「ジャパンEVオブザイヤー 2025」の候補車種でもあるアルファロメオ初の電気自動車「ジュニア エレットリカ」に試乗してきました。片道150km程度の往復を試すため、東京から静岡県の三保松原へ。大好きな「アルファロメオ」の名にふさわしい、美しくて気持ちいいコンパクトSUVでした。
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軽快な走りが気持ちいいコンパクトSUV

個人的に、アルファロメオは大好きなブランドです。左ハンドルの「155ツインスパーク」に10年ほど乗り、中古リーフを購入してEVに乗り替える前は8年ほどツインスパークの「GT」に乗っていました。「欲しくて買えるEVがない」と苦悶しながら「ああ、アルファがEV出してくれないかな」と待望していたのですが、2025年6月、アルファロメオとして初の電気自動車(EV)となる「Junior Elettrica(ジュニア エレットリカ)」が日本発売されることが発表されました。
2024年4月、グローバルでの発表当初は「ミラノ」とされた車名にイタリア政府から「ミラノという名前はイタリア製だと誤解される可能性があって法律違反になる」として待ったがかかり、数日後には「ジュニア」に変更されたのも、なんというかアルファロメオ的なエピソード。アルファロメオは「この新型車の名前変更に対してメディアの注目を集めてくれたジャーナリスト、またこの議論によってもたらされた無料の宣伝に対して政府に感謝します」と公式発表しています。
日本発売から約半年。なかなか試乗する機会がなかったのですが、現在一般投票を募集(締め切りは2026年1月31日)している「ジャパンEVオブザイヤー 2025」のノミネート車種となり、ステランティスジャパンに取材用の広報車を打診。晴れて「アルファのEV」に試乗することができたのでした。

アルファ好きとしては、ボンネットやステアリングに輝くモノクロームのロゴマークが誇らしく(マイカーじゃないけど……)。総括的な印象としては、1970年代の「アルファスッド」から、「145」や「147」といった魅力的なコンパクトカーを世に送り出してきたアルファロメオらしい、軽快な走りが気持ちよくて、存在感が美しいコンパクトSUVでした。
補助金を活用した実質価格はハイブリッドより安い
ジュニアには、BEVの「エレットリカ」に加えて、マイルドハイブリッドの「Ibrida(イブリダ)」がラインナップされています。イブリダにはベースモデルの「Core(4,350,000円 ※価格はすべて税込)」もありますが、エレットリカは「Premium」のワントリムのみ。
Alfa Romeo Junior 主要スペック
| Junior Elettrica Premium | Junior Ibrida Premium | |
|---|---|---|
| 全長×全幅×全高 | 4,195×1,780×1,585(mm) | ← |
| ホイールベース | 2,560mm | ← |
| 車両重量 | 1,580kg | 1,330kg |
| 駆動方式 | FWD | ← |
| 最高出力 | 115kW | 100kW |
| 最大トルク | 270Nm | 230Nm |
| 駆動用バッテリー | リチウムイオン | ← |
| 総電力量 | 54.06kWh | 約0.9kWh |
| 一充電走行距離(WLTC) | 494km | - |
| 車両価格 | 5,710,000円 ※受注生産 | 4,830,000円 |
美しくボリューム感があるデザインなので乗り込む前はそんなに小さく感じなかったですが、全幅は1,780mmと扱いやすいサイズ感。いわゆるBセグメントのコンパクトSUVです。
マイルドハイブリッドのイブリダと比べると、まず車重が1,580kgとイブリダよりも250kg重くなっています。とはいえ、EVとしては軽量ということもできるし、最高出力や最大トルクはEVのエレットリカが大きく上回っていることもあり、市街地走行などのシーンでも軽快な走りを楽しめました。
装備が近い「Premium」で価格を比較すると、エレットリカはイブリダよりも88万円高くなっています。とはいえ、国のCEV補助金が89万円(2026年1月現在)なので、実質的にはハイブリッドよりEVが安い、もしくはほぼ同等で購入できることになります。試乗した車両の価格は、ツートンメタリックの外装色やドラレコなどのオプションを含めて約582万円。CEV補助金を活用すると実質493万円で、ぎりぎり400万円台で手が届く1台になっています。
実質的な航続距離は「300km程度」が目安

EVとしての性能はどうなんでしょう。エレットリカが搭載するバッテリー容量は54.06kWh。一充電走行距離のカタログスペックは494km(WLTCモード)です。実質的な航続距離が80%程度と仮定すると約395km。東京都港区のステランティスジャパンで広報車を借りた時のメーター表示は、SOCが99%で航続可能距離は400kmとなっていました。
片道150〜200km程度のドライブを試すため、目的地に設定したのは静岡県静岡市の「三保松原」。天気もよかったので、せっかくなら富士山の絶景とともに写真を撮れる海水浴場の駐車場を目指してみました。

雪を抱いた富士山頂が青空に浮かぶ景色をバックにジュニアを撮影。後ろ姿もキュッとしていてキレイです。途中、清水港の市場でランチを食べて三保松原に到着。

約177km走ってバッテリー残量のSOCは45%。航続可能距離表示は256km減って「144km」になりました。外気温が6〜8℃程度とそれなりに寒い中、エアコンは23℃のオート設定。御殿場越えの東名高速を流れに乗って走ってきたので、まあ、こんなものでしょう。
そもそも航続可能距離が400kmと表示されたとしても、400kmぎりぎりまで走ると電欠のピンチに見舞われます。実際には100km程度の余裕をもって「走れるのは300kmくらい」と想定した充電プランを考えるのがオススメです。
ともあれ、三保の松原から東京の自宅までは約170kmあるので、復路のどこかで経路充電を行う必要があります。ルート上の高速道路SAPAにある急速充電スポットはこんな感じ。
●新東名清水PA上り/最大150kW(三保の松原から約25km)
●東名富士川SA上り/最大90kW(約35km)
●新東名駿河湾沼津SA上り/最大150kW(約56km)
●東名足柄SA上り/最大90kW(約83km)
●東名鮎沢SA上り/最大50kW(約91km)
●東名海老名SA上り/最大90kW(約132km)
いやあ、こうして列記してみると高速道路の急速充電スポットがここ数年で急速に進化していることが実感できます。海老名を目指すのはあまりにもギリギリになってしまうので、約83km先にある足柄SA(上り)のスタバでブレイクすることにしました。
こんな風にレポートすると「もっとバッテリー積めば無充電で往復できるじゃん」と突っ込みたい方がいることでしょう。でも、バッテリーを増量すると車両価格が高くなり、車両重量が増えてしまいます。約54kWhというのは、軽快な走りを楽しめて、実用的な航続距離を確保できるバランスのいいバッテリー容量と感じたことを強調しておきます。往復400km近いドライブで、1回くらい休憩(充電)してもいいじゃないですかってことですね。
最大50kWの急速充電性能が、やっぱり残念

足柄SAにはSOC14%、残り航続可能距離表示42kmで到着。ここには「青いマルチ」が4口と、ABB製の2口器、合計で6口の急速充電器が設置されています。ともに充電器側の最大出力は90kW。ただし、青いマルチは200kWの電源を4口で共有していて、複数台が接続すると出力が抑制されます。すでに2台が充電中だったので、私は2口とも空いていたABBを選択しました。知らない人にはややこしいと思うけど、こうしたちょっとしたTIPSを押さえておくのも、EVを気持ちよく活用するためのポイントです。
平日だったけど、このあと青いマルチにもう1台がやってきて、6口中4口が使用中になりました。以前は1口しかなかった足柄の急速充電器、早めに複数口にして本当に良かったなぁと実感。でも、2026年以降は日本でももっとEVが増えるはずなので、20口とか50口とか、アメリカのテスラスーパーチャージャーや中国の急速充電スポットのように、さらなる増設を進めてほしいというのが、先走ったEVユーザーの願いであることも言い添えておきましょう。
さて、最大90kW器がズラリと並んだ足柄SAですが、日本仕様でCHAdeMO規格に対応したジュニア エレットリカの急速充電性能は最大50kWです。プジョーやシトロエン、ジープなど、EVシステムを共用するステランティスグループブランドのEVは、同様に最大50kWになっています。
グループブランドの先陣を切ってプジョーe208がデビューした2020年ごろであれば、最大50kWは日本で市販されるEVの一般的な性能でした。でも、最近はCHAdeMO 1.2規格に対応して最大100kW以上の急速充電性能が当たり前になってきていて、高速道路SAPAなどの充電器も90kWや150kWの高出力器が主流になってきています。

今回、90kW器30分で、SOCは14%から57%に回復。SOCからの概算で「54.06kWh×43%=約23.25kWh」を充電することができました。車両側の充電ポテンシャルをほぼフルに発揮できているとはいえ、最近の高性能EVであれば90kW器30分で40kWh程度の充電が可能であることを思えば、力不足感が否めません。
急速充電性能はEVにとって重要な車両性能のひとつ。とはいえ、ステランティスでは2027年以降のEVはNACSを採用し、テスラのスーパーチャージャーネットワークを利用できるようにすることをすでに発表(関連記事)しており、CHAdeMO規格での急速充電性能がアップデートされるのは考えづらい状況です。
日本仕様は受注生産でもあり、エレットリカは「それでもアルファロメオのEVが欲しい!」という方のために用意された、ちょっとニッチなモデルであると認識しておくのがよさそうです。
ちなみに世田谷区内の自宅には残量SOC34%で帰着。足柄SAからの約90kmは23%で走りきったことになります。
ギミックのエンジン音にアルファロメオを感じるか?

ステアリングのADAS関連ボタンを含めて操作系は使いやすかった。でも、充電中の出力などが表示されないなど、細かなUIにはさらなる改善の余地を感じました。
実際に長距離ドライブを試して印象的だったのが、アクセルを踏み込むと結構な音量でギミックのエンジン音が聞こえることでした(後で確認すると設定で音を消すこともできるとのこと)。私はエンジン音が大好きでアルファロメオを乗り継ぎました。でも、アルファロメオのEVで聞こえるギミックのエンジン音に「官能」を感じるかと問われれば、否定するしかありません。
たとえば、ポルシェのタイカンが奏でるギミック音は、モーターやコントローラーが発するEVとしてのシステム音を増幅していると聞いたことがあります。エンジン車で多くの伝説を築いたアルファロメオですが、EVにはEVの、新しい「アルファロメオらしさ」を創造することが必要になるのだろうと感じたのでした。
2027年のNACS導入に向けて、EVならではの魅力をどのように工夫して何が創造できるのかという点は、アルファロメオ、そしてステランティスがEVシフトの時代を生き残るための重要な課題になりそうな気がします。
もう一点。今回試乗した広報車のフロントグリルには、「プログレッソ」と呼ばれる紋章がデザインされていました。でも、今後生産される車両は、イブリダに採用されている「Alfa Romeo」のロゴをデザインした「レジェンダ」が採用される(つまり、今から注文するとこっちになる)ということです。

試乗車のグリルはProgresso(プログレッソ)。

今後はこのLeggenda(レジェンダ)に変更される。
取材・文/寄本 好則






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