オートバックスのブースがカスタムBEVで埋め尽くされた理由【東京オートサロン2024】

1月12〜14日に千葉・幕張メッセで開催された第42回東京オートサロン。オートバックスのブースは電気自動車のカスタムカーが埋め尽くしていました。どんなEVが並んでいたのか。そして、なぜオートバックスがEVなのか。自動車生活ジャーナリスト、加藤久美子氏によるレポートです。

オートバックスのブースがカスタムBEVで埋め尽くされた理由【東京オートサロン2024】

自動車の常識を超えていくために

第42回東京オートサロンでは昨年に引き続き、テスラ・アライアンスがカスタムされたテスラを4台出展し注目を集めたほか、ヒョンデが初出展を果たし新しいパフォーマンスモデルIONIQ 5 Nシリーズの世界発表を行いました。年々、電気自動車の話題が増えていきます。

このような中、BEVの出展に関してもっとも注目を集めたのはカー用品国内最大手であるオートバックスのメインブースです。こちらでは合計5台のカスタムEVが展示されました。

オートバックスがなぜメインブースに輸入BEVを中心とした5台の電動車を出展したのでしょうか? 会場で株式会社オートバックスセブン広報担当者に話を聞いてみました。

「オートバックスは2023年3月末時点で国内588店舗(直営11店舗含む)を展開し、日本全国で営業しています。その1号店(現セブン東大阪店)は1974年11月にオープンしたので、2024年は出店からちょうど50年となります。大きな節目を迎えることで今回のオートサロンでは「ビヨンドオートバックス」(BEYOND AUTOBACS=これまでのオートバックスを超えていく)というコンセプトを掲げてブースを作りました。
これからの50年、EVをはじめとする次世代自動車社会への対応を表現する意図ですべてEVのカスタムカーにしてみました」

トヨタbZ4Xという車名の由来ともなっている「BEYOND」。つまり、今までの自動車文化の常識を超えるための試みが、BEVのカスタムカーということですね。

出展されたのは、3台の輸入BEVとアルファードをベースとした「トムスEVプラス」、そして2002年にオートバックスがオリジナルで開発、販売した2座オープンカー「Garaiya(ガライヤ)」をベースにEVに換装した「ガライヤ EV」の合計5台です。

並んでいたカスタムEVをチェック!

なぜ市販BEV3台が輸入車なのか? 気になった方もいらっしゃるでしょう。テスラ、BYD、ヒョンデの3ブランドが出展された経緯も合わせてご紹介します。

【01】ガライヤEV

ガライヤEVのベースとなっているのは2002年の東京オートサロンにて一般公開されたガソリンエンジン搭載の2ドアオープンカーです。

この車はオートバックス・スポーツカー研究所(ASL)が開発した車両で当初は市販を予定していましたが、結局一般ユーザーの手にわたることはなく競技用のレース車両として、また、大学でのEV研究用車両としても数台が使われていました。出展車は2006年製造の個体で、このたび日産エンジン製エンジン「SR20VE」をバッテリー&電気モーターに転装したコンバートEVとして蘇りました。

ガライヤEV/主要諸元
●ベース車両:ガライヤ
●出力:125kW
●トルク:280Nm
●最高時速:160km/h
●0-400m:13.5秒
●ホイール:レイズ VOLK RACING CE28
●タイヤ:POTENZA RE71RS、215/40R17(F)、255/40R17(R)

【02】A PIT EV PERFORMANCE IONIQ 5

ヒョンデ『IONIQ 5』をベースとしたカスタムEV。今回出展された市販車3台の中では最もしっかりと時間をかけてカスタマイズされていたのがこちらのIONIQ 5 です。カスタムのポイントは「車検対応EV」であることを前提に「EV車両でも楽しくドレスアップやカスタマイズが可能」としています。純正の洗練されたデザインに力強いスポーティさが追加されたカスタムカーとなっています。

<出展の経緯>A PIT オートバックス東雲(東京)とA PITオートバックス京都四条の2店舗にHyundai Mobility Lounge(HML)が設置されています。HMLは現在、丸の内を含む3か所のうち2か所がオートバックスの店舗内にあり、「A PITオートバックス東雲」の一角に設けられる「HML東京ベイ東雲」では「IONIQ 5」と「NEXO」(FCEV)専用の納車空間が設置されています。

また、「A PITオートバックス東雲/京都四条」とヒョンデはZEV整備の技術提携をしており、ヒョンデ車両の点検や保証整備、他メンテナンスの実施に加えて試乗や購入相談に至るまで幅広い顧客ケアを展開しています。オートバックスとヒョンデの信頼関係を示す1台と評することができそうです。

A PIT EV PERFORMANCE IONIQ 5/主要諸元
●ベース車両:IONIQ 5 Lounge AWD Limited Edition
●出力:F: 70kW (2,800-6,000pm) R: 155kW (4,400-8,600pm)
●トルク:F: 255N-m (0~2,600pm) R: 350N•m (0~4,000pm)25kW
●最高時速:185km/h
●外装:APIT オーバーフェンダー(プロトタイプ)、APIT フロントスポイラー(プロトタイプ)
●サスペンション:HKS×APIT AUTOBACS SUSPENSION (プロトタイプ)
●ホイール:YOKOHAMA ADVAN GT BEYOND
●タイヤ:YOKOHAMA ADVAN Sport V107、245/50 R19 (F/R)

【03】A PIT EV PERFORMANCE TESLA MODEL Y

今回TASに出展されたテスラモデルYは「EV車両も車検対応を基本として楽しくカスタマイズ」をコンセプトとして、テスラの洗練されたデザインにさらにスポーティさとエレガントさを追加した仕様となっています。こちらの車両には2004年にポーランドで誕生したデザインから製造まで一貫して行うエアロメーカー「マクストンデザイン」製のエアロパーツを装着しています。業販店を通じて日本で購入できるマクストン製のテスラ用エアロパーツは、モデルX、Y、3,Sの4車種がラインナップされており、今回の出展車でありモデルYにはフロントスプリッター(46800円)、サイドスカートディフューザー(46800円)、リアスプリッター(60800円)などが用意されています。

また、「サイレントキット」はエーモン工業とオートバックスの協業によって誕生したアイテムです。走行中のロードノイズやモーター音が気になるというオーナーからの声に対応したものでエーモン工業主導のもとノイズ測定などの実証実験を行い、最適な施工箇所や施工方法を研究し、静音効果の高いアイテムの開発に至りました。モデル3、モデルY専用でそれぞれフロア用とタイヤハウス用の2種類をラインアップ(いずれも施工費込みで49800円。) なお、施工方法や施工箇所により効果が変化するため専門スタッフによる施工作業までを含めた販売となっています。

なお、テスラ車をカスタマイズするとテスラによる正規の保証対象外となってしまうケースがあるので、専門スタッフと相談して適切に対処するのがオススメです。

エーモンサイレントキット施工(タイヤハウス用)

<出展の経緯>テスラとオートバックスの関係は2019年5月に「A PIT AUTOBACS SHINONOME」にテスラサービスセンター東京ベイが開設されたことに始まります。また、2022年9月にオープンした「A PITオートバックス京都四条京都」にスーパーチャージャー6基を設置。数多くのテスラユーザーが同時に来店しても対応できる環境を設けており、カー用品店という気軽に訪れる場所でテスラオーナーの日々の一助となることを目指して設置されました。また、現在ではSC以外にも京都四条とA PIT オートバックス東雲においてはテナントとしてサービス拠点を展開し、車検やメンテナンス領域で協業しています。

A PIT EV PERFORMANCE TESLA MODEL Y/主要諸元
●ベース車両:TESLA MODEL Y デュアルモーター AWD(令和5年3月登録)
●外装:エアロキット マクストンデザイン
●ボディカラー:ゴールドパール
●サイレントキット:エーモン製モデルY専用(タイヤハウス用)
●サスペンション:EV パフォーマンスサスペンション(プロトタイプ)
●ホイール:BBS LM ゴールドブラックライトダイヤカット、 21×9.0J +32(F)、21×10.0J +35(R)
●タイヤ:ピレリ P-ZERO、255/35ZR21(F)、275/35ZR21(R)

【04】BYD ドルフィン タイプA

今回出展されたDOLPHIN (ドルフィン)TypeAのカスタムモデルはとてもユニークで、ドルフィンのキュートなスタイルやあふれ出る躍動感をより一層引き立てるデザインとなっています。オレンジ色のホイールやドアミラー周りの同色の差し色もポイントです。フロントリップスポイラー、フェンダーモール、ボディラッピングにおいてドレスアップが施されており、サスペンションスプリングはオリジナルとなっています。

なお、オートバックスでは「現時点でプロトタイプのカスタム車両の販売予定はございませんが、お客様所有車両に対するプロトタイプ仕様へのカスタム可否については、APITオートバックス東雲までご相談いただければと存じます。」とのことでした。

<出展の経緯>オートバックスグループは2022年12月に新会社バックス・E-モビリティを設立し、BYDの日本法人BYDオートジャパンとディーラー契約を結びました。2023年11月11日(土)にはBYDディーラー「BYD AUTO 宇都宮」の実店舗を栃木県宇都宮市に開業しているほか、「BYD AUTO 東京ベイ東雲」と「BYD AUTO練馬」の2か所に開業準備室を設置して購入相談や試乗などの希望に対応しています。この2つがオープンすれば、オートバックスグループは合計3か所のBYDディーラーを運営することになります。

オートバックスがEV普及のハブになる?

オートバックスグループと協業を進めるBEVブランドはほかにもあります。

HW ELECTRO
小型EV 商用車ELEMO の販売およびELEMO 軽の開発を行っているHW ELECTRO 社(蕭 偉城CEO)へ出資し、将来的には全国のオートバックス店舗をELEMO の販売やメンテナンス拠点として活用し、関連商品・サービスの販売や、新規サービスの共同開発を連携・協業していくことについて検討を行っています。

ASF
2023年12月には日本での販売を目的として国内で企画開発されたBEVを中国工場で製造するASF株式会社(代表取締役社長:飯塚 裕恭)への出資を発表しました。出資を機にオートバックス店舗でのASF社製軽EV商用車「ASF2.0」の展示や販売、整備・メンテナンスや、同車両向けのカー用品の開発・販売および、同車両を使用する事業所へのEV充電器設置など、総合的にサポートできる体制構築を検討しています。

電動化社会への対応を積極的に進めるオートバックスは、日本最大手の自動車用品販売会社としてEVシフトへの対応でも大きくリードしている印象です。これからの展開が楽しみですね!

取材・文/加藤 久美子(自動車生活ジャーナリスト)

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この記事の著者


					加藤 久美子

加藤 久美子

山口県下関市生まれ。大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。95年よりフリー。2000年に自らの妊娠をきっかけに「妊婦のシートベルト着用を推進する会」を立ち上げ、この活動がきっかけで2008年11月「交通の方法に関する教則」(国家公安委員会告示)においてシートベルト教則が改訂された。 一財)日本交通安全教育普及協会認定チャイルドシート指導員の資格を取得し、育児雑誌や自動車メディア、TVのニュース番組などでチャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。 愛車は1998年5月に新車で購入したアルファスパイダー(26.5万キロ走行)

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