トヨタの電気自動車「bZ4X」とともに大幅にアップデートして発売されたスバル「ソルテラ」。エクステリアの印象も、bZ4Xとは差別化されたスバルのSUVらしい印象に生まれ変わりました。カーライフエッセイスト、吉田由美さんの試乗レポートです。
スッキリ&スバルらしい印象のデザインに

2022年に発売されたスバルのBEV「ソルテラ」。スバル初の量産電気自動車で、トヨタとの共同開発により誕生したことで注目を集めました。それから3年、2025年11月27日から、大幅なアップデートを果たした「新型ソルテラ」が発売されました。
まず、ひと目で新型とわかる外観に驚きです! 外観だけでもマイナーチェンジというより、フルモデルチェンジのレベル。

従来型でいうと、兄弟車のトヨタ「bZ4X」のほうは、一文字のフロントライトが印象的なトヨタらしいフロントデザイン、一方のソルテラもフラット感のあるフロントグリルでスバルらしい逞しいフロントフェイスという違いはありましたが、どこか兄弟車bZ4Xの面影が……。
しかし今回のマイナーチェンジでソルテラは大変身。ヘッドライトの造形はシャープになり、2段式の6連ライトはデイタイムライト、その下の四角いライトがヘッドライトです。左右のヘッドライトをつなぎ、その中央を囲むように小さなグリル、そしてスバルのエンブレム。しかも光るというおまけつき。EVらしくスッキリかつクリーンになりつつ、SUVらしい力強さを併せ持っています。

私が試乗したのは上級グレードの「ET-HS」で、試乗車はフェンダーアーチがピアノブラックでしたが、ボディ同色にも変更可能。だいぶスタイリッシュに進化しました。
リアも「SUBARU」のブランド名が今どきな「ばらもじ」のみ。全体的にスバルらしさがありつつ、スッキリ垢抜けた感じ。試乗車のボディカラーが新色でイメージカラーのハーバーミストグレーパールという紫がかったグレーなので、リアを見ると赤のコンビランプとのコンビネーションが、まるで「デビルマンみたい」(若い方は知らないかも)と感じてしまいました。
ボディサイズは全長4690mm×全幅1860mm×全高1650mm。ホイールベースは2850mm。数字だけを見ると比較的大きなSUVですが、見た目は意外なほど引き締まっています。
ボディカラー「プレシャスメタル」や「ハーバーミストグレーパール」のカラーリングは、ソルテラのキャラクターが際立ちます。基本の骨格などは従来型と同じですが、フェンダー周りやホイールデザインの見せ方で、よりスッキリした印象になりました。
使い勝手がよくなったインテリアに好感!
運転席に乗り込むと、内装の変化に驚きます。14インチのセンターディスプレイは高解像度化され、地図や細かい文字がくっきり。ナビ操作や車両設定も直感的に操作できるため、操作のストレスも減少。

個人的に最もうれしいのは、置くだけ充電(ワイヤレス充電器)が、前席に2つ。タイプCが前後席に2つずつ用意されていることでした。
昨今は私も車に乗り込むと真っ先に探すのが充電装備。USBポートをチェックし、何はともあれ、まずはスマホの充電です。動画や写真撮影などもスマホで行うため、クルマに乗る時間は充電時間でもあり。速く確実に充電できる有線タイプを使用することが多いですが、時々忘れて出かけることがあるので、「置くだけ充電」があると便利。有線と併用で、充電物の多い私はとても助かります。ラゲッジルームにはAC100Vのコンセントもあります。

また、後席シートヒーターのスイッチが水平配置に改良。そしてヘッドランプウォッシャーの採用など、使い勝手のアップデートはうれしいポイント。ET-HSには、本革シートに通気性を高めるベンチレーション機能付きのナッパレザーシート、ハーマン・カードン製11スピーカーシステム、リアシートヒーターなど装備も充実しています。
航続距離や走りの性能も一新されました
見かけだけではなく、パワートレインの刷新も行われています。というか、実はこちらがメイン。
バッテリー容量の拡大に加えて、モーター出力の増大などeAxleも一新。さらに足回りとAWDの制御の最適化、ドライブモードと回生ブレーキ制御の変更と、こちらもフルモデルチェンジのような勢い。
大容量の74.69kWのリチウムイオンバッテリーを搭載して航続距離もアップ。今回試乗したAWDモデルの一充電走行距離は687km(WLTCモード)です。
ET-HS、AWDモデルのシステム出力はフロントが167kW(227ps)、リアが88kW(120ps)で総出力は252kW(342ps)に大幅強化。EVらしい瞬発力を強く味わえる一方で、踏み込み時のトルク制御が緻密になり、挙動の乱れがないため安心感も倍増!
回生ブレーキの調整は手元のパドルで行いますが、従来型の4段階から5段階にアップデート。さらにドライブモードがECO/NORMAL/POWERとあり、さらにスバルらしい「X-MODE」も設定されていますが、残念ながら今回そちらを試す機会はなし。
試せていないと言えば、新たに採用された「バッテリープレコンディショニング」機能。ナビ、タイマー、マニュアルの3つの操作方法でバッテリーを最適温度に調整し、急速充電時間を短縮……、とのことですが、ごめんなさい。使うことができなかったので、次回はこのあたりもチェックしたいと思います。
走行フィールは「これぞスバルのAWD」の電動進化形。試乗期間は2泊3日で、天候は安定していて濡れた路面などを試乗する機会はありませんでしたが、常時、前後モーターが絶妙に仕事して、挙動を乱すことはなく。2トン超えでも重さを感じませんでした。
乗り心地は、従来モデルより段差のあたりが柔らかくなった印象。ロードノイズも抑えられ、EVらしい静けさをさらに深めた仕上がり。静かさには、フロントとサイドガラスが遮音ガラスとなっている効果もあるのかも。
急速充電も試してみました

試乗期間中の充電は1回。50kW出力器の急速充電を航続可能距離308km、電池残量57%で受電開始。30分の充電で航続可能距離は438km。電池残量は81%になりました。
今回の改良は、機能追加や数値上の強化はもちろん、EVのスバルSUVとして明確な魅力を確立していると思います。いや~、ホント、フルモデルチェンジ並みの進化で、今回の「新型ソルテラ」はかなり気合が入っています!
それでいて、価格は従来より値下がりで、FWDが515万円~。AWDが561万円~。コスパも向上しています。先日発表された国のCEV補助金は、全グレードで128万円(2026年1月1日以降の登録車両)。「EVでもスバル!」の期待を裏切らない仕上がりになっていると思います。
取材・文/吉田 由美






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