2026年1月21日〜23日の3日間、東京ビッグサイトでクルマの先端技術分野では世界最大とする「第18回オートモーティブワールド」が開催されました。3日間合計の入場者数は7万8673人というビッグイベントで注目したEV関連の展示を紹介します。
軽バンベースの電欠救援車「Q電丸Ⅲ」

EV関連機器の展示ということでまず紹介したいのが電欠救援車です。どの展示会にいっても一定の注目を浴びているのが電欠救援関連のプロダクトやサービスです。市販EVが搭載するバッテリー容量の増加や急速充電性能(充電器を含めて)の向上とともに電欠トラブルのリスクは減っているように感じる一方、充電ポイントの突然の廃止や故障、更新工事による使用停止などで計画していた充電ができず、途方にくれるということもあるでしょう。
今回出展されていたモビリティプラス社の電欠救援車「Q電丸Ⅲ」は軽バンがベース車両となっているのが特徴。今までも電欠救援車は存在していましたが、小型トラックなどをベースとしたものが多く、狭い道での電欠には対応しきれない懸念がありました。軽バンは最大積載量が350kgなので、「Q電丸Ⅲ」の給電用蓄電池や充電用装備の重量はその範囲内ということですね。リヤハッチを開けると、懐かしのアップル社Power Mac G5を思わせるようなパンチングパネルで作られた筐体に目が奪われます。

この筐体のなかに充電に必要な機器がすべて収められています。バッテリーは東芝製のSCiBリチウムイオンを使っています。バッテリー容量は30kWh、最大出力は28kWで、蓄電容量や充電速度はさほど早くないものの、この「Q電丸Ⅲ」は「狭い道などでの機動力の高さを重視したモデルなのでこれで十分」ということでした。
ニチコンの新型160kW急速充電器

急速充電器大手のニチコンのブースには新型となる最大出力約160kWの「NQD-UCX64シリーズ」が展示されていました。2口出力タイプのCHAdeMO急速充電器。1口での最大出力は157kW、2口使用時は80kWずつとなります。コンパクトに設計されていて接地面積は0.4㎡とニチコン調べでは150kW級の急速充電器で最小クラスとなり、駐車スペースが狭い場所でも設置の可能性を高めています。
従来型の「NQD-UCX04シリーズ」は1口最大90kW、2口同時充電時は「50kW×2口」で最大100kWの出力だったので、大幅にパワーアップしました(関連記事)。もちろん令和8年度NeV補助金対象充電設備登録の予定です。
標準モデルは時間課金対応ですが、オプションで従量課金対応が可能となっているところにも要注目。最近はEVユーザーの急速充電に対する考え方も変わってきていて、急速充電で30分たっぷり充電するというよりは、急速充電は次の目的地までの電力を入れられればそれでいいという考えも広がっています。急速充電器の出力とEV側の受電性能がともに向上してきたのもこの傾向に拍車をかけています。
バッテリーの寿命を延ばすパルスバッテリーメンテナンス機器

リチウムイオンバッテリーは内部にある負極(マイナス)材の劣化が電池の寿命を縮める大きな原因のひとつとなっています。さらに深掘りすると負極材の劣化は、SEI膜(固体電解質界面膜)の肥厚化や、デンドライト(樹枝状結晶)形成に伴うリチウム金属析出があるとのこと。そこに目をつけリチウムイオン電池の劣化防止を可能とした充電方式を採用したのがパルスメンテナンスという方式。パルスバッテリーメンテナンス機器「MBMI-AC-01(仮称)」は、そのための専用機器となります。
一般的な定電流充電は電池内へのエネルギー補給には有効なのですが、劣化制御には限界があります。パルスメンテナンス方式はその名のとおりパルス状の電気で充電することでSEI膜と呼ばれる部分の膜肥厚化とデンドライトの発生を抑えられるとのこと。
ただし、鉛バッテリーではパルス充電を行うことでサルフェーションを除去してバッテリー性能の復活が見込まれますが、リチウムイオンの場合はバッテリー性能を復活させることはできず、寿命を延ばすことしかできないとのことで、その点は注意が必要です。
こちらの機器をお披露目していた三洋貿易の資料によれば、バッテリーの寿命を2倍以上にするというデータがあり、1台のEVを長く乗りたい人には興味が膨らむところでしょう。スペックは100V/200V入力で、出力電流は6〜15A、最大出力は3.5kWとなっています。
ちなみに、以前訪れた別イベントのレポートで、三洋貿易が展示していた「SOH計測器」を紹介したことがあります。
商用車からジワジワと広がるアジアンEV「ZOモーターズ」
今回のオートモーティブワールドに限らず、自動車やDX関連の展示会に出向くと中国勢、台湾勢、韓国勢の勢いが増していることを感じます。一昔前は展示場のほんの一角というイメージでしたが、今は一大勢力となっている印象です。
こうしたアジア各国の企業は、日本のEV界に話題を振りまいているBYDもそうでしたが、まずは商用車から導入を始め様子を見つつ乗用車を投入するケースが増えています。商用車はデザインや乗り心地にも増して、車両価格やエネルギー効率、メンテナンス費用などが大切なので、クルマの本質が問われるジャンルです。

今回、ショー会場で見かけた「ZOモーターズ」のEVトラックには、ちょっと「ピン」とくるイメージがありました。使っているバッテリーが安全性の高いLFP(リン酸鉄)で、容量は81.14kWhで航続距離は180kmと表示されていました。バッテリー容量については、そのトラックがどのように使われるかによって必要な量が決まるので、この容量にあった使われ方をするユーザーに適していると考えればいいでしょう。
急速充電性能は最大80kW対応で、20→80%が約40分とのこと。昼休みに充電ができれば効率のいい運用が可能でしょう。ただし、まだ急速充電がCHAdeMO規格に対応しておらずCCS2であったのは残念なところ。次のモデルはCHAdeMOに対応するということでした。
先日、三菱ふそうと鴻海が新バスメーカーを設立したニュース(関連記事)もありました。トラックやバスなど商用車のEVシフトは、アジアンメーカーの力を注入しながら進展していくのかも知れません。
テスラなどのシステムをハックする「PWN2OWN AUTOMOTIVE」

今やクルマはつながって当たり前。SDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)はインターネットを介してさまざまなネットワークとつながりを持っています。ネットワークとつながっているということは、システムに侵入されてハッキングされる恐れもあるということになります。
「PWN2OWN AUTOMOTIVE」は、ウイルスバスターなどでおなじみのトレンドマイクロ社が主催するクルマのソフトウエア脆弱性を特定、修正することに焦点を当てた世界で唯一のイベントです。テスラなどEVの車載システムやEV充電器用のシステムなどに潜む脆弱性をチェックして修正する競技となっていて、参加者はコンピューターやソフトウエアに関して膨大な知識を有しているいわゆるホワイトハッカーたち。今回の会場である東京ビッグサイトに世界的ホワイトハッカーが集結しました。
競技のルールは与えられた30分の間に3回のトライができる方式。1回のトライは10分以内の制限があり、その10分間の間に問題を解決しなければいけません。今回筆者が観戦した回では3組の挑戦者が登壇、スタートした瞬間に1組がクリア、もう1組もあっという間にクリアしましたが、最後の1組だけがクリアできませんでした。
オートモーティブワールド開催中の3日間で計76件の脆弱性が開示され、参加者には総額1,047,000ドル(約1億6200万円)の賞金を授与。優勝チームのFuzzware.ioチームは、215,000ドル(約3300万円)を獲得し、「Master of Pwn」の称号に輝きました。

多額の賞金が授与されるのは、クルマや急速充電器などの脆弱性を改善する重要性が改めて浮き彫りになるからです。社内だけでは解決しきれない問題にゲーム性を持たせ、ハッキングの知識や技術を正しい方向に向かわせる試みは非常に魅力あふれるものでした。
取材・文/諸星 陽一






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