ボルボ・オーストラリア:2026年までに電気自動車以外販売しない方針

世界中で乗用車のEVシフトが加速するなか、オーストラリアのボルボ現地法人が2026年までに「EVのみの販売」に切り替えることを決定しました。アメリカメディア『Clean Technica』から、全文翻訳記事でお届けします。
※諸事情で掲載が遅れましたが、この記事は2022年11月5日に『CleanTechnica』で公開された記事の日本語訳です。

ボルボ・オーストラリア:2026年までに電気自動車以外販売しない方針

【元記事】 Volvo Australia To Sell Only Electric Cars By 2026 by Tim Tyler on『Clean Technica
※冒頭写真は『C40 Recharge』

オーストラリアの顧客の期待に応え、気候変動対策に貢献する

大手自動車メーカーの多くが2030年までに電気自動車(EV)に切り替えることを公約として掲げています。2030年までにゼロエミッションを目指す姿勢から、メーカーが気候変動対策に真剣に取り組んでいることは明らかでしょう。

ボルボ・グループも、この公約を謳うメーカーのひとつですが、ボルボ・オーストラリアは最近の発表の中で、2030年までにEVのみに切り替えるというグループ全体の取り組みからさらに一歩踏み込み、オーストラリア国内では2026年までにEVのみの販売に切り替えることを決定しました。

C40 Recharge & XC40 Recharge

オーストラリアにおける初の純電気SUV、C40リチャージの公式発表会の場で、スティーブン・コナー(Stephen Connor)社長が、オーストラリアでは2026年までにEVのみを生産、販売するという新たな公約を発表したのです。C40リチャージはSUVの新ラインとして、すでに販売されているXC40、そして間もなく公開されるEX90とともに、ボルボのラインナップに加わります。

コナー氏は、内燃エンジン車には長期的な未来がないため、このような決断を下したとコメントしています。オーストラリアではこれまでEVの普及が相対的に遅れていましたが、顧客はEVへ乗り換える準備ができていると感じているようです。

「EVへの切り替えを前倒しすることで、オーストラリアの顧客の期待に応え、気候変動対策に貢献することができます。サステナビリティは、私たちにとって安全と同じくらい重要であり、気候変動対策は最も優先されるべきものなのです」とコナー氏は述べています。

電気自動車協議会の最高責任者であるベヤド・ジャファリ(Behyad Jafari )は、ボルボの発表は「本当に素晴らしいもの」であり、「同社は、オーストラリア市場におけるEVへの機運を正当に評価し、その需要に応える機会を見出した」とコメントしています。

「今やオーストラリア人の多くがEVを購入したいと考えていますが、問題は供給不足と選択肢の少なさです。ボルボがこのギャップの一部を埋めることで、大きな変化が生まれるでしょう」

2021年前半に、ボルボは「2030年までにEVのみの販売に切り替え、ハイブリッドを含むエンジン車を世界中で段階的に廃止する」という目標を設定しました。今回の新たな公約により、ボルボはこれまでの2030年ゼロエミッション目標を、4年前倒しすることになります。

「成功し続けるためには、収益性のある成長を遂げる必要がある」と、当時のボルボCEOホーカン・サミュエルソン(Håkan Samuelsson)は述べています。「そのため、今後縮小するビジネスではなく、EVとコネクテッドカーという未来に投資する決断をした。私たちは、急成長するプレミアムEVセグメントでリーダーになることに全力を注ぐ。」

ボルボ・トラックは、トラック販売に占めるEVトラックのシェアを、2030年までに世界ベースで50%、ヨーロッパで70%とする目標に掲げ、世界で初めて大型EVトラックの量産を開始するなど、その公約を着実に進めています。

「当社は大型EVトラック約1,000台、EVトラックは合計で2,600台以上の販売実績があり、今後数年間で、販売台数は大幅に増加するでしょう。2030年までに、当社が世界中で販売するトラックの少なくとも50%がEVになると見込んでいます」と、ボルボ・トラックのロジャー・アルム(Roger Alm)社長は述べています。

同氏によると「これは大きな節目であり、ボルボ・トラックが業界の変革をリードしていることを示しています。私たちが初めて大型EVトラックを発表してから2年も経っていないにもかかわらず、現在は生産台数を拡大しており、この素晴らしいトラックをヨーロッパ全土の顧客に、そして将来的にはアジア、オーストラリア、ラテンアメリカの顧客にも届ける計画です。」

ボルボは、この2026年目標以外にも、ゼロエミッション戦略の観点での公約を行っています。すなわち、2025年までに車両のライフサイクルCO2排出量を40%削減し、2040年までに気候変動に完全に影響を与えない「クライメート・ニュートラル」企業になることを約束しているのです。

ボルボが気候変動に対応するために取り組んでいる分野のひとつに、製造工場が挙げられます。現在、同社の工場は80%が水力エネルギーで稼働しており、2021年にはスウェーデンにあるトルスランダの工場が同社初のクライメート・ニュートラル工場となりました。

2022年9月の欧州販売レポートによると、欧州におけるプラグイン可能なEV(PEV)は新車販売台数の24%に達しており、その3分の2はバッテリー式電気自動車(BEV)、残りがプラグインハイブリッド車(PHEV)が占めています。9月単月のPEVの新車販売実績は約25万台です。この販売台数・比率は、EVの販売が増え、内燃機関搭載車(ICE車)が減少するトレンドの中でも、欧州がEVの市場として魅力的であることを示しています。

オーストラリアでのPEV販売は、欧州ほどのレベルには達していません。2022年の乗用車年間販売台数に占めるPEVの割合はわずか3.7〜4%、実数では合計4万台程度です。ボルボや他のメーカーがオーストラリアのPEV市場に適応し、EVが広く普及するレベルに到達するのは決して容易ではありません。

EX90(BEV)

BEV販売を伸ばして市場シェア拡大を図る

ボルボ・オーストラリアの現在の目標は、BEVを年間2万台販売し、EV市場における同社シェアを、現在の乗用車市場全体のシェアよりも大きくすることです。ボルボ・オーストラリアは、2025年までに年間販売台数の80%をEVが占めるようになると予測していますが、コナー氏は、オーストラリアで最も難しいのは、最後の20%を取り込むことだと指摘しています。

また「2026年以降はEVのみを販売するという決定は非常に理にかなっており、オーストラリア市場における戦略的優位性をもたらすと確信している」そして「我々に残された課題は、最後の20%の顧客に、どのように2026年以降にEVに切り替えてもらうかである」と述べています。

ボルボ・オーストラリアは、アフターセールス顧客サービスプログラムの一環として、全ボルボ・ディーラーに対して、75kW以上の急速充電器を設置することを公約しています。充電は無料で、充電を待つ間の無料のコーヒーもおそらく含まれていることでしょう。

ボルボ・オーストラリアはセロ・エミッションの目標を前倒しすることで、他メーカーもゼロ・エミッション戦略を採用し、工場や製造過程における炭素排出を予定より早くゼロにするように仕向けたと言えます。この大胆な決断により、ボルボ・オーストラリアとボルボ・グループは、気候への影響を大幅に軽減するEVの製造・販売におけるリーダー的存在となったのです。

他メーカーもボルボに倣って、持続可能な未来に向けた2030年目標を前倒ししなくてはいけない焦りを感じ始めているのかが注目されますが、「気候変動に対する意識」が消費者の大きな購買要因となりつつあることを踏まえると、追随するメーカーが増えるのではないかと思われます。

翻訳/池田 篤史(翻訳アトリエ)

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この記事の著者


					池田 篤史

池田 篤史

1976年大阪生まれ。0歳で渡米。以後、日米を行ったり来たりしながら大学卒業後、自動車業界を経て2002年に翻訳家に転身。国内外の自動車メーカーやサプライヤーの通訳・翻訳を手掛ける。2016年にテスラを購入以来、ブログやYouTubeなどでEVの普及活動を始める。

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