日東工業のEV用高機能普通充電器『Pit-2G』発売〜マンション向け充電サービスのユアスタンドと連携も

日東工業が遠隔コントロールでエネルギーマネジメントが可能な新型普通充電器『Pit-2Gシリーズ』を発売しました。さらにマンション向けEV充電サービスの『ユアスタンド』と連携し、集合住宅での充電器予約や独自課金も可能なサービスが提供されます。

日東工業のEV用高機能普通充電器『Pit-2G』発売〜マンション向け充電サービスのユアスタンドと連携も

エネルギーマネジメント可能な次世代普通充電器

2021年5月28日、日東工業株式会社がEV・PHEV用の新型普通充電器『Pit-2G(ピット・ツージー)シリーズ』の発売を発表しました。Pit-2Gの4G通信機能を用いた遠隔コントロールでエネルギーマネジメントを可能にする有償サービス「リモート通信パック」のサービス提供も開始します。

日東工業公式サイトより引用。自立スタンドはオプションです。

『Pit-2Gシリーズ』バリエーション

出力品名記号標準価格(税別)
4G通信モデル6.0kWEVPT-2G60220,000円
4.8kWEVPT-2G48220,000円
3.2kWEVPT-2G32190,000円
通信なしモデル6.0kWEVP-2G60170,000円
4.8kWEVP-2G48170,000円
3.2kWEVP-2G32140,000円

Pit-2Gシリーズの特長は、一般的な200Vコンセントと同等の3.2kWだけでなく、4.8kW、6.0kWという高出力モデルをラインナップしていること。また、公式サイトで「事業所駐車場向け普通充電器」と紹介されているように、通信機能を備えたモデルで月額900円(税別 ※4G通信モデルは必須契約。1年分をまとめて支払い。最初の1年間は無料)の「リモート通信パック」を利用することで、複数台のEVを運用する事業所などでの充電の電力マネージメントが可能になります。

どういうことか、簡単に説明しておきましょう。たとえば、複数台のEVを導入している企業で、夕方に帰社したEVが複数台の高出力充電器で一斉に充電を開始すると、最大需要電力(デマンド値)が増大して電気の基本料金が高くなったり、電気設備の増強が必要になるケースがあります。リモート通信パックに含まれるウェブアプリ『チャージスケジューラー』は、充電時間や出力をコントロールする機能を備えており、デマンド値の増大を防止できるほか、EVを充電器に繋いでおけば、遠隔での充電コントロールや状態の監視が可能になります。

また『チャージスケジューラー』はユーザー自身での設定などが必要ですが、株式会社エネットが提供するEVスマート充電サービスである『EnneEV(エネーブ)』などとの連携も可能とのこと。詳細は導入時に日東工業担当部署に相談してみましょう。

【公式サイト】
日東工業『EV・PHEV用充電設備』

日東工業ではPit-2Gシリーズのリリースとともに、1年に1回まで駆け付け修理が無償となる保守サービス「あんしん修理サポート」(月額300円 ※税別)の提供も始めています。

日東工業は2009年に国内初のケーブル付普通充電スタンドを株式会社豊田自動織機と共同開発するなど、電気自動車用普通充電器累計出荷実績(OEM供給含む)で日本国内シェア約4割をもつトップカンパニーです。自宅充電200Vコンセント設置の記事でご紹介したように、一般住宅用の『Pit-C3』は私も愛用しています。

今後、企業や自治体、事業所フリートのEVシフトはますます進んでいくことが予想できます。Pit-2Gシリーズは、EV黎明期から長く普通充電機器に取り組んできた日東工業ならではの、次世代のニーズに応えるスマート充電機器といえます。通信方式は4Gということですが、この先10年、15年くらいは4G基地局が廃れることもないでしょう。

マンション向けEVスマート充電サービスをユアスタンドと共同検証

Pit-2Gシリーズ発売の発表と同じ5月28日、マンション向け充電管理サービスを提供する『ユアスタンド』が、Pit-2Gシリーズを活用した新たなサービスの共同検証を始めることを発表しました。

ユアスタンドはマンションなどの集合住宅に充電設備設置を進めるため、事前調査から導入工事、補助金申請までトータルにサポート。導入後はスマホアプリ『​Yourstand』による利用料金の回収や充電の予約などができる専用の管理システムを提供しています。

発表によると、ユアスタンドのマンション向け充電管理サービスである『​Yourstand』とPit-2Gの通信モデルを、EV充電器管理のための国際標準通信プロトコルである「OCPP(Open Charge Point Protocol)」によって連携。スマホアプリによる独自の課金ができるようになるほか、電力消費のピーク時には充電を抑制するなどのエネルギーマネジメントを可能にします。

ユアスタンドではこの共同検証によって「マンションの既存電気契約に影響を与えることなく、集合住宅において、受益者負担を前提とした高速なEV充電サービスの実現を目指す」としています。

今まで、ユアスタンドが設置するマンション充電設備は、一般的なコンセントに電源を制御したり課金を管理する装置を別途で設置していましたが、Pit-2Gの通信モデルでは単体でそうした制御ができるメリットがあります。また、ユアスタンドでは、集合住宅におけるEV充電器の普及を促進するため、システムの利用料(通信料金含めて月1,500円)および充電料金の手数料(10%)を2023年末まで無償としており、Pit-2Gも本キャンペーンの対象機種として適用するとのこと。ユアスタンドに依頼して充電設備を設置する集合住宅オーナーや管理組合にとっては、設置機種の選択肢が増えることになります。

EVフリートを活用する事業所や、マンションなどへの充電設備設置には、次世代自動車振興センター(NEV)を通じて国のCEV補助金が受けられます。『補助対象充電設備』の一覧にはまだPit-2Gは掲載されていませんが、これから日東工業が申請、補助対象機種に加わる見込みということです。自分で公的な補助金を申請するのはちょっと手強い作業でもありますが、マンションの場合、ユアスタンドが申請作業などもサポートしてくれます。

Pit-2Gとユアスタンドの連携で、集合住宅へのスマートな充電設備導入がさらに進むことを期待しています。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)4件

  1. 安川様

    ありがとうございます。
    たしかに1000円は安いですね。
    入居時点から機器があったから安いのかもしれないですね。

    台数が増えると固定費もかさむので、メータの方がいいのかもしれないですね。

    もっといろいろ調べてみます。

  2. 初めまして。
    たまたまホームページと記事を見つけました。

    これからはマンションにも導入が進むんでしょうね。
    私のマンションにも壁掛けコンセントの充電器があります。
    車を購入した、電気代として毎月固定額を取られる形です。1000円程度だったかな?

    今回の記事を見る限り、通信費、保守費、システム費と固定費として毎月2700円発生ですかね?
    使う人がいなくても発生するか気になります。

    また、利用料金から固定費をもらうとすると、利用料が高くて使う人がいるのかと気になりました。

    通信費、システム費が各台数ごとでなからば安いですが。

    エネルギーマネージメントも調べると自分で設定するみたいなので、設定ミスなど何かと大変そうな気もしたしました。

    1. 初心者ユーザー 様、コメントありがとうございます。

      >車を購入した、電気代として毎月固定額を取られる形です。1000円程度だったかな?

      安いですね。ある意味、これは理想に近い設置だと思います。ただ実際には1000円以上使うことは十分可能なので、そのあたりにこだわる居住者の方がいらっしゃるか、という点がポイント。住民の十分な理解が必要です。
      例えば私だと月300kWhくらいは使っちゃうので、高圧受電でも18円x300=月5000円。低圧の場合は26.5円x300=7950円となりますので、管理組合の持ち出しはそれなりの額にはなります。日本の平均的な走行距離8000km/年と、一般的な電気自動車の電費である6km/kWhで計算しても、18円x8000km/12/6[km/kWh]=2000円ですね。

      >今回の記事を見る限り、通信費、保守費、システム費と固定費として毎月2700円発生ですかね?

      1500円ですね。しかし、これですが、なかなか実際に難しい面はあると思うんですよ。何といっても、課金機を直結してしまえば充電はできちゃうわけで、住民がコスト体系に満足いかなければ、いつでも別の事業者に変更することができるんです。
      そのため、月額固定費のサービスは成り立ちにくいと私は考えています。固定費払うくらいなら、月に一回、メーターを読んで記録してもらっても良いわけなんですよね。実際弊社の会社の駐車場では、メーター読みで毎月駐車場代に含めて電気代を支払っています。オフィスビルなどだと、この方法が一般的になるでしょう。

      >使う人がいなくても発生するか気になります。

      通信を止めてしまって、設備自体を使用しない、ということであれば、発生しないと思います。
      単に今月は使わない、来月は使う、ということですと、毎月の料金は発生するのではないでしょうか?

  3. 日東工業・内外電機・パナソニック(旧松下電工)…電気技術者にはおなじみの分電盤製造会社が来ましたね!!豊田自動織機の充電器も名盤見たら日東のOEMですよ。
    その分電盤製造会社は概して普通充電器メーカーでもあり、パナソニックに至っては車載用充電ケーブルも作ってますし(日産リーフ・三菱アイミーブともパナの充電ケーブル採用)

    電気保安の仕事をしている僕はコロナ禍を機に感染防止策で「ITスマート保安」を検討せざるを得ませんが、携帯電波網を活用した充電システムも将にITスマート化の流れ。eMPもスマート充電と考えればよく、デマンド(最大電力)監視システムと連動すれば契約電力とて調整可能。
    自動車電動化には電気技術者の叡智が必須やないですか!?僕は一介の電気管理技術者として微力ながら応援提案しているだけですが、それが何らかのヒントとしてお役に立てればエエ思うて発言してるだけで。もしホンマに必要やー思うてたらここへコメント下さい、少なくとも現状市民活動家としても動けますんで。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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