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スズキの電気自動車「eビターラ」公道試乗レポート/EVだけどコスパが高い「普通にいいクルマ」

スズキの電気自動車「eビターラ」公道試乗レポート/EVだけどコスパが高い「普通にいいクルマ」

スズキ初となる量産EV「eビターラ」の公道試乗会が開催されました。すでにプロトタイプによるサーキット試乗はレポートしましたが、今回はあらためて一般道での試乗フィールをお届けします。

目次

4WDモデルの走りは「どっしり」とした印象

Z 4WD(冒頭写真は Z FWD)

今回はEVsmartから複数の取材者を送り込んで試乗枠を確保して、4WDモデルとFWDモデルを乗り比べることができました。両モデルを比較しながらインプレッションをまとめます。

駆動方式に関わらず、走り出してまず感じるのは、「ものすごく普通だ」ということです。ここで言う「普通」は、EVとして平均的という意味ではなく、クルマとしての振る舞いが自然で違和感が少ないということです。ICE車のユーザーが乗っても、大きな違和感を感じることはないでしょう。

もちろん静粛性の高さなど、さまざまな面でEVらしさはありますが、アクセルを踏んだときの加速感などがEVらしさを過度に強調する味付けにはなっておらず、総じて「普通感」がとても強調されている印象です。

「普通」という印象は4WDモデルもFWDモデルも共通しています。ただし、ドライビングフィールは大きく異なります。4WDモデルの走りをひと言で表すなら「どっしり」です。4WDモデルの車両重量は1890kgであり(FWDは1790kg)、重量物であるバッテリーを床下に搭載して重心が低いことが、このどっしり感の要因になっているのは明らかです。

前後駆動力配分は、安定した定常走行時が54:46、加速時は50:50、滑りやすい路面などでは70:30と、状況によってフロント寄りに振られる制御になっています。ICEの4WDモデルでは、基本は前輪駆動で後輪は補助的に駆動力がかかる、といった配分も少なくありませんが、定常走行時に後輪へ46%も駆動力が配分されるため、後ろから押されている感覚をしっかり得られます。

また4WDモデルには「トレイルモード」と呼ばれる走行モードが用意されています。一般的に言えば、ブレーキLSD的な制御を活用できるモードです。今回の試乗ではトレイルモードを使えるようなシチュエーションはありませんでしたが、ちょっとしたオフロードを走る場面では役立つ機能でしょう。

軽快に駆け抜けるFWDモデル

全モデルにAC100Vのコンセントを装備。

一方のFWDモデルは、「軽快」というキーワードがぴったりのドライビングフィールです。FWDモデルは車両重量が約100kg軽いのですが、体感としてはそれ以上に軽く感じられます。車重そのものに加え、操舵に対する反応や身のこなしが軽く、ひらりひらりと走れる味付けです。後輪側にモーターを持たず、前後重量配分がフロント寄りになっていることも、この印象に関係しているのかもしれません。

コーナリングの安定感は、やはり後輪も駆動する4WDモデルのほうが、姿勢が乱れにくく、挙動がすっきりと安定しています。FWDモデルは前輪のみで駆動するため、前輪の担当領域(駆動・操舵)が増えます。ステアリングを切って曲がる場面では、4WDモデルは前輪の負担が相対的に小さくなるぶん、コーナリングに必要なグリップを引き出しやすい印象です。対してFWDモデルは、同じ条件ではわずかに応答が遅れるように感じる場面があります。ただし、普通に乗っている範囲では気にならない程度の差です。

エコモードでも力不足は感じないレスポンス

eビターラには、ノーマル/エコ/スポーツの3つのドライブモードがあります。いずれのモードもアクセルペダルを床まで踏み込めば最大加速を発生する設定ですが、各モードは過渡特性(踏み始めからの立ち上がり方)が異なります。ノーマルは直線的な加速感、スポーツは途中が持ち上がるような加速の盛り上がり、エコはアクセル開度に対して加速度を抑えつつ、エアコン制御も含めて電費を稼ぐ方向の設定です。

実際に走らせても、基本的にはこの設定どおりの違いが体感できますが、差は極端に大きいわけではありません。ノーマルとエコ、ノーマルとスポーツの差は比較的小さく、スポーツとエコを切り替えると違いが分かりやすい、といった印象です。とくにエコは、一部のクルマで見られるような「加速を大きく削って我慢を強いる」タイプではなく、必要な加速はきちんと確保されるチューニングになっていました。

回生ブレーキの調整はモニターで操作

回生ブレーキの強さは設定画面で選択する。

さらにFWDモデルにはスノーモードも用意されています。また、4WDモデル/FWDモデルともに、いわゆるワンペダル相当の「イージードライブペダル」が用意されます。イージードライブペダルは、3段階に調整できる回生量を最大に設定したときに使えますが、回生量の調整はパドルスイッチではなくモニター操作で行う必要があります。

この回生量の切り替えは走行中にも適用されます。つまり、走行状況に合わせて回生量をこまめに調整し、効率よく回生させる運用はやりにくい、ということです。やはり回生調整はパドルスイッチ式が最も扱いやすく、今後はより広く採用されてほしいところです。

快適性は十分なレベルにあります。路面の継ぎ目では「タンッ」としたタイヤの共鳴音が気になる場面があるものの、それ以外は概ね満足できる内容です。音や振動の面ではよく抑え込まれていますが、より基本的な部分として、床下にバッテリーを搭載する都合でフロアが高くなり、着座姿勢がやや膝を立て気味になりやすい点は気になりました。

運転席は足を前に伸ばせるため違和感は少ない一方、助手席や後席ではフロアが高い影響を受けやすい印象です。これは、バッテリーを床下に積むEVではパッケージング上、ある意味で宿命的な課題でもあります。全高を上げてシート座面も上げれば解決できますが、全高が上がれば重心も高くなり、スタイルも変わってしまいます。

バッテリーのエネルギー密度が向上し、より薄く小さなパックが成立すれば、こうした問題も改善しやすくなるでしょう。あらためて、EVの多くの要点を握るのはバッテリーだと再確認させられました。

電費や急速充電性能は改めて要確認

助手席から手をのばして撮影したので画角がちょっと変なのはご容赦ください。

さて、気になる電費です。試乗時にメーター内に表示される電費は4~5km/kWh程度で、決して良い数字ではありませんでした。ただし、冬で気温が低めであり、エアコンも作動させている状況を考えると、ぎりぎり妥当なラインとも言えます。

今回、試乗にあたり急速充電も試す予定でしたが、試乗時間が残り30分に対して、スマホで検索すると近くの高出力急速充電器まで片道15分という案内が出たため断念。試乗距離を欲張って、時間配分を誤りました。

eビターラの急速充電性能は非公表ですが、おおむね「90kW相当」とのこと。発表会で確認した際には「49kWhモデルが55kW程度、61kWhモデルは68kW程度」という情報もありました。バッテリーはリン酸鉄リチウムイオン(LFP)です。電費、急速充電性能はEVsmartブログで改めて検証することになりました(後日レポート予定)。

49kWhモデルは実質200万円台で手が届く!

価格(すべて税込)は、試乗した「Z 4WD」が492万8000円〜です。国の補助金は49kWhモデルの「X」を含めて127万円(2026年2月現在)で、実質価格は約366万円となります。「Z 2WD」は448万8000円〜で、実質価格は約322万円。「X」が399万3000円〜なので、実質価格は約272万円と300万円以下で手が届く1台となりました。

東京都の場合はさらに45万円程度(太陽光発電導入などで加算あり)のZEV補助金が活用できます。購入を検討する際は、お住まいの自治体独自の補助金も要チェックです。

取材・文/諸星 陽一

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この記事を書いた人

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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