テスラ『モデルY』北海道遠征【前編】埼玉→北海道陸別の充電や電費レポート

2月初旬から中旬にかけて、マイカーである2022年製テスラモデルYパフォーマンスを使用して、真冬の北海道のEV性能や北海道の充電インフラを調査。毎年恒例となっている「北海道遠征」レポート。前編は埼玉から陸別までの充電や電費について解説します。

テスラ『モデルY』北海道遠征【前編】埼玉→北海道陸別の充電や電費レポート

埼玉から北海道へ真冬の陸路を走行

まず、今回北海道に上陸するにあたって、茨城県からフェリーに乗る(苫小牧港へ)という選択肢を使わずに基本的に陸路を走行。青森市の青森港から函館港はフェリーに乗せて、函館から道東(阿寒湖の東側)に位置する陸別町を目指すという行程を設定しました。

スタートの埼玉から青森港まではおよそ700km、函館から陸別も600km程度と、全行程は片道で1300kmという、日本国内で考えられうる超長距離走行。しかも2月上旬、真冬の環境下ということもあり、EVにとっては非常に厳しい走行条件となることから、電費性能がどれだけ低下してしまうのかであったり、冬場における充電スピードの低下などのリアルをレポートしていきたいと思います。

青森港までの充電計画は、途中仙台のスーパーチャージャーまでが350km程度と、ちょうど真ん中の地点ということで、ここに辿り着くことができれば、青森港までは充電せずに到着できると推測できます。

また、2023年12月、青森市には新たに青森スーパーチャージャー(ファミリーマート青森中央市場前店駐車場内)が設置されたので、この青森スーパーチャージャーを二回目の充電スポットに設定。
ただし問題となるのが、青森スーパーチャージャーと青森港が10kmほど離れていることと、到着予定時間がタイトになることでした。私が計画したフェリーの青森港出発時間は朝の6時台。乗船手続きなどを考慮すると6時までにはフェリーターミナルに到着していなければなりません。他方で、全行程を高速道路の深夜料金に引っ掛けたいことから、仙台スーパーチャージャーの最寄りIC(東北自動車道 泉スマートIC)を深夜0時以降に降りなければなりません。よって、そもそもスムーズに行ったとしても青森港の到着予定時間はギリギリです。

したがって、青森港からやや離れた青森スーパーチャージャーには寄らず、そのままフェリーに乗り込んで、函館港の近くの函館スーパーチャージャーで充電。もしバッテリー残量が足りなくなれば、青森港近くの日産ディーラーで最低限の充電を行うなど、いくつかのシナリオを用意しておきました。

青森では人生初の「電欠」を体験

一回目の充電スポットは仙台スーパーチャージャーです。予定通り途中充電なしで仙台まで到着することができたものの、到着時の充電残量は1%台とギリギリ。その理由はなんといっても外気温の低さです。最低気温はマイナス5℃と、埼玉仙台間としてはかなり低く、私の想定以上に電費が悪かった印象でした。

【走行結果①】大宮スーパーチャージャー→仙台スーパーチャージャー
●走行距離:352km
●消費電力量:100%→1.49%
●平均電費:204Wh/km(4.9km/kWh)
●外気温:マイナス5℃~5℃

こうなってくると、青森までの行程に不安が出てきます。というのも、緯度が上がるわけですので、当然気温がさらに低下します。さらに降雪によってタイヤの転がり抵抗も増しますので、電費という観点では相当厳しい環境となります。

また、ここで問題となってくるのが到着時間です。本当は仙台で100%近くまで充電したかったものの、フェリーターミナル到着時間を考えると、充電残量90%程度で切り上げないと間に合わない計算です。よって、充電を切り上げた後で、青森市街で少し充電を行う計画に変更することにしました。

【走行結果②】仙台スーパーチャージャー→青森市街の日産ディーラー(50kW充電器)
●走行距離:350km
●消費電力量:92.3%→0.00%
●平均電費:191Wh/km(5.24km/kWh)
●外気温:マイナス9℃~マイナス3℃

結論から申し上げて、人生初となる電欠を経験してしまいました……。

青森のインターを降りた後、最寄りの日産ディーラーに設置してある急速充電器で10分ほど継ぎ足してフェリーに乗り込もうと思っていたら、電欠のアラートが鳴り響き。奇跡的に市街まで下り坂が続いていたことから、ギリギリ惰性運転で急速充電器の目の前まで到着することができたものの、なんと、急速充電器のコネクターが外れない!

その後、e-Mobility Powerのコールセンターに電話しながら、コネクターロックの解除の方法を試したものの、凍結によってコネクターが外れない状況の可能性が高く、まさかの急速充電器の目の前で電欠してしまったわけです(※ちなみに、その後日産ディーラーの従業員の方と話したら、やはりいつも外れるコネクターが外れなかったことから、私の操作ミスということではなかった模様です)。

今回の記事の趣旨からは脱線してしまうので割愛しますが、テスラ車で電欠すると具体的にどのような問題に遭遇するのか(JAFのロードサービスを呼んで近くの別スポットにレッカーしていただきました)に関する詳細に興味のある方は、私のYouTube動画で確認してみてください。

いずれにしても、このような冬場の環境では充電残量に余裕を持って運用することが極めて重要であることを改めて痛感しました。今回は充電器のコネクター凍結に遭遇してしまいましたが、私が過去に真冬の北海道で遭遇したのは、急速充電器が設置してあるディーラー内の除雪が休みの日に行われておらず、充電器に近づけなかったという事態です。実はテスラの新潟スーパーチャージャーでも似たような状況に遭遇したこともあります。

やはり豪雪地帯においては、予定した充電スポットをスキップしても大丈夫というような、安全マージンを普段よりも余計に確保することが重要です。

少し遠回りして札幌スーパーチャージャーを利用

函館スーパーチャージャー。

さあ、気を取り直してフェリーに乗り込んで北海道上陸です。今年は宗谷岬(北海道本島最北端の地)には向かわずに、陸別に直接向かいます。函館スーパーチャージャーで満充電にして、札幌へ。

【走行結果③】函館スーパーチャージャー→札幌スーパーチャージャー
●走行距離:350km
●消費電力量:100%→8.48%
●平均電費:214Wh/km(4.67km/kWh)
●外気温:マイナス13℃~マイナス5℃

北海道、というか日本最北端(2024年3月28日時点)の札幌スーパーチャージャーに到着です。上記のテスラの充電残量予測のグラフを見てみると、到着50-60km手前から、テスラの想定以上に電費が悪化している様子が見て取れます。

この原因は走行ルートです。テスラのナビが予定したルートは高速道路であったものの、豪雪によって高速が閉鎖。苫小牧付近からは下道ルートを余儀なくされました。豪雪によって路上の積雪も深くなり、電費が極端に悪化したことが確認できます。もちろん電費だけでなく、到着時間も予定を大幅にオーバー。真冬の北海道では様々な観点で予定通りとはいかないために、余裕を持った運用が大切であることを再確認。

道東自動車道起点の千歳から札幌SCまでは片道約50km。

また、札幌スーパーチャージャーの立地は札幌の中心部であり、道東方面へのルート(経路充電)としては完全に回り道であり、本当は適していません。函館〜札幌間300km以上の移動を考えると、理想としては、室蘭や苫小牧あたりにスーパーチャージャーがあると、冬でも余裕を持った運用ができるとは感じます(北海道ではさらに旭川や帯広にスーパーチャージャー設置という情報もありますが)。

【走行結果④】札幌スーパーチャージャー→道の駅おとふけ(音更町)
●走行距離:196km
●消費電力量:96.9%→50.3%
●平均電費:175Wh/km(5.71km/kWh)
●外気温平均:マイナス8℃~マイナス16℃

札幌から約200kmを走り、道東の玄関口である帯広に到着です。道東自動車道音更帯広インターの目の前にある道の駅おとふけには、50kW級の急速充電器が2台も設置されています。チャデモ規格の経路充電としては極めて実用的な充電スポットとなります。

また、札幌〜帯広間については、日中の走行であったということ、そして降雪がほとんどなかったので、外気温はマイナス16度まで下がっているものの、電費は5.71km/kWhと驚異的な効率性を発揮しています。

ちなみに、前述の通り帯広付近にもスーパーチャージャーが設置されるという情報もあり、来シーズンの北海道遠征時には、「帯広スーパーチャージャー」を利用できるかもしれません。

真冬に北海道をEVで旅行する方は少ないでしょうが、夏であれば、札幌から帯広に走るケースは少なくないでしょうから、帯広付近に設置されるスーパーチャージャーは重宝されることでしょう。

【走行結果⑤】道の駅おとふけ→陸別町小利別地区
●走行距離:108km
●消費電力量:91.5%→59.6%
●平均電費:211Wh/km(4.74km/kWh)
●外気温:マイナス6℃~マイナス20℃

「日本一寒い町」である陸別に到着

ついに最終目的地、「日本一寒い町」である陸別町(りくべつちょう)に到着です。特に今回は、その陸別の中でも寒さが厳しくなる小利別(しょうとしべつ)地区という、日産の陸別試験場もほど近い場所となります。到着時の外気温がマイナス20℃で、まず本州では体感できない、想像を絶する寒さでした。

函館からのトータルでは、走行距離が627km、平均電費は201Wh/km(4.98km/kWh)となりました。走行ルートの大部分で高速道路を使用、途中豪雪による電費悪化、外気温が最低マイナス20℃という点を加味すれば、実は驚異的な電費性能であると感じます。

このようにして、埼玉県さいたま市から北海道陸別までトータルで約1350kmという超ロングトリップを走破することができました。

途中の電欠は完全に私自身のミスとはいえ、充電コネクターの凍結は想定外でした。ただしこれは、ドライバーである私自身が時間に余裕を持って走行し、もっと手前で10分ほどだけでも充電していれば回避できたトラブルでもあります。

いずれにしても、ことに仙台以北ではおおむね氷点下という極寒環境下においても充電回数は4回ほどで1350kmを走破できてしまうと考えると、充電インフラも含めたEVの進化を実感できると思います。

特にテスラは独自のスーパーチャージャーネットワークを札幌まで整備しているため、そのスーパーチャージャーを辿るだけで日本の大部分にリーチすることが可能という点は、テスラの充電ネットワークの強みであることを改めて実感できました。

後編では、その陸別で実施した車中泊において、マイナス20℃を遥かに下回る日本で最も寒い超極寒環境下において、どれほどの暖房消費量となってしまうのか、そもそも断熱性能はどれほどであるのか、一晩極寒環境に晒された場合、トラブルなく再始動することはできるのかなど、EVの超極寒環境下における気になる性能についてレポートする予定です。

取材・文/髙橋 優EVネイティブ※YouTubeチャンネル)

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