2024年4月にヨーロッパで発売されたアルファロメオ初のピュアEVとして発売された『JUNIOR(ジュニア)』は販売好調。2025年2月までに2万2000台を超える受注があったことが報じられています。日本発売への期待が高まる中、カーライフエッセイスト、吉田由美さんからの試乗レポートをお届けします。
今回は、青空でした!
今年はヘビ年。年男や年女ならぬ「年グルマ」ともいえる、ヘビのマークのクルマがもうすぐ日本でも発売されます。それはアルファロメオ初の電気自動車「ジュニア」。日本には今夏前ぐらいに発表&発売されると噂ですが、それに先駆けて昨年、本国イタリアのテストコースで試乗してきました。約1年前にここでフィアット500eを試乗(関連記事)した日はちょっと残念な曇り空でしたけど、今回は快晴! やったー!
アルファロメオのエンブレム「ビショーネ」は、アルファロメオ誕生の地、イタリア・ミラノの貴族、ヴィスコンティ家の紋章である緑の大蛇とミラノ市の紋章である赤十字が、ミックスされたもの。いわゆるコラボです。
試乗場所は、アルファロメオの聖地イタリア・バロッコのテストコース。1962年に設立され、数々の名車がここでその性能を磨き上げてきました。現在、アルファロメオだけでなく、フィアットやフェラーリなど、ステランティス傘下の自動車メーカーのテストコースとなっています。
アルファロメオ初の電気自動車である「ジュニア」もここで仕上げられました。前回ここに来たのは約1年前、同じくステランティスグループの「アバルト500e」の試乗会でした。あれから約1年。今度はもともとのバロッコの本家、アルファロメオの「ジュニア」です。
アルファロメオは1910年、ミラノで誕生しましたが、その歴史はモータースポーツと共に歩み、高性能なスポーツカーブランドとして知られています。フェラーリの創設者、エンツォ・フェラーリもかつてはアルファロメオのレース部門に所属していたというのは有名な話。
今回いよいよ? やっと? EV市場に参入! ということで、アルファロメオ社の期待を背負い(?)当初は「ミラノ」と言う名で華々しくデビュー。ところが「製造国がイタリア国内ではない」という政府からのクレームで名称変更を余儀なくされ、「ジュニア」と言う車名に。ニュースになったおかげでその名前がより広く知られることになりました。
【関連記事】
ミラノ改め「ジュニア」でデビュー/アルファロメオ初EVの実力&日本発売は?(2024年4月18日)
美しいデザインはさすがアルファロメオ!
私も期待いっぱいでジュニアとご対面~。やはり気になるのは何といってもエクステリアデザインです。現地で見たジュニアは、写真やオンラインで見るより魅力的! 低く抑えられたルーフライン、豊満なフェンダー、そして滑らかにつながるショルダーラインがスポーティな印象で、見る角度によってグラマラス。
そして最も斬新であり、ちょっと心配の種でもあったフロントグリル。象徴的な大きな盾形、その中に影絵のように透かしのあるアルファロメオの紋章。これを含めて、実物は、思っていた以上にカッコイイ!
聞くと、ジュニアのデザインは、「Southern Group of Motoring Writer」の賞や、ドイツの自動車誌「auto motor und sport」が主催するデザインコンペのSUV/コンパクトオフロード車部門で「最も美しいデザイン賞」、イタリア「クアトロルオーテ」誌においてもカーオブザイヤーに選出されるなど、世界中で高評価を受けているそうです。
インテリアはアルファロメオらしく美しくドライバーオリエンテッド(ドライバー中心思想)が表現されている印象。計器類はドライバーに向いており、ドライバーファーストが感じ取れます。シートに腰掛けると自然に体がシートになじみ、スタリングを握った瞬間から車との一体感を感じます。
アルファロメオ初のBEVとなるジュニアは、同じステランティス傘下のプジョー2008やシトロエンC3、ジープ・アベンジャーと同じ電動車向けプラットフォーム「e-CMP」(エレクトリック・コモン・モジュラー・プラットフォーム)を採用しています。
ジュニアにはハイブリッドモデルも用意されていますが、BEVモデルはジュニア「Elettrica(エレットリカ)」と名付けられていて、2グレード。115kW(156PS)のベーシックグレードと207kW(280PS)のハイパフォーマンスの「エレットリカ ヴェローチェ」があり、今回試乗したのは「ヴェローチェ」のみでした。
バッテリー容量はどちらも54kWh。航続距離はWLTPモードでベーシックグレードが約410㎞、ヴェローチェが約380km。ヨーロッパのCCS2規格では最大100kWのDC急速充電が可能ということでした。
全長4173㎜、全幅1781㎜、全高1505㎜のコンパクトなボディサイズで取り回しの良さは、都市部や日本の狭い道にもピッタリ。トルセンLSDを搭載し、専用の高剛性アンチロールバーやスポーツサスペンション、ブレーキシステムを導入。20インチホイールも個性を引き立てています。
コースでの試乗は「気持ちいい〜!」

アルファロメオ欧州メディアサイトより引用。
いよいよ試乗。ジュニアの走りだしは、まさに滑らかそのもの。電動モーター特有のスムーズな加速にはアルファロメオのDNAが受け継がれています。車両重量は1590㎏と、同クラスのモデルに比べて軽量で、発進加速と中間加速は特に軽快。爽快!イエーイ!
0〜100㎞/h加速は5.9秒。最高速度は200㎞/h。日常のドライブ的なクルージングはもちろん、スポーティな走りまでストレスなく対応してくれます。
バロッコのいくつもあるコースの中で、今回の試乗コースは20km以上ものロングコースで、その中には多くのコーナーや路面状況が用意されていますが、さすがはここで走りが磨かれただけあってジュニアのセッティングはまさにぴったり。ステアリングの操作中の応答性は素早く、コーナリング中も安定した挙動と姿勢を保ちます。
新しいリミテッドディファレンシャルや特別なチューニングなどの効果が高いようです。タイヤはしっかり路面をとらえ、アルファロメオらしい俊敏さと安定感を与えています。サスペンションはやや硬め。しかし、車体の剛性感が高いので、路面の凹凸をしなやかに吸収し、乗り心地は快適。さらにステアリングフィールは自然。まるでジュニアと心がつながったような気がしました。先導車の後ろに5台が連なって走りましたが、なかなかのハイペース。着いていくのがやっと。でもコースは緑が美しく、景色もどんどん変わるので気持ちいい~!
テストコースでの試乗だったこともあり、充電を試すことができなかったのはちょっと残念。充電口は右側のリアに配置されていました。

CHAdeMOとCCS2、2種類のケーブルを搭載した「enelx」の急速充電気器が4基設置されていました。
試乗を終えて感じたのは、ジュニアが新たなアルファロメオの時代を切り拓くモデルだということ。ジュニアはアルファロメオのみならず、多くのドライバーに新たなカーライフの楽しみを提供してくれそう。日本での発売はもうすぐです!
取材・文/吉田 由美
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