液冷ヒートポンプシステムでバッテリー温度を管理
2020年7月に日本発売されたDS3クロスバックのBEVバージョン、DS3クロスバックE-TENSE。このほどようやく試乗の機会を得た。グループPSAとして初(第一陣)の量産EVとなるが、動力性能は十分で快適性もしっかり確保されており、価格も含め競争力の高いEVに仕上がっていた。
E-TENSEはDSオートモビルのEVに付くサブネーム。18年に発売されたDSクロスバックが1.2リッター直3ガソリンターボエンジン(最高出力96kW、最大トルク230Nm)に8速ATを組み合わせたパワートレーンを搭載するのに対し、同E-TENSEは最高出力100kW、最大トルク260Nmの電気モーターと50kWhのリチウムイオンバッテリーを積む。前輪駆動。
AER(一充電走行可能距離)は320km(WLTCモード ※EPA換算推計約285km))。普通充電の場合、200V/3kWで満充電まで18時間、同6kWで9時間、CHAdeMO対応の急速充電(50kW)で80%まで50分とアナウンスされている。バッテリーは、液冷ヒートポンプで充放電時のバッテリー温度の管理と最適化が図られる。
車両重量は1580 kg。ICEのDS3クロスバックが1280kgなので、実に300kg増となっているが、日産リーフの40kWh版が1520kg、62kWh版が1680kgなので、車体サイズと総電力量を考えると標準的。バッテリーは1個当たり約13.1kgのモジュールが18個組み合わせられ、総体積は約220ℓ、重量は約350kgと発表されている。バッテリーユニットは前席座面下、後席座面下、センターコンソールなどに車体を上から見たときにH型に配置される。車両開発時からEV化計画が盛り込まれていたため、ICEとEVで居住空間、ラゲッジ容量は同等となっている。
BEVとICEを乗り比べた印象は
この日はDSフルラインアップが用意された試乗会に参加して、DS3クロスバックはICE(エンジンモデル)、EV(電気自動車モデル)の順に試乗した。近頃のグループPSAの他のモデルでそうであるように、ICEのDS3クロスバック自体、非常に乗り心地がよく、ハンドリングも正確。実によいクルマだがEV化されたことで、当然ながら静粛性は段違いに向上し、一切の節目がないスムーズな加減速によって動的質感が上がった。山道へもっていけば低重心化による安定感の向上も感じられたと思うが、街なかのみでの試乗だったためそこはわからなかった。
EVを評価する際、しばしば「発進と同時に最大トルクを発するため……」的な文言によって加速の鋭さが語られる。DS3クロスバックE-TENSEの加速も、発進加速、中間加速ともに、十分な力強さを感じるが、EVとしてはトルクの立ち上がり方が穏やかな特性となっている。これで十分。
テスラ・モデルSのデビュー後、皆が熱狂し、従来の自動車メーカーが焦ったように、加速の鋭さによってEVらしさを表現するのは、黎明期には有効な手段だったが、車種にもよるが、その時期は過ぎたような気がする。商品化という意味での電動車への取り組みが遅かったフランスのメーカーが大人っぽいことをやってきたという印象。彼らは自動化についてもそうだった。関心がないふりをしながらある時突然フルスペックで実装してきた。
ICEかEVかを問わず、DS3クロスバックの内外装のデザインやクオリティは非常に高い。よくファッション業界で用いられるフランス語の「savior-faire」(「機転(のよさ)」「技能」といった意味。英語のノウハウに近いがややニュアンスが異なると言われる)がDSブランドの「通奏低音(ブランド全体を貫く理念)」だそうで、内装に大真面目にアール・デコ調のデザインを取り入れている。
例えばセンターコンソールのATセレクターの両脇にあるパワーウインドウのスイッチなどは、高級腕時計の文字盤などで見かけるクルドパリ(細かい菱模様の凹凸をつけることで、光の反射で見づらくなるのを防ぐ手法)のようなデザインだ。同じようなスイッチが並んでいて、それぞれに描かれる説明イラストは極小なので、覚えるまでははっきり言って使いにくいが、カッコいい。ファブリックとナッパレザーを組み合わせた内装の質感が高く、同価格帯のクルマのなかではダントツの高級感がある。
500万円前後の電気自動車の選択肢が増えてきた
価格は試乗した上級のグランドシックが534万円、ベーシックなソーシックが499万円。418.99万円のリーフG(40kWh版)や499.84万円の同e+(62kWh版)と迷う価格設定だ。内外装のセンスだけに着目すると天と地ほどの差があってDS3がバーゲンプライスに見えるが、リーフはV2Hに対応しており、e+であれば50kWを超える速さの急速充電も可能。何を優先するかで良し悪しは変わってくる。ともあれ500万円内外のEVに選択肢が増えてきた。
シトロエンから独立したDSをはじめ、プジョー、シトロエン、そしてこのほど買収したオペル(ヴォクソール含む)と複数のブランドを擁するグループPSA。さらに21年にはグループごとFCAと合併し、ステランティスという巨大メーカーとなることが決まっている。グループPSAは現状EMP2とCMPという大小ふたつのプラットフォームをもつ。大きな車種に用いるEMP2はICEとPHEVに対応し、DS3クロスバックをはじめとする小さな車種用のCMPはICEとEVに対応する設計となっている。CMPをEV用にモディファイしたものをeCMPと呼ぶ。ICE用のCMPとの混流生産が可能。
同グループは2021年までにeCMPをベースに7モデルのEVを開発する予定としている。また自動車メーカー間で流行中(!?)の電動化コミットメントについては「25年までにグループの全モデルになんらかの電動化パワートレインを設定する」と控えめ。
(取材・文/塩見 智)
所有して1年ですが、デザイン以外でなんのメリットもない車です。
充電に関してもメーカー公表値に届いたことがない、届く気配もない。笑
50kw級で2回1時間使わないと85パー超えなかったり。
90kw級でなんとか42が最高値。
冷却システムがどうこう言ってますけど、全くわからん。
遠出するときはレンタカーで車借りるのをおすすめします。
やはりPHEVが今のところはベストですね。
家充電ありますけど、ない人ならなおさらメインカーとして使うなんて事は考えないほうがいいです。
エアコンの効きも悪いし、BEV買うならドイツ御三家が優秀ですね。
すべて乗ってみての感想です。
マイナーチェンジしますけど、かなり高額になりそうなイメージですし、ゆとりのあるご家庭のセカンドカーとしてはいいと思います。
自分もセカンド運用なので。
今現在、E-Tenseに乗っています。午前中に家内と共に買い物に出て、10kmほど走ってきました。昨年の12月10日に納車、9年目の車検を迎えたDS3-chicから乗り換えて、ひと月になります。(400kmほどの走行距離、寒いのでまだ遠出はしていません)
シトロエンBXから乗り始めて延べ4台で、35年あまりになります。(基本、長く乗って乗りつぶします)途中の10年程は、Boxster-Sと2台体制でした。
DS3を中古で売却し、納車までの間(約2週間)、ガソリンのDS3 Crossback Grandchicを代車に提供され、「存分に乗り回し操作に慣れてください」との事でしっかり使わせていただきました。
比較した感想は、昔のハイドロの様にゆったり大きく揺れる所は今一つですが、他は圧倒的にE-Tenseが優れていて、価格差に見合う以上の価値があると思います。
柔らかな乗り心地、極めて静かな室内、滑らかな走行性能、十分以上の加速性能、どれにも似ていないデザイン、高級?そうな内装や装備、などよくできています。
不満点は、ホワイトレザーのシート(コーティングしても汚れます)、シートヒーターがない事、電動シートがオプションでも無い事、スマホリモコンがうまく動かない事(クレームで解決を相談中)、内外装の選択肢が少なすぎる事などです。
自宅車庫に6kW充電器(Panasonic)を設置しましたが、結構な費用がかかりますね。
ただし、充電器から車の充電口まで「わずか50cm」なので、極めて楽々の接続です。
ガソリンスタンドまで「4km」ほどもあり給油に行くのが面倒でしたので、自宅充電は一番の長所ではないかと思います。
10年以上昔にオール電化にして、夜間電力料金は「10円/kW」以下ですので、走行料金(電費、燃費)は数分の一で済みます。いくら走っても気になりません。
恐らく人生最後の車(自分で購入、自分で運転)になると思い、家族に無理を言って「自分の好きな車」を買いました。実車を見ないで、発売発表の直後にカタログだけで注文したのは初めてですが、後悔せずに済んだと喜んでいます。
注:おそらく民間登録のごく初期(1台目~5台目)のはずです。初回の輸入ロットで、大至急/最優先で整備・点検して納車されました。
自宅で充電できる境遇の方が本当にうらやましいです。その環境さえ手に入るならすぐにでもEV、少なくともPHVを購入しています。乗り心地をはじめとするフランス車の本質的な長所はフランス車以外では得られない場合が多いので、フランス車に次世代車両の選択肢が出てきたのは喜ばしいことですね。
私は低重心化云々を、DS4に乗っていたからでしょうか、アカンなぁ、これはって、言う結論を出しました。
車高が高いのに、重心点だけは低くしている違和感が、あかんなぁというのが実感でした