電気レーシングカーの実力は?
日産リーフがフルモデルチェンジしたことに伴い、リーフをベースとしたEVレーシングカーである「リーフ ニスモ RC」もモデルチェンジしました。2011年に発表した初代が「RC_01」、新型は「RC_02」と呼んでいるそうです。01も02も基本的にドライブトレインの主要パーツは新型「リーフ」のものを採用しています。
電気自動車のレーシングカーとして作られた「リーフ ニスモ RC」の中で最も特徴的なのは2つの電動モーターを使用していること。シャシーを挟んで前後に搭載し、前のモーターは前向きに、後ろのモーターは後ろ向きに搭載しているとか。
この2つのモーターで、各120キロワット×2=240kW(326PS)の出力と640Nmのトルクを発揮します。当然これは電池の進化によるものですが、とはいえ2モーターの搭載となったため車両重量は初代に比べて+300㎏増。しかしバッテリーの容量は2.5倍。最高出力も単体で20キロワット増えたため、2倍プラスα。最大トルクも2倍以上! というわけで、スピードもアップしています。
0-100㎞/hは6.9秒から3.4秒へ大幅ジャンプアップ! 袖ヶ浦フォレストレースウェイ
でのラップタイムは、日産が誇る「GT-R」にも負けず、1分08秒018のコースレコードまでマークしたそうです。
【スペック比較】
諸元 | 日産リーフニスモ RC_02 | 日産リーフニスモ RC_01 | 日産リーフe+ G (市販車) |
|
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全長(mm) | 4,546 | 4,446 | 4,480 | |
全幅(mm) | 1,942 | 1,942 | 1,790 | |
全高(mm) | 1,212 | 1,212 | 1,545 | |
ホイールベース(mm) | 2,750 | 2,600 | 2,700 | |
トレッド | FR | 1,723 | 1,750 | 1,530 |
RR | 1,714 | 1,700 | 1,545 | |
タイヤサイズ | FR | 235/40ZR18 | 225/40ZR18 | 215/50R17 |
RR | 235/40ZR18 | 225/40ZR18 | 215/50R17 | |
車重(kg) | 1,220 | 920 | 1,680 | |
重量配分(Fr%) | 43% | 41% | ー | |
モーター | NISSAN EM57×2 | NISSAN EM57×1 | NISSAN EM57×1 | |
バッテリー | 62kWh | 24kWh | 62kWh | |
最高出力(kW) | 240 | 100 | 160 | |
最大トルク(N・m) | 640 | 280 | 340 |
クルマのサイズも大きくなり、全長は+100㎜の4546㎜。ホイールベースも+150㎜で2750㎜に拡大したことで、恩恵としてはクルマの挙動が穏やかに。
資料によれば、出力配分はVCM(Vechicle control Module)が行い、フロントは40%~50%、リアは40%~60%。CFR(Carbon Fiber Reinforced Plastics=炭素繊維強化プラスチック)で補強したロールケージを採用したCFRPモノコックを使用。フロントとリアのサブフレームもCFRPを使用し、約25%の軽量化とボディ剛性の強化を実現しています。
ギアボックスは市販されているレーシングギアボックスを採用し、専用のギア比が与えられているとのこと。
四輪駆動で、タイヤはミシュラン。0-100㎞/hは3.4秒。最高速度は220㎞/h。
ちなみに開発に要した期間は8か月。「リーフ ニスモ RC」のポジションは、フォーミュラEのマシンと、市販リーフの中間に位置づけられているそうです。
電池容量は62kWh。市販の日産リーフe+と同じです。初代の01では車体が半分に割れてバッテリー交換する仕組みがありましたが、02では普通に充電します。
充電口を探しましたが見つからず……。充電口は、充電するときだけ後付けで取り付けるそうです。
ハンドルにはもともとパドルシフトが付いていたそうですが、それを敢えて取り外しているそうです。こうしたシステム変更も、ソフトウェアを書き換えるだけで簡単に対応できるとのこと。
また、電気自動車だけに温度管理が重要で、走り始めるときの温度が20~25℃スタートだとパワーダウン無しでエネルギーを使い切ることができますが、60℃以上だとリチウムイオンのためバッテリーが加熱して制御が発動することも。それを防止するためにカーボンのケースに入れて、安全面と発熱の対策を行っているそうです。
気になる点を聞いてみました。
ニスモ代表取締役であり、日産スーパーGTチーム総監督の松村基弘氏が試乗会の会場にいらしていたのでお話を伺ってみました。
Q)なぜリーフのモーターを使うことにしたのですか?
「電気自動車は市販車にした場合、大きいモーターを作るほど高価になってしまいます。大量生産する市販車へのフィードバックを考慮して、大きくせずに2つ使用することにしました」
ニスモの開発担当者である進士 守氏にもお話しを伺うことができました。
「『リーフ ニスモRC』は、リーフをレースカーにしたら? ということで作られました。現在は世界で6台あり、全世界を巡業しています。1台はカナダのマイクラカップのペースカー。マイクラカップのクルマをぶっちぎりそうになっているそうです。そして欧州に2台。スペインとドイツにあります。スペインではテスト中で、チャンピオンリーグでカップの配達をしているそうです。モーターは前と後ろには全く同じものが付いていて、後ろは逆転させて前に進むようにしています。ギアボックスやオイルポンプなども同様に前と後ろに同じものが付いています。オイルの流れが同じ向きになるようにと配管で調整して両方に同じものを使っています」
そして私が気になったのは、カーボンに書かれた「TORAY」の文字。実は私、最近、カーボンに注目しています。
「はい。カーボンは東レ製です。レーシングカーのモノコックと同じカーボンを使っているので、相当過酷なクラッシュでもキャビンはつぶれません。東レはレーシングカーのカーボンシェアが高いそうです。丈夫で軽いカーボンを使えば大事故によるけがは減ります。
東レのカーボンは鉛筆の芯の細いものみたいな形状で1本1本ができています。そして1本1本の繊維がすごく強いんです。素手で触るとチクチクします。それを編んで固めています。だから、軽くて強いです。しかし値段も高い。リアルカーボンですから。
ドアも軽いんです。軽すぎてドアをバンッと閉めても閉まりません。閉まるときには最後の一押しをしなければなりません。慣性が無いのでそうなってしまいます」
早速、ドアを閉めてみました! 本当に閉まりにくい。
「(カーボンのパーツは)中の繊維が切れてもわからないのがネガティブポイントです。金属だったらクラック(裂け目やひびわれ)が出るのでわかりますが、見た目ではわからないのでX線のような様なもので確認します。カーボンは、なにもしなければ劣化はしませんが、実際に使っていて入力を受けていて、どういうダメージを受けているかは実際のところはX線でもなかなかわかりません」
実際に運転もしてみました!
そんなお話を聞きながら、私も特設コースで「リーフ ニスモ RC」を走らせてみました。
エクステリアデザインの印象は、先代に比べてかなり薄くひらべったく見え、精悍なイメージ。
ドアの軽さに驚きながらバケットシートに腰かけて、まずはドライブポジション合わせ。バケットシートだと自分に合うポジションに合わせることができないので、実は苦手です。そして両側から4点式シートベルトを2人がかりで装着されます。まるでレースの時みたい。そして走り方の説明を受けます。
ハンドルに数字が出ますが、それは出力を調整するスイッチ。これは「4」のままでとのこと。実は4段階ありますが、4が一番出力が弱いそう。
そしてアクセルとブレーキの感触を確かめてみます。回生ブレーキは思ったほど強くない感じですね。これは「4」だからなのかも。ほかのモードは試していないので、わかりません。そして重要なのがブレーキの効き具合。とはいえ、直線では強めに加速しても、早めにブレーキを踏み始めるのですが。試乗場所は、広い駐車場に作られた特設コース。ストレートは短く、パイロンをスラロームし、コースの端でUターン。その後もパイロンをスムースにスラロームし、ストレート! そしてUターン。という短いコースをわずか数周でしたけど。
個人的にはモーター音がかなり気になり、「レーシングカートみたい」という印象でした。そしてハンドルは思ったより軽いのですが、低速になると切れない、曲がらない。なのでUターンでは気持ち早めにハンドルを切ってクルマの向きを変えます。
短時間で私には性能を出し切れませんが、それでも楽しい!
というわけでプロの運転により、「リーフ ニスモ RC」の実力を同乗体験。ニスモのスーパーGTドライバー松田次生選手のドライブで助手席に乗りましたが、私だと100㎞/h出せるかどうかなのに松田選手は140㎞/hオーバー。この距離でよくアクセル踏めるな…(笑) さすがです! 速いです!(笑) おかげで「リーフ・ニスモRC」の私では出し切れない性能を感じることができました。
(吉田由美)
今日、実車を見てきました。
いくつか改善点はありますが、是非市販してもらいたい!
こうしてスペックを見てみると、0-100km/h加速が同じ3.4秒、最高速度はニスモRCを上回る233km/h or 261km/hのTESLA Model 3 AWD Performanceは、凄い性能ですね。
しかも、Model 3は1847kgなので、二モスRCの1220kgと比較すると627kg差、つまり、1.5倍重いにもかかわらず、加速や最高速度で同等以上の性能がある上に、APやエアコン、オーディオなどの快適装備も備えています。
そして、Model 3は、すでに量産されて市販されているわけですから、日産には、ぜひ頑張って欲しいです。
御意! しかも充電も早いです。
このクルマって、とくにスタディモデルでもなく単なるデモカーのようなので、「作ってみた」だけで意味が感じられません。
走れるカテゴリーは無いので”レース”カーではないし。ワンメイクレースでも考えてるのならまた面白いですけどね。
今後どうするのか気になります。イベントでちょろっと走らせるだけかな?
この記事では何を伝えたいのかもわかりませんでした。
あと、何点か誤植が気になりました。
×Mosule
○Module
×ロールゲージ
○ロールケージ
×ドライブに助手席に
○ドライブで助手席に
Itoさま、ご指摘と感想、ありがとうございます。
誤字など修正いたしました。
リーフニスモRCの存在意義。個人的な認識ですが、市販リーフにもニスモバージョンが用意されており、モータースポーツを手がけるニスモがBEVに取り組むことの意志表明や、象徴的な役割を担っているのではないでしょうか。フォーミュラEの参戦マシンとカラーリングイメージが共通してて、市販リーフ(BEV)とモータースポーツの頂点を結びつけるトランスレーター的な意味もあるのかな、と。私自身は01の電池交換などを間近で見た、ことしかないですが、エンジン車の場合市販車ベースのレーシングマシンの場合「似ているのは外見だけ」というケースが多いのに対して、パワートレインが市販車と共通で、コントローラーのチューニングひとつでまるで別物の性能を発揮するのが新鮮な驚きでした。
近い将来、日産から2モーターAWDの市販ハイスペックEVが登場(BEVのバリエーションがぐんと拡大!)する、なんてことにもほんわか期待しておきたいですね。
(EVsmartブログ編集担当)