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BYDのスーパーハイブリッドSUV「シーライオン 6」試乗レポート/圧倒的コスパに感じた日本自動車産業の危機

BYDのスーパーハイブリッドSUV「シーライオン 6」試乗レポート/圧倒的コスパに感じた日本自動車産業の危機

BYDオートジャパンが発売したスーパーハイブリッド=プラグインハイブリッドの「SEALION 6(シーライオン 6)」の試乗会で、EVとしての力強い走りと圧倒的なコストパフォーマンスを確認。「日本の自動車産業は本当に危機を迎えることになるかもしれない」と実感!

目次

三菱「アウトランダーPHEV」とライバル関係

2023年にATTO3を日本に導入して以来、精力的に日本市場の開拓を行うBYDは、ジャパンモビリティショー2025においてプラグインハイブリッド(PHEV)モデルの「SEALION 6(シーライオン 6)」を導入することを発表しました。

12月1日に開催された記者発表(関連記事)の数日後、シーライオン 6の試乗会が静岡県御殿場市のホテルをベースに実施されました。日本でのBYDのラインアップは最初に発売したATTO 3以降一貫してBEVのみであったので、BEVメーカーだと思われがちですが、創業期からエンジン車も製造しており、現在も多様なパワートレインを展開しています。また、世界初のPHEV量産モデルは、2008年にBYDが発売しました。

「スーパーハイブリッド」と銘打つシーライオン 6は、1.5リットル直列4気筒自然吸気エンジンにモーター+ジェネレーターを組み合わせたプラグインハイブリッドの駆動システムを持っています。今回試乗したのは前輪駆動モデルで、4WDは遅れて登場する予定。なお4WDの場合、エンジンはターボ仕様となることが発表されています。

パワートレインのスペックはエンジンの最高出力が72kW、最大トルクが122Nm。モーターは145kW/300Nmです。バッテリーは18.3kWhの容量となっています。

BYDのプラグインハイブリッドシステム「DM-i」はEVモードでの走行割合が多い特徴があります。

全長×全幅×全高は4775×1890×1670(mm)、ホイールベースは2765mmです。スタイル、そしてパワートレインも似ているアウトランダーPHEVよりサイズはやや大きめですが、同セグメントに属し、ライバル関係といってよいでしょう。

運転席の「風景」に感じた安心感

シーライオン 6の運転席に乗り込むとなんとも安心感のある風景が目の前に広がります。メーター類はフラットな液晶パネルなのですが、そこにきちんとカバーが被さっているのです。

シーライオン 6に乗る前に、シーライオン7とシールで長距離移動をしていますが、どちらもフラットなパネルがそのまま配置されているデザイン。BEVに限らず最近のクルマはまるでスマホやタブレットをそのまま置いたようなデザインのメーターが多くなっています。私の場合、乗り込んだ瞬間に残念に感じることが多いのですが、シーライオン 6はちゃんとクルマらしい風景でドライバーを迎えてくれます。

シールのインテリア。

試乗前に行われたプレゼンで「システムを起動する前にPレンジのままゆっくりアクセルペダルを踏み込んでみて下さい」と言われていたので、それを試しました。オルガン式のアクセルペダルは適度な重さがありますが、支点がフロア側にあり、くるぶしと同じように動くのでストレスなくペダル操作ができます。ペダルを踏み込んでいくと8割程度踏み込んだところでクリック感があります。欧州車のキックダウンスイッチのような感じですが、ここまで踏み込むとEVモードで走行中であってもHVモードに切り替わるとのことでした。

力強いEVモードの走りを実感

フロアコンソールにあるセレクトレバーをDに入れ、まずは御殿場インター近くのホテルから仙石原方面を目指します。バッテリー残量が十分なスタート直後は完全にEV状態で走ります。静粛性はかなり高い印象。EVはエンジン音などがない代わりに、タイヤノイズなどが車内で目立つのですが、そうした音も低く感じます。シーライオン 6はガラスに防音タイプを採用していて静粛性を高めているのです。

上り坂をガンガン登っていきますがなかなかエンジンは掛かりません。ずっとEVモードのままです。それも十分に力強いEVモードで、ペースはかなり速めです。仙石原で一度停車して、その後さらにインプレッションを探るために芦ノ湖スカイラインへとハンドルを切りました。走り慣れた芦ノ湖スカイラインを走ってもやはりエンジンは始動しません。開けた場所でアクセルペダルを床まで踏み込むとやっとエンジンが始動しました。

エンジン音はそれなりに大きく車内でも確認できるレベルでしたが、ICE車などのようにアクセル操作と連動していません。エンジンが始動した瞬間、一気に高回転で回ってその後アクセルペダルを戻すとなにも無かったかのように停止してしまいます。EVモードでアクセル操作によって始動したエンジンはあくまで発電機として作動するようです。

シーライオン 6はバッテリー容量25%まではEVモードで走れます。しかも160km/hまでモーターで加速できるといいます。モードをHVに切り替えるとエンジンが始動しますが、とくにエンジンを始動して走る必要も感じませんでしたし、のちほど充電テストをしたいということもあり、走行用バッテリーを減らしたいという気持ちもありましたので、基本はEVモードでの走行を続けました。

CHAdeMO規格急速充電の受電性能は最大18kW

装着タイヤはインドネシアのギティというブランドのコントロールP10。サイズは235/50R19 99Vが装着されていました。このタイヤ、ワインディングを走るとちょっと物足りなさを感じる部分がありました。一般道では静かでいい印象だったので、ワインディングなどにおける「走り」というジャンルでもう少しパフォーマンスが欲しいと感じました。

芦ノ湖スカイラインを快走して、充電のために山を下ります。時間があれば御殿場インターから新東名高速を走って駿河湾沼津SAで試したかったのですが時間的余裕があまりないため、東名高速足柄SAに向かいました。足柄SAにはスマートインターチェンジも併設されています。多くのスマートインターチェンジはSA、PA利用後には出口利用ができませんが足柄SAはSA利用後にも出口利用が可能なので、充電してから一般道へ出て逆側のスマートインターチェンジからSAに戻り御殿場インターに向かえるためテストにはもってこいです。事前にシーライオン 6の受電性能は18kWと聞いていましたが、充電機を繋いでみると見事に18kWを表示。確認できました。

充電後、まだ少し試乗時間に余裕があったので、御殿場インターから東名高速で裾野インターに向かいました。高速道路本線への流入、追い越し加速ともに十分に力強く安定しています。エネルギーモニターを表示しながら加速しましたが、なかなかエンジンとモーターを併用する状態になりません。160km/hまではモーターのみで加速可能というだけあって、フル加速してもエンジンとモーターが併用されません。

意外だったのがアクセルを戻したときに一瞬エンジンが始動することでした。もしかしたら単純に強い加速を得るだけならモーターのほうが有利で、なにか別の要因が加わるとエンジンが併用されるのでしょう。今回は試せなかったので単なる勘ですが、中央高速の下り線談合坂付近のような急勾配の上り坂区間だと、併用モードとなるかもしれません。

相変わらず、ナビを先に起動しておかないと音声トリガーによる目的設定はできないのですが、シーライオン7やシールでは認識されなかった高速道路のSAやPAが認識されるようになっていました。シーライオン 6で認識されるということは、ほかの車種でもOTAでアップグレードできることでしょう。

圧倒的なコスパに日本自動車産業の今後を危惧

シーライオン 6は補機バッテリー(いわゆる12Vバッテリー)もリチウムイオン(LFP=リン酸鉄)です。リチウムイオンバッテリーは鉛バッテリーのように充電中に水素を発生するようなことがないので、車室内に搭載できます。シーライオン 6の場合は運転席の下に補機バッテリーが収められています。

この補機バッテリーはクルマ全体のシステムとして監視されていて、放電量が増えると駆動用バッテリーから充電される仕組みです。万が一、バッテリー上がりを起こしてジャンプスタートする必要があるときは、ボンネット内のヒューズボックスに+端子が用意されています。

さて、シーライオン 6の価格は398万2000円と400万円を切る設定です。装備を見るとV2L、V2H、開閉式サンルーフ、ナビ、運転席&助手席パワーシート、各種ADAS機構、ステアリングヒーター、シートヒーター、NFCカードキー、インフィニティ10スピーカーオーディオシステムなどなど、フル装備状態でこの価格です。クルマの性能はもちろん、装備類まで考えて圧倒的なコストパフォーマンスを誇るのがシーライオン 6といえます。

かつて、日本車がアメリカやヨーロッパで吹き荒らしたコスパの嵐が今度は中国車によって日本で吹き荒れています。ここで日本車メーカーはどう動いていくのか? その動きによっては日本の自動車産業は本当に危機を迎えることになるかもしれない……、シーライオン 6はそう思わざるを得ない衝撃的なクルマでした。

取材・文/諸星 陽一

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この記事を書いた人

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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