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テスラの本場アメリカ訪問記【01】ド迫力EV「サイバートラック」のFSD自動運転でスターベースを訪問

テスラの本場アメリカ訪問記【01】ド迫力EV「サイバートラック」のFSD自動運転でスターベースを訪問

テスラの最前線を体験するためにアメリカを訪れた。最初の目的地であるテスラ本社工場を訪問し、サイバートラックを運転してスペースX社のスターシップ発射台があるスターベース(テキサス南部のボカ・チカ)までFSD(Full Self Driving)で往復した。今回はサイバートラックの試乗とFSD、スターベースまでの長距離ドライブについて紹介する。

目次

テキサスの大地で走るサイバートラックの魅力

滞在中運転したサイバートラックAWD。

羽田からロサンゼルス経由でテキサス州オースティンに到着、空港近くのホテルにチェックインしてすぐに、滞在中に使用するサイバートラックのAWDモデルをピックアップした。サイバートラックの運転自体も初めてだが、車両にはFSD13.2.9が搭載されており、その進化も体験することができた(11月中旬以降は最新のFSD14がサイバートラックにも配信開始となった)。

その後3日間、サイバートラックを運転することになるが、アメリカの道路環境では少し大きめのSUVを乗っているという感覚で全く不自由さを感じない。他のテスラモデル同様にUI(ユーザーインターフェース)は共通であるため、筆者が日本で所有しているモデル3同様に、乗り込んだ瞬間に操作を直感的に理解することができる。

運転したフィーリングもアイポイントが高く、フロントガラスも大きいのでとても視界が良い。そしてエアサスペンションと35インチのオールテレインタイヤによって乗り心地は大変柔らかく、快適な運転ができる。また、従来の機械式ステアリングを電子制御に置き換えたステアバイワイヤ (Steer by wire)はハンドリングのレスポンスが良いし、後輪ステアリングと組み合わさることで狭い駐車場でも取り回しが良く、全長約5.7mの車を運転しているように思えない。

火星での活躍を想定した30X冷間圧延ステンレス

サイバートラックはステンレススチール製エクソスケルトン、30X冷間圧延ステンレスをボディ外板と構造材として使っており、この外観は未来感(もしくは人によってはディストピア感?)がありユニークだ。

スペースXが開発するスターシップも同様のステンレス合金を使用する。火星は塗装が剥がれる環境なので、塗装不要で錆びない素材が必要だったため採用された。また、防弾・耐衝撃を本気で実現するための素材であり、サイバートラックの外板も9mm弾や44マグナム弾が貫通せず(テスラ実証済み)、ハンマーで叩いてもへこまないなど、従来のアルミやスチール車体では絶対に不可能なレベルに仕上がっている。

テスラ在籍当時、2019年の11月にサイバートラックの発表があり、それに向けてウェブサイトの翻訳を行なっていたが、この仕様を翻訳するのに非常に苦労したことを思い出した。前述したようにこれまでの車では考えられないような仕様ばかりだったからだ。あれから6年が経ち、実際にサイバートラックを運転することでその特徴を理解することができたし、後ほど紹介するスターベースに並んでいるサイバートラックを見て、本当にイーロン・マスクが火星での活躍を想定していることを実感することができた。

唯一の問題はステンレスに指紋がベタベタと残るところだ。ドアを押して閉めただけで簡単に指の形がついて目立つので最初は気を使っていたが、途中から指紋を付けないことは無理だとわかり諦めた。テキサスの気候は非常に乾燥しており、少し郊外に出ると砂埃が舞っているので車がすぐ汚れるし、汚れている方がサイバートラックらしいと気づいたこともある。

FSDの自動運転を使いスターベースへ

サイバートラックをピックアップしてすぐにトライしたのはFSDによる自動運転だ。オートパイロットと同じように音声認識ボタンをタップするかUIのFSDボタンで開始することができる。最初にFSDを操作した時の映像を以下のXにポストしているので確認してみて欲しい。日本のオートパイロットの感覚からすると最初は「大丈夫か?」と不安だったが、実際に5分走ると加速や交差点での挙動もスムーズで安定しており、人間の運転以上だということが理解できた。実際に試すと映像を見ることだけではわからない安定感を感じることができる。

テキサスではダウンタウンでも込み入った細い道はなく、フリーウェイ、一般道も合わせてFSD13で全く問題がなかった。目的地での駐車は自分でする、もしくは自動駐車機能を使う必要があったが、スターベースまでの約8時間のドライブでは介入する必要はなかった。

現在、アメリカではサイバートラックに最新のFSD14の配信が開始となっており、さらに目的地での駐車方法、道路環境や交通標識の理解が進んでいる。とくに、目的地では駐車オプションが設定されて、路肩に停める、車庫に入れるなどオプションも増えているのでスタートから目的地での駐車までワンストップでFSDがナビゲートしてくれるようになっている。

スターベース(Starbase)は、イーロン・マスクが設立したスペースXが運営するロケット開発・製造、そして打ち上げ拠点で、テキサス州ブラウンズビル近郊のボカ・チカに位置する。イーロンが主導する火星移住計画の中心地として、スターシップのテストと生産が行われている。テキサスのオースティンからボカ・チカまでは約370マイル、約600kmの道のりだ。途中、充電や休憩を含むと7時間以上かかる。地図で見るとわかるように、メキシコ国境は目と鼻の先で、かなりの距離をドライブすることになる。

オースティンからスターベースへの経路。

フリーウェイのスーパーチャージャーも充実

夜19時にオースティンを出発して、スターベースに近いブラウンズビルで宿泊、翌朝スターベースを見て帰るというプランとして、行きはケネディ(Kenedy)とキングスヴィル(Kingsville)で充電し、ブラウンズビルのホテルに到着した。

充電に関しては、フリーウェイ沿いのパーキングエリアのほとんどにスーパーチャージャーが設置してあり、困ることは全くない。もちろん設置されている基数は少なくとも8基、12基以上あるところがほとんどで充電は快適だ。さらにステーションは限られるが、最新のV4スーパーチャージャーではサイバートラックは最大出力325kWで充電できる。

オースティンへ戻る際にロブスタウン(Robstown)で充電したが、ここはV4のポストであった。ちなみに、隣にはテキサス発の老舗ハンバーガーチェーン「Whataburger」が併設されているので、おすすめの充電スポットだ。

ロブスタウンSCでの充電。

スターベースは圧巻のスケール

翌朝は7時にホテルを出発、30分ほどドライブしてスターベースに到着した。スターベースが近くなると巨大なスターシップのプロトタイプが見えてくる。出入り口にはたくさんのサイバートラックが停まっていた。報道にもあるようにスペースXはサイバートラックを運用車両として多数購入している。

そこから数百メートル先にサプライヤーや外来者の出入り口があり、巨大な壁画を見ることができた(冒頭写真)。スターシップやローンチインテグレーションタワーも含めてかなりスケールが大きい。

背後に屹立しているのがスターシップのプロトタイプ。

ボカ・チカ通り(ブルバード)を進むとまずはスペースXの本社があり、さらに行くと住宅が建てられており、スペースXタウンの建設が進んでいる。ここはスペースXの従業員向けのコミュニティで学校や病院、図書館なども建設中のようだ。

スターベースがある場所は今年5月にスターベース市として認可されたことが記憶に新しいが、さらにスペースXが今後の打ち上げ頻度を高めるため巨大な施設を建設しているのを間近に感じ取ることができた。ちなみに外部の人間が入ることができない施設の敷地内にはミームズ通り(Memes Street)があるのだが、ここにイーロンの家もあると言われている。

スペースX本社。

さらに、ボカ・チカビーチ方向に運転すると、世界最大のロケットキャッチロボット、メカジラ(Mechazilla)を見ることができる。この日はスターシップの打ち上げやブースターのキャッチはなかったが、機会があれば打ち上げ時にぜひまた訪問したいと思った。今後、打ち上げを見ることができそうな方はこの記事を参考にして現地を訪問して欲しいと思う(FSD搭載車だとさらに運転が快適かつ安全にもなる)。

Mechazilla

文/前田謙一郎(Youtube / x.com

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この記事を書いた人

テスラ、ポルシェなど外資系自動車メーカーで執行役員などを経験後、2023年Undertones Consulting株式会社を設立。自動車会社を中心に電動化やブランディングのコンサルティングを行いながら、世界の自動車業界動向、EVやAI、マーケティング等に関してメディア登壇や講演、執筆を行う。上智大学経済学部を卒業、オランダの現地企業でインターン、ベルギーで富士通とトヨタの合弁会社である富士通テンに入社。2008年に帰国後、複数の自動車会社に勤務。2016年からテスラでシニア・マーケティングマネージャー、2020年よりポルシェ・ジャパン マーケティング&CRM部 執行役員。テスラではModel 3の国内立ち上げ、ポルシェではEVタイカンの日本導入やMLB大谷翔平選手とのアンバサダー契約を結ぶなど、日本の自動車業界において電動化やマーケティングで実績を残す。

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