愛犬「ポム」と軽井沢へ一泊二日の旅へ
犬をクルマに乗せてドライブすると「車酔いしたり無駄吠えしちゃって困っている」という愛犬家の方も多いのではないでしょうか。はたして、EVドライブではどうなのか。実録レポートをお届けしたいと思います。
まず私は日産リーフ40kWhとテスラモデルYの2台のEVを所有しており、実家も日産サクラを運用しています。そして実家では犬を2匹飼っているのですが長距離旅行に連れていくにはサクラのバッテリー容量だと若干心許ありません。ということで私が所有するテスラモデルYで愛犬ポムと1泊2日のドライブ旅行へ出かけることにしました。目的地は犬と一緒に入れる飲食店などが多い軽井沢をチョイス。自宅の埼玉県から出発します。
【経路①】さいたま市街→道の駅あがつま峡(群馬県)
走行距離:127km
消費電力量:33.2%(87%→53%)
平均電費:179Wh/km(5.59km/kWh)
外気温:27℃(さいたま市街)→20℃(道の駅あがつま峡)
モデルYでさいたま市から軽井沢へのドライブなので、状況次第で無充電走破も可能な距離。充電はあまり気にしていませんでしたが、ルート紹介の意味で走行データを記録しておきます。
今回、軽井沢方面へのルートは関越自動車道を使って群馬県の渋川伊香保ICまで走り、その後は下道で中之条・長野原方面を北上しました。途中、道の駅あがつま峡で人間も犬も休憩を行いました。犬を飼われている方にとっては当然のことでしょうが、犬にとって移動する車内は人間以上にストレスを感じる空間ですので、おおむね2時間に1回ほどリフレッシュのために散歩させるのがベター。私はいつもそうしています。
ドッグランを供えた道の駅もありますし、そうでなくても芝生の広場など犬を散歩させやすい環境が整備されていることが多いです。もちろんしっかりリードは付けて、ルールを守って犬と一緒にくつろぎましょう。
モデルYでは「ドッグモード」を活用
今回立ち寄った道の駅あがつま峡には20kW級の急速充電器が設置されていますが、モデルY(というよりほとんど全てのBEVが該当)で使用するにはスペックが低すぎます。同じ充電料金を払うのであればせめて50kW以上の急速充電器を使いたいので充電は行いませんでした。
テスラ車の場合、散歩を終えて人間がトイレに行く際はドッグモードを使用します。ドッグモードを起動すると、ドライバーが車を離れている間に「ドライバーはすぐに戻ってきます。心配しないで!ヒーター(クーラー)が〇〇℃でONになっています」という表示が大画面に表示されたままとなります。
近年犬や乳幼児を車に放置して問題になるケースが増えていますが、このドッグモードを使用すれば、外を歩く人にも車内でエアコンが起動していることが一目瞭然となり安心感につながります。エンジン車と違ってアイドリング時に音や振動、排気ガスを出すこともなく、車内に残った犬も快適です。
とくに一人で犬と旅行する場合、どうしても犬を車内に放置する時間が発生してしまいがちなので、このドッグモードはドライバーにとっても犬にとっても、そして周りの人たちにとっても安心の機能でしょう。この旅行の間は短時間でも車内から離れる際は必ずドッグモードを使用しています。
犬と一緒に楽しめるカフェで食事
【経路②】道の駅あがつま峡→鬼押出し園(上信越公園国立公園)
走行距離:32km
消費電力量:13.3%(53%→39.7%)
平均電費:281Wh/km(3.56km/kWh)
外気温: 20℃(道の駅あがつま峡)→17℃(鬼押出し園)
北軽井沢にある鬼押出し園にやってきました。ここは高山植物を観察できる施設で、犬を連れて散歩させることもできます。
さらに、鬼押出し園を後にして、そこから程近い「Mama’s Garden」さんにお邪魔しました。ここは犬と一緒に食事をすることができる飲食店です。軽井沢には多数の犬ウェルカムなカフェが立ち並んでいるので犬連れでも安心です。
食事を終えた後は北軽井沢から南下して佐久市街で車中泊することにしました。41km走行していますがたったの3.4%しか消費していません。これは標高の高い北軽井沢から佐久市街にかけて下っていることが理由です。
また、エネルギー消費を示すグラフを見てみても、予測との乖離が非常に小さいことがわかります。テスラは走行距離とともに外気温や天候状況、標高差、さらに車内の電装系の使用状況など、電費に影響する様々な要素を考慮に入れて消費電力量の予測を行うため、他社EVと比較しても優れた予測の正確性を実現しているのです。
ワンコ関連のゴミの管理はフランクを活用
一晩車中泊を行いました。朝になったのでトイレさせるために近隣を散歩させます。犬を連れて旅行する際、散歩させた後は手足が汚れるので毎回拭く作業が発生します。車内だとどうしてもシートが汚れてしまったりするのですが、ボンネット下のフロントトランク(通称フランク)があるEVであれば、そこを一時待避場所として手足を拭くことができます。その際に出たゴミなどもフランクに一時保管しておけば、車内にゴミを放置する必要もなく快適です。
また、夜間は排気ガスを出さずにエアコンをつけておくことができるので人も犬も快適です。ガソリン車の場合は条例違反なのでエアコンをつけて(アイドリングしたままで)車中泊を行うことはできませんので、特に寒さ対策が難しい犬にとっては、間違いなくエアコンをつけっぱなしにできるEVの方が快適なはずです。
軽井沢プリンスショッピングプラザに到着しました。ここも犬を連れて買い物や食事をすることができます。さらにテスラスーパーチャージャーが設置されているのでSOC11%から充電を行いました。
一人で犬と旅行する場合どうしても人間のトイレが後回しになるのですが、今回は先に私がトイレ休憩をとって、さらにポムにおやつをあげたりする間にSOC80%以上まで回復してしまいました。充電のために待ちぼうけする必要は全くありません。
【総合結果】さいたま市街→嬬恋村→佐久→軽井沢→さいたま市街
走行距離:375km
消費電力量:約97%分
平均電費:150Wh/km(6.67km/kWh)
さいたま市街の自宅に戻ってきました。復路の消費電力量予測も完璧と言える内容であり、EVの長距離の経験がない方も、法定速度を超過するといった走行条件でもなければ、ルートを設定してテスラの予測した充電残量を信じて走ればOK。余計な充電の心配をせずとも問題ありません。
また、総走行距離は375kmと控えめでしたが、犬とゆったり回るとこれでも1泊2日でちょうどいい感じに楽しめたイメージです。トータル平均電費も150Wh/kmとハイパフォーマンスSUVとしては国内で発売されているEVの中では頭ひとつ抜けた効率性を実現している様子が見て取れます。
1泊2日のドライブで使用した電力量は約97%分でした。全体的に飛ばし気味で走行しているという点、および途中の車中泊やドッグモード、セントリーモード(駐車中に車両に触れたり接近した人間を自動録画する機能。通常の駐車時と比較しても余分に電力を消費してしまう)を常時起動していたことを考慮に入れれば、まずまずの結果でしょう。
この結果は、全く充電せずに埼玉市街まで帰ってくることも可能だったことを示しています。現在EVの購入を検討されている方の中で、今回の埼玉=軽井沢程度しか長距離を走らないと考えている方は、急速充電の必要性の有無を考えるヒントにもなるかもしれません。今回は車中泊で軽井沢のスーパーチャージャーを利用しましたが、泊まる宿や途中の飲食店、レジャー施設などに普通充電設備があれば、経路の急速充電は必要ないというケースが多くなります。
テスラ車であれば、スーパーチャージャーのネットワークが全国で拡大中。軽井沢でも中心部に位置するショッピングプラザにスーパーチャージャーが設置されています。何よりもスーパーチャージャーの充電速度であれば、人間のトイレや犬の休憩をこなしているだけで80%以上まで充電できてしまいます。充電後はさらに300km以上は余裕を持って走行できることになるわけですから、EVの長距離走行で全く充電に気を使っていない様子もイメージしていただけると思います。
いずれにしても、愛犬を連れて1泊2日のEV車中泊旅行は、想像以上に快適な結果となりました。
EVは犬にも優しいという調査結果が
さらに、今回の旅行の実体験に関連して紹介したい調査結果があります。イギリスのリンカーン大学がオンライン自動車売買サイトであるCarGurusと共同で行った犬とEVに関する研究です。20匹の犬が参加し、それぞれの犬は1回はEV、続いて同じルートをディーゼル車で各10分間走行。さまざまな科学的尺度を用いて犬の行動を分析しています。いくつかの注目するべき結果を紹介します。
●研究対象となった犬はパワートレインに関係なく、移動時間の約3分の1の間横たわっていたが、ディーゼル車に乗っている犬はEVよりも横たわった姿勢を崩す時間が平均で50%長かった。
●少数の犬がディーゼル車に比べてEVに乗っているときに吐き気を著しく軽減したように観察できた。これはEVに乗っているときに66%の犬の心拍数が最大 30% 減少したという事実から考察可能。
●ディーゼル車とEVの両方で犬と一緒にドライブした参加者は、ディーゼル車と比較してEVの方がより落ち着きがあり(39%)、穏やかで(43%)、不安が少ないように見え(42%)、泣き声も少ない(45%)と回答。
これらの結果から、EVはディーゼル車よりも比較的リラックスしている様子が確認できると結論づけており、主に騒音や振動の少なさがEVのリラックス効果に寄与していると推測しています。
「EVにしたら愛犬が車内で大人しくしているようになった」といった声を、EVオーナーの知人から聞いたこともあります。実際に我々ドライバーや同乗者も同じく、EVの方が騒音や振動が少ないことで長距離移動が楽に感じる方は少なくないのではないでしょうか? 私は日本で発売されているさまざまなEVで3000km以上の長距離遠征を何度も行っていますが、今後は内燃機関車で同様の検証を行って、その疲れ方に違いを感じるのかもレポートしてみたいと思います。
いずれにしても愛犬家の方々は、次のマイカー候補にEVを検討してみるのがいいかもしれません。
文/髙橋 優(EVネイティブ※YouTubeチャンネル)