販売会社主催イベントの公式レポートも担当
首都圏や関西圏でアウディ正規ディーラーを展開するアウディジャパン販売では、電気自動車の魅力を体感できるイベントを開催しています。昨年11月には「Audi e-tron Cannonball Tour」を同行取材したレポートを紹介しました。今回は、2023年4月22〜23日に、静岡県の富士スピードウェイホテルを拠点に開催された「Audi Q4 e-tron Nature Touring」のレポートです。
前回のCannonball Tourでも、私が公式サイトでのレポートも担当しましたが、今回も同様に私が書かせていただいたレポートがすでに公式サイトで公開されています。ぜひ、そちらも併せて読んでみてください。
電費チャレンジで参加者トップタイでした
さて、ツーリングイベントの様子は公式サイトでもレポートしたので、EVsmartブログの記事では「省電費走行のコツ」に的を絞って考えてみたいと思います。
今回の「Audi Q4 e-tron Nature Touring」は、首都圏と関西圏で開催され、私が取材で参加したのは首都圏最終日だった4月23日午後のグループでした。コースは富士スピードウェイを起点に標高約1200mの三国峠へ駆け上るワインディングを経て、山中湖北岸を走って道の駅富士吉田へ向かう往路と、富士吉田忍野ICから須走ICまで東富士五湖道路を快走して富士スピードウェイに戻る復路、全行程約50kmです。
また、メーターの電費表示による「電費チャレンジ」が用意されていて、全コース走行後に5km/kWh以上の電費を達成すれば、Audiオリジナルグッズ(サーモボトル)をプレゼントという趣向がありました。
EVsmartチームは、動画を担当するテスカスさんと2人で参加しました。往路はテスカスさんに運転を任せ、「ま、電費は復路でなんとかするから峠道は気持ちよく走ろう!」と、軽快なワインディング走行を満喫。折り返しポイントの道の駅富士吉田でメーターを確認すると電費は「4.3km/kWh」で、目標値を大きく下回っていました。このままではピンチです。
復路は私がハンドルを握り、なんとか電費チャレンジのクリアを目指して走り、ゴール時点のメーター表示で電費は「7.1km/kWh」まで回復して、なんと、この日の参加者中でトップタイの数値を叩き出し、EV専門メディア取材チームの面目を保つことができたのでした。
省電費ドライブのポイントは?
てなことを言いながら、私は普段からさほど電費を気にしてEVで走ったりはしていません。だって、シームレスでパワフルな加速感もEVドライブの楽しさのひとつ。あまり電費を気にしすぎるより、EVならではの気持ちいい走りを楽しみたいと思うからです。
とはいえ、いくつかのポイントを理解しておくと、EV走行の電費を向上させることができます。ベテランEVオーナーの方は先刻ご承知かとは思いますが、改めてEV電費走行のコツを列挙しておきます。あと、省電費走行のコツは、エンジン車における省燃費走行にも通じることなので、まだエンジン車に乗っているという方もご注意を。
無駄なスピードは控えめに
まず、基礎知識として覚えておくべきなのが「空気抵抗は速度の二乗に比例して大きくなる」ということです。ことに、高速道路を100kmを超えるような速度で走ると、電池残量メーターの減り方で電費悪化を実感できるほど。
ガソリンエンジンの場合は高速巡行時の効率が良いとされていますが、EVのモーターはそうではなく、速度による電費の悪化が顕著になります。法定速度を守った定速走行が省電費運転の基本です。
【関連記事】
電気自動車の燃費=「電費」とは? を徹底解説!(2019年11月1日)
今回、復路は自動車専用道を長く走りました。ただし、スタッフの先導車がある隊列走行だったので、走行速度については他の参加者のみなさんと条件はほぼ同じでした。
アクセルをパタパタしない
Q4 e-tron は、アクセルを軽く踏み込むと2トン超のSUVとは思えない軽快な加速フィーリングを味わえます。それはそれで適切な状況下で楽しむこととして、省電費を心掛ける運転では「アクセルの無駄な開閉」、さらに具体的に言うと「踏み込み過ぎ」を減らすように気をつけましょう。
ただし、今回のような隊列走行時、前車との適切な車間距離を保つために加速が必要な時は、踏み過ぎには気をつけながらも、なめらかに、アクセルをちゃんと踏み込む方がスムーズに走れます。ゆっくり踏み込もうとして加速に長い時間が掛かってしまう(それだけ長時間アクセルを踏み続ける)のは逆に電費に悪影響となることがあります。
このあたりのアクセル操作の感覚をひと言で表現すると「パタパタしない」って感じなのです。
コースティングを活用する
コースティング(惰性走行)を上手に活用するのも、電費を向上させるポイントです。エンジン車でもコースティング時は燃料消費を抑えられますが、アイドリングさえ存在しないEVではさらに効率良く走れます。
Q4 e-tron にはステアリング裏のパドルシフトで回生ブレーキの強度を4段階で変えられる機能を備えており、コースティングまで選択できるのが、今回のドライブでとても役に立ちました。
たとえば、今回の走行で高速を下りてからの一般道では、全体を通じて下り坂中心のコースだったこともあり、信号待ちの時以外、アクセルペダルはもちろんブレーキペダルもほとんど踏むことはありませんでした。
前車との適切な車間距離を保ちつつ、下り坂ではコースティングで適宜加速。スピードが出てきたら回生ブレーキの強度でコントロールするのです。
パドルシフトによる回生強度コントロールは、省電費運転に貢献するだけでなく、アクセルやブレーキを踏むよりもスムーズな加減速を行えます。また、たとえば下りのワインディングでエンジンブレーキのように使ってスポーツ走行気分を楽しむにも便利です。メーカーによって機能を搭載してるところとしてないところがありますが、EVらしい走りを楽しむためには必須の機能だと感じます。
エアコンの設定を気にするのは季節次第
EVの電費にはエアコンの電力消費が……、というのはよく言われることですが、エアコンの電力が電費に大きな影響を与えるのは極寒時の暖房です。この日は曇り空で外気温は10〜15度くらいで、走行時はずっと20〜22度に設定して普通にエアコンを使用しました。
外気温が氷点下になるような極寒時、20度以上に設定するとその温度差分を頑張ろうとしてエアコンの消費電力が増え、結果として電費(航続距離)に悪影響を与えるのはホントです。でも、春から秋のエアコン使用による電費悪化は、私自身ほとんど気にすることはありません。
また、少々電費が悪化したところでバッテリー容量82kWhの Q4 e-tron で、電欠のピンチに見舞われるなんてことは相当な不注意で充電を怠らない限りは起こらない、といっていいでしょう。
アウディが目指すEVシフトへの本気を実感
というわけで、EV省電費運転のポイントは「スピード」「アクセル操作」「コースティング(回生ブレーキ)活用」の3点です。
簡単なことだし、気をつけるだけでそれなりに電費は変わるので、EVオーナーの方はぜひ試してみてください。
以前のCannonball Tourの時にも感じたことですが、アウディジャパン販売のスタッフのみなさんがEVへの理解が深く、参加者に的確なアドバイスやメッセージを送っていることに感銘を受けました。
アウディでは、「2026年以降に登場する全てのモデルは電気自動車として、内燃エンジンの製造は2033年に終了する」というVorsprung 2030 戦略 を明示していて、アウディジャパンでも電動化に向けて積極的な発信を行っています。アウディジャパン販売はメーカーとは別の会社ではありますが、アウディブランドの目標がきちんと共有されていることに「さすが」と感じるのでした。
ちなみに、7月11日にはアウディジャパンから「屋久島の持続可能な未来の実現に向けた包括連携協定」締結が発表されました。島内の主要ポイントに8kW普通充電器を設置(寄贈)したり、ファーレン九州によるe-tron専門のレンタカーサービスを開始するなどといった内容です。
屋久島は一周約100km。私も2001年に手作り改造EVで一周したことがあったりして、日本でも屈指の「EVにぴったりの島」であると感じています。そんな屋久島に着目して具体的な取組を進めるあたりも、アウディ、さすがです。
取材・文/寄本 好則