エンジンを得意としてきたメーカーも電動化へ加速
2021年1~3月期、BMWグループはBMW、ミニ、ロールスロイスの各ブランドを合わせ、第一四半期の新記録となる63万6606台(前年同期比33.5%増)を販売した。このうち電気自動車(PHEV、EV)の販売台数は前年同期比で約2倍となる7万207台。
現在、iX3およびi3、それにミニクーパーSEの3種のEVを(日本では現状i3のみ)販売する同グループは、今後のEVスケジュールについて次のように述べている。
21年中にiXとi4の2モデルを追加する。23年以降、12種類のEVを展開する予定で、その中には量産モデルの5シリーズ、7シリーズ、X1、そして次期ミニ・クロスオーバーのEVも含まれる。そして25年までに、EVの年間販売台数を20年比で10倍以上に増やし、30年にはEVの販売比率が世界販売台数の少なくとも50%を占めることを期待している。ミニブランドに限ってはこの比率は27年に達成する見通し。30年代の初めにはミニはEVラインアップのみを提供するブランドとなる。
高性能な内燃機関が売りだったBMWグループは、今や欧州一の電気自動車(PHEV、EV)シェアをもつ企業であり、将来の電動化にもかなり積極的だ。先日、BMW同様長らく高いエンジン技術を誇ってきたホンダが将来のEV(FCV含む)販売比率について、40年に100%とする意欲的な目標を掲げた。エンジンを得意としてきた日独のメーカーがEV化に積極的なのは興味深い。
ガソリンも電気も満タンでスタート
さてミニ・クロスオーバー・PHEVに続いて、同じくPHEVのBMW530e Edition Joy+を試乗した。5シリーズにはセダンとツーリング(ワゴン)があり、それぞれにガソリンエンジン、ディーゼルエンジンをラインアップするが、セダンにのみPHEVも設定される。
2リッター直4ガソリンターボエンジン(最高出力135kW、最大トルク300Nm)と8速ATに、電気モーター(同80kW、同265Nm)が組み込まれ、後輪を駆動する。システム全体の最高出力は215kW、最大トルクは420Nmとなる。総電力量10.8kWhのバッテリーが搭載され、カタログ上のEV走行可能距離は54km、ハイブリッド燃費は12.8km/L(いずれもWLTC ※EPA航続距離は21mi=約34km)。
全長4975mm、全幅1870mm、全高1485mm、ホイールベース2975mmと、530eの絶対的なサイズは結構大きい。見た目はICE(エンジン車)の5シリーズと変わらない。リアのエンブレム以外には、PHEVであると識別するポイントもない。落ち着いた紺のボディカラーということもあって、いつものオーセンティックな5シリーズといった感じだ。
ガソリン満タン、バッテリーもフルの状態で借り出した。メーターをチェックするとEV走行可能距離は42kmとなっていた。設定をいじることなく、ただDレンジに入れて走行を開始。他のPHEVがそうであるように電力が十分に残っている状態ではEV走行となる。
静止状態からスムーズに発進する……と言いたいところだが、丁寧にアクセルを踏まないと、その気がなくてもビュッと勢いよく発進してしまう。特にブレーキペダルを踏んでいなくても停止状態を保つオートホールド機能を使っていると、その傾向が強い。そのうち慣れるのだが、いったん他のクルマを運転し、再度このクルマを運転すると、またビュッと出るのが気になる。
走り出してからはスムーズそのもの。アクセルペダルを一定以上の速さで相当深く踏み込まない限り、エンジンは始動しない。電力があるうちは街なかでエンジンが始動する機会はほぼなかった。ドライブモードは基本(始動時)がハイブリッドで、ボタンを押すとハイブリッド コンフォート、ハイブリッド エコプロへと切り替わる。コンフォートだと全体にマイルドな挙動となり、エコプロではなるべくエンジンを始動しない傾向となる。
エレクトリックモードを選ぶと、電力がほぼなくなるまでエンジンがかからない。このため、絶対的な動力性能が限られるが、それでも街なかで痛痒を感じる場面はなかった。
スポーツボタンを押すと常時エンジンがかかり、アクセルレスポンスも鋭くなって、言葉通りスポーティーな挙動を見せる。スポーツボタンを再度押すとエクストラブーストというモードとなり、この状態のときに前述したシステム全体としての最高出力と最大トルクを発揮する。モーターの鋭いレスポンスで発進し、その後はエンジンとモーターがどちらも加速のために用いられるため、相当にパワフルになる。走行モードに関係なく、常に乗り心地は5シリーズらしく快適だ。
普通充電にもトライしてみた
充電にもトライした。例によって自宅に充電環境がないので、EVスマートのホームページを使って周辺で普通充電が可能なスポットを探した。いくつも見つかるが、多いのは日産、三菱、トヨタ、それに輸入車の自動車販売店だ。
アライアンスを組んでいることもあって、日産車で三菱ディーラー、またその逆パターンなら気兼ねなく利用できる気がするが、それ以外だとなかなか心理的な敷居が高い。夜間に急速充電を利用する場合ならともかく、営業時間内だとどうも気が引ける。各メーカーのEV/PHEVラインアップが充実して、充電が今よりずっと身近なものになれば、各社お互いさまということでユーザーがまたぐ敷居も低くなるのだろうが、現時点では、少なくとも私は行く勇気がない。
というわけで、サイトで見つけたニトリ成増店へ出向いた。屋外駐車場に普通充電器が3基設置されている。枠は広く、駐車しやすい。充電カードをかざしてガンをクルマに差し込み、開始ボタンを押せば充電スタート。開始直後から16Aという表示が出続けている。200Vなので約3KWの出力で充電されているということになる。15時15分ごろ充電を開始した時点で「フル充電完了時刻 19時24分」と出た。満充電まで約4時間といったところか。
約1時間後にクルマに戻ってみた。メーターに表示される10段階の目盛りの3つ分、約30%充電できたようだ。EV走行可能距離は10kmと出ている。さらにその1時間後に買い物を終えて充電終了。目盛りは5つ分、つまり約50%を少し超えている。EV走行可能距離は22kmとなった。なんだかうれしい。
充電ケーブルはなんとか工夫できないものか
ここのところ何度か充電していてひとつ思うのは、充電器に備え付けのケーブルがぐるぐるときれいにまとめられていることが少なく、絡まっているケースもある。その場合、ほぐしてから充電するのだが、面倒だし手が汚れるのでわずらわしい。
充電終了後はなるべくきれいにまとめて引っ掛けるようにしているが、面倒かどうかといわれれば面倒だ。普通充電はまだケーブルが細く軽いからいい。急速充電器のケーブルは太く重いので、面倒なだけでなく重労働になる。普通充電器にせよ急速充電器にせよ、充電器側にリールを付けて、ケーブルを引っ張ることで必要な長さを取り出す仕組みにはできないものか。巻き尺や掃除機のコードのように使用後は自然に巻き取られるような。急速充電器のあの太いケーブルでそれを実現するのは難しいかもしれないが、ぐちゃぐちゃにしておくよりはケーブルの寿命にもよいはずだ。
急速充電器については、4月28日、e-Mobility Power がニチコンと共同開発して2020年度グッドデザイン賞を受賞したケーブルが吊り下げ式となる新型器を、今年度から高速道路のSA・PAを中心に整備していくという発表があった。一日も早く、日本でもユーザー本位の充電インフラが広がることを望みたい。
満充電で借り出した後、40kmほどEV走行した分と、ニトリで充電した分のEV走行を合わせ、今回の試乗期間の燃費は22.2km/Lだった。ICEの5シリーズじゃディーゼルモデルでも難しい数値だ。自宅で毎日充電できる環境ならさらなる好燃費が期待できる。試乗を重ねる度にPHEVが欲しくなってくる。
(取材・文/塩見 智)
電気製品のケーブルは、ドラム式などの場合、巻き取って使用すると発熱に耐えられず溶融し火災の危険があります。全出しで使用する時と比べて、使用できる電流の上限が下がるなどのデメリットがありますね。不使用時のみ巻き取り状態が理想です。
なるほど。どう考えても便利なのにないのには、それなりの理由があるわけですね。やはり車両側の差し込み口の位置をある程度統一し、届きにくいという不便を解消する方が話が早いですかね。
塩見様、ぜひ、塩見様からも、欧州メーカー、日本メーカーおよびテスラに対し、出荷先地域ごとに、充電ポートの位置を統一すべきと働きかけてください。私も事あるごとにお伝えしていますが、なかなかガソリンの考えが抜けきらないご担当者が多く、あまり相手にしてもらえていません。
なぜテスラのスーパーチャージャーがあそこまで使いやすいか、20基、40基の充電スタンドをどうしてあんなに狭い面積で構築できるのかは、車両の充電ポートの位置の統一に依存しています。
もちろん「天吊りで何とかなるじゃん」とメーカーさんは言ってくると思いますが、本当にバリアフリーまで考えて設計しているでしょうか?
今後、伝えるように心がけます。
巻取り式の普通充電器、実は結構昔にすでにモリテックスチールが出していたりします。私の記憶が正しければなのですが、伊勢丹新宿本店の駐車場などに設置されていたはずです(今でも稼働しているかどうか怪しいところですが…)。
https://www.molitec.co.jp/products/unit/stand.html
ただこの普通充電器、課金認証機などをつなぐことができないんですよね。製品ページを見ている感じからもパレット式の立体駐車場などを想定しているようで、マンションなどがターゲットなのかな、と感じるところです。ケーブル地面に擦るのも良くないですし、ぜひパブリックエリア向けにも巻取り式出てほしいところですよね。
また、吊り下げ式の急速充電器についても、初代リーフデビュー当初はアルバックなどからリリースされていました(アルバックのお膝元である茅ヶ崎市役所駐車場などに設置されています)。
また、ハセテックが昔プロトタイプで作っていた吊り下げ式の急速充電器がハセテック本社前に設置されているはずです(ストリートビューのリンクです)。
https://www.google.com/maps/@35.5220811,139.6141665,3a,75y,137.89h,88.49t/data=!3m6!1e1!3m4!1sb-aTGpdcy0m0EIf4sIfsLA!2e0!7i16384!8i8192
製品化自体はとうの昔からされているのに本格普及しないあたり、なにか理由があるのかな、と感じています。
情報をありがとうございます。それぞれがなかなか普及しないだけで、いろいろなタイプがこの世に存在はしているんですね。株式会社e-Mobility Powerが主導して急速、普通ともに良い方向にもっていっていただきたいです。