電気自動車の日産サクラをマイカーとして愛用する自動車評論家の御堀直嗣氏が、EVへの理解を深めるために提言する「実感コラム」連載シリーズ。第5回は「納車から3年間のメンテナンスと維持費」について振り返ります。
※記事中の料金はすべて税込金額です。
発売発表の3日後には日産ディーラーへ
私の日産サクラは、2022年10月10日に納車された。
サクラが正式に発表されたのは同年5月20日で、それは金曜日だった。週末をはさんだ5月23日の月曜日に私は最寄りの日産販売店へ行き、サクラを注文した。そこから納車まで4か月半ほどの時間を要したことになる。
発売されたサクラは、XとGの2グレード構成で、Gがいわゆるフル装備となる上級車種だ。車体色などにこだわらなければ即納車できるGグレードがあるとの話だったが、せっかく自分のクルマを新車で買うのだから好みの車体色にしたいし、ことに内装色は淡いベージュと決めていたので、誘いは断った。
その場合、いま発注できるのはXのみとのことだったので、基本装備に欲しい装備を追加することにした。
まずは購入時のコストを整理してみる
気に入った車体色は、シーズンカラーと名付けられた4色のうち、ホワイトパールとチタニウムグレーの2トーンだ。なかでも、フロントピラーから屋根にかけてカッパー色(銅色)のストライプのアクセントが気に入っている。しかし特別色の扱いになるため、7万7000円の追加料金が掛かる。ちなみに、シーズンカラー以外の2トーンは、そのアクセントラインが入っていない。
室内色は、先にも述べたベージュだ。移動中ずっと居続けることになる車内は、明るい色の方がいい。また、ダッシュボードに外観と共通性のあるカッパー色の装飾が施されている。なんともお洒落だ。サクラの開発責任者は女性で、「女性の気持ちがあがる室内にした」と述べており、その室内が私の感性を刺激した。
Xグレードに追加した注文装備は、次のとおり。
メーカーオプションは、セットとなっていて、プロパイロットを装備したい場合、アクティブLEDヘッドライト/オートレベライザー/SRSニーエアバッグ/運転席ロードリミッター付きプリテンショナーシートベルト、EV専用日産コネクトナビゲーション/USBソケット/SOSコール/ETC2.0、インテリジェントアラウンドビューモニター、ステアリングスイッチなどで計44万5500円。
シートヒーターとハンドルヒーターは不可欠
さらに、LEDフォグランプと寒冷地仕様のホットプラスパッケージで11万1100円。7.5mの充電ケーブルが5万5000円である。寒冷地仕様については、以前も触れたが、EVではシートヒーターとハンドルヒーターが省電力と快適性の両立に有効であり、注文装備として不可欠だ。
販売店オプションは、ETC2.0のセットアップが3300円、車検証入れが1650円、フロアカーペットが2万2000円、ドライブレコーダーが前後で7万7380円、ナンバープレートロックが3850円、ウィンドウ撥水が8360円である。
Xの車体本体価格が239万9100円で、メーカーと販売店のオプションを加え、合計金額は320万4240円になった。
ちなみに、下取り車があり、それに13万円の値が付いた。
以上が、契約のあらましだ。
国のCEV補助金は55万円、東京都の補助金が37万5000円だったので合計で92万5000円、下取り代も含めたうえでの支払金額は214万9240円となる。ただし、補助金は予算枠内で申請が間に合えばということもあるので、国からも都からも支給されるのはほぼ3か月後であった。
したがって、日産の販売店には、購入した時点で、下取り車代金を引いた307万4240円をまず支払っている。この時間差はあらかじめ承知しておかないと、補助金を引いた額を用意しておけば大丈夫と思うとあわてることになる。
補助金の申請は、すべて日産の販売店でやってもらった。V2Hの機器も設置したのだが、そうしたことすべてワンストップでできるところが、長年EVを販売し慣れた日産販売店の有難みの一つだと思う。
ZESP3は3年乗って「シンプル」プランに変更
そのうえで、出先での充電に関して、日産ゼロ・エミッションサポートプログラム(ZESP3)に加入した。
当時のZESP3には、4つの選択肢があり、月額基本料500円のシンプルのほか、プレミアムとして、プレミアム10/プレミアム20/プレミアム40とあり、順に急速充電充電10回、20回、40回(1回10分)の無料充電付きとなる。私は遠出の予定がそれほどなかったので、プレミアム10を選んだ。月額基本料はプレミアム10で4400円だが、3年定期契約の割引で2750円になった。ただ、結果的に出先での充電機会がほとんどないので、3年契約の期限が過ぎたところでシンプルに切り替えた。
編集部注:日産ZESP3はその後のプラン改定で、無料充電分が回数ではなく時間(分)制限がある「シンプル/プレミアム100/プレミアム200/プレミアム400」となっています。また、3年定期契約の割引はなくなりました。
保守点検については、日産EVあんしんプラスという仕組みがあり、専用のメンテナンスパックとして、6か月点検4回/12か月点検3回/車検1回のほか、EV診断とタイヤローテーションが組み合わされるが、これには加入しなかった。理由は、EVではそれほど保守管理に手間が掛からないだろうと考えたからだ。
それでも、6か月点検、12か月点検は、その都度、日産の販売店にサクラを持ち込み、点検・整備してもらっている。
そのほか、スマートフォンのアプリケーションサービスであるニッサンコネクトに入会し、スタンダードプランで7920円/年の会費を払っている。
冬期はスタッドレスタイヤに交換
追加情報として、EVタイヤの摩耗に関する記事で触れたが、冬はスタッドレスタイヤを使っている。タイヤとホイールのセット(4本)で9万円だ。
そもそも遠出をあまりしないので、降雪地域へサクラで出掛けることはまずないと思う。しかし、初回で触れたように週1回の乗馬のため千葉県のクラブへ通う際、冬には外気温が零下になる朝がある。都内では1~2℃と外気温時計が表示する日でも、乗馬クラブに到着する際には零下までさがっていることが度々ある。
外気温時計が2℃以下になると、凍結の可能性を示す表示が出るが、零下になればまさにその懸念が高まる。降雪地でなくても、夜露が下りれば、それが凍結する可能性はあり、その対策としてスタッドレスタイヤを使っている。
そのため、春と秋には、サマータイヤとスタッドレスタイヤの交換作業が必要で、その作業と、交換したタイヤを倉庫で預かってもらう費用も掛かる。それでも、万一の凍結路でのスリップ事故を避けるにはやむを得ない出費だ。
凍結路への対処が一番の目的なので、スタッドレスタイヤの銘柄は、氷上でもっとも性能の高いものを選んでいる。万一の雪に対しては、銘柄を問わずほぼそれなりの性能を確保しているはずだ。
ところで、夏でも冬でも一年中使えるオールシーズンタイヤが日本でも販売されている。そのほうが、タイヤ交換や、交換したタイヤの保管に余計な費用が掛からずに済む。しかし、オールシーズンタイヤは雪に対処できても凍結路には対応できない。
3年目の車検を早めにクリア
納車から、今年の秋で3年目となり初回の車検が来た。初度登録は2022年の9月14日なので、13日までに継続車検を済ませる必要がある。従来、車検期限の1か月前から継続車検ができたが、現在は2か月前からできるようになり、早々と7月に済ませた。
法定24か月点検が2万1400円、総合検査一式が1万2000円、OBD検査(電子制御装置の検査)が3000円、車検代行手数料が1万円、下回り洗浄が1万700円、ブレーキ分解清掃が3600円、ブレーキパーツクリーナーが3000円という内訳だった。合計6万3700円である。
これら点検整備のすべてを販売店に依頼する理由は、初代リーフ以来EVの経験が豊富であると考えるからだ。サクラに積んでいるバッテリーはリーフと同じで、セル数が違うだけなので、リーフの知見が活かされているだろうと期待している。
充電の電気代は月に約1826円
充電の電気料金も整理しておこう。ちなみに、自宅での充電はV2H機器で行っている。たとえば乗馬から帰宅した際の充電残量は、夏で40%近く、冬は20%前後となるので、ざっくり30%残ったところから100%まで充電すると仮定しておく。
私は、東急パワーサプライと電気とガスの契約をしている。選んだ理由は、インターネット回線と固定電話(ファックスも別にある)の支払いも、ケーブルテレビの契約に一括すると、安く上がるためだ。電力契約は、従量電灯Cで、10kVa。基本料金のほかに、使用電力料金は3段階あって、使用量に応じて各段階の金額が適用される。1~2段階は約31円/kWhで、第3段階になると約36円/kWhになる。その区別はつかないので、これもざっくり平均すると32.6円になる。
20kWhのサクラのバッテリー容量の70%は14kWhで、これに32.6円/kWhの電気料金を書けると、456.4円。これを4週間分(約1か月)にすると約1826円と計算できる。おおざっぱだが、それが平均的な私の月々のEV電気代ということになるだろう。そもそも、自動車のためのエネルギー代が安上がりになることは想定していたので、日ごろはほとんど電気代を気にしていない。
こうして3年近くサクラに乗り、9月時点での走行距離は1万6000kmを超えたところである。
文/御堀 直嗣
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