乗用車EV3車種を一気に日本で発売へ
2022年7月21日に開催された記者発表会はもとより、最近、中国の自動車大手でありリチウムイオン電池大手でもあるBYDに関するニュースをお伝えする機会が増えています。
記者会見の当日、15分だけという短時間ではありましたが、BYDジャパン代表取締役社長であり、日本でのEV乗用車販売を手掛けるために設立されたBYDオートジャパンの代表取締役会長でもある劉 学亮(LIU XUELIANG)氏への単独インタビューを行うことができました。
社長の言葉をお伝えする前に、EVsmartブログでご紹介した記事とともにBYDに関連する注目ポイントを整理しておきましょう。
●中国「BYD」から日本に電撃! EV 3車種の日本発売決定を発表〜期待の価格を予想してみた(2022年7月21日)
なんといっても、この日の記者会見で発表された内容はが衝撃的でした。2023年1月にはミドルサイズ e-SUVの 『ATTO 3(アットスリー)』、2023年中頃にはコンパクトハッチバックの電気自動車『DOLPHIN(ドルフィン)』、そして2023年後半にはハイエンドスポーティセダンの『SEAL(シール)』を日本発売することを発表しました。車両価格などの詳細はまだ未発表です。
●BYDが日本向け電気バスを大幅に改良した「新型」を発表〜「バスは電気」の時代が本格始動(2022年5月11日)
乗用車EV日本発売の発表に先駆けて、2022年5月にはすでに日本国内で大きなシェアを獲得している電気バスを改良した新型の導入と、さらに電気バスの普及拡大を進める決意を示しています。
●世界のEV覇権を巡るBYDとテスラの戦い(2022年8月9日)
BYDはすでに、中国国内だけに目を向けたローカルな自動車メーカーではありません。そもそもバッテリーメーカーが出発点で、電気自動車を作るために自動車メーカーにもなった企業です。世界でのEV販売において、すでにテスラと鎬を削る存在になっており、今回の日本進出をはじめ、欧州や北米などグローバルな市場進出への取り組みを着々と進めているようです。
こうしてBYDを記事に取り上げると「中国製のEVなんて」といったコメントをいただくこともありますが、そんな認識はもう完全に時代錯誤であるというところから、話を始めていきたいと思います。
劉 学亮社長への一問一答
質問/ 今日の記者発表を拝見して、改めてブレードバッテリーを軸にしたパッケージング力、自社開発パーツで車両を組み上げる垂直統合によるコストパフォーマンスの高さなど、BYDの強さを感じました。日本進出に向けて「BYDの強み」は何なのか、社長ご自身の言葉で聞かせていただけますか?
私たちBYDは、27年間にわたってものづくりに取り組んできました。その原点にはリチウムイオン電池があります。強みとは何かを突き詰めると「安全」に辿り着きます。高い安全性を誇るブレードバッテリーを軸に、コアパーツは全て自社開発によるサプライチェーンを構築しているのも、ものづくりの原点ともいえる「安全」に役立っています。安全こそがクルマの「贅沢」だと考えています。
質問/ 中国製の自動車に対して、日本人には安全性への疑問を抱く人が多いかも知れません。
今日、日本の館林工場で金型を作ったボディパネルをみなさんに見ていただきました。BYDのクルマ作りは、日本のクルマ作りでもあるのだと考えていただきたい。私たちは日本の職人さんたちの技術への美しいこだわりに学んでいますし、日本の技術者のみなさんもBYDのさまざまな技術を学んでいただいています。中国と日本、両国のものづくりに対する切磋琢磨の結果が、BYDのEVに結実しているのです。
質問/ 導入を発表された3車種への期待は高い。日本市場に向けたローカライズはどのように考えていますか?
なんといっても急速充電のCHAdeMO仕様への対応が大切ですね。右ハンドルにしたり、音声案内を日本語にしたりと、細かなローカライズはさまざまですが、詳細な仕様などは日本のスタッフが取り組んでいるところです。
質問/ 最も気になるのはやはり価格なんですが。中国やオーストラリアと同等の価格設定になるのでしょうか?
今日の記者発表でも「eモビリティを、みんなのものに」という合い言葉を掲げました。具体的な価格設定はまだ発表できませんが、「みんなのもの」とするためには、多くの方が手の届きやすい価格でなければいけない。その意味において価格設定を検討しているところです。
質問/ たとえば中国ではドルフィンでもっとバッテリー容量が小さく安価なモデルがあります。日本向けにも安価なモデルの設定を期待したいのですが、いかがでしょう。
日本向けの仕様に変更する部分もあるし、中国での価格よりは間違いなく高くなるでしょう。コンパクトなバッテリーをという提案ですが、日本進出に向けた調査結果を考えても、日本のユーザーにはまだ航続距離への不安が強いと捉えています。
たとえば、ATTO3 の一充電航続距離が485kmで、そんなに必要ないという考え方もあるでしょう。それでも、日本でEVを販売するためには、まずは航続距離への不安を払拭する必要があると考えています。今後、より安価なモデルバリエーションへの拡大などは、そのあたりの日本市場の状況を見ながら考えたい。
質問/ 多くのメーカーがEVではネット販売に注力しようとする中、あえて旧態依然としたディーラー網構築という方法を選んだ理由は?
BYDは自動車の世界では新規のブランドです。信頼を構築するために近道はありません。販売台数うんぬんの前に、まずは日本のユーザーのみなさんに安心感をもっていただくことが大切。そのためには、ネット販売だけの展開では難しいと考えました。
当面、全国で100店舗、現地の販社と連携して雇用も広げ、日本のユーザーが慣れ親しんできたアフターサービスがしっかりできるディーラー網を整えます。「BYDがすぐそばにある」というメッセージを伝えたいと思っています。
質問/ 今日の発表では、ブレードバッテリーへの自信と誇りが強調されていたように感じました。
そうですね。ブレードバッテリーは化学的な組成だけでなく、あらゆる面で安全を突き詰めたEV用バッテリーです。中国はもちろん、世界中でEV社会へのシフトを加速させていくと言っていいでしょう。
質問/ 中国でトヨタと共同開発中の次期bZシリーズもブレードバッテリーを採用しますか?
はい、その通りです。
質問/ そのEVは、いつごろ?
今、BYDとトヨタが良好な関係に基づいて、安心できるEVを年内にも発売しようと共同開発のプロジェクトを進めているところです。詳細な時期や発売地域などについては、計画が進行した時点で双方から発表があることでしょう。
質問/ 日本市場で、BYDはどのような役割を果たしていこうとお考えですか?
まずは、BYDの安全なバッテリーやEVづくりの技術を知っていただくこと。そして、多彩なEVの選択肢を提示して、日本にEV社会を確立したい。そこに貢献していきたいと思っています。
(インタビューここまで)
劉社長の、熱意を込めた簡潔明瞭な説明の数々が印象的でした。個人的には、バッテリー容量=価格を抑えたモデルバリエーションの展開にも決して否定的ではない、と感じることができたのが喜ばしいポイントでした。ただ、たとえば200万円を切るような「手頃なドルフィン」が日本でも買えるようになるためには、闇雲に「航続距離がぁ」とEVを不安視する声が根強い日本の雰囲気をなんとかしなくちゃいけないということもわかりました。
なにはともあれ、すでに導入が決まっているモデルを含め、BYDジャパンには「ぜひ、手頃なヤツをお願いします!」と、祈るような気持ちで期待しています。
(取材・文/寄本 好則)
中国車は世界の優秀な部品で組み立てられていてデザインも素敵だと思う
仮に日本車の半額なら迷わず中国車を選びます
同じくらいなら、そんなリスクはおかしません
つまり、そういう事です
EVはガソリン車の様な定期的なメンテを伴う製品で無いので、余りアフターサービスの必要性は感じません。BYDはこれからディーラー網を整備するより、急速充電器の整備や新たなEVを用いた蓄電事業に投資をされた方が良いと思っています。EVは将来働くクルマとして、人々の移動や社会エネルギーインフラを支えるモビリティーとして発展していくと思います。ガソリン車の様に、稼働していない9割の時間を、都市スペースを圧迫する文鎮としか機能しない商品では無いと思っています。EVはガソリン車の様に所有することに価値があるのでなく、搭載してある蓄電池をフルに社会のエネルギーインフラとして利用する事に価値があると思います。
西部開拓