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テスラジャパン橋本理智社長インタビュー/日本でもより多くの人に「テスラ」を知ってもらうために

テスラジャパン橋本理智社長インタビュー/日本でもより多くの人に「テスラ」を知ってもらうために

オープン前日のテスラストア新三郷で、テスラジャパンの橋本社長にインタビュー。就任以来、右肩上がりで販売台数が上昇しており、テスラのEVに触れられるストアのネットワークを拡大中。新型チャデモアダプターの開発動向などユーザー目線で気になるポイントとともに、日本での「テスラの今後」について伺いました。

目次

モデルYが2025年1~7月の販売台数ナンバーワンに

日本ではいまひとつだったテスラ車の販売台数が、昨年後半からググッと伸びています。10月3日には現在の主力車種であるミッドサイズSUVのモデルYが、日本国内の電気自動車普通車セグメント(軽自動車を除く)で、2025 年1 月~7 月の累計販売台数第1位となったことが、テスラジャパンから発表されました。

テスラジャパンの現社長である橋本理智氏は、2024年7月にジェネラルマネージャーとして入社。9月にカントリーマネージャー(日本法人社長)に就任して以来、テスラのEVに対する「高級車のイメージを払拭し、誰にでも手が届く『大衆車』であることをアピールする」(2025年8月の日本経済新聞インタビューより引用)ための施策を次々と実施。現状の日本ではモデルYとモデル3、わずか2車種しかないテスラ車の販売台数を伸ばしてきたのです。
※編集部注/モデルSとモデルXは、2025年3月に日本向け車両の生産と販売終了がアナウンスされました。

改めて、現在の日本市場におけるテスラ車の登録(販売)台数を確認しておきましょう。テスラジャパンでは販売台数を公表していないため、日本自動車輸入組合(JAIA)が毎月発表している「輸入車新規登録台数(速報)」から、メーカー別乗用車登録台数のうち「Others」のほぼ全数がテスラであると推定します。

まず、2024年1月以降の月次登録台数推移です。2024年の月平均は約471台であったのに対して、2025年の平均は約893台と、およそ1.9倍になっています。また、2024年のなかでも後半に注目すると、Q4(10~12月)の月平均は約539台で、販売台数が増加傾向になっています。

1年間の登録台数では、2024年の通年で5,653台でしたが、2025年は8月までに6,570台となって昨年越え。9月も史上最高の1,470台を積み重ね、1~9月で8,040台と、Q4途中での1万台超えが見えてきました。

なぜ、日本でテスラの勢いが増しているのか。9月27日のオープン前日、埼玉県三郷市にある「ららぽーと新三郷」にできた「テスラストア新三郷」で、橋本社長にインタビュー。一問一答スタイルでお届けします。

いい意味で「未来が想像できない」のが魅力

橋本理智社長。

Q. 入社を決める際、テスラジャパンに感じた可能性や魅力は?

いい意味で「期待を裏切られるところ」に魅力を感じました。モデルYは2023年に世界一販売台数が多い自動車になって、じゃあテスラは「EVの会社」なのかというと、エコシステムとして蓄電池もあるし、オプティマスという二足歩行型のロボットもあります。さらに、近しい会社であるスペースXでは宇宙開発を手掛けています。EV事業だけでも大変なのに、様々な可能性を具現化していて、簡単には未来が想像できないというか、期待を超えてくる。そこに大きな魅力を感じました。

Q. 橋本さんが社長就任後、販売台数が急増しています。

私が入社したのは2024年の7月1日でした。社長に就任したのが9月24日ですね。当初は、テスラがまったく売れていない現実への「絶望」から始まりました。ご承知のように、私が入る前の数年間、日本でのテスラ車の販売は低迷が続いていました。世界の市場では急成長しているのに、なぜか日本だけ売れていない。入社の際、アメリカ本社の上司から「売上を2倍にする」ように言われて「Yes」と答えてしまったんですよ。

Q. 具体的に、どんな課題があったのでしょう?

一例を挙げると、セールス担当者の商品知識強化ですね。われわれは、500万、600万円のクルマを売っています。私はもともとクルマ業界の人間ではないので、「こんなに高いものを売るんだから、セールス担当者はクルマやEVのことを100%知ってて当然」だと思っていました。

7月、テスラに入ってすぐに準備して、商品知識のレベル分けをするテストをやってみたんです。もちろん、全員が一番上の「エキスパート」だと思っていたら、正直に言ってしまうと当時はたったの10%しかエキスパートに合格できませんでした。これではクルマが売れないのは当然です。

その後、徹底的に従業員の教育をやり直して、10月のQ4が始まるまでにはセールスのスタッフ全員が「エキスパート」に合格できるレベルにまでもっていきました。その結果、2024年のQ4から販売台数が一気に伸びてきています。

Q. 新しいテスラストアの両隣が有名ブランドの店舗であることを象徴的に感じました。

私が入社してから、販売拠点への戦略を変えました。今までは「テスラセンター」といわれるサービスと販売の機能を備えた拠点を中心に展開していましたが、こうしたショッピングモールのように一般客のトラフィックが多い場所に出店してテスラに触れていただく「リテール型」に転換していく戦略です。

有名ブランドのショップと並んでいるのが「象徴的」ということですが、実は、私としてはまだ物足りないと感じています。ブランドのショップに来る人は、そのブランドの品を買いに来る。私としては、より多くの方がふらっと時間つぶしに訪れることが多いフードコートや飲食店街の真ん前にテスラストアを出したいと考えています。

Q. テスラを知らない人の目に触れるためということですか?

そうです。日本で新車販売のEVシェアはまだ3%以下程度。テスラはその一部でしかありませんから、日本ではほとんどの人がテスラをまだ知らない。今回の「ららぽーと」とか「イオンモール」のような場所には、その施設を目指してやってくる方々のトラフィックがあります。まだテスラを知らない多くの方に、まずはテスラを知っていただくためにリテール型のストア戦略に変えました。

Q. ストアの数が急増中ですが、目標は?

私が入社する前は全国で11店舗でした。年内には30店舗(9月末段階で24店舗)にリーチできる予定なので、おおむね1年で約3倍に増えています。目標としては、来年も今年と同じくらいのペースで増やしたいと思っています。とはいえ、30店舗の3倍となると90店舗ということになって、来年1年間で60店舗増やさなければいけなくなります。1年は52週しかないので、60店舗というのは現実的には難しいかとも思いますが、目標としてはそんなイメージです。

Q. スーパーチャージャーも順調に増えています。設置数の目標はありますか?
(2025年9月末時点で138ステーション、700口を突破)

具体的な数的目標は設定していません。まず、販売拠点にリンクしてスーパーチャージャーはあるべきと考えていて、店舗が増えたらその近くにスーパーチャージャー設置を進めたいと思っています。

また、公式サイトでスーパーチャージャー設置場所の投票を実施していて、四半期ごとの集計を設置場所の選定に活かしています。ユーザー様からの要望を第一に、主要な経路の中継地点として適切な場所などを優先して設置しています。

Q. 新型チャデモアダプターの発売はいつごろになりそうですか?

7月に開催されたTOCJ(テスラ オーナーズクラブ・ジャパン)全国ミーティングのステージでお話しした「遅くとも年内にはアップデート」する計画通り(関連記事)に進んでいますが、現在は第三者機関などで検証を進めているところです。

Q. 日本で、テスラがさらに成長するための課題や方針は?

課題としては、日本ではまだテスラを高級車だと思っている人がたくさんいます。でも、補助金やキャンペーンを活用すると400万円以下で買えるケースがある。意外と手頃なクルマなんだということが周知できていないので、テスラが「クオリティの高い大衆車」なんだという認知を拡げていくことが大切だと思っています。

方針としては、まず「2倍」を目指して販売台数を伸ばしていくというミッションがありますから、販売拠点を増やし、試乗の機会をできるだけ多く提供していきたいですね。極端に言うと、一度試乗した人は100%買いたくなるのがテスラのEVの魅力だと思っています。したがって、試乗拠点を増やすことが重要です。

Q. 車両保険が高いという指摘への対応は?

車両保険については検討を重ねました。とはいえ、損害保険料率算出機構が決める型式別料率クラスをわれわれがコントロールすることはできません。結論、販売台数を伸ばすことが、車両保険の金額を下げることに結びつくんです。

そのためにも、オーナー様からの「ご紹介プログラム」はとても大切な要素のひとつだと考えています。

(以上)

紹介プログラムの特典が15万円相当に

「紹介プログラム」というのは、これからテスラを購入しようとする人が既存のテスラオーナーが保有する「紹介コード」を利用して注文すると、購入者には一定の割引があり、紹介者にはテスラショップやスーパーチャージャーなどテスラのエコシステム上で活用できるクレジットが付与される制度のこと。付与されるクレジットは紹介1件につき17,500円分だったところ、インタビュー直後の10月1日から12月31日までの期間限定で、150,000円分に引き上げるアップデートが発表されました。

クレジットの付与は最大10回までといった制限はあるものの、テスラオーナーが自らの感動体験を身近な方に拡げていくアクションを促す、つまり、より販売台数を伸ばしていくための仕組みとして注目です。

テスラストア新三郷へのアクセスは「立体南」駐車場が便利

テスラストア新三郷が開設されたららぽーと新三郷は大きなショッピングモールで、駐車場も北側と南側などたくさんあります。インタビュー取材当日、まだオープン前のテスラはフロアマップに記載されていなかったので、クルマで行った私は当てずっぽうで空いていて停めやすかった「立体南駐車場」を利用して、結果的に大正解でした。

クルマでテスラストア新三郷を訪れる際は、南側の「平面C」や「立体南」が便利。JR武蔵野線の新三郷駅とは直結している便利な立地。電車で訪れる場合、中庭のようになった「みどりの広場」から南モールエントランスを入るとわかりやすいです。

取材・文/寄本 好則

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この記事を書いた人

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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