福山市の田んぼの真ん中に日本最大級のEV充電スポット出現〜現地探訪レポート【前編】

広島県福山市郊外、田んぼの真ん中に最大90kWの急速充電器を3基6口、さらには月極駐車場全60区画に3kWのEV充電用コンセントを備えた充電スポット「Decarbo. Station」が出現しました。はたして、どんな施設なのか? どんな思いで開設されたのか? 現地を訪問してみました。

福山市郊外の田んぼの真ん中に日本最大級のEV充電スポットが出現〜現地探訪レポート【前編】

日本最大級のEV充電ステーションを開設

Xのタイムラインで「日本最大のEV充電ステーションつくりました」というポストを目にしたのは昨年9月のことでした。投稿によると、最大90kWの急速充電器を3基6口設置。ソーラー発電パネルの屋根付きです。

高速道路SAPAには最大90kWのマルチが4〜6台並んだスポットが増えつつありますが、一般道に面した公共の急速充電スポット(チャデモ規格)で最大90kWが3基6口も設置されている場所は、今まで見たことも聞いたこともありません。たしかに「日本最大級」といっていいでしょう。

とはいえ、設置コストや電気のデマンド基本料金などを考えると、急速充電で儲けを出すのは難しいのが現実です。投稿主である「Decarbo.」さんのポストを辿ってみると、このEV充電ステーションはソーラーカーポートの太陽光発電の電力で運用されていて、洗車コーナーなどもあるとのこと。

いったい誰が、何のために、どんな思いでこんなに理想的なEV充電ステーションを作ったのかと謎だらけ。気になりつつ「遠いしなぁ」とアカウントをフォローして動向をチェックしていたのですが、一念発起。6月下旬、広島県福山市の現地を訪ねることができました。

充電区画の幅は、なんと5mという余裕の配置!

広島県福山市に突如として出現したDecarbo. Station(デカルボステーション)。まずは、どんな施設なのか、写真とともに紹介していきましょう。

周辺道路は田んぼのあぜ道。充電スポットの入り口を入ると、右手に2基、左手に1基の急速充電器が設置されています。

機種はニチコンの100kW器「NQD-UCX04シリーズ」です。2口のストールがあり、1口最大は90kW。2口同時使用時は50kW×2口の合計100kWになります。

充電器制御の国際規格であるOCPP(Open Charge Point Protocol)対応で最大90kWのマルチプラグであることが選択の理由。ケーブルが高い位置からの吊り下げ式になっていて、使いやすいのも特長です。

現地を見て驚いたのが、充電区画の広さです。アウディQ4 e-tronでもこの通り余裕しゃくしゃく。区画の幅はなんと5mです。さらに、充電区画(全部で6区画)のほかに待機スペースとして充電器1基に対して各2区画が用意されています。

認証課金は、6月までeMP提携カードで利用できる仕組みになっていましたが、7月からは「Eneliver株式会社」というスタートアップの充電課金サービス事業者と提携。eMP提携カードは必要なく、スマホでQRコードを読み取れば簡単に利用できるようになっています。

取材に伺った6月下旬はまだ新システム導入前だったので利用手順などは詳報できないのですが、後日電話で確認したところ、急速充電器の利用料金は「99円/分」の時間課金となるそうです(後編記事で説明を追記します)。

さらに、急速充電区画と並んでEneliverの6kW普通充電器が2基設置されていて、こちらの充電料金は従量課金で「77円/kWh」に設定しているということでした。

最新の洗車機なども併せて設置

充電区画の奥には、ドライブスルー式の洗車機を1台設置。つまりここは、充電&洗車ステーションになっています。

掃除機やエアブローが設置された仕上げ(拭き上げ)コーナーも広々として使いやすそうです。

真新しいマシンを備えた手洗い洗車コーナー(2区画)もありました。

さらに奥の区画は、60の全区画にEV充電用200Vコンセントが設置された月極駐車場になっています。

月極駐車場の賃料は5000円/月。まだEVやPHEVなどのプラグイン車の契約はないので実際には運用していないものの、プラグイン車で充電コンセントを利用する場合は、充電料金込みで7000円/月にすることを考えているということでした。

ということは、充電コストは2000円/月になります。30円/kWhの電気代と仮定して試算すると、2000÷30円=約67kWh。電費が6km/kWhとして、月間約400km走行分を充電すると契約者としては元が取れることになります。

月に1000km以上走行する場合、そのEV(PHEV)は経路充電の急速充電器も利用するはずなので、月極駐車場のコンセントで充電するのが月間400km分程度というのは、理にかなった、利用するユーザーにも納得感の高い目安だと思います。

400kWの太陽光発電パネルと200kWhの蓄電池を設置

冒頭写真にあるように、デカルボステーションの看板には「再生可能エネルギーでEVチャージ」というキャッチコピーが記されています。

充電区画や拭き上げスペース、さらに月極駐車場はすべてソーラーカーポートになっていて、出力400kWの太陽光発電パネルが設置されています。

その他にも、キュービクルなどの受電設備、太陽光発電のパワーコンディショナーとともに、EV(日産リーフ)のリユースバッテリーを活用した大容量定置型バッテリー(約200kWh)が設置されていました。

この「リユースバッテリーパッケージ」は、日産リーフのバッテリー再生を手掛けるフォーアールエナジーとダイヘンが協力して商品化したもの。フォーアールエナジーはEVsmartブログでも度々紹介(関連記事)してますし、こういう大容量蓄電池が発売されたことは知っていましたが、実際に設置されているのを見るのは初めてでした。さまざまな記事で「EVのバッテリーはリユースできる!」と紹介してきましたが、現場を見ると「なるほどこういうことなのね」って感じです。

いかがでしょう。高出力器複数台(口)設置に加えて、余裕たっぷりの充電区画、ソーラーカーポートに大容量定置型蓄電池、さらには200Vコンセント付きの月極駐車場などなど、デカルボステーションはまさに「2030年の充電スポットのあるべき姿」を具現化したEV充電パラダイスなのでした。

【EVsmartのステーション情報ページ】
Decarbo.Station

前編記事はここまで。

後編では、ステーション設立への思いなどについてのインタビュー記事をお届けします!

【関連記事】
日本最大級のEV充電スポット「Decarbo. Station」誕生の謎〜現地探訪レポート【後編】(2024年7月17日)

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)1件

  1. この記事を見つけて、さっそく現地へ足を運んでみました。
    田んぼの真ん中にありました。いぜんからなんどか近くを通り抜けていますが、まったく気がつきませんでした。
    驚きです。ロケーション的には南側のJR山陽線の向こうに国道2号線があります。
    山陽道、福山サービスエリア(今津SA)からだとスマートゲートから出るとわりと近いという距離(1km~2km?)です。地元のEVユーザーでも知っている人はまだほんのわずかではないかと思ったりしています。でも、こんな未来的なEV充電ステーションは大歓迎ですね。もっとEVユーザーが増えるとこの利便性が理解できると思いますが。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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