EV用充電スポット情報を支える「EVsmart Data API」の舞台裏/内容はスタッフ確認が基本

EVユーザーにとって充電スポット検索アプリは必須のツール。そんな検索アプリの充電スポット情報を支えているのが「EVsmart Data API」です。このデータは「EV充電エネチェンジ」をはじめ多くのサービスで活用されています。2万カ所を超える充電スポットの情報をどのように集め、アップデートしているのか。中の人にインタビューしてみました。

EV用充電スポット情報を支える「EVsmart Data API」の舞台裏/内容はスタッフ確認が基本

※冒頭写真は、東京都世田谷区あたりのEVsmart地図検索画面。公共のEV充電スポットはこれからもどんどん増えていきます。

日産やENEOSのサービスにも採用

先日、「祝! 10周年」の記事をお伝えしたように、「EVsmart」は日本で最も多くのEVユーザーに活用されている充電スポット検索アプリのサービスが原点です。登録されている充電器数は、急速が8,633件、普通が1万3,849件(2024年9月現在)。基本的に日本国内の公共用EV充電スポットを網羅。各充電スポットの出力や台数(口数)、利用可能時間などの基本情報はもちろん、実際にそのスポットで充電したEVユーザーさんから寄せられた「口コミ」13万件以上が蓄積されており、充電器設置場所の説明や、スポット利用のコツなど、利用者本位の情報が得られるようになっています。

2022年にEVsmartの運営会社がENECHANGE株式会社(エネチェンジ)になってからも、長年蓄積してきたデータは、生まれ変わった充電スポット検索アプリ「EV充電エネチェンジ」で活用されているのはもちろん、「EVsmart Data API」としてさまざまな企業のサービスで利用されています。

「EVsmart Data API」公式サイト

「EVsmart Data API」を活用しているサービス例
●NissanConnect アプリ/カーナビゲーション(日産自動車株式会社)
●ENEOS Charge Plus アプリ(ENEOS株式会社)
●EVカーナビ by NAVITIME(株式会社ナビタイムジャパン)
●EasyEVアプリ(フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社)
●おでかけEVアプリ(株式会社ナビゲート)

EVユーザーであれば、自分のスマホに複数のアプリをインストール済みって方も多いでしょう。「EVsmart Data API」は自動車メーカーや充電サービスの枠を超え、EVユーザーにとって不可欠な充電スポットの情報提供を支えているのです。

とはいえ、急速と普通を合わせると2万件を超える充電器の情報は膨大であり、今も新しい充電スポットが続々と誕生しています。はたして、充電器情報はどのように集められ、日々メンテナンスされているのでしょうか。私自身、2018年の年末から5年以上EVsmartブログで寄稿しているのに、曖昧にしか知らなかったので、今回改めて「中の人」へのインタビューをお願いしました。

お話を伺ったのは、ENECHANGE株式会社エネルギークラウド事業部(EVsmartデータチーム)の草間翔太さん、福田優希菜さん。そして、高原由起子さん、道端知恵さんの4人です。高原さんと道端さんは、10年前にEVsmartをローンチしたアユダンテ時代から(道端さんは途中加入)データ収集やメンテナンスを担当しています。

写真左から、福田さん、高原さん、道端さん、草間さん。

掲載情報は電話やメールでしっかり確認

個別の回答をあまり細かく紹介するとかえってわかりにくくなりそうなので、私の質問とEVsmartデータチームからの回答を端的にまとめてご紹介します。

疑問/充電器の詳細な位置情報とか、どうやって調べてるんですか?

EVsmartは、施設のどの位置に充電器があるのかといった細かいところまで、かなり正確に情報を得ることができる(地図で正確な場所が表示される)のが特長です。いったい、どうやって調べているのか質問すると「設置した事業者さんや設置作業を担当した業者さんから情報提供をいただくこともありますし、アプリ利用者からの口コミをいただいて、設置場所の事業者さんに電話やメールで連絡を取り、裏を取ってから掲載するケースなどがあります」とのこと。

利用者の口コミは大切な情報源。口コミでは充電器の位置ばかりでなく、不具合などの情報もあります。そうした場合も、やはり設置場所の事業者など(充電器管理の責任者)に連絡して寄せられた情報の裏を取り、必要に応じて改善や対策をお願いすることも。つまり、EVsmartやEV充電エネチェンジに掲載されているデータはしっかり担当者が確認した情報であるということですね。

疑問/新設も多いし、情報のアップデートは大変ですよね?

公共用EV充電インフラには2013〜2015年くらいに設置されたものが多く、数年前から充電器の更新(リプレイス)が多くなっています。また、ここ数年は国の充電インフラ補助金の予算増額が続いていて、急速・普通ともに新設のペースが上がっています。

最近は「平均して毎週100件くらいは新設や更新の情報を掲載している」といった状況とのこと。たとえば「少し前から特定ディーラーの急速充電器入替が多くなったり、自治体が設置して無料だった充電器が有料になるケース」が増えているとのこと。「機器が老朽化して利用者が少ないなどの理由でサービスが休止される」充電器もあります。そうした「更新」や「変更」、「休止」などの情報も、きちんと確認の上でアップデートされています。

疑問/利用者の口コミが有効活用されているんですね?

充電器個別の情報は、たとえばe-Mobility Power(eMP)からは毎週データが提供されているそうです。とはいえ、故障などの不具合や利用者視点での使いにくさといったユーザー目線の情報は、やはり口コミが重要なソースになるとのこと。

口コミの窓口となる「EV充電エネチェンジアプリ」には「毎日100〜200件ほど」の投稿があり、現在は口コミ情報を有効活用するためにAIを活用。「投稿の中に故障や不適切を指摘する情報があるかといった内容をAIで判別して、社内のSlack(業務用コミュニケーションツール)で共有。それぞれの処理すべきルートで対応」するスキームができているそうです。

EV充電エネチェンジでは、充電スポットの写真とコメントを口コミ投稿するとポイントが貯まる「エネチェンジEVサポーターズ」を実施(第一期は2024年11月30日まで)しています。登録者数は1,000人を超え、「充電スポット情報のアップデートを手伝ってくれるEVユーザーの数がどんどん増えているのは、われわれ(EVsmart Data API)の強みになっています」とのこと。EVsmart Data APIの充電スポット情報がEVユーザーの利便を支え、EVユーザーの協力がEVsmart Data APIの情報の精度を支えているということですね。

また、口コミに寄せられた「使いにくかった」といった情報が設置施設に伝達されて改善されることで、EVユーザーにとってより使いやすく便利な充電インフラの実現に役立っているということになります。

ちなみに担当者としてありがたいと感じる口コミ情報のポイントは、やはり設置場所の正確な位置。「設置されている位置がわかりやすい写真の投稿があるとすごくうれしいです」とのことでした。

疑問/EVsmart Data API活用の新たなアイデアとかありますか?

EVsmart Data APIはさまざまなサービスで活用されています。でも、せっかく手間を惜しまずアップデートしている情報ですから、さらに多様な活用法はないものか。EVsmartデータチームの草間さんに「さらにこんなサービスで活用してほしい」というアイデアはないですか? と質問してみました。

「今後、EVユーザーがどんどん増えていくほどに、常にメンテナンスされている『生きたEV充電スポット情報』の意義が高まっていきます。今まで、全国を網羅した大規模な情報サービスで活用いただく事例が多いですが、たとえば、自治体や地域の観光協会がエリアを絞った情報提供のサービスを構築するような使い方をしていただけると面白いですよね」と草間さん。

EV普及と充電インフラ拡充はしばしば「ニワトリとタマゴ」と喩えられます。自治体が企業などにEV導入を促すにしても、地域の充電インフラの最新情報を確認できるサービスの存在は有意義だと感じます。また「研究機関や大学などで活用していただけるといいですね」(草間さん)とのこと。まだそうした事例は実現していませんが、「興味があれば、ぜひエネルギークラウド事業部に相談してください」とのこと(問い合わせなどは公式サイトのフォームから)でした。

まだまだ変わるEV充電〜APIもさらなる進化を!

日本における公共用EV充電インフラの多くを運用しているeMPでは、急速充電器の高出力複数口化を進めるのと併せ、2025年をメドに従量課金制の導入が検討されています。自動車メーカーが発行している「充電カード」はeMPと提携しているので、2025年には各社カードの仕組みにも大きな変革があるはずです。

目的地の普通充電を中心にサービスを展開するEV充電エネチェンジをはじめ、急速充電も含めて多くの充電サービス事業者が登場し、拠点を拡大しつつあります。日本のEV充電インフラはまだ進化の途上にあって、情報は日々アップデートしていかなければいけません。

「私自身、100kW以上で急速充電可能なEVのユーザーですが、アプリのマップで充電スポットを検索すると、あれ、このあたりには出力が20kWや40kWの急速充電しかないぞとか、少し不安を感じるケースがあります。EVsmart Data APIで正確な充電インフラ情報をお届けすることで、このあたりにはもう少し高出力器が必要という気付きを促すなど、充電インフラのより理想的な拡充と、ひいてはEV普及の促進に貢献していけるといいですね」(草間さん)

充電スポットへの口コミは、ほかの利用者はもちろん、充電サービス事業者や関係各所のご担当者も見ています。みなさんからの口コミが「EVユーザーのニーズや要望」を関係者に伝達し、充電インフラの利便性を高めることにも繋がる可能性もあるのです。

どんなにEVや充電インフラが進化しても、EVユーザーと充電スポットを繋いでくれるのは充電スポット検索アプリと、その裏側を支えるEVsmart Data APIがあってこそ。地道に毎日の情報収集とアップデートに取り組んでいるEVsmartデータチームの活躍に感謝しつつ、これからも応援したいと思います。

取材・文/寄本 好則

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

執筆した記事