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BYDのスーパーハイブリッドSUV「SEALION 6」試乗レポート/限りなくEVに近いPHEV

BYDのスーパーハイブリッドSUV「SEALION 6」試乗レポート/限りなくEVに近いPHEV

BYDが販売を開始したスーパーハイブリッドSUV『BYD SEALION 6』のメディア向け試乗会に参加してきました。区分としてはPHEVですが、メーカーが「モーターが主役で、エンジンはサポート役」とアピールする通り、乗ってみると「ほぼEV」。新しい乗り物の台頭を感じさせてくれました。

目次

ひとりのEVオーナーとしてスーパーハイブリッドに試乗

BYD Auto Japanが静岡県御殿場市のホテルを拠点に、『BYD SEALION 6(シーライオンシックス)』のメディア向け試乗会を開催。筆者はEVsmartブログ執筆陣であるモータージャーナリストの諸星陽一さんと一緒に、運転や撮影を交代しつつ試乗してきました。

御殿場から国道138号線で箱根に登り、車両を撮影しつつ、ワインディングロードを走り、下りてきて高速道路でハイスピード走行もチェック。さらにSAPAの急速充電器で受電能力などを確かめる、という短時間ながら充実した試乗プランは、諸星さんがしっかり設定してくれました。

乗り心地や性能については専門家の諸星さんが別記事で詳しく解説してくれると思うので、筆者はEVユーザーの立場(Honda e オーナーです)から最新のPHEVに感じたことをレポートしたいと思います。

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BYDの車は、ミドルサイズSUVの『BYD ATTO3(アットスリー)』とスポーツセダンの『BYD SEAL(シール)』にそれぞれ試乗したことがあります。ATTO3は、肩の力を抜いて乗れるカジュアルな車。リラックスしてドライブを楽しめました。SEALのときは、乗り込んでインテリアの高級感や上質な乗り味に驚き、アクセルを踏んでまた驚きました。公道では怖くて全開にできないくらいの爆速ぶり(0-100km/h加速が3.8秒)。

両車まったく受けた印象が違ったのですが、今回試乗した「SEALION 6」は、SUVということもありますし、ATTO3に近く感じました。初めて乗っても、身構えたりする必要がありません。アイポイントも高くて安心感があります。走らせるために必要な操作も自然で、戸惑ったりすることはありませんでした。

最高出力はモーター+エンジンで約220kWと、内燃2Lクラスのスポーツカー並みにパワフルなのですが、セッティングがマイルドで、挙動もおだやか。車内が静かなこともあって、気がついたら速度が出ている感じです。

運転している感覚は「ほとんどBEV」

ワインディングロードでは、加減速にメリハリをつけるような走り方をするより、淡々とラインをトレースしていくようなドライビングが、この車には合っているように思います。

電気を主役にしたハイブリッド技術「DM-i(デュアル・モード・インテリジェンス)」が売りなので、モーターとエンジンがどう使い分けられているのか、そこを確かめたいと思っていました。でも、まだバッテリー残量が多かったからでしょうか、市街地の発進加速でも箱根の登り坂でもエンジンがちっとも介入してくれません。下り坂ではもちろんです。

なんというか、SEALION 6は「ほとんどBEV」なのでした。いや、まぎれもなくPHEVなんですけれど、そう言いたくなります。モーターの最大出力が145kWと200馬力近くあるのに対して、1.5Lエンジンの最大出力は72kWとほぼ半分程度。トルクもモーターが300Nmで、エンジンが122Nm。数値だけ比べても、主役と脇役がはっきりしていますね。

そして、脇役は控えて、主役を立てる。あえてエンジンの存在を目立たせないようにしています。試乗前には、エンジン音が抑えられていることを確かめるデモンストレーションもありました。ボンネットを開けて直接聞いても、うるさくは感じません。元々の音が小さい上に防音に配慮した設計で、「車内ではほとんど聞き取れないと思いますよ」と担当者。言葉通りに、運転席でも助手席でも聞こえるのはロードノイズだけ。知らずに乗ったらEVだと思うのでは。

スイッチひとつで「EV」と「HEV」を切り替え

シフトセレクターのそばにあるスイッチで「EV」と「HEV」を切り替えられます。「EV」がバッテリーとモーターだけで走行するモード。急加速などをしなければ、バッテリーが所定のSOC(充電率)を下回るまで、完全にEVとして走ることができます。

搭載する駆動用バッテリー容量は18.3kWh。満充電から100km程度のEV走行が可能(電費が6km/kWhとして約110km)です。そして電欠しないのがPHEVの利点。SOCが減ればエンジンが回って走行用バッテリーに充電してくれます。インフォテインメントパネルに「エネルギー管理」という項目があって、SOCが何%になったらエンジンを回して充電するかを調整することもできます。最大限にEV走行をするにはオフにしておけばいいのですが、それでもSOCが25%は残るように設定されています。

エネルギー管理画面。

このスイッチを「HEV」に切り替えることでエンジンを併用できるはずなのですが、一般道で私がドライブしたときは、先述したようにまったくエンジンが作動しませんでした。SOCが高かったせいか、のんびり運転が習い性になっているせいか……。

高速道路でアクセルのベタ踏みを試したら、全開になる手前でコクッという感触があって、エンジンの回転数が高まり、振動とエンジン音がしっかり車内にも響いてきました。ただ、目一杯踏んでも、SEALのフル加速で感じたような昂揚感はありません。「160km/hを超えるまでモーターだけで加速できる」そうですから、どうしても音と振動が味わいたいのでなければ、わざわざエンジンをぶん回さなくてもいいでしょう。

自動的に効率良くエンジン駆動を活用してくれる

シリーズハイブリッド走行(モーターで駆動してエンジンで充電)とシリーズパラレル走行(モーターとエンジンで駆動する)は、車が自動的に判断して使い分けています。せっかくなので、エンジンとモーターの両方で駆動しているパラレル状態を作ろうとしましたが、これが難しい。

かなり加速しているつもりでも、エネルギー管理の画面には、モーターからの出力を示す青い線しか表示されません。「モーターだけで160km/h」なので、日本の高速道路ぐらいの速度域ではエンジンの助力は必要ないのでしょう。

諸星さんがあれこれ試してくれて、強いパワーをかけた時ではなく、パーシャルに近い巡航状態にしたほうが、エンジン+モーターのダブル駆動になりやすいことがわかりました。両方使ったほうがエネルギー効率が良くなると判断した時にエンジンが始動するようです。エンジンが担っているのは、パワー増強ではなくてレンジエクステンダー的な役割だというのが、はっきりしていますね。

こういうセッティングだと、EVの快適さが最大限に生かされます。つまり静粛性とトルクフルな走りが楽しめて、自宅充電ができる環境ならリーズナブル。1日100kmも走らない人が多いでしょうから、ガソリンは全然減らないかも。加えて、長距離の移動ではエンジンがあることが心の支えになります。EVシフトに対して不安を拭えない人の背中を押してくれるかもしれません。

目的地充電など普通充電の活用がオススメ

足柄サービスエリアで急速充電も試してみました。

ちなみに、公表されている急速充電の受電性能は最大18kW。試乗の際に足柄SAの90kW器で試した結果もその通りでした。経路充電で時間制の急速充電を利用すると少々お高くついてしまいます。エンジンで自己充電もできますし、目的地などで最大6kWが可能な普通充電を活用するのが賢い運用法でしょう。

確認できた出力は約18kW。

試乗から出発地のホテルに戻って、BYD Auto Japan株式会社の東福寺厚樹社長に質問する機会を得たので、「BEVだけ」という日本進出当初の方針を変更してPHEVを導入した経緯や構想について聞いてみました。

「選択肢を増やして、少しでも多くのお客さまに使っていただくことが事業を考える上でも大切ですし、裾野を広げることが、BYDが掲げている『地球の温度を1℃下げる』という企業理念の達成につながると思っています」とのこと。

SEALION 6はヨーロッパでもアジアでも販売されて、右ハンドル仕様もあるし、ラインアップ拡大にもつながるということで選ばれたそうです。

「ほぼEV」と感じられるぐらいエンジンの存在感を薄めながら、航続距離への不安を持たなくてすむSEALION 6は、いまの日本の電動車市場にぴったりの車なのかもしれません。でも、EVの快適さにハマったら、こまめに充電してずっとEV走行を試みる人も出るかも。もし買ったら私もそうしちゃいそうです。

取材・文/篠原 知存

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この記事を書いた人

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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