2025年10月に開催された「ジャパンモビリティショー2025」で、「ZEEKR 009(ジーカー・ゼロゼロナイン)」という、BEV高級ミニバンが出展され、「アルファードのライバルか」と注目を集めていました。今回は、特別にデモカーに試乗。その実力をチェックしてきました!
ZEEKRとはどんなブランド?

特徴的なフロントグリル。試乗中、ジロジロ見られることが多かった。
ZEEKR(以下、ジーカー)は、中国の巨大自動車メーカー「吉利(ジーリー)汽車」が、2021年3月に設立したハイエンド市場向けのプレミアム電動車専門ブランドです。設立の背景には、中国市場のみならず、グローバルでテスラをはじめとするプレミアムBEV市場でのプレゼンスを高める考えがあったようです。
ジーリー傘下には、ボルボ、ロータスといった日本でもなじみ深い老舗ブランドがあります。ジーカーは、これら実績をもつブランドをはじめとするグループの開発基盤や技術資産を活用し、欧州、中東、東南アジアなどグローバルに展開しています。
おもなラインナップは、ブランド第1弾車種となったシューティングブレークの「001」、高度な自動運転技術と急速充電性能を備えたスポーツセダン「007」、ミドルクラスSUVの「7X」、コンパクトSUV「X」、さらに、センターピラーレスの大開口スライドドアを採用してリビングのような車内空間が特徴の革新的なMPV(ミニバン)「MIX」、そして今回日本初披露・導入が始まった高級ミニバン「009」があります。
日本市場への導入は、「フォロフライ株式会社」がインポーターとなり、全国にアフターサポート体制を敷いて展開します。
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「009」とはどんなクルマか?

アルファードよりひと回り大きいが、取り回しは楽だった。
009は、日本においてはラージクラスのミニバンになります。グローバル市場では、MPV(Multi Purpose Vehicle=多目的車)に分類されます。
ボディサイズは、全長5,209mm×全幅2,024mm×全高1,812mmという堂々たる大きさです。ちなみに、トヨタ「アルファード(ハイブリッド 2WD Executive Lounge)」のボディサイズは、全長4,995mm × 全幅1,850mm × 全高1,935mm。009は、全高はアルファードよりやや低いものの、全長・全幅は一回り大きいサイズとなります。
注目すべきは、ホイールベースの長さです。アルファードのホイールベースが3,000mmに対して、009は、3,205mm。これは、BEVプラットフォームの利点を最大に活かし、特に後席スライドドアを大型化し、乗降性の高さと乗り心地の良さ(ホイールベースが長いほうが乗り心地が良くなる)を実現しています。

メーターディスプレイは小ぶりだが、運転中は視認性がいい大画面ヘッドアップディスプレイを見ることが多かった。
心臓部となるパワートレインには、前後デュアルモーターの4WD車で最高出力約450kW(612馬力)、最大トルク693N・mを発生する高性能モーターを搭載。バッテリーはCATL製で総電力量は140kWhの超大容量。航続距離は最大で822km(CLTCモード)という、長距離移動にも十分対応できるスペックを誇っています。WLTCモードの国土交通省審査値は未公表ですが、平均電費が「4km/kWh」と仮定しても一充電で560kmを走り抜く余裕があることになります。
ボルボの血筋を引く「欧州デザイン」

120個以上のLEDが埋め込まれたフロントグリル。夜に撮影したかった……。
エクステリアで最も目をひくのは、フロントデザイン。非常に個性が強い顔付きながら、シンプルでモダン、クリーンな印象を受けます。ジーカーは、北欧のデザインチームがあるとのこと。ボルボのスウェディッシュデザインのテイストが、009にも反映されています。
2列目シートは「ファーストクラス」

後席スライドドアは大型で開口部は広く、乗降性に優れていた。
インテリアもシンプルでモダンな印象です。車両のほぼすべての機能の操作はセンターの大型ディスプレイに集約。運転席から後席シート位置の調整やマッサージ機能の起動や調節などさまざまな「おもてなし」を乗員に提供できるようになっています。

運転席からの操作でもフルリクライニングして「おやすみ」モードに。
2列目シートは、まるで飛行機のファーストクラスのよう。オットマン付きのシート、ドアトリムにはタッチパネル付きディスプレイを装備。なお、シートのリクライニングなどの位置調整は、ノールックで操作できるよう物理ボタンが採用されています。
また、冷却・保温両用冷蔵庫も備えています。この「保温機能付き冷蔵庫」は、アルファードやメルセデス・ベンツ Vクラスでも採用されていない装備です。

これは重宝しそう! 保温・冷却両対応の冷蔵庫。
至れり尽くせりの快適装備は、アルファードの手本にされたと、フォロフライの担当者は語っていました。
ショーファードリブン・ドライバーズカーの両面を持つ009

オーナーはその日の気分で、後席にも運転席にも。
009に試乗してみると、運転手付きで乗る「ショーファードリブン」としての位置づけがありますが、実際運転してみると自ら運転する「ドライバーズカー」の性質も併せもっていることに気が付きました。
今回の試乗コースは、フォロフライのラボ「KOBE Lab.(神戸市・ハーバーランド)」から「ハーバーハイウェイ」を経由して、関西屈指の高級住宅街である芦屋との間を往復しました。往路は筆者の運転、復路はフォロフライ株式会社 Co-Coo 中尾さんの運転で、筆者は後席に乗車してショーファードリブン体験をしました。
芦屋は幅の狭い道路が多い上、車幅の広い高級車とギリギリのすれ違いを余儀なくされることが多い地域です。
富裕層向けのショーファードリブン、009はこういった厳しい道路条件もクリアしなければなりません。

芦屋の高級住宅街でボルボ XC60とすれ違う。
実際に、芦屋の細い路地に入り、何度か車幅の広いクルマとすれ違いましたが、大柄なボディに対して見切りがよく、取り回しは楽でした。また、障害物に接近すると、自動でセンターディスプレイに障害物との距離が「cm」単位で、映像とともに映し出されて、ギリギリを安全に攻めて進むことができました。
スポーツカー並みの俊足!

19インチアルミホイールにスポーツタイヤのピレリ Pゼロが組み合わせられていた(日本仕様モデルで採用されるかは未定)。
0-100km/h加速4.5秒(4WD車)という加速の良さは、ステアリングフィールの良さと相まって、スポーツカーの面影すら感じさせます(ちなみに、ポルシェ 911 カレラ(2025MY)の0-100km/h加速は4.1秒)。車両重量約3トンという重量級でこの加速性能は圧巻です。
アクセルを全開にすると、ミニバンにもかかわらずシートに背中が張り付くような強烈な加速を感じました。ただ、決してムチウチになるような唐突なものではなく、急激なGの立ち上がりは巧みに抑えられており、そこに「上品さ」を感じさせる調律がなされているのが印象的でした。
エアサスがもたらす「極上の乗り心地」&「スポーティーな締まった足まわり」

シンプルながら質感の高いセンターコンソール。疑似マニュアルモードが欲しくなる乗り味。
009には、アルファードやレクサスLMにも採用されていない「デュアルチャンバーエアサスペンション」が装備されている点も見逃せません。コンフォートモードでは、非常に滑らかで上質な乗り心地を提供する一方で、スポーツモードに切り替えればダンパーがしっかりと効いて締まったスポーティーな足まわりへと豹変します。
これならば、たまにはドライバーズカーとして自らステアリングを握りたいと考えるショーファードリブンオーナーも、十分に運転を楽しむことができるでしょう。
「重さ」が醸し出す重厚な乗り心地

3列目シートも妥協なし。
車両重量は2,870kg(4WD車)。約3トンの車重は、ショーファードリブンカーにおいては一概にデメリットとはいえません。スポーツカーにおいては「軽さが正義」となりますが、乗り心地を重視するショーファードリブンでは重厚な乗り心地に貢献する「重さも正義」です。ロールスロイスもセンチュリーも、ショーファードリブンモデルはことごとく重量級です。
静粛性の高さは言うまでもありません。しかし、薄気味が悪いような静かすぎる静寂ではありません。風切り音、ロードノイズは適切に押さえ込まれています。
後席シートの座り心地はもちろんすばらしいものでした。シートの形状、固さ、角度などの調整幅など、文句の付け所がありませんでした。3列目も座面の高さをしっかりと確保され、長時間乗車でも問題のないきちんとしたシートになっています。
009は「アルファード」のライバルか?

後席には大開口の電動サンルーフを装備。
試乗中、中尾さんに「009はアルファードに対抗する目的で日本市場に導入したのか?」と水を向けたところ、そうではないとのことでした。
その理由として、まず、フォロフライはファブレス(工場を持たない)のBEVメーカーであり(F1シリーズ、F11VSといった商用BEVを既に展開)、BtoBが主体のビジネスであること、そしてそのビジネス基盤に、ハイヤーをはじめとする法人需要を狙って009の日本市場導入を決めたといいます。
編集部注※後日実施した社長インタビュー記事でも、そのあたりの意図が語られています。
価格は1300万円から

後席の大画面格納式ディスプレイ。もちろん、運転席からも操作可能。
価格は1,300万円〜と公表されています。日本市場導入モデルは、駆動方式2WD・4WD、シートレイアウトは6人乗り・7人乗りから選択可能となる予定ですが、詳細は現在最終調整中とのことです。なお、本国仕様では究極のプライベート空間を実現する4人乗りも設定されています。
中尾さん自身、仕事で幾度となく中国を訪れ、そのたびに009で送迎を受け、そのクルマの良さに感銘を受けて、日本でも販売したいと考えたそうです。また「BEVは、商用車のみならず、乗用車においても企業においては経済合理性が非常に高く、CO2排出削減効果も高いという法人が求める条件に合致している」という思いを聞かせてくれました。
009は法人向けだが個人からも引き合いが

デモカーの充電口はまだCCS のままだが、導入される日本仕様車ではチャデモ規格の急速充電に対応予定。
ビジネス向けとして日本導入を進めている009ですが、個人からの引き合いも多いそうです。中尾さんは、その理由として日本で発売されているBEVの高級ミニバンがほとんどない(現状ではフォルクスワーゲンのID.Buzzくらいだけど、テイストが大きく異なります)ことを挙げていました。
たしかに、ショーファードリブンとして使える国内メーカーのミニバンは、トヨタ「アルファード」「ヴェルファイア」、レクサス「LM」といったエンジン車のモデルしかありません。日産から新型「エルグランド」が2026年夏に発売予定となっていますが、これを加えても選択肢は少なく、BEVはありません。
メルセデス・ベンツ「EQS」、BMW「i7」といったBEVをショーファードリブン用途として採用している企業も増えていることから、BEVの高級ミニバンが受け入れられやすいというマーケットがあることは容易に想像できます。
また、パーソナルユースにおいて高級ミニバンに乗ってきたユーザーも、009に目を付けるアーリーアダプターがいることでしょう。
009のオーダーはすでに50台に達しているそう。「打倒! アルファード」という狼煙を上げなくても、フォロフライとしては十分勝算のある日本市場導入だと言えます。
試乗と対談の動画も要チェック!
動画では、009のラグジュアリーなインテリアから、高い静粛性を誇る走行音がチェックできるほか、中尾さんのZEEKRとフォロフライの関係性や成り立ちといった話を紹介しています。とくに11分28秒あたりの、高速道路の継ぎ目を乗り越える際の音の抑え込み具合には注目です。
【動画】ZEEKR 009試乗レポート
【動画】フォロフライ小間社長 × 寄本編集長対談の一部始終
まとめ/宇野 智






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