EV用可搬型急速充電器を発売したベルエナジーを直撃取材レポート

電気自動車ユーザーの電欠不安を軽減する強い味方になりそうな、可搬型の急速充電器『ROADIE(ローディー)』が発売されました。さらに、充電インフラの課題を解決してくれそうな新製品も登場しています。画期的な製品を扱っているベルエナジーを取材してきました。

EV用可搬型急速充電器を発売したベルエナジーを直撃取材レポート

緊急時に活躍するEV用急速充電器が登場

緊急事態宣言も明けた6月下旬のある日、筆者はEVsmartブログの寄本編集長が運転するリーフに同乗して、茨城県つくば市の『ベルエナジー』を訪ねました。EVsmartブログにベルエナジーから、電欠した電気自動車(EV)をレスキューする急速充電器『ローディー』を発売するというお知らせがきたのがきっかけでした。

昨年から今年にかけて、大雪のために高速道路上で大規模な立ち往生が続けて発生しました。2020年12月には関越道で2000台以上、2021年1月には北陸道で1500台以上が巻き込まれ、自衛隊が出動する事態になりました。

その時にネットを中心によく見かけたのが、EVが立ち往生して電欠したら助けられないじゃないか、というネガティブ発言です。エンジン車なら給油ができるけどEVが電欠したらどうにもならないのではないかというものです。エンジン車でも雪の中で立ち往生したら排ガス中毒の心配とかいろいろ大変なのですが、ここでは横に置いておきます。

それに電欠の点は確かに、不安材料がなくはないです。携行缶にガソリンは入りますが、電気は貯められません。後述するように日本自動車連盟(JAF)は1台だけ給電車を持っていますが、運用は難しいという考え方です。

そんな問題を解決しそうなのが、可搬型の急速充電器『ローディー』です。この手があったか、と手を叩きました。

と言うわけで、『ローディー』を販売しているベルエナジーでお話を聞いてきました。場所は茨城県のつくば市です。

ベルエナジーが入居しているビルの地下駐車場で、寄本編集長がリーフを止めると、待ち構えていたようにベルエナジーの川井宏郎フェローが台車に『ローディー』を乗せて現れました。

さっそくリーフに接続します。『ローディー』はCHAdeMO(チャデモ)規格に対応しているので接続は簡単です。コネクターに差し込んでメインスイッチを押すと、インジケーターのランプが点灯して通信を開始。すぐに充電が始まりました。

スタンドアローンの急速充電器の可能性

取材の間に充電しておくことにして、お話をお伺いしました。対応していただいたのは川井さんに加えて、ベルエナジーの執行役員兼財務部長の萩野谷仁さんと、新規事業部課長のエリック・手島さんです。

写真左から、手島さん、川井さん、萩野谷さん。

ベルエナジーはもともと、米国に本社を持つBell Circuits Group Inc.の子会社として設立されましたが、2006年に独立し、2015年に「Bell Energy株式会社」 に名称変更しました。それまでは太陽光発電を中心に事業を行っていましたが、2017年にEV用充電器を開発、製造しているアメリカのFreeWire社に出資して蓄電池やEVの関連事業に参入し、充電器などの輸入販売を始めました。

現在、扱っているのは、新たに発売した『ローディー』の他、可搬型のEV用普通充電器『Mobi L2』や、可搬型蓄電池『Mobi Gen』、それにキュービクルのいらないEV用急速充電器『Boost Charger』などです。ひとつずつ順番に見ていきたいと思います。

まずは新発売の『ローディー』です。開発したのはマサチューセッツ州ボストン郊外に拠点を構えるスタートアップ企業、SparkCharge(スパークチャージ)です。地図で場所を見ると、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学から数キロに位置していて、なんとなく優秀な人が集まりそうなイメージです。

『ローディー』の特長は、チャデモ規格に対応した急速充電が、場所を選ばず手軽にできる点にあります。ユニットは、チャデモコネクターを装備したコントローラー部と、3.5kWhの容量を持つバッテリー部で構成されています。バッテリーユニットは、1個でも使えるし、最大4個、14kWhまで接続することもできます。

販売は、コントローラーユニット1個とバッテリーユニット2個の組み合わせが標準セットになっていて、198万円(税別)です。バッテリーユニット単体なら66万円(税別)で購入できます。もちろんリチウムイオンバッテリーです。

接続は簡単で、ユニットを重ねて積むだけです。もし非常用給電で使うなら、バッテリーユニットを複数台、用意していけば、組み替えるだけで複数のEVに充電できるわけです。バッテリーユニットの重さは約30kgなので、ひとりでも持てそうです。ちなみに寄本編集長は、ひとりで持って運んで、接続することができました。

充電時の出力は最大20kWなので、10分で約3.3kWh、15分で5kWhくらいが入る計算になります。1kWhで5km程度の電費のEVの場合、10分~15分の充電で約17km~25kmくらいの走行分という感じでしょうか。

逆に『ローディー』に充電する場合は、100Vで4時間が目安になります。

『ローディー』は、ベルエナジーが7月1日から法人を対象に予約受付を開始します。ボストンから船便で輸送するので少し時間がかかりますが、ベルエナジーの手島さんによれば、早ければ受注から2か月程度で提供できるとのことです。

『ローディー』であればバッテリーユニット3個にしても余裕で軽自動車に搭載できるので、大きくて高価な給電車は不要です。これからのロードサービスの必需品になるといいですね。

ローディのスペックを示すラベル。

EV先進国の使い方を聞いて納得の移動式普通充電器

次は、同じく可搬型のEV用普通充電器『Mobi L2』にいきましょう。開発したのはサンフランシスコ空港からサンフランシスコ湾をはさんだ対岸に本社を置くFreeWire Technologies(フリーワイヤー・テクノロジーズ)です。ちなみにベルエナジーは、FreeWire Technologiesに出資しているだけでなく、製品開発に際し日本向けの仕様変更やカスタマイズなども担当しています。

FreeWire Technologiesはスタートアップ企業ではありますが、ABBやbpなどからの出資を受けていて、とくにbpが進める急速充電設備の拡充にはこれから大きな役割を果たしそうです。

実は筆者は、『Mobi L2』の話を聞いたときに「どこで使うんだろう?」と疑問を抱いていました。急速充電器ならレスキュー用があるとは思いましたが、充電に時間のかかる可搬型の普通充電器って何のために? という感じです。でも手島さんの話を聞いて、納得すると同時に「EV先進国すげー!」と驚きました。

手島さんによれば、Google、Facebook、マイクロソフトなどの共同駐車場では、すでに7〜8割の車がEVになっているそうです。アメリカの駐車場には普通充電器が何台も設置してあるのも珍しくないし、IT業界の3巨頭みたいな企業が使う駐車場なら間違いなく多数の充電器があるはずですが、停めているクルマがほとんどEVになると話は別です。

限られた充電器をEVユーザーが交代で使うためには、車を移動しなければなりません。そうすると1日に20~30分は使うことになり、社員の数を考えると厖大な時間数になってしまいます。実際、Googleなどでは社員が毎日、車の移動のためにオフィスと駐車場を往き来していたそうです。

そこで『Mobi L2』の出番です。手島さんの話では、アルバイトの専従スタッフが『Mobi L2』を動かして駐車場内のEVに充電して回っているそうです。

Mobi Workplace Charging(YouTube)

『Mobi L2』は、バッテリー容量が80kWhあるほか、6kWの普通充電のコネクター(SAE J1772)が2口ついていて最大12kWで充電できます。またリモコンで自走できるので、駐車場内を回るのも難しくありません。EVは動かずに、充電器が動きます。移動式の充電サービスですね。

これに加えて、充電器としてではなく、100Vや200Vがとれる蓄電池として使える『Mobi Gen』もあります。基本的には、『Mobi L2』の充電コネクターの代わりに、100Vや200Vがとれるコンセントを装備したものです。

手島さんは、Googleの駐車場に並んだ何十台ものキッチンカーが『Mobi Gen』の電気を使っているのを見たそうです。なるほど、これもまた納得の話です。Googleの駐車場は別格ですが、例えば大規模なイベントだとまとまった数の屋台が出ますし、イベントそのものでも電気を使います。発電機のブォンブォンという音がしないうえに排気ガスを出さない『Mobi Gen』は、グリーンなイメージづくりにも一役買いそうです。

工事を大幅に簡素化できる急速充電器も

もうひとつ、ベルエナジーが取り扱っている新しい設備を紹介します。『Mobi L2』や『Mobi Gen』と同じくFreeWire Technologiesが開発した急速充電器の『Boost Charger(ブースト・チャージャー)』です。この急速充電器の最大の特徴は、高圧受電設備(キュービクル)が不要なうえ、本体にコントローラーや決済端末などを搭載したオールインワンになっていることです。

※1:2台同時に充電した場合の合計出力(最大60kW/台)、1台の場合はチャデモなら最大出力100kW。

急速充電設備のネックのひとつは、多額の工事費です。キュービクルの設置には本体以外に設置工事で数百万円がかかります。もちろんキュービクルのための場所も必要です。

これに対して『ブースト・チャージャー』は、本体内にリチウムイオンバッテリーを搭載し、低圧受電契約のまま本体に充電できるため、キュービクルが不要なのです。バッテリー容量は160kWhで、日本向けはチャデモ規格のコネクターを2口装備し、2台同時の充電なら1口につき最大60kW×2で120kW、1台なら最大100kWでの出力が可能です。ちなみに英国など現地ではチャデモとCCS2(コンボ)に対応していて、CCS2の場合は1台なら最大120kWで急速充電ができます。

内蔵しているバッテリーは、リーフのバッテリーと同じです。リーフのバッテリーを生産しているエンビジョンAESCとFreeWire Technologiesは、2020年12月にバッテリーの供給に関する提携を発表しました。手島さんによれば、エンビジョンAESCのテネシー工場で生産したバッテリーが使われています。

さきほど少し触れたように、FreeWire Technologiesには巨大エネルギー企業のbpやABBなどが出資しています。bpがFreeWire Technologiesに出資しているのは、bpが、子会社のbpパルスやコンビニエンスストアのampmなどを通して進めている公共急速充電ネットワークの拡充のためです。

手島さんによると、bpは既存のガソリンスタンドに急速充電設備を設置していますが、従来の設備を作る場合には工事のために1か月ほど、スタンドを閉鎖する必要があるそうです。でも『ブースト・チャージャー』であれば、設置場所の基礎工事を先に済ませれば、本体の設置は約3時間で完了するとのことです。

それにキュービクルの場所が不要なので、ガソリンスタンドのスペース効率も高くなるし低圧受電契約なので高圧受電契約よりも電気料金が安く、ランニングコストを低減できます。

日本では、ベルエナジーが製品をカスタマイズし、契約代理店が販売と設置を請け負います。2021年6月18日に日経新聞は、電気・ガス料金の比較サイトを運営するエネチェンジが『ブースト・チャージャー』の販売を開始することを報じました。

課金は時間課金と従量課金の両方に対応していて、2022年4月に始まる予定の特定計量制度を利用すれば、kWh単位の従量課金が利用できます。決済は、クレジットカード(現在はVISAとMasterに対応)のスキャンとFeliCaなどの非接触システムを搭載しているので、会員登録不要で利用できるのも嬉しい部分です。

エネチェンジのリリースによれば、予約販売受付は6月21日から始まっています。設備オーナー向けにエネチェンジから料金プランを提案し、内容によっては基本料金0円で急速充電サービスを始めることができるということです。

また輸入元のベルエナジーでは現在、チャデモ検定の取得を検討中です。認証を受けることができれば政府の補助金を利用できるようになるので、設置費用の大幅な削減になります。

というわけで、取材を終えて帰る頃には『ローディー』による充電は終わっていました。バッテリー残量は70%まで回復。これで帰る途中に充電する必要がなくなりました。出先で手軽に充電できることでEVの使い勝手が一段も二段も上がることを改めて実感した1日でした。

多様な充電方法がモビリティを変える

話は変わりますが、経済産業省の「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」の中で日本自動車連盟(JAF)が説明した資料によれば、2020年度のEVに対するロードサービス全5804件のうち、EVの電欠が573件と、約1割を占めていたそうです。もっとも電欠の割合は年々減っていて、2016年度の17.8%が、2020年度には9.9%になっています。

ただし、EVのロードサービス件数は2016年度の3547件から、2020年度には5804件に増えているので、電欠の数そのものは2016年度の631件から大きく減っていません。むしろコロナ前の2017年度~19年度は700件以上になり、増える傾向がありました(2021年4月16日の配付資料 ※PDF)。

電欠車のレスキュー方法は、JAFの資料によれば急速充電場所への搬送だけです。給電車は1台ありますが、救援場所、給電車の価格、ランニングコストの問題から運用は困難だそうです。補足すると、EVによっては駆動輪を設置させて牽引すると故障する可能性があるので、つり上げが必須です。全輪駆動の場合はローダーが必要だったりします。

JAFの資料は雪による大規模立ち往生の後に出てきているものなので、EV普及への課題として取り上げられたのではないかと推察されます。会議から何か月も経っているのに経産省が議事録を公開していないので、正確な内容がわからないのがフラストレーションです。

仮にここで、災害時のEVの電欠がエンジン車のガス欠と比べて問題という指摘があったとすれば、ネガティブキャンペーンに利用されそうです。でも、今回紹介した『ローディー』や『MOBI L2』があれば、レスキュー時の給電問題はかなり解消されそうです。EV普及に消極的な意見に対する反論になるのは間違いありません。

それとは別に急速充電設備の現状を見ると、日本では設置が早かったために旧式化していることが否めず、しかもEVの台数が伸び悩んでいることもあって設備の更新が先送りになっています。設置コストが節約できる『ブースト・チャージャー』のような新技術で、これまでの課題を乗り越えることを期待したいと思います。

可搬型の急速充電器といい、従来より大幅に簡易な工事で済む急速充電設備といい、EV普及のための土台である社会インフラ形成に役立つ技術が日本に入ってくるのは嬉しいことです。技術開発によって充電方法の幅が広がれば、モビリティの変革への追い風になりそうです。

(取材・文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)13件

  1. 趣旨は、先の立ち往生した高速道路の状況で、記事の携帯バッテリーが有効な解決策になるかです。仮でも62kwhで計算するなら、上記状況で全車両62kwhにする方法先ずはご提示するのが先と思います。
    道路が開通しいざ脱出時には、電欠、または10kmも走れ無い低容量の車両には外部充電する必要が有ると思いますが、記事の重量30kgで3.5kwhの機器が使いものになるかです。
    ガソリンなら3l有れば20km走行可能でスタンドも数、注油器とも豊富です。また、路上給油の機材も10セットなら市中で入手可能でしょう。3lなら100台相手でも一人10台対応で10人いれば対応可能。
    記事の3.5kwhだと、1kwhで5kmの電費なら17kmの走行可能距離となり、100台に充電するなら100台必要。発電機やら巨大バッテリーで充電するなら10台でも良いですが、充電時間も機材も必要です。それなら運搬可能な発電機+整流器を考えるのが有効ではないでしょうか?
    どこ迄考えて記事を書かれた、または、回答されたか不明ですが、詳細に此処まで書かないと趣旨が伝わらない事が、以下に災害時やネガ要素を軽視しているかの顕れと思います。
    ガソリン問わず緊急時対策で電気毛布なり個人で用意すべきと思います。一酸化炭素中毒は車内にセンサー付けて単純に音声でマフラー塞がってますと流せば減ると思います。

    1. テスラ欲しい 様、再度のコメントありがとうございます。
      前回のコメントでも明記いたしましたが、当記事は、可搬型の急速充電器をレポートしたものであり、当製品は災害対策に特化した商品ではありません。

      >趣旨は、先の立ち往生した高速道路の状況で、記事の携帯バッテリーが有効な解決策になるか

      そのため、コメントの内容は、商品の主たる目的に沿っていないと思います。

      また記事の内容とはずれますが、ご質問いただいた点につき、ご回答いたしますね。

      >以下に災害時やネガ要素を軽視しているかの顕れと思います。

      私のコメントの趣旨は、大雪で閉じ込められて亡くなるリスクはあるが、非常に小さく、過去に日本国内では事例がない。また事例が発生した場合には、救助すべきである。またガソリン車であってもやむを得ない場合以外は車内でアイドリングしながら待機させるべきではなく、またアイドリングで死者が出る確率は、前者の電気自動車で大雪で投資する確率より高く、毎年死者が出ている。

      >ガソリン問わず緊急時対策で電気毛布なり個人で用意すべき

      雪国の人で、私も含めて、冬に毛布積んでいる方は結構多いと思います。都会の方だとあまり認識がないかもですが。私は電気自動車なので12V電気毛布を3枚積んでいますよ。

      >一酸化炭素中毒は車内にセンサー付けて単純に音声でマフラー塞がってますと流せば減る

      そうでしょうね。しかし、それも実際には行われていないんです。死者が出ているとはいえ、やはり運転者の過失であることには違いないです。
      https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-natural/subcategory-snow/faq255
      JAFでも「降雪時に車内にとどまる際には、できるだけエンジンを切るようにしましょう。」とガイドしています。

  2. 雪道で1500台止まっている
    歩きで無いと車に辿り着けない状況です。
    ガソリンなら人間が40l背負って3l×13台に給油可能だけど、30kgのバッテリー背負っても1台しか給電できない。

    そもそも、1夜暖房で使用したら電欠車続出でしょう。

    1台2台なら可能でも、そもそも記事の上記状況で下記の回答出来るロジック知りたいです。
    考え方甘過ぎませんか?
    人の命かかってるの分かってるのかな?
    自分はヘリで複数発電機と整流器を運び込むのが良いと思いますね。それが有っての今回の様な蓄電池でしょうね。

    レスキュー時の給電問題はかなり解消されそうです。EV普及に消極的な意見に対する反論になるのは間違いありません。

    1. テスラ欲しい 様、コメントありがとうございます。

      当記事は、ベルエナジー社が出された製品についてのご紹介が目的です。災害対策のために導入されるべき専用の設計の機器ではありませんので、その点誤解なさらないようお願いいたします。そのうえでコメントさせていただきますね。

      >雪道で1500台止まっている
      >歩きで無いと車に辿り着けない状況です。

      このような状況が昨冬、発生しましたね。確かに危険な状況ですが、本来はこのような危険な状況において、救助を優先すべきです。今回はガソリン車が多かったため、救助をしないで待ってもらう、という選択が取られました。そもそもこのような状況はまれであり、一般的に常に想定しておくべきものではないと思いますが、万が一に備えることは重要ですよね。

      >ガソリンなら人間が40l背負って3l×13台に給油可能だけど、30kgのバッテリー背負っても1台しか給電できない。

      電気自動車の場合、電欠のリスクがあるほど車内に滞在させるのであれば、そのような救援方法は現実的でなく、救助すべきだと思います。

      >そもそも、1夜暖房で使用したら電欠車続出でしょう。

      これは間違いです。仮に55lタンク半分のガソリン車(燃料消費率15cc/分)と、62kWh電池半分の電気自動車(暖房時電力1kW)を比較してみましょう。
      ガソリン車:55[l] x 1000 / 2 / 15[cc] / 60[分] = 31時間待機可能。丸一日と6時間くらいですね。ちなみに、3lのガソリンを緊急用に給油された場合のガソリン車の待機可能時間は、3 x 1000 / 15 / 60 = 3時間20分です。またガソリン車においてアイドリングで夜を超す場合、一酸化炭素中毒のリスクがありますので、2-3時間おきに起きて換気や除雪が必要となります。
      電気自動車:62[kWh] / 2 / 1[kW] = 31時間待機可能。ガソリン車と同じであることが分かります。一酸化炭素中毒のリスクはなしなので、少なくとも31時間のうちの夜の時間は安心して眠ることができます。

      ご存じと思いますが、ガソリン車の一酸化炭素中毒で亡くなった方は毎年いらっしゃいます。
      https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27363370U8A220C1000000/
      2018年の福井豪雪でも3名が車の一酸化炭素中毒で亡くなりました。一方、私の知る限り、日本国内で、車の中でガス欠または電欠により、亡くなった方は存じ上げません。これだけ比較しても、長時間の車内待機は本当にやむをえない場合以外は行わせるべきではないし、めったに起こることでもない、ということがお分かりいただけると思います。

      もう一点、電気自動車では、シートヒーターを使えます。ガソリン車ではシートヒーターだけにして暖房を切っても使う燃料の量は同じですが、電気自動車ではシートヒーターは半分以下の電力しか消費しないため、救助が来ない可能性が明らかで、命の危険があるといった場合には、救助を要請したうえで暖房を切り、シートヒーターでできる限り暖を取って待機する選択が可能です。この場合、シートヒーターの消費電力を0.5kWとすると、先ほどの仮定において待機可能時間は、62[kWh] / 2 / 0.5[kW] = 62時間となり、2日間半も暖を取りつつ待機することが可能です。

  3. 電気主任技術者国家資格の試験問題を見直してると蓄電池の有難味を感じますよ。
    特に負荷率が問題、仮にEV30分充電が1日6回とすると 0.5*6/24=0.125(12.5%)、方や一般的な高圧受電設備(キュービクル)を使う工場が1日8時間稼動すれば8/24=0.333..(約33.3%)やから充電器は効率悪い設備になりますー。
    その対策として蓄電池内蔵の急速充電器がありますやん。JFE製のRAPIDAS(50kW)は蓄電池を使うことでピークカットを実現し高圧受電設備でなくとも急速充電できますよ…ただもうひとつ、消防法の規定で同一場所に置ける蓄電池が4800Ahまでやから精々18kWhまでしかできへんのも問題ですが。
    つくづく日本の法律が電気自動車に向いてへんー痛感するわホンマ。
    ※これがテスラを日本から遠ざけてる原因やないですか!?もうひとつは車幅と狭い路地のミスマッチ…それ考えたら普通充電だけで近場を補えるアイミーブMタイプこそがマッチするんやないかー思うた。

    アカン電気の仕事すりゃするほど電気自動車への法的障壁を思い知りますわな。規制緩和せなアカン法文もっと見つけなマズイんやないですか!?

    1. 4800Ah未満で別収容箱に収容する。または、地面に設置時なら不正確ですが2m前後空間的有れば届け出も不要。消防で差異が有るので相談はした方が良いかと。
      他で同一収容箱設置時は、消防法認定収容箱に収容し消火器等設置シ事前に届け出で可z能。
      転倒対策(強度検討)必要ですが。
      元が充電時のかガス対策なので見直し必要とは思いますが。

    2. 4800Ahでは無く4800Ahセルの間違いでした。訂正します。
      バッテリーの2次電圧が100vで1セルが3.7vなら27セル直列と仮定すると、177,8Ah×100vの17,8kVAhの容量までは届け出無しで設置可能と思います。

    3. テスラ欲しい 様、コメントありがとうございます。
      詳しい方お二人にレスするようで気が引けますが(汗、テスラパワーウォールを2基設置している事例もご紹介しています。
      https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/tesla-powerwall-japan-release/
      届け出をして、ちゃんと消防庁・消防署の点検を受ければ問題なく設置できます。恐らくご存じと思いますが、勘違いされている読者の方々も多そうなので、補足させていただきました。

  4. >実際、Googleなどでは社員が毎日、車の移動のためにオフィスと駐車場を往き来していたそうです。
    エコをうたう、大企業でも、BEVの台数に合わせて、普通充電機もしくは、普通充電コンセントを設置してくれないのですね。
    移動式充電器は、一過性の緊急対応であり、1ヶ月程度ですべてのBEV社員が駐車場で充電できるようにすべきでしょう。もしくは、駐車場には、標準装備で。

    ブーストチャージャーなどの蓄電型急速充電器は、作るべきではないと思います。
    ただでさえ、回転率の悪い急速充電器なのに、本体を充電しないと本来の能力が発揮できない充電器は、ユーザーとしては、不満がつのるだけですし、設置側も採算性の悪さに愕然とすると思います。

    1. のぶぶ 様、コメントありがとうございます。

      >移動式充電器は、一過性の緊急対応であり、1ヶ月程度ですべてのBEV社員が駐車場で充電できるようにすべき

      なぜそうすべきなのか、という理由がちょっと理解できないですね。Googleの充電器には課金システムが入っておらず、無料で充電できます。ガソリン車に乗っている人と比べて不公平になるようにも思います。
      ただGoogleは会社として、普通充電器の設置にコミットしています。少し古い資料ですが、2012年
      https://www.pca.state.mn.us/sites/default/files/charging-while-you-work-guide.pdf

      At this writing, the charging program at Google headquarters consists of 227 Level 2 charging
      stations at 34 buildings, 160 Level 1 charging spots (cord reels), a pilot project to test a wireless
      charging system, and in the future a DC Fast Charging station is planned for their fleet vehicles.
      Google does not charge its employees or guests to use these charging stations. Usage is growing
      and more than 200 employees and more than 50 EV fleet vehicles are charging every day.

      この時点でも、34の建物に対し、224+160=384基の普通充電設備が設置されています。全体で、駐車場の5%に当たる台数まで充電器を増やす計画とGoogleは以前、公式に発表しています。
      実際には、急に車両のほうが増えすぎて、工事が追い付かないのではないでしょうか?

      >ブーストチャージャーなどの蓄電型急速充電器は、作るべきではないと思います。
      >本体を充電しないと本来の能力が発揮できない充電器は、ユーザーとしては、不満がつのるだけ

      急速充電器にもいろいろありますが、蓄電しないタイプの充電器は、充電時にグリッドに負荷をかけるため、その分基本料金(デマンドチャージ)が増加する仕組みになっています。そのため、巨大な工場、ショッピングモール等では、デマンドチャージが高くなりすぎないよう、電力消費の平準化に力を入れています。急速充電器の負荷平準化に最も効果的なのは蓄電池。これにより、本当のピークの時にはフルパワーが発揮できませんが、そうでないときは十分な実力が発揮できる仕組みとして、現在では一般的になっています。
      テスラスーパーチャージャーでも蓄電池設備が入っているところはどんどん増えていますし、フォルクスワーゲンも蓄電池付きの急速充電設備を製造、販売しています。

      >設置側も採算性の悪さに愕然

      記事内容についてご批判される場合には、きちんとデータやエビデンスをご提示いただけると、他の読者の方々に利益になると思いますので、ぜひご提示をお願いいたします。
      ちょっと計算してみましょうか。仮に250kWの急速充電器を4基用意するとします。ここでグリッドとの契約は半分(500kW)、残りは蓄電池で賄うとします。
      https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan04.html
      1000kWのデマンドチャージは年間、1000kW x 1716円/kW x 12 = 約2059万円
      500kW蓄電池付きのデマンドチャージはその半分ですから、約1029万円。その差は年間1000万円くらいですね。
      仮に8年間設備を運用したとして、運用費の差は約8000万円です。これで採算は取れないでしょうかね?余裕で取れると思います。

  5. >課金は時間課金と従量課金の両方に対応していて、2022年4月に始まる予定の特定計量制度を利用すれば、kWh単位の従量課金が利用できます。

    とのことですが、EVユーザとしては、SA/PA等に設置された急速充電器を利用した充電料金の課金が従量制に向かうのかが大いに気になります。100kWを超える充電器とコンビニ等で見かける20kWクラスの中速充電器が同じ時間制課金であることに、不公平さを感じています。e-Mobility Power社は従量制課金への移行を考えているのかどうか、取材をしていただけるとありがたいです。

  6. 可搬型急速充電器は嬉しいです。大型連休での急速充電器に耐えられる容量はありませんので、記事でご紹介されている通りレスキュー用ですね。JAFが採用してくれると助かります。

    Boost Chargerは、高稼働率の充電スポットには合いませんが、カバレッジ面で空白地帯を埋めるだけの目的の超低稼働率な充電スポットでしたら、この先10年はこれで充分という気がします。
    具体例をあげますと、SA/PAはこれは休日運用に耐えられないのでダメですが、コンビニならこれにリプレースされていくと有難いです。

    色々な製品が生み出されていますね。EVシフトは新たなビジネスチャンスでもあるのだなと感じました。

    1. 大型連休での急速充電器→大型連休での臨時設置の急速充電

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この記事の著者


					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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