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「ZE0の呪い」が解けた!【朗報】新型「日産リーフ」に日本で蔓延るEVへの偏見粉砕を期待

「ZE0の呪い」が解けた!【朗報】新型「日産リーフ」に日本で蔓延るEVへの偏見粉砕を期待

新型「日産リーフ」が発表されました。航続距離やバッテリー劣化など、日本で蔓延するEVへのネガティブな偏見は、初代リーフ(ZE0)の弱点でもありました。でも、新型リーフは「弱点」をことごとく克服。価格やEV性能が魅力的に向上した新型リーフ登場は、EV普及にとって朗報です。

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BYDなどに見劣りしないコストパフォーマンスを実現

「ZE0の呪い」が解けた!【朗報】新型「日産リーフ」に日本で蔓延るEVへの偏見粉砕を期待

2025年10月8日、日産自動車が新型「日産リーフ」の国内発表会を開催しました。日本国内では「B7」と「B5」という2タイプのグレード展開になりますが、今回はまず78kWh(使用可能電力量は75.1kWh)を搭載する「B7」の価格や詳細を明示、10月17日から受注を開始して、2026年1月からデリバリーが始まる予定であることが発表されました。

55kWh(使用可能電力量は52.9kWh)バッテリーの「B5」は、2026年2月ごろの正式発表する予定です。

発表会を取材していて感じたのが、新型リーフは日本に蔓延するEVへの偏見や誤解を打破してくれるのではないかという期待です。注目ポイントを挙げていきます。

発表会での説明スライド。

最初の注目ポイントは「価格」です。EVは「車両価格が高い」という事実とイメージが、日本におけるEV普及の障壁になっていました。発表された新型リーフの価格は、「B7 X」が518万8700円、上級モデルの「B7 G」が599万9400円、特別仕様の「AUTECH B7」が651万3100円です。

ベースモデルのXでも500万円を超えており、決して安いとは言えません。でも、78kWhの大容量バッテリーを搭載して702kmという航続距離性能は、今までの常識であれば1000万円クラスの高級EVのスペックです。78kWhで約519万円という価格設定は、日産が新型リーフを「魅力的なEV」とするために頑張ってくれた結果でしょう。

EVのコストパフォーマンスの指標として、EVsmartブログでは車両価格をバッテリー容量で割った「円/kWh」価格を参考にしています。今までの「ZE1」リーフと比較してみます。正直、Xでも620万円くらい(8万円/kWh程度)するのではないかと予想していたので、うれしい驚きを感じる発表価格でした。

今回のモデルチェンジによってコストパフォーマンスが格段に向上したことが一目瞭然です。参考までに、バッテリー容量20kWhの日産サクラは「約13万円/kWh」です。この数値はバッテリー容量が大きなEVが相対的に良くなる傾向があるものの、軽EVにして30kWhのホンダ N-ONE e:(G)は「約9万円/kWh」、91kWhの大容量バッテリーを搭載した日産アリア B9でも「約8万1000円/kWh」です。

新型リーフと比較検討の対象となるであろうテスラ、BYD、ヒョンデといった輸入EV車種と比較しても、新型リーフのコスパが世界と戦えるレベルであることがわかります。発表会では2026年2月に発表予定のB5はCEV補助金を適用して「350万円を目指す」ことが明言されました。車両価格が440万円と仮定すると、このコスパ指標は「8万円/kWh」きっかり。日本市場でハイブリッドなどエンジン車に対する価格競争力を上げるためには、コスパにして7万円/kWh台前半(車両価格410万円以下程度)を期待したくなってしまいます。

初代リーフが抱えていた「弱点」をことごとく克服

初代リーフ「ZE0」型は、2010年、世界に先駆けてデビューした量産EVです。日本のみならず世界中にEVの魅力を知らしめた一方で、24kWhという今となっては心許ない搭載バッテリー容量と、当時の基準だったJC08モードで200kmしかなかった一充電走行距離が、電気自動車は「航続距離が短い」という評価を広げるなど、いくつかの弱点を抱えていたといえます。

代表的な弱点が「航続距離」と「バッテリー劣化」、そして「V2L機能」といえるでしょう。ことに、航続距離の短さとバッテリー劣化の課題は、日本の自動車ユーザーが「電気自動車への不安」として挙げる主要なポイントになりました。実際には、最近ローンチされる多くの新型EVにとってこうした弱点はすでに「過去のもの」ですが、EVに懐疑的な人たちの偏見は根強いまま。個人的に、こうした誤解の蔓延を「ZE0の呪い」と呼んで憂えていたのですが……。

新型リーフ「ZE2」は、ZE0(AZE0を含む)が抱えていた、そしてZE1でも改善しきれなかった弱点を、ことごとく克服したばかりでなく、逆にEVの魅力に昇華してくれた印象です。

航続距離性能とともに充電性能も魅力的に向上

搭載バッテリー容量が、ZE1 e+の60kWhから、ZE2 B7は78kWhと約1.3倍に増えたことにより、WLTCモードの一充電走行距離は450kmから702kmに増えました。バッテリー容量が約1.3倍であるのに対して、航続距離は1.56倍になっているので、パワートレインの効率も向上していることがうかがえます。

バッテリー容量や効率とともに、急速充電性能も向上しました。ZE1 e+では最大100kWだった最大受電性能は「150kW」にアップしました。全国の主要高速道路網のSAPAに設置が進んでいる最大150kW器の恩恵を満喫できます。

発表会では「急速充電15分で最大250kmの走行が可能」とアピールされました。カタログスペックの電費は「141Wh/km(高速道路モード)=約7.1km/kWh」ですから、最大150kWの急速充電器を使えば、15分で「約35kWh=250km走行分」の充電が可能という計算になります。エンジン車で遠出する場合でも、250kmも走れば15分くらい休憩したいでしょ? ってことですね。

EVの急速充電はバッテリー残量(SOC)が上がるほど出力が落ちていくため「15分で35kWhだから30分で70kWh」にはならないし、実際の充電量や走行可能距離は改めて検証が必要です。とはいえ、新型リーフが長距離ドライブも得意なEVに進化したことは間違いありません。

バッテリーの温度管理システムを搭載

新型リーフの特長としてとくに注目すべきポイントが、バッテリー温度管理を含めた熱マネージメントシステムの進化です。ZE0でバッテリー劣化が弱点だった大きな要因が、バッテリー温度管理システムがないことでした。また、プラットフォームを踏襲したZE1にもバッテリー温度管理システムはなく、ことに夏の遠出で急速充電を繰り返すと、バッテリーが過熱して充電出力が低下する弱点になっていました。

適切なバッテリー温度管理がなされることで、バッテリー劣化のリスクが軽減します。さらに、バッテリーやモーター、車載充電器などの「熱」を統合して制御するシステムを搭載。車載ナビで急速充電スポットを目的地に設定すると、自動的に急速充電に適したバッテリー温度にしてくれるプレコンディショニング機能も付加されました。

オーナーが待望していたV2L装備が充実

「走る蓄電池」とアピールしながら、V2L(Vehicle to Load=EVの駆動用バッテリーから外部への給電)を行うためには高価で重い外部機器が必要なことも、ZE0、ZE1がともに抱える弱点でした。さらに、アリアやサクラといった日産のEV共通の課題にもなっていました。

新型リーフは普通充電口からAC100Vを取り出す給電アダプターを標準装備。さらに車内アクセサリーコンセント(センターコンソール後部と荷室の2カ所に設置)がオプション設定されました。しかも、アダプターから1500W、コンセントから1500W、合計で最大3kWの給電が可能であることも特筆すべきポイントです。これで、外部機器がなくても手軽に給電できる、文字通りの「走る蓄電池」に進化したと評価できます。

「LEAFのDNA」を踏襲して次世代のEVを!

発表会でプレゼンテーションの壇上に立ったCVE(チーフビークルエンジニア)の磯部博樹氏が強調したのは、新型リーフはZE0から培ってきた「LEAFのDNA」を踏襲し、ライフスタイルを進化させる「次世代メインストリームEV」を目指したという開発コンセプトでした。

2010年のデビュー以来、グローバル販売台数は70万台以上(うち日本は約18万台)を積み上げながら、バッテリーに起因する火災などの深刻なトラブルは確認されていないなど、高い信頼性が「LEAF」の大きな強みです。発表会直後の囲み取材でも、磯部氏は長年築き上げた「(長年積み上げてきた)信頼性の高さはリーフのアドバンテージであり、他社には決して追いつけない長所」であることを強調していました。

CVEの磯部博樹氏。

磯部氏はZE1のCVEでもありました。ZE1でもあまり改善できなかった初代の弱点をZE2が見事に克服できた要因を質問すると、やはり「EV専用のプラットフォームを採用できたことで実現できた」面が大きいとのこと。今までのリーフオーナーからのフィードバックをきちんと聞いて、徹底的にこだわったということでした。

はたして、進化の真価はどうなのか。長距離試乗などで確認するのが楽しみです。いずれにしても、新型リーフの発売は、日本のEV普及を前に進める大きな一歩になることでしょう。日産が踏み出す、さらなる一歩(B5のパッケージングや価格をより魅力的にするとか)に期待しています!

取材・文/寄本 好則

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この記事を書いた人

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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