著者
充電スポット検索
カテゴリー

テスラの本場アメリカ訪問記【04】ラスベガスへのFSDロードトリップとベガスループ体験

テスラの本場アメリカ訪問記【04】ラスベガスへのFSDロードトリップとベガスループ体験

テスラやポルシェの「中の人」だったコンサルタントの前田謙一郎氏がテスラの最前線を体験するアメリカ訪問記シリーズ。最終回はロサンゼルスからラスベガスへ、テスラ モデル3のFSDを使った長距離ドライブ、さらにベガスループ体験のインプレッションをレポートします。

目次

LAからFSDを使ってラスベガスへ約5時間のドライブ

LAからラスベガスまでの経路と充電したポイント。

前回はFSDを使ってロサンゼルス(LA)の大谷選手壁画やグリフィス観測所などの観光名所、テスラ・ダイナーの訪問記をお届けした。今回はLAからラスベガスへのロードトリップとイーロン・マスクのボーリング・カンパニーが作るベガスループの体験をレポートする。来月にはCESがラスベガスコンベンションセンターで開催される。期間中はベガスループが便利な移動手段になるので、行く方は参考にしてほしい。

西海岸を旅した際にLAからラスベガスへドライブしたことがある人も多いと思う。LAからは「I-15」のフリーウェイを使い約450キロ、5時間前後のドライブだ。途中でモハベ国立保全地区を通り、砂漠地帯特有の風景を楽しむことができる。

私もこのドライブを最後にしたのは2006年だったので約20年ぶり。今回はテスラ(モデル3)を使うのでFSDや充電拠点の確認など楽しみにしていた。充電経路については本来テスラのトリッププランナーを使うのが効率的だが、今回はGrokに「充電基数が多く、レストランが充実している場所」などを聞いてドライブした。

スーパーチャージャーについては、パーキングエリアで休憩すればどこでもあるレベルに拡充が進んでいた。今回は、LAから約2時間ドライブしてI-15沿の定番充電スポット、バーストウ(Barstow)で最初の充電をした。V4ポストが120基、キャノピー(屋根)には太陽光パネルがあり、レストランも充実している。普通であれば、バッテリー容量が小さいRWDモデルであってもここで30分充電すればラスベガスへ到着することができる。

巨大な充電ポイント、バーストウで充電。

I-15沿線の観光も楽しんだ

I-15沿いにはいくつか立ち寄るべき観光スポットがある。たとえばキャリコ・ゴーストタウン(Calico Ghost Town、古い廃墟になった鉱山の街が再現され観光地化されている)やペギー・スーのダイナー(Peggy Sue’s 50’s Diner)などだ。

今回はGrokがおすすめするアメリカ的雰囲気を味わうことができるキャリコ・ゴーストタウンに立ち寄ることにした。バーストウの次の出口、ヤーモ(Yermo)を降りて10分ほどで到着する。ここまでも全てFSDが運転してくれるので、景色を楽しみながら走ることができた。ここは実在の鉱山町が1900年代初頭にほぼ廃墟になった本物のゴーストタウンを復元しており、非常に臨場感がある。大人から子供まで楽しめるだろう。

キャリコ ゴーストタウン。

ゴーストタウンを出てから「Half way to Vegas.com」のサインを眺めながら次の充電スポットのベイカー(Baker)に到着。ここは砂漠の真ん中にあり、周りは広大な砂漠と山しかない。夏には50℃になるなど世界一暑い町と呼ばれているらしい。ここも100基以上のポストがあり、巨大なキャノピー付きで快適に充電ができる。

ベイカーのスーパーチャージャーにて。

そして、スーパーチャージャーの隣にはエレクトリファイ・アメリカ(EA)の充電ステーションがあり12基が設置してある。出力は350kWと高速のDC急速充電(規格はCCS1)だ。テスラ(NACS)の100基規模に比べるとかなり小規模であるが、KIAなどが充電を行っていた。

充電はEAのアプリを使って認証する方法や幾つかのモデルは自動認証でプラグ&チャージができるモデルもある。充電器のUIはシンプルで使いやすそうではあるが、認証の不具合やチャージャーの故障はユーザーから指摘されている課題のようだ。テスラ・ダイナーでもテスラ以外の車が充電をしていた。NACS/スーパーチャージャーネイティブなEVのモデルが増えてきているので、EAが今後どのような展開をするのかは注目だ。

EAで充電するKIAのEV。

このように、行きは休憩も含め、2か所で充電を行った。そして、砂漠特有の綺麗な夕焼けを見ながら1時間ほどドライブしてラスベガスに到着した。フリーウェイではFSDは相変わらず信頼のおける運転をしてくれ、ハンドルに触ることもなかった。

唯一遭遇したのは夕日がとても強くグレアが発生し、一度介入をする必要があったことだ。夕日や朝日の対応はFSD13では指摘されていた課題で、実際に体験することができた。この課題はFSD14のアルゴリズム強化によって改善されている。

新しい交通システム「ベガスループ」を体験

セントラルステーション。(ベガスループ公式サイトから引用)

今回ラスベガスを訪問した一つの目的はベガスループに試乗することであった。ベガスループは、イーロン・マスクのボーリング・カンパニー(The Boring Company)が開発する地下トンネルの交通システムで、ラスベガスの拠点を高速で結ぶ新しい交通網だ。

テスラのEV(おもにモデルX)を使って乗客を運び、渋滞を避けた地下トンネルで移動する。2021年にラスベガスコンベンションセンター(LVCC)のループとしてスタートし、現在も拡張中。展示会への参加者や観光客、これまで多くの乗客を運んでおり、ラスベガスの観光・コンベンションの目玉として定着してきている。

以下のマップがベガスループの運行範囲だ。最も有名なのはコンベンションセンターの中央駅になるが、私が滞在していた時はイベントがなかったので、リゾートワールド駅とウェストステーション周辺の運行であった。

現在のベガスループ。

実際の乗り方はQRコードからオンラインでチケットを購入する。片道であれば4ドル25セント、往復は7ドル、1日パスは12ドル50セントといった具合だ。ラスベガスに行ったことがある人はこれがどれくらいの相場感かわかると思うが、とくに1日パスはとてもリーズナブルだ。

ラスベガスの中心部は街区が巨大で、日本の街のように歩いて移動することが難しい。とにかくどこに出かけるのもタクシーやウーバーを使うことになるが、渋滞も激しく時間がかかる。少しの移動で10数ドルを出しているとあっという間に相当な金額になってしまう。ベガスループを使うと主要な拠点までスマートに移動できるということだ。

イーロンのビジョンで成り立っているベガスループ

イーロン・マスクがこの構想を話していた時はなんとなくピンと来なかったが現地の渋滞を体験するとその利点をよく理解することができた。実際の乗車体験については以下の動画を見てほしい。

この時の運転手は最近テスラのロボタクシー部門の運転手として採用されたとのこと。彼の説明によるとベガスループはイーロン・マスクのビジネス(構想と実現)で成り立っており、ボーリング・カンパニーがトンネルを掘って、テスラのEVが走行する。トンネルの上にあるパイプはスターリンクと繋がっていて通信を可能にしている。駅区間の走行は2分から3分程度。現在はラスベガスのハリー・リード国際空港までの延長を行っており、来年の第1四半期に繋がると一気に利便性が高まる。

動画の最初にあるように各駅には液晶の運行パネルがあり、閑散期にはボタンを押すとテスラを呼ぶことができる。一連の乗車体験はスムースかつトンネル内のライトアップも相まって効率的かつエンタテイメントを備えたラスベガスらしい演出だと思う。

中長期的にはダウンタウンエリアやスタジアムなどさらにエリアを拡大する計画で、現在の8駅から、総距離68マイル(約109km)と104駅ものネットワーク構築を目指している。現在はまだドライバーが運転しているが、将来的にはFSDによる自動運転が導入されるとのこと、もちろんテスラはゼロエミッションで、観光都市ラスベガスの交通課題解決に貢献をしている。

来月のCESを訪れる人はぜひ活用してほしいと思う。

文/前田 謙一郎YouTube / x.com

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

テスラ、ポルシェなど外資系自動車メーカーで執行役員などを経験後、2023年Undertones Consulting株式会社を設立。自動車会社を中心に電動化やブランディングのコンサルティングを行いながら、世界の自動車業界動向、EVやAI、マーケティング等に関してメディア登壇や講演、執筆を行う。上智大学経済学部を卒業、オランダの現地企業でインターン、ベルギーで富士通とトヨタの合弁会社である富士通テンに入社。2008年に帰国後、複数の自動車会社に勤務。2016年からテスラでシニア・マーケティングマネージャー、2020年よりポルシェ・ジャパン マーケティング&CRM部 執行役員。テスラではModel 3の国内立ち上げ、ポルシェではEVタイカンの日本導入やMLB大谷翔平選手とのアンバサダー契約を結ぶなど、日本の自動車業界において電動化やマーケティングで実績を残す。

コメント

コメントする

目次