102回目のパイクスピーク開幕/今年は総合優勝もEVか!?

インディ500に次ぐ、世界で2番目に古いレースといわれ、すでに100年以上の歴史を持つパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムが今年も開幕した。今回の注目は、過去3度総合優勝し「キング・オブ・ザ・マウンテン」の称号を与えられているロビン・シュート、そしてWRCドライバーのダニ・ソルドらを擁し、ヒョンデが持ち込んだIONIQ 5 N。まずは、予選のレポートです。

102回目のパイクスピーク開幕/今年は総合優勝もEVか!?

テスラ車が姿を消し、リビアンは継続参戦

パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(通称:パイクスピーク)は、標高4302mのパイクスピーク山(アメリカ・コロラド州)の山頂を目指し、誰が一番速く駆けあがることができるかを競う、ヒルクライムレースです。1916年に初開催し、以後大戦の影響で開催できなかった年もありますが、今回で102回目を数える歴史あるレースです。

過去には日本人ドライバーである田嶋伸博(通称:モンスター田嶋)選手が大会6連覇して活躍したことをご存じの方も多いでしょう。ただ当時は未舗装のダート路面でしたが2012年からは全舗装のコースとなっており、印象はだいぶ変わっています。

このヒルクライムレースは、山頂に向かう道を1台ずつアタックしてタイムを計測します。そのコースはいわゆる観光道路で普段は登山客らが使用するパイクスピークハイウェイの山頂側、約20kmのコースを使用します。スタート地点の標高は2862mで、山頂がゴールです。その高低差は約1440mとなります。このイベントは年に一回のみ、毎年7月4日の独立記念日の前の週末に開催されており、今回は6月23日(日)に開催となります。

ちなみに、このパイクスピークのコースレコードは、2018年にロマン・デュマ選手が駆って走っているフォルクスワーゲンのEV、I.D.Rパイクスピークの7分57秒148となっています。

EV勢(パイクスピークオープン、エキシビション)の予選結果

今回の大会には、5台のEVが出走します。エキシビションクラスにヒョンデが3台(当初は4台でエントリーをしていましたが、市販車に乗る予定だったキング・オブ・マウンテンのポール・ダレンバックが事前練習でガードレールを乗り越えて横転しマシンは大破したため出走取消となっています)。その内訳はアイオニック5Nの市販車が1台、アイオニック5N TA Spec(タイムアタック仕様)が2台となります。

充電の設備も各チームともバラバラ。ヒョンデは発電機を2基と、ABMの急速充電機を2基用意。

ドライバーは、TA仕様の198号車(2025年式Hyundai Ioniq 5 N TA Spec)にダニ・ソルド、49号車(2025年式Hyundai Ioniq 5 N TA Spec)にはロビン・シュート、市販車の13号車((2025年式Hyundai Ioniq 5 N)にロン・ザラスが乗車します。

リヴィアンは、レースカーのトレーラーをけん引するのもリヴィアンR1T。サポートには同じカラーリングが施されたバンが用意されている。充電器は持ち込んではいない様子。

他には、Rivian R1T(#21 2024年式Rivian R1T/ガードナー・ニコルズ)とフォードF150(#150 Ford F-150 Lightning SuperTruck/ロマン・デュマ)が参戦します。リヴィアンは昨年に引き続いての参戦となります。STARDが仕上げてきたフォードF150は、基本パッケージは昨年参戦したフォードSuperVan 4.2と共通のようです。一方で、昨年まで数台が参戦していたテスラ モデル3およびモデルS Plaidは一台も見当たらず、でした。

600kWhの蓄電池を持ち込んだのはF150を走らせるSTARD。

パイクスピークでは、レースで使用する20kmほどのコースは通しで走行する機会は決勝日以外だけです。事前に練習日が設定されていますが、コースをロア/ミドル/トップの3つのセクションに分け、参加者のほうも3グループに分けて、3日間にわたって順繰りに走行を行うパターン。その練習セッションのうちのスタートからグレンコーブ手前までのロアセクションでの走行がそのまま予選となります。

練習走行初日にロアクラスの走行を行ったのは、エキシビションクラス、パイクスピーク・オープンの2クラス。この2クラスにEV5台が組み入れられているため、6月18日(火)にEVの全アタックタイムが出ることとなりました。

結果、予選タイムでEV勢最速となったのは、フォードF150が2回目のアタックで3分32秒831というタイムで、パイクスピーク・オープンの予選記録を塗り替えました。50kWhのバッテリーだけで1400馬力を出すF150。昨年総合2位となったスーパーバン(決勝タイムは8分47秒682/予選タイムは3分39秒939)より7秒ほど速くなっています。今日の時点での最速タイムでもあり、残り2日間の予選を待たねばいけませんが、他に目ぼしい参加者も不在なだけに、現コースレコード保持者のロマン・デュマが、今年も優勝の可能性が高いことが想像できる結果となりました。

ヒョンデ・アイオニック5 N TAスペックを駆る、WRC(世界ラリー選手権)で優勝経験を持つダニ・ソルドは、3回目のアタックで記録した4分01秒514がベストタイムとなりました。量産車のアイオニック5Nでアタックしたルーキーのロン・ザラスは、4分28秒796となりました。この日1回だけ走行を行った「キング・オブ・マウンテン」のロビン・シュートは、本格的なアタックをしないままこの日の走行を終えることとなり、この日1回だけ走行した5分09秒65のタイムが記録されることとなりました。

リヴィアンR1Tは、市販車のままでブレーキパッドを交換して参戦していましたが、ブレーキトラブルを抱えて走行をし、結局その1本のアタックだけで終了となってしまいましたが、それでも4分39秒861というタイムとなりました。

各参加者が「今年は暖かい」という挨拶を交わしていましたが、例年よりも気温高めで始まった練習走行日。今週のパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムの天候がどう変化するかも気になるところです。

決勝は、改めてレポートします。

取材・文/青山 義明

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 電動車両は今すべての面で改善されています。これらのレースに賭けたいですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					青山 義明

青山 義明

自動車雑誌制作プロダクションを渡り歩き、写真撮影と記事執筆を単独で行うフリーランスのフォトジャーナリストとして独立。日産リーフ発売直前の1年間にわたって開発者の密着取材をした際に「我々のクルマは、喫煙でいえば、ノンスモーカーなんですよ。タバコの本数を減らす(つまり、ハイブリッド車)のではないんです。禁煙するんです」という話に感銘を受け、以来レースフィールドでのEVの活動を追いかけている。

執筆した記事