお借りするときに、いくつかのレクチャーをしていただきました。まず、10インチと5インチ2つのタッチスクリーン「Touch Pro Duo(タッチ・プロ・デュオ)」。車両の設定は上にある大きな画面の家のマークをスワイプし、「MY EV」からクリープのオン、オフも設定可能。回生ブレーキの強弱設定もスクリーン上で行います。
また、エンジン音風の演出も外面内の歯車マークの設定→「機能」を下にスクロールして「アクティブサウンドデザイン」で、calm~Dynamicの3段階で気分に合わせて音を選べます。
このあたりも、誰かに説明を聞くか、しっかりとマニュアルを読まないとなかなか使いこなすのは難しそうと感じました。
運転のモード設定はECO/コンフォート/ダイナミックとありますが、「ECO」モードを選ぶとエアコンが停止し、スクリーン画面が消えて真っ暗になります。
さらにわかりにくいのは、エアコンの風量設定。これは下の5インチのほうのタッチスクリーン脇の丸いスイッチを引いてから回しますが、私にはなかなか見つからず……。まあ、実際に購入して使い始めれば問題なく覚えられるでしょうけど。液晶画面を多用した「未来味」いっぱいのインテリアですが、インターフェースの使い勝手にはまだまだ洗練の余地あり、というのが正直な感想ではあります。
日本仕様車は、もちろんCHAdeMO対応
電費に大きな影響を与えるエアコンは、『I-PACE』ではヒートポンプを活用してバッテリーとエアコンの温度管理を行っています。特に低温の場合(暖房使用時)は電力を多く使いますが、それを防ぐため高効率のヒートポンプでフロントからの排熱を回収してエアコンに活用し、バッテリー消費を抑えます。充電中に車内にいる場合は充電ケーブルから給電するため、航続距離には影響ないそうです。
日本仕様車は、もちろんCHAdeMOの急速充電に対応しています。ただし、日本には急速充電器メーカーがいくつかあり、現状ではまだ日本全国すべての急速充電器を使用できるかどうかを検証中とのことで、試乗車を借り出す時に充電カードを渡されるのとともに、充電した場所や時間などを書き込んでほしいという依頼がありました。
私がいつも利用している高速道路PAの急速充電器では問題無く充電できたので、ホッ。
私が試乗した6日間の走行距離は255㎞。その間、充電は2回の急速充電を行いました。
借りた時、最初の航続可能距離(メーター表示)は429㎞。自宅に戻った時には航続可能距離は397㎞、電池残量は92%。
1回目の充電は、第三京浜の保土ヶ谷PAの急速充電器。充電前の航続可能距離は225㎞、電池残量は53%。
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30分の急速充電で17.8kWh充電し、航続可能距離は304㎞、電池の残量は75%になりました。
2回目の充電は、充電前の航続可能距離は209㎞、電池の残量は50%。
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30分の急速充電で航続可能距離は279㎞、電池残量は72%に。
今のCHAdeMOの急速充電器(最大出力50kW)で充電する場合、30分でおおむね20%ちょっと、航続可能距離にして70〜80km分がチャージできる感じです。6日間の試乗中に気になることはなかったですが、ロングドライブするときには、きちんと充電計画が必要ですね。
ちなみに、電池の性能としては100kWまでのDC急速充電に対応しています。新しい高出力のCHAdeMOが広がれば、さらに便利にロングドライブが楽しめます。
走り心地はとにかく、スマート!
運転すると、とにかく車内が静か。電気自動車なので当たり前だと思われるかもしれませんが、不快な音が一切ありません。
また、ボディ剛性の高さが抜群で、乗り心地もいい。2.2トンの車両を400PSのパワーで動かしますが、加速が良いうえ、長めのホイールベースと床下にリチウムイオンバッテリーを搭載したお陰で低重心で抜群の安定感が頼もしいです。
ハンドルは少し重めな感じがしますが、レスポンスが速いのでハンドルを切ると素早くクルマが反応してくれます。しかもそれがすべてスマートに行われるので、運転してて本当に気持ちがいい。
ひとつ、電子パーキングをフットブレーキを踏んで解除すると、急にクルマが飛び出す感じがするのが少し気になりました。こちらは手元のスイッチ操作をしたほうが安全のようです。
SUVというより、これはもうスポーツカーです。現在、電気自動車のF1「フォーミュラE」のサポートレースで『I-PACE』のワンメイクレースも行われていますが、私が香港で観戦した時も、結構な迫力で走っていました。
そして未来味いっぱいで先進感のあるコックピットは、見るだけでわくわくし、いろんな発見があります。というか、使いこなせていない機能や、ご紹介していない機能もまだまだたくさんあります。
使っていない機能としては、ジャガー初のAI学習機能を備えた「スマート・セッティング」。これはリモートキーとスマートフォンのBluetoothを介してドライバーを認識し、ドライバーの好みに合わせた空間を提供するとのことですが、残念ながら今回の試乗中にはこちらは活用できませんでした。
乗るたびに、新しい発見がありそうな『I-PACE』です。
(吉田 由美)
とても魅力的な車です。
リーフ乗りとしては航続距離羨ましい