今年で4回目になる、EVの電気を利用したオール電化キャンプを楽しむイベント『EV SUMMER CAMP 2025』が開催されました。今年のサブタイトルは「電気自動車×防災×キャンプの可能性」で、V2Lの利便性を体感するのがテーマです。小型EVのヒョンデ『インスター』で車中泊してみた様子をお伝えします。
※この記事はAIによるポッドキャストでもお楽しみいただけます!
4回目のオール電化EVキャンプに80台のEVが参加
とうとう気温40度を超えた地点数が観測史上最多を記録した2025年の夏。EV(電気自動車)人気に陰りが出ているなどという記事も見かけますが、そんなネガティブさをみじんも感じさせないのが、今年で4回目のEVによるオール電化キャンプイベント、『EV SUMMER CAMP 2025』(主催:EV SUMMER CAMP 2025 実行委員会)です。
例年にならってEVsmartブログでは、筆者(きの)と寄本編集長が静岡県富士宮市のキャンプ場「TREE LINE chillax field」に参上し、8月2日〜4日にかけて2泊3日のEVキャンプを楽しんで(取材して)きました。
2022年の初回はヒョンデ『IONIQ 5』のオーナーズミーティングで、わずか5台によるこぢんまりとした会でした。でも2回目と3回目は参加資格を「IONIQオーナー(納車待ち含)、IONIQに興味のあるICEV(ガソリン車)オーナーや他社BEVオーナーへ拡大。3回目には参加車が50台を超えました。
そして今年は多様なメーカーのEVが集まるオール電化キャンプの趣旨はそのままに、「電気自動車×防災×キャンプの可能性」をテーマに数々のトークセッションを実施するという、ちょっとしたシンポジウムのようにアップデートしていました。

2日目午後の集合写真。かなり帰っちゃった方もいたけど、盛り上がりはおわかりいただけるかと。
参加台数はEVが80台、ICE車が7台の合計87台。参加人数はのべ325人になりました。わずか3年でこんなに増えたんだなあと、単なる参加者ですが、ちょっと感無量でした。
インスターの車中泊は快適か
EVサマーキャンプの副題とは関係なく、EVsmartブログとして参加した一番の目的は、2025年4月に日本で発売されたヒョンデの小型EV『インスター』での車中泊体験です。過去3回のEVサマーキャンプでは筆者は基本的にテント泊で、朝日が昇ると同時に暑すぎて寝ていられなくなるのが欠点でした。
KONAを入手した寄本編集長が、車中泊でエアコンを使いつつ気持ちよさそうに寝ているのが羨ましいやら妬ましいやらだったのですが、今回はインスターの広報車を借りることができたので、さっそく使ってみることにしました。
インスターの走りに問題ないことは、以前の長距離ドライブの体験でわかっていました。東京の自宅を出発する時に充電量を80%以上にしておけば、キャンプの間に外部給電を使っても、まあまあ問題ないだろうという計算のもと、EVサマーキャンプに挑んでみました。
【関連記事】
ヒョンデのコンパクトEV『インスター』長距離試乗/走りも電費も充電も「文句なし」(2025年5月26日)
https://blog.evsmart.net/test-drive-reports/hyundai-inster-long-distance-test-drive-performance-efficiency-charging-excellent/
テント泊よりよく寝られるかも?
8月2日の開会に合わせて昼前にキャンプ場に着いてみると、現地はすでに灼熱でした。あっという間に日焼けしました。
でも今回はテントを張る必要がありません。楽ちんです。寝床は、インスターの助手席と、後席の半分を前方に倒して、なんとなくフラットにして、その上に25年間使っている、エアを入れるタイプのマットレスを敷きます。
ところでヒョンデのKONAやIONIQ 5には、ヒョンデの公式ショップに車中泊用のマルチカーテンがアクセサリーとして用意されています。でもインスターにはまだありません。カタログに車中泊の写真がないので、想定していないのかもしれません。
そこで100均です。1枚100円の日よけ用カーテンと、フロントガラス用の銀マットで目隠しをします。リアウインドウは日よけ用カーテン1枚で覆いきれなかったので2枚使用し、フロントウインドウの銀マットと合わせて全部で7枚を使いました。
これで車内での着替えも安心です。朝日の暑さも軽減できるような気がしました。
準備万端整ったところで、寝てみました。まず全長は、身長168cmの筆者には十分なスペースがありました。身体を伸ばしてゆったりと寝ることができます。こういう時は大谷翔平選手みたいに190cm以上なくてよかったと心の底から思います。期間限定ですが。
室内はちょっと狭いけどなんとかなる
ただフルフラットにすると、車内で身体を動かすのが少し難しいです。
インスターは背もたれを前方に折り畳むように倒すため、背もたれの厚み分、寝床の床が上がります。このため天井が低くなって、身体を起こすと頭が天井にぶつかるのです。よほど小さな子どもでない限り、上半身を起こすのは困難でしょう。
対策のひとつは、運転席をいちばん前に、後席半分をいちばん後ろにスライドさせて後席部分にスペースを作り、後席の背もたれを片方(助手席側)だけ倒すことです。
これなら、背もたれをそのままにした後席に移動すれば、頭もひっかからず、着替えもできます。荷物が多いと置き場所に困るかもしれませんが、運転席側の足元もあるので、ソロキャンなら室内に収納できると思います。
もうひとつ気をつけないといけないのは、背もたれを折り畳んでも完全なフルフラットにはならないことです。後席と前席の間にどうしても隙間が空いてしまいます。ここに手をつくとズボッと沈みます。
と言っても、ちょっと注意すれば回避できます。それに寝る時には気になりませんでした。
そもそも広い室内で車中泊をしたいのならワンボックスにすればいいだけのこと。小型車にすべてを求めるのは無理というものです。
そんなこんなで、日の出後もぐっすりと寝ることができました。テントだったら汗まみれになりそうな気温でしたが、問題なく、寄本編集長に起こされるまで寝ることができました。

2日目の早朝。富士山が美しい姿を見せてくれました。
なおキャンプ中の電力消費は、今回は夜にエアコンをつけるほどではなかったので、それほど減りませんでした。電気を使ったのは、キャンプに1泊だけ参加した、EVsmartブログにも寄稿しているITジャーナリストの石川温さん私物の小型冷蔵庫と、スターリンクだけです。
石川さんが滞在した1泊目は、パソコンが熱中症にならないよう使った昼間のエアコンと合わせて十数パーセントを消費。最終的に2泊3日合計で、SOC表示で約25%を消費しました。インスターのバッテリー容量は49kWhなので、12.5kWh程度でしょうか。
ソロキャンで1泊なら、途中で経路充電をしなくても不安なく電気製品を使えそうで、必要十分な車中泊のポテンシャルがあると思いました。
オール電化イベントでEVの良さを改めて実感
EVサマーキャンプと言えばヒョンデのラーメン、かき氷屋台や、夜にカラフルな電飾が飾られる参加者のテントが見ものです。今回も、もちろん揃っていました。
ただ今年は、初日の昼から夜まで続いた連続トークセッションの豊富な内容に、筆者はおなかいっぱいになってしまい、あまりゆっくりと全体を回ることができなかったのが残念でした。
これら豊富な内容が揃ったトークショーの音響や映像などの電気はすべて、IONIQ 5とニチコンのパワームーバーを利用していました。屋外イベントでは発電機の騒音や排気ガス臭がつきものですが、オール電化キャンプでは静かなものです。なおIONIQ 5はアクセサリーコンセントやV2Lアダプターがあるので、消費電力が大きくなければパワームーバーなしでも電気を取り出すことは可能です。
今回のEVサマーキャンプの副題でもある災害対応を考えても、電力供給できるEVの能力はありがたいです。楽しいトークセッションを通してそんなことを実感できるのは、EVキャンプならではだと思います。BEVキャン、万歳です。
目白押しのトークセッション
ということで、トークセッションの登壇者と内容をざっと紹介します。
【1日目】
●ヒョンデ・モビリティー・ジャパンの佐藤健さんによるヒョンデ最新事情
アメリカの自動運転『ウェイモ』でヒョンデ『IONIQ 5』が採用される予定があること、OTAは年に1回は実施する予定で今後は回生オートを幅広い車種に展開することを検討中であることなどをはじめ、ヒョンデの現在の状況を解説。
●テスラ・オーナーズ・クラブ・ジャパン(TOCJ)、Honda eオーナーズクラブ、ヒョンデモーター・オーナーズクラブのキーパーソンによるトークセッション
登壇したのはTOCJの小池豊和さん、Honda eオーナーズクラブの篠原知存さん、Hyundai Motor Club JAPAN(旧IONIQ OWNERS CLUB)会長でEVサマーキャンプの主催者でもある辻榮亮さんの3人。各クラブの成り立ちや会員を増やす苦労話から、会員数が増える中での課題、これからのイベントで参加者を集める方策まで、ほんとにいろいろな話が飛び出しました。
●静岡県地球温暖化防止活動推進センターの服部乃利子センター次長のトークセッション
服部センター次長が気候変動の影響や災害の発生、そこでEVが果たす役割などについて話をしたのに続いて、サプライズゲストで環境エネルギー政策研究所(ISEP)の飯田哲也所長が飛び入り参加。南オーストラリア州にテスラが設置した大規模なバーチャル発電所(VPP)の成功を機に、蓄電池の系統連携が世界に広まったことなど最新の再エネ情報を紹介しました。
●アルピニストの大石明弘さんのトークセッション
8000m峰登頂、南アルプス全3000m峰を41時間で縦走(走ってますね)などの経験があるアルピニスト、大石明弘さんのトークショーでは、EVしか走れないスイス、ツェルマットの様子にはじまり、実際の登山の様子を記録した動画の紹介や、高地の雪の薄さに見る温暖化の影響など、これまでの登山で肌身に感じた気候変動のことなどが語られました。
【2日目午前】
●東北大学環境・都市エネルギー研究室の石井悠人さんの研究発表
EVや太陽光発電を使ってV2Hを実施した時の太陽光発電量、宅内消費量、売買電力量、V2H充放電量のデータを収集し、CO2排出削減率やエネルギーコスト削減率を分析、評価する研究について発表がありました。これまではシミュレーションが中心だったのですが、今後は関連メーカーやEVサマーキャンプに集まったEVユーザーの協力を得ながら実測値を使って研究を進めたいそうです。
●ニチコン、日東エルマテリアルの担当者トークセッション
ニチコンは、言わずと知れたパワームーバーの紹介。今回はトークショーの電源はすべてパワームーバーで賄っていました。日東エルマテリアルからは、停電時にEVまたは太陽光発電から直接、住宅内に電気を供給できる『スマートエルライン・ライト』の紹介がありました。非常時にパワーコンディショナーを系統からEV、または太陽光発電に切り替え、専用のコンセントを通して住宅内に電力を供給します。系統連携なしの簡易システムなので導入コストも抑えられそうです。
2日目は、トークショーの合間に女子キャンププロデューサーのアキヨさんによる、トマト&ガーリックのペーストを使った簡単キャンプ飯コーナーもありました。そして最後は、恒例のビンゴ大会でシメです。ほんとにもう、何から何まで揃って満腹のEVサマーキャンプでした。
次回開催は、2026年8月1日(土)〜2日(日)を核に、前後どちらかに1日追加した2泊3日の予定とのこと。参加したい!という方は、スケジュールを空けておきましょう。来年はキャンプ場で会いましょう!
取材・文/木野 龍逸
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