日本で初めてCHAdeMO規格に準拠したプラグアンドチャージ機能のサービスを提供した「Honda Charge(ホンダチャージ)」の体験取材会が開催されました。EV普及を後押ししてくれそうな「充電体験の変革」についてお伝えします。
地に足を付けたEVシフトへの取り組みが前進
2026年3月3日、本田技研工業(ホンダ)がさいたま市のホームズさいたま中央店で開催したメディア向けのホンダチャージ体験取材会に参加してきました。3月12日に発表された「四輪電動化戦略の見直し」が気になるホンダですが、地に足を付けたEV普及に向けた取り組みは前進しています。

木村英輔さん。
ホンダチャージを体験する取材会で、前半のレクチャーに登壇したのはホンダエネルギーサービス事業開発部部長である木村英輔さんとニトリホールディングスSDGs推進室室長の奥田理さんです。まずはその発表内容からお伝えします。
ホンダは2050年の目標に「すべての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルの達成」を掲げていて、その実現には「モビリティの電動化が最適解」と位置付けています。そのために「EVの機種ラインアップ拡充と充電インフラの整備を『両輪』として取り組んでいきます」と木村さんは説明を始めました。
EVのラインアップ拡充については、今年発売のSuper-ONE、来年度以降に発売されるHonda 0(ゼロ)シリーズが例示されました。取材会の翌週に0シリーズの「SUV」と「サルーン」の生産中止が発表されたのは驚きでしたが、0シリーズの小型SUV「α(アルファ)」については計画に変更はなく、これとは別に電動SUV『インサイト』の国内発売も決定したようです。ホンダの「四輪事業の中長期戦略再構築の詳細」は5月に発表される予定ですが、より多くの人にとって手が届きやすいEVラインアップの拡充に期待しています。
充電を「特別な行動」から「日常の動線」へ
充電インフラの整備については、「移動の不安を解消したい」という解説がありました。
自宅以外の公共充電器は、認証や決済の手間、待ち時間などがユーザーのストレスになったり、漠然とした不安につながったりもします。ホンダチャージは「EVの充電を日常の動線の中で自然に完結させること」によって、「充電を特別なものにしない」ことを目指しているそうです。自宅で寝ている間に充電できるのがストレスフリーなのと同じく、買い物やレジャーを楽しむ間の「ながら充電」なら、面倒くさいとは感じないでしょう。

充電器の設置場所について提示された資料が興味深いものでした。元になったのはホンダが持つ移動データだそうです。EVの充電を、自宅での「基礎充電」(65%)、市街地生活圏での「基礎代替充電」(30%)、目的地までの移動中に行う「経路充電」(5%)に分類しています。
Honda eユーザーの筆者はこれまで、充電の場面について、基礎充電(自宅や職場)、目的地充電(宿泊や買い物、レジャーなどの施設)、経路充電(道中の補給)に分けて考えてきました。対して、ホンダ流の分類は、車で出掛けて一定時間以上駐車しておく「目的地」は職場も含めて基礎代替充電に含まれるという考え方をしています。
そして、自宅と経路以外の充電インフラを中心に、暮らしの中で自然に使えるような(基礎代替)充電網を整備していくという考え方には共感できます。「わざわざ充電しにいく」のではなく、出かけてクルマを止めた場所に当たり前のように充電器があるというのは、EVオーナーにとっては理想的ではないでしょうか。
ホンダチャージに対応している急速充電器は、スタート当初は約50基でしたが、全国約200基に拡大しているそうです。普通充電器も約640口で利用可能になっていて「2030年に数千口規模の設置を目指し、さらにインフラ整備を加速していきたい」(木村さん)とのことでした。
ニトリとの協業で「買い物時間を、充電時間へ」
そんなインフラ整備を進めるパートナーとして紹介されたのが家具・インテリア大手のニトリホールディングスでした。ニトリ・島忠など国内に859店舗を展開する同社は「Nitori Group Green Vision 2050」を掲げ、ホンダと同時期のカーボンニュートラル達成を目指しています。

ニトリホールディングスSDGs推進室室長の奥田理さん。
SDGs推進室室長の奥田さんは、「EV普及は脱炭素社会に不可欠」とした上で、充電を「日常の動線に自然となじむものへ」というホンダチャージのテーマ設定に「強く共感できた」ことをタッグを組んだ理由に挙げていました。ニトリグループのEV充電サービスは、ホンダチャージを共同開発した充電サービス企業「プラゴ」と2023年から連携していることも、協業を後押しした要因でしょう。今後も、ニトリグループの店舗駐車場にホンダチャージの充電網を広げていくそうです。
今回の会場となった「ホームズさいたま中央店」は、1階に家具・ホームセンター、2階にフィットネスジムやクリニックなどからなる「HEALTH MALL」を配した複合型ショッピング施設です。国道17号沿いにあり、JR大宮駅からも近いという都心型店舗。その2階駐車場に、黒い急速充電器が鎮座していました。お隣には6kW普通充電器2基も設置されています。
急速も普通も予約して最大1時間取り置きができるので、家を出る前にアプリでポチッとすれば、充電待ちに遭うこともありません。急速充電の時間制限も60分で、日常の買い物や通院といった生活動線の中でEVを充電できる環境が実現しています。
奥田さんは「ニトリは暮らしの中での困りごとの解決や便利さの提供に取り組んできました。これからはEV充電インフラの構築を通じて、家の中だけでなく家の外の暮らしも豊かにしていきたい」と話していました。
プラグアンドチャージでストレスフリー
充電網の充実に加えて、EVユーザーのストレス軽減に貢献しそうな技術が「プラグアンドチャージ(PnC)」機能です。現行の公共用充電器は、スマホアプリを立ち上げたり、専用カードをかざしたりといった認証作業が必要です。でもPnCに対応したホンダN-ONE e:でホンダチャージを使う場合、車に充電プラグを差し込むだけで自動的に車両認証から決済まで完了します。
体験取材会では、レクチャーのあと、2階駐車場の急速充電器を使って、実際にEVをどのように充電するのか、実演が行われました。最初は、ホンダチャージのアプリを使った充電方法の説明から。名称にはホンダとついていますが、他社EVでも利用可能です。アプリのデザインやインターフェースは、協業している充電サービス企業「プラゴ」が手掛けていて、既存の充電アプリ「Myプラゴ」「エコQ電アプリ」などと共通で、多くのEVユーザーには馴染みのある使い勝手です。

アプリを使った充電も、事前に決済方法を登録してあれば、マップ上で充電器を選んでタップするとスタートするので、そう難しいわけではありません。しかし、PnCはさらにお手軽。充電プラグを挿すだけでOK。充電の都度スマホを操作する必要もありません。
充電が始まると、充電器の画面に経過時間や充電電力量などが表示されます。終わったら充電プラグを抜いて戻すと、自動的に決済も完了。テスラユーザーのみなさんはスーパーチャージャー充電網で当然のように享受している楽々機能ですが、日本のCHAdeMO規格では、これまで実現されていませんでした。
現時点でPnCの対応車種はN-ONE e:だけですが、今年発売されるSuper-ONEでも利用できることが、この日正式に発表されました。Honda e がマイカーの筆者としては対応車種にうらやましさを感じずにはいられません。EVにとっては「充電」が車種の魅力を左右する重要なスペックであることを再認識しました。
充電料金がお手頃な「ながら充電」を活用したい

アプリから予約すると、ストッパーがニョキっと。
資料として提示された「移動データ」では、経路充電のニーズが5%と少なかったことも印象に残りました。現在のホンダのEVラインナップは主にシティーユースを想定していることもあるでしょうが、日本自動車工業会の乗用車市場動向調査(2023年度)でも「EVの希望走行距離は仕事・日常で平均180km程度(ただしレジャーでは280km程度を希望)」だそうです。とくに集合住宅の居住者が多い都市部などでは、日常生活圏で利用する基礎代替(目的地)充電の整備が、EV普及に貢献する取り組みなのかもしれません。
経路充電については、SAPAへの高出力充電器の複数口設置など利便性アップの取り組みが進んでいます。もちろんEVの進化として歓迎しますが、同時にコストアップも進むのは考えもの。一方で「ながら充電」にはそれほどの高出力は必要ありません。日々の生活圏で気軽に使える充電器が増えてくれれば(それがリーズナブルな充電料金ならなおさら)、ストレスフリーのEVライフが楽しめそうです。
取材・文/篠原 知存






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