「よく作ったなぁ、こんなの」という呟きが全て
個人でテスラ情報を発信していた「テスカス」こと畑本さんが、2022年からEVsmartチームに加入。動画情報の発信を担当し、YouTubeのEVsmartチャンネルでコンスタントに興味深い動画をアップ。EVsmartブログでも適宜動画とリンクした記事を紹介しています。
今回、要注目の最新動画が公開されたので、編集部としてポイントを解説しておきたいと思います。動画は、こちら。
日産アリアで関東から九州までドライブ!意外な魅力が分かりました!
4月13日に納車された、EVsmartチーム(アユダンテ)社有車の日産アリア B6 limited で神奈川県から九州の熊本県まで、片道約1200kmを一気に走りきる往復の超ロングドライブ。はたして、テスカスさんはアリアのどんな魅力が「分かった」のでしょうか。
まず最初のポイントが、アリアに搭載された「プロパイロット 2.0」の実力です。1カ月ほど前にも、テスカスさんは首都高でアリアのプロパイロットとテスラモデル3のオートパイロットを比較する検証動画を公開しています。狭くて制限速度が低くジャンクションなどが多い首都高速では、プロパイロット 2.0の真骨頂である「手放し運転」が可能な時間も短くて、自動運転機能の底力としてはテスラのオートパイロットに軍配が上がる印象だったのですが……。
今回の動画では、東名高速の大井松田ICを過ぎて足柄SAに向かう途中、左右ルートに分岐して急カーブが連続する上り坂や、新東名の120km/h制限区間などでプロパイロット 2.0を使用。R300のコーナーでも安心して手放しのまま運転を任せられる「実力」を実感しています。さらに、プロパイロット 2.0では準天頂衛星「みちびき」の測位情報も利用しているので「トンネルに入ったら使えない」と思っていたら、短いトンネルやトンネルに入って数百メートル程度は手放しのまま運転できることに感嘆。
4分過ぎ、R300のコーナーをプロパイロット 2.0で走りながら「よく作ったなぁ、こんなの」という、モデル3オーナーでもあるテスカスさんの呟きこそが、プロパイロット 2.0がアリアの大きな魅力となっていることを示しています。
ただし、EVsmartチームのアリアはフル装備の限定モデル「limited」なのでプロパイロット2.0が標準装備されていますが、通常モデルのB6などでは約52万円〜のオプション設定となっています。
90kW器での急速充電性能も申し分なし
次にテスカスさんが確認するのが、最大90kW出力の急速充電器による充電性能です。最初の充電は、スタート地点となった海老名SA(下り)から約220km先の長篠設楽原PA(下り)です。SOC45%から最初はしっかり200A、充電器の最大出力で充電されました。30分で91%まで、充電器の表示で29.0kWh充電できました。
次の充電スポットは、長篠設楽原PAから約171km先の名神草津PA(下り)です。SOCは50%から充電スタート。ここでも最初はしっかり最大出力の200Aが出て、93%まで、28.1kWh充電することができています。
もっとも、200Aの最大出力は長時間続くのではなく、時間経過とともに出力はなだからに落ちていきます。各急速充電器での出力推移を、テスカスさんがグラフにしてくれていたので紹介しておきます。
おおむね200kmごとに30分、休憩がてらの急速充電で、バッテリー残量40〜50%から、90%以上にまで回復するという結果なので、EVの充電性能としてまったく問題ありません。
アリアの「46kW問題」について日産の正式な回答は
実は、アリアの急速充電性能について、ある条件下で最大46kW出力に制限されてしまうのではないかとする「46kW問題」がネット上などで話題になっていました。この問題のきっかけになったのが、EVsmartブログでも『新電元150kW器で最新EV3車種の充電性能検証テスト〜30分40kWh超えで十分でしょ?』で紹介した新電元150kW器試用の際、我々の直後に150kW器で充電したユーチューバーのEVネイティブさんが乗ってきたアリア B6 limited で30分間で23kWh程度、つまり最大46kW程度の出力制限がかかっていた現象でした。
その後、数日前にはev-life japanという別のユーチューバーさんが「日産アリアの46kW問題がとうとう解決!!」と題する動画をアップするなど、どうやら特定の条件に当てはまると、バッテリー保護のための制御が働くという理由が明らかになってきていました。EVsmartブログでも、今回の記事をまとめるに当たり、日産広報部に確認。正式な回答をいただくことができました。
簡潔にまとめると、「バッテリー残量95%以上まで充電し、車両の電源を5分以上オフにしないまま急速充電を行うと、バッテリー保護のプログラムが作動して、最大46kWに出力を制御する」ということです。95%以上まで充電するのは、最大90kWなどの高出力急速充電器に限ったことではなく、出力50kW以下の急速充電器や、普通充電でも同じとのこと。
出力制御といっても46kWなので、90kW以上の高出力急速充電を繰り返す時以外はほとんど関係ありません。また、充電中も車両の電源を5分以上オフにすることがないという使い方も、常に車両の電源をオンにして充電状態をチェックしながら動画撮影を行うような人以外には、ほとんど発生することはない条件と思われます。
とはいえ、日産では不便を感じるお客様に向けてソフトウェアの更新を実施する予定ということなので、さらなるアナウンスを待ちましょう。
峠道を走るのが気持ちいい!
テスカスさんが「分かった」ポイントとして最後に紹介するのが、アリアの、クルマとしての出来の良さです。
大分県内の山道(たぶんやまなみハイウェイあたり?)を走りながらのトークで、アリアの電費の良さをべた褒め。別府湾SAからの70kmほどの区間で平均電費が7.7km/kWhだったということなので、たしかに、それなりのボディサイズがあるSUVとしては抜群の電費性能と評価していいでしょう。熊本から神奈川へ、約1200kmの復路全体でも、平均車速が90km/hで平均電費は5.9km/kWhとまずまずです。
さらに、曲がりくねった峠にの道が「すごーい気持ち良く走れる」ことを高く評価。「高速、街、峠など、いろいろ走って、とくに峠道を走るのがすごく楽しい」「いろんなシチュエーションを体験しないとアリアの真価には気付けない!」と感嘆しているのが印象的でした。
ひとつだけ「電源ボタンはそろそろなくしてもいいのではないかと思う」というのは、モデル3オーナーならではの感想ですね。
2010年の日産リーフから干支一回り。私自身はまだじっくり試乗できていないのが口惜しいですが、日産アリアが、一周回ってさらに高い次元に進化したEVに仕上がっていることは間違いありません。
テスカスさんの最新動画。19分31秒とやや長めではありますが、見応えは十分。アリアはもちろん、最新EVの新車購入を検討中の方は必見です。
(文/寄本 好則)
46kW問題が払拭されたのは朗報ですね!
ところで90kW器で充電した場合、アリアの受電能力から考えて最初の何分間かは200Aがキープされて充電出力が右肩上がりになるのではと思うのですが、そうなっていないようですね。
この原因は何でしょうか?もしかしたら充電器側の問題でしょうか・・
自分の場合、地方だと高速でもPP2.0が活きない対面通行が多いため、
日産ノートのPP1.5?は一般道では全くレーンキープできない、
高速でも看板の読み違えまで起こす、正直言ってお話にならないレベルだったのですが
アリアのPPは運転支援の性能としてはどの程度の仕上がりなんでしょうか?
自動車選びの最優先が運転支援なので今はアイサイトXのあるスバル車に乗っていますが、その辺の仕上がり次第ではB9Limitedもいいかな、なんて思っています
アリアでも対面通行の高速道路ではPP2は使用できません。一般道では通常のプロパイロットは使用不可です。高速道路の看板の読み違えは関東⇔九州の往復では一度もありませんでした。
運転支援のレベルは非常に高いと感じましたが、強い雨や多少の霧が発生している場面では使用できないこともあったため、テスラのオートパイロットのほうがオールマイティに使えるなという印象でした。
訂正します。
「エネルギー密度が高い」→「エネルギー密度が低い」
確かに大きなバッテリを積めば長距離を走れますが、そうなると車体価格は高くなります。庶民は買えませんね。
EVがロングドライブが苦手な理由は、バッテリのエネルギー密度が高いからです。ガソリン車と比べると2桁違う。長距離を走るために大きなバッテリを積めば電費が悪くなる。つまり、効率が悪くなるのです。ガソリン車の場合、たくさん給油して燃費が悪くなることはありません。こう考えると、むやみに大きなバッテリを積むより、バッテリの大きさはそこそこにして充電スピードを高速化したほうがいいと思います。もちろん、高速充電器の普及も。
また、航続距離が短いEVが売れることは、中国市場が証明しています。日本でも100km、100万円くらいの軽自動車を売ればそこそこ売れるのでは。
そもそもEVはロングドライブに向かない。
いきなり向かない使い方で検証しても、あまり意味はない。
EVは通勤など、1日100キロメートル未満の走行に向いている。
それなら、小さなバッテリーで済むから、車両価格を安くできる。
長距離ドライブは年に何回もしないだろう。
それなら、レンタカーを借りればいい。
福田様、コメントありがとうございます。
>そもそもEVはロングドライブに向かない。
>EVは通勤など、1日100キロメートル未満の走行に向いている。
特に通勤などについては、おっしゃる通り、電気自動車は向いていますよね。電気代はガソリン代より安いですし、短距離走行を繰り返しても車が傷みにくく、メンテナンスのコストも安いです。
しかし、電池が大きく、超急速充電ネットワークがあればロングドライブも全く問題ないですよ。今回も、最初の充電を使い切ってからはちょこちょこ充電していますが、休憩と合わせて充電しているのでそれほど大変ではないと思います。
>小さなバッテリーで済むから、車両価格を安くできる
そう考えて、日本の自動車メーカーは小さなバッテリーで航続距離の小さな車両を作りましたが、一定の数しか売れませんでした。
その理由は三つです。
・航続距離が短いことで、通勤しか実質しない人々も、不安に思って購入しなかった。
・電池劣化は、電池容量に反比例する。電池が半分ということは劣化は2倍。
・電池を少量しか製造しないことで、スケールメリットが出なかった。
これは、2012年にテスラが大容量電池の車両を販売開始してから、全て誤っていたことを証明しています。
安田様
一つ教えてください。
「・電池劣化は、電池容量に反比例する。電池が半分ということは劣化は2倍。」この理由とか、データがありますか?
東芝の電池を載せたアイミーブは小容量でも劣化は少ないと思いますが…
林様、コメントありがとうございます!
はい、東芝のSCiBは劣化が非常に少なく、新SCiB(NTO電池)も期待が持てますね。しかし、このSCiBはあまり電気自動車には使われていません。その理由は高価格と、電池の密度にあります。例えばアイミーブの例を取ると、本来通常のLMO電池(今はこれももう使われていません)なら16kWh搭載できるところに、SCiBでは10.5kWhしか搭載できなかったわけです。今は同じスペースにNMC電池で20kWh搭載できます。NCAならもっと容量を搭載できます。
より大容量を求める消費者の声には、自動車メーカーは逆らうことができず、2012年のテスラモデルSの大ヒットによって、一気に電池は大容量化時代を迎えました。そのため、SCiBが自動車に使われることはなくなったのです。
# これからまた出てくる可能性はあると思います。
一般的に、同じケミストリー(電池の種類)なら、SCiB同士であっても、容量が倍なら劣化は半分となります。
例えば電池AとBがあり、Aが40kWh、Bが80kWhの容量とします。電池の寿命をサイクル数で定義し、仮に500サイクルの寿命があると考えましょう。簡単にするために電費を6km/kWhとします。
電池A: 40×6=240km走行可能
電池B: 80×6=480km走行可能
500サイクルが寿命ということは、
電池A: 240×500=12万キロ寿命
電池B: 480×500=24万キロ寿命
ですね。大きい電池のほうが、電池を酷使しないため、長持ちするというわけなんです。
日産車をよく知らない人には、
「数百メートル程度でハンドルを握らなくてはいけない」=「半自動運転が解除されてしまう」
と誤読される懸念があると感じていました。
記事の方に補足説明しておいた方が良いかと思います。
上出来だという意見に賛成ですが、ナイト2000のKITTのように安心して走れるのはまだまだ先の様ですね。
> 短いトンネルやトンネルに入って数百メートル程度は手放しのまま運転できることに感嘆。
というくだりが有りますが、
どうして、
「トンネルに入ると、数百メートル程度でハンドルを握らなくてはいけない」
(画像認識でラインキープされない)
ということを課題として認識すべきだと思うのに、
どうしてこんなに肯定的な書きっぷりになるのか、甚だ疑問です。
Kimi Takamura さま、コメントありがとうございます。
長いトンネルでオフになるのは「プロパイロット2.0」の「ハンズオフ」なので、1.0 のACCやレーンキープアシストは継続します。
カメラ情報の解析技術やハードウェアではテスラに一日の長があるのかも知れないですが、テスカスさんの動画を見る限り、上出来ではないかと感じています。