東京モーターサイクルショー2026でEVバイクをチェックしてきました。目玉はホンダ初の電動モーターサイクル「Honda WN7」。充電性能はロングツーリングも十分に楽しめるレベル。乗りたいという声が多ければ日本発売の可能性が高まるとのこと。欧州に続き日本でも発売されれば、EVバイク界のゲームチェンジャーになるかもしれません。期待の声を挙げましょう!
電動モーターサイクル「WN7」に初対面

3月27~29日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された東京モーターサイクルショー2026。各メーカーの新型車やコンセプトモデルが並ぶなか、電動バイカーの筆者がまず目指したのはホンダブースです。
「Honda WN7(ダブリュー・エヌ・セブン)」の実車が、大阪での日本初公開に続いて、東京でも展示されていたからです(4月10~12日の名古屋モーターサイクルショーにも出展)。
WN7は、昨年の「EICMA 2025」(イタリアで開催される世界最大規模のバイクショー)で世界初公開された市販モデルです。コンセプト車「EV Fun Concept」のスタイルをほぼそのままに量産化。欧州では受注が始まっています。国内でも、警視庁が採用した白バイ仕様(冒頭写真 ※はたらくバイクのコーナーに展示されていました)のWN7が箱根駅伝や東京マラソンで先導を務めて、EV界隈では話題になりました。

ホンダが掲げる開発コンセプトは「Be the Wind(風になる)」。静粛性が高くトルクフルな電動バイクの特性を活かし、周囲の音まで五感で楽しめるライディングを目指しているそうです。
欧州仕様モデルの最高出力は50kW(約68馬力)で最大トルクは100Nm。内燃車で言うと、出力は排気量600㏄、トルクは1000ccクラスと肩を並べます。EVなのでクラッチワークやシフトは不要。どんな速度域でも右手をひねるだけで、パワーとトルクを瞬時に得られます。スポーティな走行が楽しめそうです。

外観の特徴は、車体中央に収まった固定式リチウムイオンバッテリーです。このケースと後方のパワーユニットを骨格の一部とする「フレームレスシャシー」を採用。実車を見ると、非常にスリムでコンパクトな印象を受けます。
とはいえ車両重量は217kgとそれなりの重さ。どんな乗り味になっているのか、ぜひ試してみたいものです。何度もテストしたというスタッフによると「かなりスポーティーなバイクに仕上がっている」とのこと。
急速充電や6kW普通充電に対応

バッテリー容量は9.3kWhで、一充電航続距離は140km(WMTCモード)。急速充電(20%→80%)は30分、普通充電(0%→100%)は約2.5時間で完了します。筆者はカタログデータから受電能力は急速20kW、普通4kW程度と試算していましたが、説明スタッフは「普通充電は最大6kWに対応しています」と明言していました。
これには拍手です。日本では6kW普通充電が可能な公共充電網が全国的に整備されています。食事や休憩、観光などのあいだに WN7 を充電器につないでおけば、1時間でざっと90km分走行できる電力を得られる計算です。
オートバイで何百kmも延々と走り続けるのは、よほどの体力自慢でないと無理。バイクの充電中にライダーの気力・体力もチャージする、と考えれば、大出力の急速充電にこだわらなくてもOK。立ち寄る先々で6kWの普通充電を重ねることで、快適なツーリングが楽しめるでしょう。
筆者の「LiveWire One」は受電能力が1.4kWで、1時間充電して20数km分しか回復しません。これだとさすがに走行時間に対して充電時間が長すぎる状態です。でも、WN7の6kWなら必要十分。不自由のない「充電旅」が現実味を帯びてきます。
回生ブレーキを使いこなせる機能を搭載
走行に関する注目機能は、回生ブレーキの強さ(減速度)をスイッチ操作で変えられる「減速度セレクター」です。強めるとスロットルオフだけで停止直前まで減速できて(完全停止はしない)、弱めるとコースティング(空走)に近い「滑空するようなフィーリングで走行できる」とのこと。
4輪EVのパドルシフトと同様に、電費向上やEVを操る楽しさに直結する機能です。また、このセレクターのボタンを長押しすると微速モードに入り、ゆっくり前進・後退ができるそうです。取り回しが楽になりますね。
要望の声が多ければ日本でも発売
「こういうEVバイクを待っていた!」 というのが初見の感想でした。ただ残念なことに、国内発売は未定。担当スタッフは「乗りたいというお声をたくさんいただければ、日本でも発売したいと思っています」と話していました。もちろん「ぜひ!」と一票を投じておきました。
スポーツタイプの電動バイクは国内発売モデルが少なく、まだまだ黎明期。でも、WN7 がラインアップされれば、「電動バイクもありだよね」と思う人は増えるはずです。
電動スクーター「ICON e:」にも注目

ホンダブースにはもう一台、ニューフェースが展示されていました。原付一種相当の電動スクーター「ICON e:(アイコンイー)」です。先行の電動スクーター「EM1 e:(イーエムワンイー)」をベースにしていて、見た目はよく似ていますが、充電機能を中心に大きなアップデートが施されています。
EM1 e:が多車種共通の交換式バッテリー「Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパックイー)」を採用しているのに対して、ICON e:は専用バッテリーパックを使っています。新しいバッテリー容量は1468.8Wh。家庭用の100Vコンセントで充電可能です。

モバイルパワーパック(1311.7Wh)と比べると約12%容量がアップ。一充電走行距離(30km/h定地走行テスト値)はEM1 e: の53kmから81kmに伸びています。パワーユニットが共通なのに、容量の増加率に比べて走行距離の伸び方が大きいのは「セッティングの違い」だそうです。最高出力は抑えて、最大トルクを増やしています。
バッテリーの搭載位置もシート下からフロア部分に移動。このため、シート下のスペースにヘルメットなどを収納できるようになりました。
さらに驚くべきは価格です。バッテリー込みで22万円と、EM1 e:より約10万円も安くて、新基準原付(110ccクラス)よりリーズナブルです。受注開始直後ですが、出足は好調とのこと。
会場でのピカイチはやっぱりホンダのEVバイクでした

ヤマハ「JOG E」
もしも、モバイルパワーパックのシェアリングサービス「Gachaco(ガチャコ)」の交換ステーションが身近にあるなら、EM1 e:も悪くない選択肢です。ヤマハのブースには同じモバイルパワーパックを使う兄弟車「JOG E」が展示されていました。東京と大阪で先行販売が始まっていて、バッテリーレスで15万9500円。ガチャコを使う前提なら、初期投資が抑えられます。

BMW「CE02」
他メーカーでは、スズキが「e-Address」と折りたたみ式の「e-PO」を紹介。BMWは「CE02」を、カワサキはハイブリッドモデル「Ninja 7 Hybrid」を展示していました。とはいえ、市販中だったり、過去のショーで紹介済みだったりで、EVバイカーとしてはやや刺激不足でした。

カワサキ「Ninja 7 Hybrid」
そんななか、今回のショーでピカイチの存在感を放っていたホンダ。ロングツーリングを現実的にした WN7 の充電性能は、今後のEVスポーツバイクの基準になるでしょう。また、「EVは高価」というイメージを打ち消す ICON e: の戦略的プライスも要注目。2輪部門では先駆者としてEVシフトを牽引してほしいと思います。
取材・文/篠原 知存






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