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日本初のオフィシャルなBYDオーナーズミーティング開催/BYDの電気自動車82台が日曜日の富士に集結

日本初のオフィシャルなBYDオーナーズミーティング開催/BYDの電気自動車82台が日曜日の富士に集結

EV普及の広がりを象徴するかのようなニュースです。日本で初めてオフィシャルな「BYDオーナーズミーティング」が開催されました。富士スピードウェイに集まったのは82組のBYDオーナーです。BYDの電気自動車ライフはどうなのか? 参加したオーナーの声をお伝えします。

目次

日本初開催のオフィシャルなBYDオーナーズミーティング

2025年4月20日、BYDオートジャパンが主催する日本で初めてのオーナーズミーティングを開催しました。静岡県の富士スピードウェイで行われた「モーターファンフェスタ2025」の中のスペシャル企画として実施されたもので、事前の参加申込は大人気。BYDの電気自動車82台が集まりました。内訳は『シール』と『ATTO 3』が約30台、『ドルフィン』が約20台です。

モーターファンフェスタ2025(主催:モーターファンフェスタ2025運営委員会)は、富士スピードウェイ全体を使って車の楽しさを体感するイベントです。サーキットの本コースではD1グランプリのデモランがあったほか、場内では自動車メーカーやパーツメーカーのブースでいろいろな展示を見学することができました。

加えて新型車の一気乗りができる試乗会や、4WDによる登坂など自動車メーカーが独自色を出す体験イベントも実施されました。

こうしたイベントに交じって、いくつかのオーナーズミーティングも開催されました。そのひとつが、日本初開催になったBYDオーナーズミーティングです。

申し込み受付は3時間で満杯に!

BYDオーナーが初めて一同に会する貴重な機会。日本では決してメジャーなブランドとは言えないBYDのEVが、初めての開催で80台以上も集まったことには驚きました。

日本でのこれまでのBYD車の登録台数が約4000台なので、全体の2%くらいのオーナーが参集したことになります。例えばこの数を日産『サクラ』にあてはめると、1600台以上にもなってしまいます。

これほど多くのオーナーが集まったことは、BYDオートジャパンにとっても望外の喜びだったようです。会場で参加者を迎えたBYDオートジャパンの東福寺厚樹社長によれば「参加者の受付を開始してから3時間ほどで、当初予定の80組の枠が埋まってしまった」そうです。人気アーティストのチケットみたいです。

立ち見も出たオーナーラウンジのプレゼンテーション

三上さんによる技術説明会。

BYDオーナーズミーティングでは、まず午前中に技術説明会と、「社長と語ろう」と題した東福寺社長のプレゼンテーションがありました。

筆者は小田原まで電車で行き、カーシェアサービス『eemo』が取り扱いを始めたBYD『ドルフィン』(関連記事)を借りて富士スピードウェイに向かいました。ライド・アンド・ドライブです。なのですが、小田原からの道のりに意外に時間がかかったのと、久しぶりの富士スピードウェイの中で道に迷ったことで、開始から5分ほど過ぎてようやく会場に入ることができました。

プレゼンテーションの会場は、レースなどでスポンサー対応やファンサービスのために使われるピット上のクリスタルルーム。ちょっとセレブな場所です。会場に入ってみると席は完全に満席で、立ち見の人たちも大勢いました。家族で来ている人も多く、子どもたちが会場に用意されたお菓子楽しんでいました。

まずは技術説明会。アフターセールス技術部門の三上龍哉さんから、BYDの最新プラットフォームの急速充電性能や、BYDがデュアルモードと呼んでいるプラグインハイブリッドシステムなどについての説明などがありました。三上さんは新車発表会などでプレスへの説明も担当するスペシャリストで、深くて広いEVの知見をもった方です。オーナーのみなさんがEVへの理解を深めることに役立ったことでしょう。

「社長と語ろう」のタイトル通りの時間も

東福寺社長のプレゼンテーション。

続けて東福寺社長がBYDの事業展開を解説。4つの柱(電子部品、バッテリーを含む新エネルギー、乗用車、バスなどの都市交通)を軸に事業を展開していること。現在のBYDではグローバルで約100万人の従業員が働いていて、そのうち11万人がエンジニアだということ。EVの販売が減退していると言われることもあるが2050年にはEVが世界の販売台数に占める割合が7割くらいになると見ているなどの話を紹介し、「BYD(の車)はお手元に置きながら他の車もいろいろ試していただくと、とても楽しいEVライフが送れる時代がすぐに来ると思います」と話しました。

プレゼンテーションの後、東福寺社長は来場者と話をしたり、連絡先の交換をしたりしていたようで、「社長と語ろう」というタイトル通りの展開になっていました。

いち早く自社製EVを購入してくれたユーザーの声を企業トップが直接聞くのを見るにつけ、BYDの本気度、関係する人たちの熱意を感じます。BYDは今後も、同様の時間を作っていきたいようです。

一番遠くから来たのは福岡県のユーザー

82台の車が集まるといろいろな人がいます。ということで、来場者の方のお話しを紹介したいと思います。

まず、プレゼンテーションの中で最遠方と走行距離ナンバーワンで表彰されたのは、福岡県から来たハンドルネーム「はなみざか」さんこと角さんです。愛車は『ATTO3』で、昨年3月の納車から1年ちょっとで走行距離は4万9999kmでした。というか、納車後の2カ月で1万kmも走ったそうです。この発言には会場もどよめきました。

はなみざかさんのATTO3は、イベントの締めくくりに行われた本コースのパレードランで走行距離5万kmに到達しました。おめでとうございます!

なお、はなみざかさんは趣味でドローンを使った動画撮影をしていて、撮影のためにあちこち走っていたら距離が伸びたそうです。Youtubeのチャンネルでオーナーズミーティングのこともアップしていたので、見てみてください。

シールの個人タクシーで顧客満足度アップ

異彩を放っていたのは、『シール(SEAL)』を個人タクシーで使っている、東京から来た山口さんでした。

山口さんがシールを購入したのは、BYDの営業担当者から提案されたのがきっかけでした。でも当初は、「EVというマイナスの印象がある上に中国製って、冗談じゃない」と担当者に伝えたと言います。それでも、とにかく乗って触ってほしいと言われたので、「バラさせてほしい」と要望したそうです。

山口さんは元々は車の電装関係の整備をしていたので、分解して作りをチェックすれば車の良し悪しがわかると考えたそうです。話せばわかるとは言いますが、バラせばわかるというのも理にかなってると思います。

実際に分解チェックしてみた山口さんは「日本製、ヤバいな」と思ったそうです。「それくらい作りがいいし、革の質もいい。全部見て、これはおもしろいと思った」。

山口さんは個人タクシーで、固定客が中心なので、車を入れ替える時にはいつもなじみのお客さんに可否を聞いているそうです。今回もBYDのEVにしてもいいかと確認したところ、8割の人がおもしろそうだという反応で、入れ替えを決定したと言います。

実際お客さんを乗せてみると評判は上々で、入れ替え前より指名が増えたそうです。加えてランニングコストを以前のガソリン車より大きく減らせたこともあって、結果には大満足だそうです。そんな山口さんのシールは、屋根に載っている個人タクシーの提灯が珍しいこともあって、いろいろな人が写真を撮っていました。

オーナーズクラブの初オフ会も

オーナーズミーティングは、これまでSNSなどオンライン上でしか話をしていなかった人たちの初のオフ会の場にもなっていました。本コースのパレードランを待つ間、7人のオーナーさんが親しげに話をしていた所に入ってみると、全員、初顔合わせだとわかりました。

そのうちの数人は普段はLINEグループで情報交換をしているそうです。このグループには、この日から東福寺社長にも参加してもらったそうです。

EV歴も乗ってきた車種も多様で、その履歴やエピソードを全部を紹介するとそれだけで字数がいっぱいになってしまうのですが、例えばバッテリー容量30kWhの初代リーフ(AZE0)から『ドルフィン』に乗り換えて何もストレスがなくなったという人、子どもは家ではEVしか乗ったことがないのでエンジン車に乗ると「うるさい」と言われる人、充電スポットを探すようになって初めて行く場所が増えて発見も多くなったという人など、いろいろなエピソードを伺うことができました。

そんな皆さんにオーナーズミーティングの感想を聞くと「今後も、あれば参加する」と、全員一致の返事がありました。「身近に乗っている人が少ないので、こういう(充電や使い勝手のことなどの)会話をすることがない」ため、集まれば情報交換の場になるだけでなく、EVについて積もる話がたくさんあるそうです。

こうした話には、これからのEV普及に必要なことのヒントになる現実的な課題が見えてきたりすることもあり、ガソリン車のオーナーズミーティングとはマニアックな方向性がかなり違っているのも興味深く感じました。

この他にも、数台のシールが付けていた同じ種類のスポイラーに注目が集まるなど、他のユーザーさんのドレスアップにも目がいっているようでした。ちなみにフロントスポイラーは通販で無色のものが買えるため、各自で好きな色に塗装したようです。取り付けも簡単らしいです。

そんな話を聞いているうちに、イベント最後のパレードランの時間が来て、それぞれの車に乗り込んで行きました。80台以上の車が集まると「多いなあ」と実感できる壮観な光景でした。

パレードランの後は流れ解散でした。遠方の人も多く、事故も電欠もなく無事に帰宅できることを願いつつ参加したEVの群れを見送ったのでした。

BYDは今後も、オーナーズミーティングを継続して開催することを計画しているそうです。今回参加した人も、できなかった人も、次の機会にはぜひ参加してみてください。新しいメーカーの新しいEVだけに、オーナー同士の情報交換で有意義な発見や気付きが得られるのではないかと思います。

取材・文/木野 龍逸

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この記事を書いた人

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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