最大150kW器が4口ズラリ〜EV用急速充電器「赤いマルチ」全国16カ所で順次運用開始

e-Mobility Powerが最大出力150kWの新型4口マルチコネクタタイプ急速充電器「赤いマルチ」を設置した急速充電ステーションを、全国16カ所で2025年1月17日から順次運用開始することを発表しました。次年度以降、公共用急速充電インフラのさらなる進化に期待です。

最大150kW器が4口ズラリ〜EV用急速充電器「赤いマルチ」全国16カ所で順次運用開始

中央道八ヶ岳PA(下り)で1月17日から運用開始

高速道路SAPAなど、日本のEV用公共充電インフラの拡充と運用を担う株式会社 e-Mobility Power(eMP)が、2025年1月16日、『電気自動車向け新型急速充電器「赤いマルチ」を設置した充電ステーションの運用開始』を発表しました。

赤いマルチとは、eMPとニチコンが共同開発した新型4口マルチコネクタタイプ急速充電器のこと。4台が同時に充電しても1口最大90kW出力での充電が可能です。基本的に1カ所のステーションに4口以上が並ぶので、1基1口設置のステーションと比べて充電待ちのリスクは大幅に減少。EV普及に向けて重要な「高出力器複数口設置」をハイレベルで実現する新型超急速充電器です。

新型の赤いマルチは、1月17日に中央自動車道八ヶ岳PA下り線で運用開始。全国16カ所で順次運用が開始されることが示されました。
※冒頭写真は八ヶ岳PAに新設された赤いマルチ。

●「赤いマルチ」設置予定の充電ステーション一覧および運用開始予定時期リスト

No.設置場所口数(最大出力)運用開始時期
1中央自動車道八ヶ岳PA(下り)4口(150kW)2025年1月17日
2山陽自動車道下松SA(上り)4口(150kW)2025年1月下旬
3山陽自動車道下松SA(下り)4口(150kW)2025年1月下旬
4東九州自動車道別府湾SA(下り)4口(150kW)2025年1月下旬
5館山自動車道市原SA(上り)4口(150kW)2025年1月下旬
6館山自動車道市原SA(下り)4口(150kW)2025年1月下旬
7中央自動車道談合坂SA(上り)6口(150kW、90kW)※12025年1月下旬
8中央自動車道談合坂SA(下り)6口(150kW、90kW)※12025年1月下旬
9東海北陸自動車道長良川SA(下り)4口(150kW)2025年1月下旬
10西名阪自動車道香芝SA(上り)4口(150kW)2025年1月下旬
11山陽自動車道小谷SA(上り)6口(150kW、90kW)※12025年1月下旬
12山陽自動車道小谷SA(下り)6口(150kW、90kW)※12025年1月下旬
13北九州自動車道北熊本SA(上り)4口(150kW)2025年1月下旬 ※2
14小田原厚木道路大磯PA(上り)4口(150kW)2025年2月
15北九州自動車道北熊本SA(下り)6口(150kW、90kW)※12025年春
16名神高速道路養老SA(下り)4口(150kW)2025年夏
※1 赤いマルチ4口のほかに1口最大90kWの急速充電器2口を設置。
※2 サービスエリアのリニューアルオープンに合わせ2024年12月18日より仮運用中。

発表されたSAPAをGoogleマイマップにプロットしてみました。テキストリンクか画像をクリックするとGoogleマップが表示されます。

赤いプロットは上下線、緑は下り線のみ、青は上り線のみに設置されるスポットです。こうしてみると、西高東低であることが明確ですね。北海道や東北、北陸、四国なども含めて、高速道路ネットワークの150〜200kmごとに赤いマルチが設置される日を待ち望みます。なぜ東日本に少ないのか理由はわからないですが、がんばれ、NEXCO東日本です。

「赤いマルチ」と「青いマルチ」の違い

eMPのニュースリリースでも新型4口マルチコネクタタイプ急速充電器を「赤いマルチ」と呼び、最大90kWのマルチコネクタタイプ急速充電器を「青いマルチ」と呼んでいます。どちらもeMPとニチコンが共同開発したもので、高出力の電源をケーブル吊り下げ式の複数のディスペンサーで共有する仕組みになっています。

【赤いマルチ】
総出力:400kW
1口最大出力:150kW(最大15分間のブーストモード時)
設置口数:4口
<特長>
●2台同時充電時でも1口最大150kW出力で充電可能。
●ブーストモード終了後は最大90kW出力。
●最大4台での同時充電が可能。(1口最大90kW)

【青いマルチ】
総出力:200kW
1口最大出力:90kW(最大15分間のブーストモード時)
設置口数:4〜6口
<特長>
●2台同時充電時でも1口最大90kW出力で充電可能。
●ブーストモード終了後は最大50kW出力。
●最大4〜6台(設置口数分)での同時充電が可能。
(1口の出力はパワーシェアリングで配分)

中央自動車道諏訪湖SA(下り)の青いマルチ。

赤、青ともに最大出力は15分しか継続しないブーストモードを採用しています。ブーストモードは大電流によるケーブルの発熱に対処する方法です。青いマルチは15分経過すると最大50kW(125A)に制限されますが、赤いマルチの場合最大90kW(200A)への制限なので、急速充電性能が高い大容量EVでも大きなストレスを感じることなく利用できると思われます。

また、急速充電の出力はEV側の受け入れ性能によって異なります。たとえば日産サクラは最大30kWの性能なので、赤や青のマルチはオーバースペック。マルチのステーションは人気になって混雑しやすいことが想定できるし、充電カードを保有せずビジター利用すると料金が高額なので、前後のSAPAにある50kW以下の充電器を上手に活用するのもオススメです。

「赤いマルチ」使いこなし方のコツ

今回、eMPのニュースリリースでは「複数台同時充電時の留意事項」として、赤いマルチの使いこなし方へのアドバイスが紹介されていました。以下、解説図とともに引用します。

4台あるディスペンサ部のうち,左側2台を電源盤Aから,右側2台を電源盤Bから供給するため,同時充電台数が2台の場合でも,左側2台のみ又は右側2台のみを利用して同時充電した場合は,1口最大出力が90kWとなりますのでご留意ください。また,同時充電台数が3台の場合は,1台が1口最大150kW出力,2台が1口最大90kW出力となります。

【2台同時充電時、150kW出力となる場合の例】
●左から1番目、3番目のディスペンサを同時利用する場合

●左から2番目、3番目のディスペンサを同時利用する場合

【2台同時充電時、90kW出力となる場合の例】
●左から1番目、2番目のディスペンサを同時利用する場合

【3台同時充電時の出力配分例】

つまり、赤いマルチで先客が1台充電していたら、出力に影響する隣接した区画を避けて充電を始めるのが賢明、2台がともにハッピーということですね。3台目になる場合「ディスプレイを確認して残り充電時間が少ない方へ」なんてことは面倒だし区画外にクルマを停めてウロウロするのは危険でもあるので、気にしなくていいかと思います。理屈としてはシンプルなので、EVユーザーとしてはぜひ理解しておきたいポイントです。

なにはともあれ、昨年末の社長インタビューでの明言通り、年度内に16カ所の赤いマルチ運用開始が実現するであろうことはEVユーザーにとって朗報です。従量課金の実現や月額会費の値下げなど、さらなる充電インフラとサービスの進化を期待しています。

文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)1件

  1. eMPとNEXCOは高速道路に使いづらい充電器を設置しまくるのをやめて、もっと使いやすい充電プロパイダに設置の道を開いてください

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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