ミライズエネチェンジとe-Mobility Powerが共同で実施している「EVおでかけ推進プロジェクト」の参加の中から事前アンケートに回答をくださった方限定で、両社の担当役員などが参加者の要望や疑問に答えるウェビナー「ぶっちゃけNight」が開催されました。公共の急速充電器のkWh(従量)課金についてなど、広くEVユーザーが気になる話題も飛び出しました。
「EVおでかけ推進プロジェクト」とは?
「EV充電エネチェンジ」を運営するミライズエネチェンジ株式会社(以下ミラエネ)と、急速充電器を中心として国内の公共充電インフラ整備を進める株式会社e-Mobility Power(以下eMP)が共同で実施している実証実験が「EVおでかけ推進プロジェクト2025」です。テーマは「EVユーザーの中長距離移動における行動変容」を促すこと。
EVユーザーへのアンケートで、eMPの急速充電器をビジター利用する時に「使い方がわかりづらかった」や「毎回のクレジットカード番号入力などが面倒だった」といった声が多く、40.8%ものEVユーザーが「EVでの旅行や遠出をためらった経験がある」と回答。そこで、「EV充電エネチェンジ」アプリでプロジェクトに参加登録しておけば、その都度カード番号を入力する必要がなくなり、より手軽に公共急速充電器のビジター充電を利用できるという取り組みです。
その結果、このプロジェクト開始後の参加者アンケートでは「これがきっかけで少し遠出のお出かけをした」とか「ビジターでの充電がしやすくなって気軽に使える」などの感想が寄せられたそうです。
ちなみにビジター充電とは、eMPネットワークの充電カードを所有していない方が、eMPの公共急速充電器を利用する際の仕組みのこと。詳細については、2025年7月のプロジェクトスタート時に紹介した記事があるのでご参照ください。

【関連記事】
充電カードなしでもスムーズに急速充電!EVユーザー待望の「EVおでかけ推進プロジェクト2025」が始動!(2025年7月17日)
キーパーソンが参加者の声に答える「ぶっちゃけNight」初開催
「EVおでかけ推進プロジェクト2025」の実施期間は、2026年1月31日(土)までの予定で開催中。10月某日、このプロジェクトに参加しているEVユーザーから寄せられた質問や要望に、ミラエネ・eMPのキーパーソンが本音で答える「ぶっちゃけNight」と題するウェビナーが開催されました。
両社を代表して登壇したのは、ミライズエネチェンジから社長の柘野善隆さんと、EV充電事業を担当する執行役員の内藤義久さん。eMPからは取締役の岩堀啓治さんと、システムやオペレーションなどを担当する取締役の肥田光生さんでした。登壇者の4人はもちろんEVユーザーです。冒頭の自己紹介では自らのEVライフについての話もありました。

写真左から、内藤さん、岩堀さん、柘野さん、肥田さん。
参加者からの意見にぶっちゃけ回答
「ぶっちゃけNight」は、事前アンケートで寄せられた参加者からの意見や要望に、登壇者のみなさんが回答していくスタイルで進められました。EVユーザーとして気になる話題をダイジェストで紹介していきましょう。

まず、プロジェクトの対象充電器が「EV充電エネチェンジ」アプリで探しづらいというご意見について、ミラエネの内藤さんが、すでにアプリの「検索フィルターアップデート」準備を終えていることを報告しました。

この要望はプロジェクト参加者ならではの意見ですが、EV充電サービス全般に、利用者の声に応えてスピーディに改善を進めていく姿勢は大事ですよね(10月6日にV.3.21.3でリリース済み)。

実際に急速充電を行った際、eMPアプリの操作性がイマイチだったり、充電器のトラブルに遭遇したという意見もありました。
回答した肥田さんは、トラブルに遭遇してしまったEVユーザーにはお詫びしつつ、eMPでは設置済み充電器の更新や新設で、遠隔監視やトラブルからの復旧操作ができる最新型の充電器導入を進めていること、またアプリの使い勝手向上にも取り組んでいくことを説明。遠隔操作できる機種の設置は順調に進んでいるので、トラブルに遭遇した際は「充電器に表示されているコールセンターに連絡してみてください」とお願いしていました。
kWh課金の導入がなかなか進まないのは、なぜ?

プロジェクトに参加するEVユーザーから多く寄せられたのが、時間ではなく充電できた電力量に応じた「kWh(従量)課金にしてほしい!」という要望でした。
同じ急速充電器を利用しても、EVの車種によって受け入れ可能な出力や充電できる電力量は大きく異なり、充電性能があまり高くないEVのユーザーにとっては深刻な課題です。この質問については、eMPの岩堀さんが用意したフリップを使って丁寧に説明してくれました。
急速充電のkWh課金を行うには、計量法という法律に従う必要があります。やり方としては、大きく分けてふたつの方法があることと、それぞれを実現するための課題があるという説明でした。

ひとつ目は「計量法に基づく検定済みの計量器(電力メーター)を使う」方法です。ただ、充電器の出口(EV)側で計量しようとする場合、急速充電器の直流電力を計測できる検定済み計量器は、現在日本国内に存在していないとのこと。系統電力から供給される交流の計測器はありますが、その場合、交流から直流への変換ロスを含めて課金対象になってしまいます。

ふたつ目が、「特例計量器」を使って急速充電の直流電力を計測する方法です。太陽光発電の電力計測ニーズなどを受けて、2022年4月1日に「特定計量制度に係るガイドライン」が制定され、計量法に基づく検定を受けなくても、一定の性能を満たしていれば事前届出をすることで使用可能とされているのが「特例計量器」です。現状、急速充電の従量課金制を実現している充電サービス事業者のほとんどは、この方法を用いているはずです。
この特定計量制度を活用する場合には、すべての取引について「取引主体が国に対して、開始前の届出と毎年1回の報告を実施する必要」があるとのこと。eMPネットワークの充電器では、「会員事業者(充電カードを提供する自動車メーカーなど)と利用者」、「ネットワーク事業者(eMP)と会員事業者」、「充電器設置者とネットワーク事業者」というふうに、1回の充電に対して複数の取引が行われています。
長年にわたり構築されてきた充電ネットワークを継承しているeMPの充電サービスでは、充電器設置者の数はゆうに1500を超えていて、すべての取引について届出を行うのは事実上困難であることから、eMPネットワークの公共急速充電器でのkWh課金は現状では難しいとのことでした。
とはいえeMPではkWh課金の実現に向けて、充電時の取引が「eMPと利用者」だけでシンプルな、eMPが設置している充電器のビジター充電については、kWh課金の実証実験を展開している(関連記事)ことも説明されました。
そして、今年度から設置する充電器には「特例計量器」を装備しているので、「早ければ来年度くらいから、kWh課金で利用できる急速充電器の数を増やしていきたい」という見通しが示されました。
トークの中でプロジェクトの延長が決定!
いろんな要望があった一方で、「EVおでかけ推進プロジェクト」のおかげで「充電の度にクレジットカード情報を入力しなくていいのが本当に助かる」とか、1月31日までの「実施期間を延長してほしい」といった賛同の声が寄せられました。
トークが盛り上がった結果、現在の期間終了後もプロジェクトを続けよう! という話がまとまりました。1月31日以降、そのまま期間を延長して継続するのか。改めて期間を決めて実施するのかは今後の検討事項ということになったものの、「EV充電エネチェンジ」アプリでeMPの急速充電器を便利にビジター利用できるサービスは続いていくということですね。
また、ミラエネやeMPの担当者にとって、充電器を利用するEVユーザーの声を直接聞ける「ぶっちゃけNight」のような機会は貴重。今回は「第一夜」という位置付けだったので、第二夜以降も開催しようという話が盛り上がりました。第二夜はオンラインではなく、東京、名古屋、大阪、福岡などを巡るオフラインイベントもいいね! なんて意見も飛び出して……。
第二夜以降のイベント開催詳細も今後の検討事項ではありますが、お楽しみに! って感じです。
「EVおでかけ推進プロジェクト2025」は、まだまだ参加者募集中。
・急速充電に対応しているEVまたはPHEVを所有している方
・現在、EV充電カード(eMPネットワーク)を契約していない方
・本プロジェクトに対するフィードバック(アンケート等)をいただける方
という条件を満たす方、申し込んでみてください。
【関連ページ】
「EVおでかけ推進プロジェクト2025」参加者募集
取材・文/寄本 好則






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