テスラがスーパーチャージャーネットワークを他メーカーのEVにも開放すると発表

7月26日に行われたテスラの株主総会で、独自充電網のスーパーチャージャーを他メーカーの電気自動車にも開放するというマスク氏の発言がありました。

テスラがスーパーチャージャーネットワークを他メーカーのEVにも開放すると発表

Tesla Confirms it Will Open its Supercharger Network to Other EVs Via Easy App Access by Eva Fox on『TESMANIAN

テスラがスーパーチャージャーネットワークを他のEVにも開放するという噂がしばらく飛び交っていましたが、最近社のCEO、イーロン・マスク氏がそれを肯定しました。2021年第2四半期の株主総会で社は姿勢を明確にし、簡単にアクセスできるアプリを通じて他企業のEVに開放すると発表しました。

テスラが今年後半にスーパーチャージャーを開放するとマスク氏が以前ツイートしていたことを受け、株主総会で投資家が詳細を求める質問をし、テスラのチームが答えた形です。

マスク氏は、非常にシンプルにできると話しています。EVオーナーはテスラ・アプリをダウンロードし、どの機器を使うのか知らせるだけでスーパーチャージャーを使うことができます。車をケーブルに繋ぎ、アプリを開いて充電器を開始させれば、充電にどの位の電気量が必要なのかが分かります。基本的にはどこのメーカーの車でも使えるはずだそうです。

スーパーチャージャーの利用時間には制限があるため、車の充電スピードがかなり遅い場合、オーナーの支払額は多くなります。加えて、社はスーパーチャージャーのある場所で電気をスマートに使いたいと考えているため、ラッシュアワーの利用額は高くなります。スーパーチャージャーが空いている時間と、混雑して列ができる時間帯があるので、‘時間による差別化’をするのは理に敵っているとマスク氏は話しました。

さらに欧州、中国、その他ほとんどの国ではすべての電気自動車で同じ充電コネクタが使われているため、スーパーチャージャーをオープン・アクセスにするのはかなり簡単であるとしています。北米ではテスラ以外の車がスーパーチャージャーを使うには特別なアダプターが必要で、ユーザーが購入する必要があります。社はアダプターを充電器に取り付ける予定ですが、盗まれないか懸念もあります。

マスク氏は、テスラのゴールは「持続可能なエネルギーの出現をサポートする事であり、安全な庭を壁で囲って競争相手をこん棒で殴りつけることではありません。企業によってはそういうことをしますけど」と話しました。スーパーチャージャーはすべてのEVに開かれなければならないのです。

スーパーチャージャーが他メーカーの車両にも便利なものであるために、テスラは車両の生産数よりも充電ネットワークの拡大をする必要があるが、それは簡単ではないともマスク氏は言っています。しかしそれが社のゴールとされている以上、彼らはその目標を叶えるためにベストを尽くすでしょう。

(翻訳・杉田 明子)

日本でもスーパーチャージャーは他社EVに開放されるのか

※編集部追記/安川 洋

大陸で異なるテスラの充電コネクター規格

テスラは、北米と日本では独自コネクターをスーパーチャージャーと車両側に使用しています。また欧州では、モデルS/Xについてはtype2と呼ばれる、欧州の普通充電規格Mennekesのコネクターを独自拡張したコネクターをスーパーチャージャーで使用し、普通充電時はtype2を直接そのコネクターに挿せるようにしています。モデル3/Yについては、CCS2と呼ばれる急速充電/普通充電兼用のコネクターを車両は備えています。欧州のスーパーチャージャーは、最初はtype2独自拡張コネクターで展開していましたが、現在はケーブル2本出し、またはCCS2のみとなっています。

米国での超急速充電規格はチャデモとCCS1、日本ではチャデモ、欧州ではチャデモとCCS2となっています。

米国・日本においては、チャデモアダプターというアダプターが販売されており、チャデモ急速充電器(50kWまで)をテスラ独自コネクターを装備する車両に接続して充電できます。

欧州においては、CCSアダプターというアダプターが販売されており、これはCCS2の充電器をCCS2対応でないモデルS/Xに接続して充電するためのものとなります。

このようにグローバルで非常に複雑な充電事情を抱えているテスラですが、今回充電を許容するとなった場合、アダプターの提供が必要となります。では地域ごとにこの問題を考えてみましょう。

まず欧州です。欧州の充電器はCCS2、車両も多くはCCS2です。そのため、他メーカーの電気自動車は、テスラのCCS2スーパーチャージャーと通信し、そのうえで課金情報を正しく伝えることができれば充電が可能です。CCS2には、車両の情報や認証、課金などをやり取りする方法が規定されています。もちろんこれを使わずとも、アプリなどを用いて特定の充電器から電力を取り出すことは比較的容易だと考えられます。コネクターが共通だからできるんですね。

次に米国です。米国では、電気自動車側のコネクターはチャデモかCCS1となりますが、
こちらでも報じられている通り、日産のアリアは米国ではCCS1を採用するので、今後を考えると、充電ネットワーク側でのチャデモのサポートは絶望的だと考えられます。CCS1の車両と、テスラ独自コネクターのアダプターはまだどこが作るかははっきりしていませんが、イーロンマスク氏はテスラが提供することを匂わせています。

韓国では逆のアダプターとなりますが、CCS1充電器用の、テスラ純正アダプターが販売される予定になっています。韓国の情報については、別の記事でお知らせします。

日本で開放されるのは望み薄、かも……

さて日本ではどうなるでしょうか?チャデモ充電器は残念ながら車両認証や課金システムを持たないため、課金部分はアプリとなると思われます。またテスラ独自ケーブルとチャデモ充電口を接続するアダプターを必要とします。

しかしこのアダプター、誰が利用するのでしょうか? 上で述べたように、米国では車両側コネクターはCCS1になることが想定され、チャデモが選択されることはないと思われます。そのため、もし日本用アダプターを作るなら、これは日本でしか使えないアダプターになると思われ、テスラがそこに投資するとは考えづらいものがあります。

結論としては、日本において、アダプターの開発は自動車メーカー(テスラ以外の)に依存することになると思われますが、逆にこれだけチャデモ充電設備が普及していることから、自動車メーカーがそれに乗り出すかどうかは難しい判断だ、と私は考えます。

この記事のコメント(新着順)4件

  1. 高圧受電設備が必要な日本の場合、イニシャルコストを回収すべくテスラSC⇒CHAdeMOアダプターを作って稼働率を上げるのはアリです。高圧受電基本料金だけでも計算上毎月30万円はかかってますんで!!!(爆)
    それに限らず急速充電器の類はランニングコストが高い!電気代のほかにも機器保守メンテナンス費用、通信費などが結構なウエイトを占めており、単体で運営すれば赤字であります!とても使用料売上だけではカバーできないレベル。
    同じ話は普通充電器でも言えますが、イニシャルコストはかかってもランニングコストは安いです…仮にEVコンセント方式でコイン課金にすれば初期投資10万円以下も可能でメンテナンス費用はあまりかからないですから。

    電気自動車に乗り急速充電器を欲しがる人って月々にかかる費用を把握しているんかな!?ふと思った。こちとら電気のエキスパート(電気主任技術者)だから容易に想像できましたが。

    1. 追伸です:テスラスーパーチャージャーの分布を改めて地図で見ると地域の偏りが激しいですね。太平洋ベルトに属する地域はいいとしても、北海道・東北・北陸甲信越・山陰・四国・九州は壊滅的に少なすぎますね。デスティネーションチャージで補完してもまだ要注意に変わりはあるまい。
      そして高圧受電設備設置で巨費を投じないと設置できない日本の電気事業法もある…ニーズの少ない地域がとばっちりを食ってますよ。
      だからCHAdeMOも対応することは補助金を受ける要件を整えることにもなり、相互乗り入れにして日本標準の充電インフラにも対応することはひいてはEV拡充の切り札にもなるんですよ?特に普及が期待される軽EVの充電場所としても活用されれば稼働率も上がり受電インフラ投資回収にも役立てて一石二鳥やないですかね!?
      意外ですが北陸は電気自動車普及率が高いです。以前アイミーブで訪問した冬の福井県/滋賀県湖北地区は急速充電待ちが結構あり到着時に機械音(電気回路冷却ファンの回転音)があり稼働率もよさそうでした。これはテスラも金沢にスーパーチャージャー・ショールーム・サービス工場があってもおかしくナインやないですか!?エンジン車だと燃費悪い地域なんでテスラも歓迎されると思いますよ!?

  2. 他のコメントにもあるように、日本だとテスラユーザーにはデメリットしかないですね。日本は1箇所のストール数が少ないので、リーフ四台とかに全部占有されるとか普通にありそう。夕方マップ見ると関西方面充電待ち大いいですし。それでも、他の車種に提供されるようになったらテスラの所有する最大のメリットが一つ減るので、乗り換える時はタイカンの購入も考えちゃう。

  3. 海外だとスーパーチャージャーが多く設置されている国も結構あるので空いてる時間に充電網を遊ばせとくのももったいないという発想にもなるのでしょうが、現状の日本のSCの数だとテスラオーナの反感を買うだけな気もします。海外だと1箇所に8機10機あるところも結構多いですが、日本だと4機な場所が多いですし。
    また、日本だとスーパーチャージャーとデスティネーションチャージングの端子が一緒だと思うので、よくわからない方がCHAdeMO端子にデスティネーションチャージングを差し込まないか…なども考慮する必要がありそうです(デスティネーションチャージングのネゴシエーションがどうなっているのか把握できてないのであれですが、この辺大丈夫なんですかね?)

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この記事の著者


					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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