著者
カテゴリー

ヒョンデのコンパクトEV『インスター』に横浜で試乗/この「気持ちよさ」が300万円以下で手に入るとは

ヒョンデのコンパクトEV『インスター』に横浜で試乗/この「気持ちよさ」が300万円以下で手に入るとは

ヒョンデ『INSTER(インスター)』のメディア向け試乗会が横浜で開催されて、高速道路走行などを確かめてきました。印象としては「想像より、相当気持ちいい」感じです。ADASの安心感は高く、とくに回生ブレーキのフィーリングは上位車種であるKONAやIONIQ 5を凌ぐのでは? と感じるほど。オススメは49kWhバッテリー搭載モデルです。

目次

3つのオールマイティ・ポイントを確認

ヒョンデ・モビリティ・ジャパン(HMJ)が、EV普及への気合いを込めて発売したコンパクトEV『INSTER(インスター)』のメディア向け試乗会を神奈川県横浜市で開催しました。もちろんEVsmartブログも参加。試乗時間は2時間ほどで急速充電を試せるような長距離ドライブはできませんでしたが、首都高や横浜横須賀道路など50kmほどを試乗した印象をレポートします。

「想像より、相当たのしい。」というキャッチフレーズをアピールしているインスター。試乗前のプレゼンテーションでは「自由とゆとりをたのしむオールマイティ・スモールEV」を実現するためにこだわった「3つのオールマイティ・ポイント」が説明されました。

どんな感じか、確認していきましょう。

ポイント① カッコかわいいユニークデザインと絶妙なボディサイズ

最初のポイントはデザインとボディサイズです。デザインは人それぞれの好みなので「私は嫌いじゃない」と評価するだけにしておきますが、「全長3,830×全幅1,610×全高1,615mm」というコンパクトなボディサイズで扱いやすいのは絶対的な価値といえるでしょう。

HMJデジタルセールス室の谷津田欣丈(やつたよしとも)室長は、1970年ごろの日本の自動車販売は「5ナンバー」が99%だったのに、2024年には30%にまで少なくなっていること。また、日本国内の道路の8割以上は1970年代以前に整備されていて「79年に発売された4代目カローラとほぼ同じ全幅(1600GTの全幅は1.610mm)のインスターは日本の道で扱いやすいことを説明しました。

これはもう、試乗拠点となったコインパーキングを少し走っただけで納得です。取り回しがいいだけでなく、電気自動車ならではのスムーズな加速で気持ちいいことが、短時間の試乗でも実感できました。

ポイント② 高いEV性能&安心の運転支援システム

電気自動車に不慣れな方にとっては「EV性能って何?」って話でもあるでしょう。今回の試乗で確認できたわかりやすいポイントが、回生ブレーキ制御の気持ちよさでした。

インスターの回生ブレーキ強度は、ステアリング裏のパドルで「0=コースティング」から「iPedal=アクセルペダル操作だけで完全停止が可能」まで選べます。また「オート」を選ぶと先行車の状況などに合わせて自動的に調整してくれます。先に日本発売されたIONIQ 5やKONAも同様にオートは選択できますが、インスターは、オート(スマート回生ブレーキ)を選択しておけば先行車の状況に合わせて完全停止までしてくれることに驚きました。私のKONAには備わっていない新機能です。

また、高速道路走行中などには、コースティング(回生を0にして惰性走行)を多用してくれるので、よりスムーズに走れる印象でした。この点も、昨年購入した私のKONAでは回生を弱めたいと感じて手動でパドルスイッチを操作してコースティング状態にすることがしばしばです。

インスターは日本におけるヒョンデのラインナップでは最も安価なモデルではありますが、最新車種ならではのポイントとして「最も進化した回生コントロール」を実現してきたということでしょう。積極的にEVを販売し、ユーザーの声を聞いて磨き上げてきたヒョンデの「EV性能」を象徴する、本当に気持ちいい進化だと感じました。

回生オートで完全停止までOKって機能、なんなら有料でもいいので、私のKONAにもOTAで降ってくる日を期待したいと思います。

あと、EV性能の大切なポイントである「急速充電性能」は、最大受入電流値が「238A」とのこと。49kWhバッテリーのVoyage(ボヤージュ)とLounge(ラウンジ)の総電圧は310Vなので、CHAdeMO規格の150kW器(最大350A)を使えば、おおむね「310V×238A=約74kW」の出力で充電できる計算になります。30分で30〜35kWh程度は充電できるでしょうから、コンパクトEVとしては必要十分な充電性能を備えていると評価できます。

先進運転支援システムの信頼性も上出来。高速道路で少しくらいの渋滞に遭遇しても、さほどのストレスを感じることなくやり過ごせます。

ポイント③ 自由に使えるスペースユーティリティ

3つめのポイントがスペースユーティリティです。運転席と助手席はベンチシートになっていてフロアがフラットなのでウォークスルーも容易。さらに、後席が秀逸。試乗会に同行したライターの木野さんと途中で運転を交替して後席に座ってみたら……、前後に80mm、合計で160mmも調整できて、前後に14度、合計28度のリクライニングを調整できる後席の快適さがお見事でした。

乗車定員はあえて「4名」で後席に乗れるのは2人だけですが、3人乗れない分だけ、後席乗員の快適さを高めているって感じです。

運転席や助手席までフルフラットにフォールディング(折りたたみ)できるのもインスターのセールスポイント。試しに寝っ転がってみると、車中泊も快適に過ごせそうってことを実感できました。

あと、後席の自由度が高い特長を活かして、折りたたんだ前席をテーブルにして作業や食事といった使い方もできます。

室内V2Lの100Vコンセントがセンターコンソールの下にあるのも、コンパクトな居住空間の中で便利に使えそうです。

普通充電口からAC100Vを取り出すアダプタも標準装備。

インテリア関連で少しだけ残念に感じたのは、ワイヤレス充電トレーがドライバー目線からすると深すぎて、スマホを置くとほとんど画面が見えなくなってしまう点でした。運転中のスマホ注視は御法度ですが、私の場合、不慣れな場所で車載ナビとスマホのナビを併用することが少なくありません。スペースが限られたコンパクトカーなのでやむを得ないというのは理解しつつ「惜しい!」と感じたのでした。

CEV補助金は未定だけど……

インスターのラインナップは、バッテリー42kWhで装備控えめのCasual(カジュアル)が284万9000円〜、49kWhで合理的装備のVoyage(ボヤージュ)が335万5000円〜、49kWhでアンビエントライトや前席シートヒーター&ベンチレーション、デジタルキーなどフル装備のLounge(ラウンジ)が357万5000円〜の3グレードです。

私は基本的に「バッテリーは大きすぎない方がいい」と考えています。でも、インスターの場合は最廉価モデルのカジュアルでは、EVにとってとても重要な装備&機能と考えているエアコンのヒートポンプや高速道路でのドライビングアシスト(ACC)などが割愛されていることから、ボヤージュ以上の49kWhバッテリーを搭載したグレードがオススメです。

先だって、4月1日以降登録分のCEV補助金額が発表(関連記事)されましたが、3月末に型式認定を取得したばかりのインスターの補助金額は4月中に開催される審査会で決まる予定とのこと。

昨年は補助金額が下がったヒョンデですが、今回の発表ではIONIQ 5とKONAがほぼ倍増の67万円になりました。普通自動車の基本上限額85万円に対して約80%程度です。インスターは「小型・軽自動車」の枠で上限は55万円。IONIQ 5などと同様に上限の8割程度と仮定すると、補助金額は40〜45万円程度と予想できます。さらに東京都の場合、ヒョンデのEV購入では25万円(給電機能の加算分10万円を含む)の補助金を申請できます。

ということは、CEV補助金額が40万円と仮定して……。

ボヤージュ/335万5000円ー40万円=295万5000円
ラウンジ/357万5000円ー40万円=317万5000円

さらに東京都の方であれば25万円の補助金を活用すると、ボヤージュが270万5000円〜、ラウンジでも292万5000円と300万円以下の価格でGETできることになります。

なにはともあれ試乗して気持ちよさを体験してみてほしい

実質的かつ実用的な一充電航続距離として余裕で300km以上を走れるはず。つまり、東京から新東名の浜松SAまでノンストップで走れる底力。急速充電性能も必要十分。価格が手頃で遊び心もいっぱい。インスターは、今まで多くの人がEVに対して抱いていた不安や不満をまとめて気持ちよく解決してくれている新型車です。

何がそんなに気持ちいいのか、これはもう、実際に自分で乗って体験してみていただくのが一番です。

ディーラー網を展開せずにオンライン販売を行っているヒョンデですが、試乗の機会はいろいろと用意してくれています。「EVなんて」とか、理由なく心の扉を閉ざすのはもったいない。「ヒョンデ×ファミリーマート試乗会 サクッとINSTERドライブ」や、全国9カ所のショールームで開催中の「INSTERデビューフェア」などのチャンスを活用して、試乗してみることをおすすめします。

取材・文/寄本 好則

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • いい車ですね。昨年発表された時からチェックしていたのですが、なんとうちの機械式駐車場の規格には65mm高すぎる!SUV流行りの弊害で車高が高くなり、私が調べた範囲ではEVの選択肢が二つしかありません。なんとサクラもexクロスも含めて国産EVで収まるものがないんです。フツーのセダン、お願いします。

  • 私も先月の試乗に参加しましたが、数ヶ月おきにしか運転しない「ほぼペーパー」の自分でも分かるくらいInsterの回生ブレーキの性能は良いと感じました。私にとってEVの大きな魅力が回生ブレーキなので、これの性能が非常に優れているとなるとこれだけでも早く乗りたくなります。
    それにしても補助金がほぼ40万円を越えそうなのも嬉しいです。私のような地方在住者は都道府県や市町からの補助金が殆ど期待できないので、どうか少しでも多く貰えますように!

コメントする

目次