「さすが!」と感じるフラッグシップPHEV~メルセデス・ベンツS560e【吉田由美試乗記】

カーライフエッセイストの吉田由美さんから、メルセデス・ベンツ、フラッグシップモデルのプラグインハイブリッドモデル『S560e』の試乗レポートが届きました。ゴージャスな気分でお楽しみください。

「さすが!」と感じるフラッグシップPHEV~メルセデス・ベンツS560e【吉田由美試乗記】

追記(2020.4.21)※『S560e long』は受注生産モデルです。

まずは「Sクラス」の魅力をご紹介!

言わずと知れたメルセデスベンツのフラッグシップモデル「Sクラス」。Sクラスという名称になったのは、1972年からですが、常にSクラスにはフラッグシップモデルに相応しく、メルセデス・ベンツのほとんどの最新技術が真っ先に投入され、その後、ほかのモデルへと展開されていきます。それゆえ(?)中には登場した時は画期的な技術でも、気が付いたら知らない間にフェードアウトしている技術もあったりしますが……。

さりげなく無くなってしまったのは、カーブを曲がって体にGがかかると、シートのサイド部分が体を支えるためにせりあがってくる機能。個人的にはこの機能、好きだったんだけどなあ……。

現在のSクラスは6代目で2013年から発売をしています。今回の目玉はライト系がすべてLEDであること。左右それぞれ56個のLEDを使用し、まるで線に見えるような輝き。そしてグリルが大きくなり、クーペのようなルーフラインなので、スポーティに見えるのが特徴です。

運転して魅力的なのはもちろんですが、後席は十二分な広さと最上級の本革やウッドを使ったクラフトマンシップでおもてなし。とはいえ私の場合、ほかの人に運転をしてもらうことがあまりないので専ら運転席専門ですが、個人的にはマイバッハ譲りのふかふかなヘッドレストとフットレスト、後席用バニティミラーがお気に入り。

そしてメルセデス・ベンツ自身が「世界最高峰」という先進安全装備「レーダーセーフティパッケージ」は、これまではハンドル横に角のように生えているレバーで操作していましたが、私の記憶にある限りではこのSクラスからハンドル内蔵になったことも実は隠れたトピックだと思っています。

そして何と言ってもオプションではありますが、どこまで行っても水平移動のようなフラット感を感じさせる「マジックボディコントロール」。これはフロントガラスに設置されているステレオカメラによって瞬時に路面の凹凸を感知し、サスペンションのダンパーを制御して、乗り心地はまるで「空飛ぶカーペット」のよう。これがまたラグジュアリー感を演出します。

Sクラス「EQ Power」の乗り味は

そしてこのSクラスのラインアップに加わったのがプラグインハイブリッド(PHEV)モデル「S560eロング」ですが、メルセデス・ベンツではPHEVのことを「EQ Power」と呼びます。

デザインは基本的にSクラスと同じですが、18インチの5ツインスポークアルミホイールが専用なのと「EQ Power」というバッジが装備されています。

3リッターV6ツインターボエンジンを搭載し、電動モーターとの組み合わせ。搭載されるリチウムイオンバッテリーは13.5kWhで、満充電の時の最大航続距離は40.1㎞(JC08モード ※2018年10月以前に日本導入された車種なのでWLTC表記ではありません。EPA基準では約29km)。満充電までの時間は普通充電で約3時間と書かれていましたが、実際には3kWで約4時間半くらい(6kWなら2時間半程度)でしょう。また、PHEVではEV走行での高速巡航では燃費(電費)が良くないため、最高速度を低めに設定されることが多いのですが、「S560eロング」の場合は130㎞/hでの巡航ができるのもトピックです。

走行モードは4つあり、エンジンとモーターを賢く使い分けて最適な走行をしてくれる「HYBRID」モード、モーターで走る「E-MODE」、電池の使用量をセーブする「E-SAVE」モード、そしてエンジンで走行して作った電気をバッテリーに充電するという「CHARGE」モードがあります。しかも「CHARGE」モードでも思ったほどガソリンが減るわけではないし、意外と早く溜まるので実用的。なので高速巡航する高速道路などで「CHARGE」モードにして電気を溜め、ストップ&ゴーの多い一般道でそれを使うと燃費がよさそう。ちなみにこのモードの切り替えスイッチは、シフトレバー横のスイッチを押して切り替えます。

モーターとエンジンの切り替えの滑らかさは抜群で、さらに9速ATがそれをサポートしています。車両重量は2330㎏と重いのですが、それを感じさせない力強さもあります。

そして何より、シートのサポート感、厚み、車内の静粛性は抜群。そしてどんな道も段差はよっぽど大きなものではないと感じないほど、どこまでもフラットです。これは「マジックボディコントロール」が効いているからでしょうか。

ボディサイズは全長5285㎜×全幅1915㎜×全高1495㎜。全長は5mを超えているのに良く曲がるのは嬉しいポイント。これはSクラスに関わらず、メルセデス・ベンツのモデル全般に言えることですが、風格がありながら、取り回しがしやすいなんて最強。駐車が意外と簡単にできます。なので大きくてラグジュアリーな車に乗りたいけど、駐車が苦手な人とか、車両感覚を掴むのが苦手な人には超おススメです。


そして駐車と言えば、試乗車は右ハンドル車でしたが、充電口が右側のリアの角部分にあるので、充電が楽ちんでした。今回の試乗期間中に充電は1回、1時間しかできませんでしたが普通用の充電口が後ろの角部分にあるのは、意外とありそうで無いのです。

ほとんどのEVやPHEVでは充電口が車のフロント部分に設置されていることが多く、前向き駐車が余儀なくされます。しかし都内などの隣の車との間隔が狭い駐車場を利用しながら車を離れている間に充電しようと思ったら、とくに都内などは駐車スペースの間隔が狭いので前向き駐車が難しく、駐車する場所を選びます。Sクラスのような全長の長い車は特に。しかし後ろに充電口があることによって、駐車は楽々。これが私のS560 eロングの一番のお気に入りポイントかも。

そして他のメルセデス・ベンツ車で設定されているものもありますが、定期的にエアコンから車内にいい香りが放たれ、リフレッシュされるのも気分がイイ。これは「パフォームアトマイザー」という機能で、グローブボックスに中に香りのボトルをセットし、常に自分の好きな香りに包まれて気持ちよく運転することができます。これなら急なお客様を車内に招かねばならなくなった時でも車内を換気しなくてもよさそうだし、ゲストも喜んでくれそう。

ちなみに今回「S560e」での走行距離は420.3㎞、給油は2回で合計40.88ℓ。充電は1回、1時間の普通充電で充電した電力量は3.2kWh、約9㎞走行分が充電できました。

(取材・文/吉田 由美)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. >カーブを曲がって体にGがかかると、シートのサイド部分が体を支えるためにせりあがってくる機能。

    無くなってはいません。

  2. 同型車両を2019年3月から所有しています。
    PHVですのでタイマー充電の機能が備わっていることになっていますが、設定画面は存在しても実際は機能しません。
    2019年春に発覚し原因は秋に判明したのですが、これは日本語版を作成する際に当該機能を入れ忘れたためだそうで、旧型のS550プラグインハイブリッドでは問題ないらしいです。
    この報告をヤナセに行ってから本国でも気づいたようですが、同様の不都合は他車種でも発生しており、2020年の夏に他の方に納車された完全電気自動車であるEQCにはタイマー充電設定画面は機能しない旨の正誤表が取説に同封されていました。
    このような状態ですから、私の車両にも同問題の修正はいまだになされておらず、今後EQシリーズが何車種もデビューするようですが、日本は軽んじられており残念です。

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この記事の著者


					吉田 由美

吉田 由美

短大時代からモデルをはじめ、国産自動車メーカーのセーフティドライビングインストラクターを経て、「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の目線で、自動車雑誌を中心にテレビ、ラジオ、web、女性誌や一般誌まで幅広く活動中。

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