普通に見えて普通じゃないメルセデスベンツ初の電気自動車~『EQC 400 4MATIC』試乗記【吉田由美】

「メルセデスベンツ」ブランド初の電気自動車である『EQC』。カーライフエッセイストの吉田由美さんによる試乗インプレッションレポートをお届けします。

普通に見えて普通じゃないメルセデスベンツ初の電気自動車~『EQC 400 4MATIC』試乗記【吉田由美】

自動車の伝統を受け継ぐ電気自動車

昨今、どんどん電子制御化、電動化が進んでいる自動車業界。完全な電気自動車は専用デザインのものが多いような気がしますが、プラグインハイブリッドまではエンジン車の延長というか、グレードのひとつという感じで、デザインは同じ傾向があります。

しかし、自動車メーカーが作る電気自動車には2タイプあって、専用のデザインを纏って、見るからに「私、電気自動車です~」感を出しているタイプと、「電気自動車も車。だから車のグレードのひとつ」というタイプがあります。

「メルセデスベンツEQC」の場合は後者のタイプですが、ドイツをはじめ、特に欧州車メーカーではその傾向が強いかも。中でもドイツ系は今までの自動車へのオマージュが強い気がします。

「EQC」は、「GLC」をベースにしていますが、実はパーツの多くは違うそう。

通常、メルセデスベンツでは車名が3文字のアルファベット名の場合、最初の2文字はボディスタイルを表し、最後の一文字は車格を表しますが、「EQ」の場合は、違います。

「EQ」は、メルセデス・ベンツがハイブリッドや代替燃料車など電気自動車ファミリーのために創出したブランドネームで、「メルセデス・ベンツ」「メルセデスAMG」「メルセデス・マイバッハ」に次ぐ第4のブランドです。

ちなみにベースになっている「GLC」の場合の「GL」は、SUVを表すものです。

というわけで「EQC」のエクステリアデザインは、従来のメルセデスベンツのSUVデザイン。特別なのはヘッドランプと一体型の「ブラックパネルグリル」とブルーのアクセント程度で、アピールは控えめ。電気自動車というより、あくまで「メルセデス・ベンツ」というアピールのほうが強い気がします。

フロントのLEDヘッドライトをはじめ、エクステリアやインテリアの随所にブルーがあしらわられていますが、ホイールのデザインも「EQC」オリジナルデザイン。21インチのマルチスポークホイールで、ここにもブルー。でもブルーを効果的に使うことで、先進感とクリーンなイメージを感じさせてくれます。

そしてリアのデザインが、「ぬーっ」としているのは最近のメルセデスの傾向という感じで、大きなサイズとぬっぺりした感じはシロナガスクジラか、はたまたジュゴンか? と言った平和な印象。

電気自動車になると、途端にフレンドリーな優しいデザインの車が増えるので、メルセデスベンツもそれを意識しているのかも。

「さすがメルセデス・ベンツ」という走り

そして圧倒的に印象深いのが車内の静粛性と加速感。

電気自動車なので当然、エンジン音が無く、静かなのは当たり前ですが、高出力モーターをフロントとリアのアクスルに1基ずつ搭載し、2つのモーターを併せた最高出力は408PS(300kW)、最大トルクは765Nm。

電池容量は80kWhで、満充電での航続距離は約400㎞(WLTC ※EPA推計値=約357km)となっています。

低・中速で走行している場合にはフロントモーターだけで走行し、加速したいときはリアのモーターと4 MATICの組み合わせで力強い加速を発揮します。電気自動車ならではの静粛性と共に、発進時から強烈なパワー&トルクを実現します。

ドライブモードは「エコ」「コンフォート」「スポーツ」「インディビジュアル」モードがありますが、普通にスタートスイッチを押すと「コンフォート」になる模様。(これはもしかすると自分で設定ができるかもしれません)。

基本的に私は、電気自動車に乗るとすぐに「エコモード」に設定しますが、高速道路などを走行するときは、「スポーツモード」のほうが良いかも。というのも、若干、ブレーキのレスポンスが変わるような気がするのです。「エコモード」のほうが利きが穏やかというか、ちょっと甘い感じ。ブレーキの効きでいえば、スピード域が高い場合は「スポーツモード」あるいは「コンフォートモード」をお勧めします。

また、回生ブレーキの強さと回生量をパドルシフトで調整できるので、シフトチェンジをする感覚で使いこなせれば楽しいかも。ちなみに「D+」は「コースティング」という回生ブレーキが利かないモード。「D」が軽めで、「D-」が中間、「D- -」が強くなっているので、お好みで。「D- -」は、かなりアクセルペダルを離した瞬間にガツンと減速するので、同乗者がいる場合はお気をつけて。

それにしても、この走りがとにかく自然。自然すぎて、EVと気が付かない人も多いと思います。何しろハンドリングや乗り心地、加速やブレーキに至るまですべてが自然で、ほかのメルセデス・ベンツから乗り換えても気が付かないと思います。

全長4761㎜、全幅1884㎜、全高1623㎜に車両重量は2495㎏でかなりの重量級。それなのに0-100㎞/hを5.1秒で加速するとは、まるで「ガタイのいいスポーツマン」。

個人的には、メルセデス・ベンツはどのサイズの車でも、他社の車に比べて小回りが利くという印象でしたが、この車はほかのメルセデス・ベンツのモデルに比べると思ったより小回りが利かないと感じたのは私だけ? それだけ大きいということかな?

室内はGLCをラグジュアリーにした感じ。液晶パネルは最近のメルセデス・ベンツのモデルらしく横広タイプで、メーターとインフォテイメントの一体型タイプで色彩が鮮やか。鮮やかと言えば、室内のアンビエントライトもドア、ダッシュボード、センターコンソールなどを64色から選べるうえ明るさの調整もできます。

もちろん、充電もしてみました

広報車とともにお借りしたカードで認証。

今回、乗り始めは充電100%。その時の航続可能距離表示は384㎞。試乗では122.7㎞走行し、充電は2回試しました。

まずは94.4㎞走行し、第三京浜保土ヶ谷PA(充電器出力は40kW)にて急速充電で30分。12.3kWh充電し、電池残量は75%から86%、航続可能距離は301㎞へ。これはおそらく、電池があまり減っていない状態での急速充電だったため、充電量が少なかったのかも。

2回目は品川シーサイドのイオンに立ち寄ったついでに、200Vの「普通充電」で33分だけ充電しました。それまで28.3㎞走行し、2.8kWh充電して電池残量は76%から78%。航続可能距離は281㎞になりました。

今回の合計走行距離は122㎞。充電した電力の合計は15.1kWh でした。

普通充電口はここにあります。

そして今回の発見!

普通充電を予定時間より早く終わらせたい場合は、充電コントローラーで「終了」の設定を行わねばならないことでした。充電器や認証の機種にとって違うかも知れませんが、ケーブルを抜くだけじゃダメなんですね。

EQCとのコミュニケーションも楽しい!

そして最新のメルセデス・ベンツと言えば、メルセデス・ベンツの車載インフォテイメントシステム「MBUX」(メルセデス・ベンツ・ユーザーエクスペリエンス)が楽しいのです。「ハイ・メルセデス」と呼びかけると答えてくれて、駆動系に直接関係のあるもの以外は会話をしながら答えてくれます。

室内の温度設定や空調、テレビ・ラジオなどの設定、航続可能距離などにも答えてくれますが、「ハイ・メルセデス。ありがとう」と言ったら、「どういたしまして」とか、「こちらこそ」とか。ときには「気にしなくていいですよ」とか答えてくれたり、名前や年齢を聞いても面白い答えが返ってきます。

見た目は一見、普通でも、いえいえ、実は「最先端」のメルセデスベンツである「EQC」。このギャップがこのクルマの一番の魅力かも。

(取材・文/吉田 由美)

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この記事の著者


					吉田 由美

吉田 由美

短大時代からモデルをはじめ、国産自動車メーカーのセーフティドライビングインストラクターを経て、「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の目線で、自動車雑誌を中心にテレビ、ラジオ、web、女性誌や一般誌まで幅広く活動中。

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