メルセデス・ベンツ『EQE』受注開始〜ミドルサイズセダンの電気自動車

メルセデス・ベンツ日本が「電気自動車に最高峰を」のキャッチコピーでテレビCMを展開する『EQS』と同時に、EQシリーズの中核車種となるミドルサイズセダン『EQE』を日本でも受注開始することを発表しました。モータージャーナリスト、塩見智氏のレポートです。

メルセデス・ベンツ『EQE』受注開始〜ミドルサイズセダンの電気自動車

EV専用プラットフォームを採用

メルセデス・ベンツ日本は29日、専用プラットフォームを用いた同社初の電気自動車となるEQSを発売したのに合わせ、同じプラットフォームを用いたEQEを発表、予約注文の受付を開始した。EQE 350+が1248万円、メルセデスAMG版のEQE 53 4MATIC+が1922万円。デリバリー開始は今年11月頃の予定という。

EQE 53 4MATIC+

車名のEQEのうち「EQ」は電気自動車であることを指し、「E」はミドルクラスサルーンのEクラスであることを意味する。メルセデスはEQC、EQA、EQBとSUVの電気自動車3モデルを順次発売してきたが、これらがそれぞれ内燃機関を用いたGLC、GLA、GLBとプラットフォームを共有しているのに対し、EQSおよびEQEはSクラス、Eクラスとは異なる専用プラットフォームを用いて開発された。

全長4955mm、全幅1905mm、全高1495mm、ホイールベース3120mm。エンジンがないため全長に対するホイールベースが長いのが特徴。ホイールベース間のフロアにバッテリーを敷き詰めるが、全高はEクラスセダンに対し、40mm高いだけにとどまっている。端的に言ってEQSとスタイリングは非常に似ているが、EQEはEQSよりも230mm短く、20mm狭く、25mm低い。ホイールベースも90mm短い。

エクステリアデザインの特徴としては、EQSと同様に車両先端から後端までが緩やかな弧を描いたようなフォルムをしている。メルセデス・ベンツはこれを「ワンボウ(弓)」と呼ぶ。キャビン(乗員スペースが)前方へ寄ったキャブフォワードが特徴。フロントマスクのうち黒く塗装されてグリルに見える部分は全面的にふさがっていて、いくつもの小さなスリーポインテッドスターがあしらわれている。53 4MATIC+は他のメルセデスAMGモデル同様、縦桟が入ったデザインとなっている。

350+は総電力量90.6kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載する。最高出力215kW(292ps)、最大トルク565Nmのモーターで後輪を駆動する。53 4MATIC+は前車軸にもモーターが追加され、システム全体で同460kW(625ps)、同950Nmに達する。レーススタートというモードを選択すると同505kW(687ps)、同1000Nmを発揮する。またトルクシフト機能が備わり、駆動トルクの前後モーターへの配分が4輪の接地荷重などによって常時最適化される。一充電での走行可能距離は350+が624km、53 4MATIC+が526km(いずれもWLTCモード)。

実用値に近いアメリカEPA基準の電費は未発表だが、EQSのWLTCが700km、EPAではおおむね80%に相当する約563kmであることを当てはめると、実用的な一充電航続距離は、350+が約499km、53 4MATIC+が約421kmであると推計できる。

バッテリーは150kWまでの急速充電(CHAdeMO規格)と6.0kWまでの普通充電に対応。急速充電の場合、50kWの充電だと10%の状態から30分間で29%にまで回復、10%から80%まで回復するのに110分を要する。90kWだと10%の状態から30分間で47%、10%から80%までに55分、150kWだと10%の状態から30分間で59%、10%から80%までに48分を要する。バッテリーには10年間もしくは25万kmの性能保証(残容量70%)をしている。

53 4MATIC+にオプション設定されるMBUXハイパースクリーンは、ダッシュボードをほぼ画面で埋め尽くすメルセデス最新のユーザーインターフェースで、ダッシュボードを覆う1枚もののカバーガラスの奥にディスプレイが3枚設置される。ドライバーの正面(ステアリングホイール奥)に12.3インチ、中央に17.7インチ、助手席正面に12.3インチの触覚フィードバック付きのタッチ式ディスプレイが置かれるが、カバーガラスが1枚なので乗員には巨大なひとつのスクリーンのようにも見える。350+のダッシュボードは中央にスクリーンが配置される通常のタイプだが、随所に備わるアンビエントライトなどによって昼夜問わず未来的な印象だ。

メルセデスはかねてより日本市場が電動車に望んできた双方向充電(外部給電機能)をEQSおよびEQEに備えた。日本製の電動車には珍しくない機能だが、輸入電動車としては初めて。停電時などに充放電機器を介して住宅などにバッテリーの電力を送り込むことができる。災害多発国日本では特に重要視される機能だ。

リアアクスルステアリングが備わっており、350+は最大10度、53 4MATIC+は最大3.6度、状況に応じて後輪が同位相、逆位相に切れる。ステレオカメラとレーダーセンサーを用い、周囲の交通状況を把握するインテリジェントドライブはメルセデス・ベンツ自慢の予防安全システム。当然最新のEQEにはアクティブディスタンスアシストディストロニック(ACC)をはじめとする最新の各種安全デバイスが備わる。

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メルセデス・ベンツ『EQS』発売〜電気自動車の利点を凝縮したフラッグシップ(2022年9月30日)

(取材・文/塩見 智)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 下記文章ですが、EQSのほうがEQEよりも小さくなっちゃってますよ。

    全高はEクラスセダンに対し、40mm高いだけにとどまっている。端的に言ってEQSとスタイリングは非常に似ているが、あちらはEQEよりも270mm短く、20mm狭く、25mm低い。ホイールベースも90mm短い。

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					塩見 智

塩見 智

先日自宅マンションが駐車場を修繕するというので各区画への普通充電設備の導入を進言したところ、「時期尚早」という返答をいただきました。無念! いつの日かEVユーザーとなることを諦めません!

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