EVの販売台数が急増しているタイで開催された「第47回バンコク国際モーターショー」。シリーズでお届けするレポートの第2弾は、日本でもおなじみの「BYD」をクローズアップ。期間中の販売台数では、2位のトヨタに1600台以上の差を付けて首位となりました。
プレスデー初日のカンファレンス大トリはBYD
2026年3月末、タイのバンコク近郊ノンタブリー県ムアントンターニーにあるインパクトチャレンジャーホールにて開催された「Bangkok International Motor Show(バンコク国際モーターショー:BIMS47)」を取材しました。
BIMSは年々出展企業が増大。以前は1日で終了していたプレスデーが2日間にわたって開催されるようになっています。さらにプレスデー初日は午前8時30分にカンファレンスが始まり、途中休憩は挟みますが、終了するのは午後9時過ぎという過密スケジュールです。
今回、プレスデー初日のトリを務めたのがBYDでした。BYDがトリとなっているのは例年のことで、このスケジュールには意味があります。バンコクショーはプレスデーと言っても、VIP客などは入場できます。夜遅めの時間になれば、販売店の関係者やユーザーも来場しやすく、カンファレンスが盛り上がるというわけです。

劉学亮氏。
プレスカンファレンス開始前、プレゼンテーションを担当するアジア太平洋自動車販売事業部ゼネラルマネージャーでありBYDジャパンの社長でもある劉学亮氏に、「現在の中東情勢による原油高はEV販売にどう影響するか?」について、多忙な時間の合間を縫って少しだけお話を聞くことができました。
石油危機は電気自動車への追い風
「電気自動車はガソリン使いませんから追い風ですよね。(電気自動車を選ぶことは)自動車業界だけではなく、この石油危機を乗り越えていく一つの行動そのものなんですよ。今我々は何ができる? できるのはガソリンを使わないこと。ただ、日々の交通ツールとして自動車はどうしても欠かせない。だからこそ、やっぱり電気自動車がいいということになると思います」(劉氏)
カンファレンスに登壇した劉氏は「今年でBYDは4回目の出展となります。2025年、BYDはグローバルで約460万台の販売台数を記録し、新エネルギー車(NEV)の世界シェア首位を堅持しました。タイ市場においても、2025年のEV販売シェアで再びトップに輝いています。現在、11万6000台のBYD車がタイの街を走っています。この場をお借りして、タイの11万6000人のBYDオーナーの皆様に感謝申し上げます。ありがとうございます」とスピーチを始めました。
また、BYDは輸入販売だけでなく、現地生産と技術提供を強化していくことや、車種展開もエントリーモデルから高級車までラインアップを全方位に広げること。さらには第二世代のブレードバッテリーを導入し安全性と航続性能を高めることも明示されました。現地生産についてはタイ国内向けだけでなく、右ハンドル地域となる周辺国への輸出も行うことが述べられました。
超急速充電をタイにも導入
BYDは超急速充電の開発に積極的ですが、タイにおいてその技術を導入することを発表。超急速充電器は10分で80~120kmの走行が可能で、バンコクの平均走行距離が60~80kmであることを考えれば、十分な数値としています。
また、タイでは都市部を中心に高級車志向が高まっていることから、BYDブランドだけではなくグループのデンツァブランドの展開を開始、デンツァD9のタイ導入を正式に発表しました。
発表された4車種に注目
さて、今回のBIMS47で発表されたATTO 1、ATTO 2、SEAL 6、SEAL 5 DM-iの4車種の話題に移りましょう。

ATTO 1
ATTO 1(SEAGULL=シーガル)は2025年にはインドネシアにも導入されたコンパクトなEVで、日本に導入予定の軽自動車「ラッコ」はこのATTO 1と同様にe-Platform 3.0プラットフォームをベースに開発されています。ATTO 1は38.88kWhのバッテリーを搭載、航続距離は380km (NEDC:新欧州走行サイクル)です。全長は4mを切りますが全幅は1715mm程度で日本では3ナンバーの扱いになるサイズ感。価格は42万9900 ~ 45万9900 バーツ(約210万円~約225万円)です。

ATTO 2
ATTO 2(Yuan Up)はそのナンバリングのとおり、日本にも導入されているATTO 3とATTO 1の中間に位置するモデルで、2026年中に日本への導入が予定されているモデルです。ボディサイズは全長×全幅×全高が4310×1830×1675(mm)で、グローバルでは32.0~64.8kWhの容量を持つバッテリーを数種設定。モーター出力は70~150kWが同様に数種組み合わされています。価格は62万9900~65万9900バーツ(約309万~323万円)です。

SEAL 6
SEAL 6は日本に導入されているモデル(SEAL)とボディサイズは同一で、全長×全幅×全高は4800×1875×1460(mm)、ホイールベースが2920(mm)となります。搭載されるバッテリーは日本仕様同様に82.56kWhと、少し低めの61.44kWhの2タイプを用意。モーターは61.44kWhが150kW、82.56kWhのRWDが230kW、82.56kWhの4WDが390kWとなっています。
SEAL 6は日本仕様が中国生産であるのに対し、タイ仕様はタイ国内で生産されています。タイ国内で生産することで優遇が受けられ、価格は859,900 ~ 899,900バーツ(約420万~約440万円)とされました。なおSEAL 6の価格はバンコクインターナショナルモーターショーでの特別価格で、通常よりも4万~10万バーツ(約20万円~50万円)安くなっています。

SEAL 5 DM-i
SEAL 5 DM-iは全長×全幅×全高が4775×1890×1670(mm)、ホイールベースが2765mmのDセグメントSUVです。パワートレインはPHEVで、出力78kWの1.5リットルエンジンと145kWのモーターを組み合わせています。パワートレインの組み合わせは日本に導入されているSEALION 6 DM-iとほぼ同一です。価格は599,900 ~ 659,900バーツ(約293万~323万円)です。
上記BYD4車の撮影をしていて感じたのはどの車種も荷物スペースがしっかり確保されていること。最近の国産車はデザイン優先で荷物スペースに不満を感じることが多いのですが、今回のBYD各車はじつに荷物スペースがしっかりと確保されてました。クルマは乗れてこそ、積めてこそ使い勝手が上がるプロダクトなので、日本車も原点に戻り見習う点があると感じました。
ショー会場での販売台数でBYDが首位を獲得

BIMSは実際に来場客がクルマを買うことができるショーです。期間中に契約することで、値引きや低金利ローンの適用、保証内容のアップなどさまざまな特典が設定されているので、各メーカー、インポーターはタイ国内からセールススタッフを集め、販売に注力します。
既存モデルにもキャンペーンが適用されて、ATTO 3のMY2024が8万~13万バーツ(約39万円から約66万円)減、DOLPHINが5万~8万バーツ(約24万円~約39万円)減と大幅な値下げとなっていました。とくに目を見張るのが新投入の高級ミニバン、デンツァD9でその割引額は20万5000バーツ(約100万円)で、215万4900バーツ(約1050万円)のプレミアムグレードが194万9900バーツ(約950万円)となっていました。
BIMS47は今月5日に閉幕。BYDはショー期間中に1万7354台の契約を成立させ、見事契約台数1位となりました。2位はトヨタで1604台差の15750台。BYDの車種でもっとも台数が多かったのは3565台でATTO 3、ついでDOLPHINの3250台、3位がSEALION 6 DM-iの2406台でした。
取材・文/諸星 陽一






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