テラモーターズが柳井市にEV用普通充電器100基設置/自治体アクションのトリガーに!

山口県柳井市とTerra Motors(テラモーターズ)が持続可能な地域づくりに向けた協定を締結。市内の公共施設に電気自動車用普通充電器100基の設置を決定したことを発表しました。ゼロカーボンシティ宣言した地方自治体による具体的アクションの先例となるニュースです。

テラモーターズが柳井市の公共施設にEV用普通充電器100基設置/自治体アクションのトリガーに!

市役所やスポーツ施設などに普通充電器100基を設置

2023年3月13日、EV充電サービス「Terra Charge(テラチャージ)」を提供するTerra Motors株式会社(テラモーターズ)と山口県柳井市が東京都内で記者会見を開催、「持続可能な地域づくりに向けた包括連携協定」を締結したことを発表。柳井市の井原健太郎市長、テラモーターズ取締役会長の徳重徹氏が協定書にサインを交わしました。

協定では、以下の事項について連携していくことが示されています。

(1)クリーンエネルギー自動車の普及促進に関すること
(2)次世代を中心とした環境問題への意識啓発に関すること
(3)地域における雇用の創出に関すること
(4)地域における起業家教育及び起業支援に関すること
(5)その他持続可能な地域づくりに関すること

具体的には、柳井市内の市役所や武道館、運動公園(複合図書館)などの公共施設駐車場に、今後2年間ほどの期間でテラチャージによるEV用普通充電器100基を設置していくということです。

柳井市では2022年2月に「ゼロカーボンシティ宣言」を行いました。ゼロカーボンシティとは、環境省が推進している施策で「2050年にCO2(二酸化炭素)排出量を実質ゼロにすることを目指す自治体」のこと。2020年以降、宣言を発表する自治体数が急増し、2023年1月には830を超える自治体が宣言を行っています。

井原市長によると「柳井市でもゼロカーボンシティ宣言を行い、具体的に何をやるべきか模索していたところ、今年2月にテラモーターズの徳重会長とお会いする機会を得て、EV充電器設置の提案をいただき、スピード感をもって今日の発表を迎えることとなりました」とのこと。

井原市長。

充電インフラ補助金を活用してテラモーターズが設置

普通充電器は、経済産業省の「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金(充電インフラ補助金)」を活用して、テラモーターズが費用を負担して設置。柳井市は設置場所を提供します。令和5年度の充電インフラ補助金は、予算額が昨年の65億円から175億円へと、約3倍に増額されました。

「軽EVの発売など、日本でもEV普及に向けた大きな動きが始まった中、ひとつの自治体の施設に100基を設置するのは、社会的にもインパクトのあるアクションではないでしょうか。800を超える自治体がゼロカーボンシティ宣言を行ったものの具体的になにをやるか模索している状況があり、柳井市と連携した大規模な充電器設置の事例が、全国の自治体を動かすトリガーになればと思っています」(徳重会長)

徳重会長。

また、同じ3月13日には日東工業が通信機能を備えた最大出力6kWにも対応する普通充電器「Pit-2G」がテラチャージに採用されたことを発表。柳井市との協定締結発表の会場でも実機が紹介されていました。ただし、柳井市に設置する普通充電器は出力3kWのコンセントタイプが中心になる予定ということです。

どこに、どのくらい並べるのか?

井原市長の説明によると、充電器を設置するのは、当面、市役所など5カ所程度から始め、建設中の施設の完成を待って向こう2年間ほどで7カ所程度の施設への設置を想定しているとのこと。どの施設に何基の充電器を設置するかといった具体的なプランは、これから柳井市とテラチャージの担当者で検討を進めることになります。

ただし、テラチャージのビジネスモデルとしては、補助金で足りない設置コストを負担する代わりに、自社アプリで決済する充電器の利用料金で収益を上げていく仕組みです。せっかく初期コストを負担して充電器を設置しても、それなりの頻度で利用されないと元が取れません。「使われる充電器にするために、どの施設に何台設置するといったプランは?」と、徳重会長に質問してみると、「その点は、戦略的にあえて考えていません。今後、さまざまな市販EVが登場して、充電器の使われ方が変わっていくこともあり得ます。5年後、10年後のために、今はとにかく増やすことが重要だと考えています」ということでした。

普通充電器は急速充電器に比べて維持コストは掛からないでしょうし、あらゆる公共施設の駐車場に複数基の普通充電器があるのはEV普及にとって素晴らしいことです。

とはいえ、補助金も使って設置するのですから、できるだけ有意義な場所に、適切な数の、適切な出力の充電器が設置されるのが望ましいこと。テラモーターズ(テラチャージ)をはじめとする充電サービス提供企業には、今まさに急ピッチで進んでいる普通充電インフラ拡充の知見やノウハウを活かし、世界に誇れる日本のEV充電環境構築を目指して欲しいと思います。

個人的な想像ですけど、たとえば市役所など日常的に勤務したり訪れる人が多い施設には10〜20基規模で設置して、公用車や職員が通勤に使うクルマにもEVを増やす施策を行うとか、ただ付けるだけではないプランがあると素敵だと感じます。

あと、少し気になったのが電気代の負担です。今回、テラチャージが無償で設置して、利用料金は柳井市には還元がないプランでの設置になるとのことなので、充電時の電気代は柳井市が負担することになります。職員の通勤車が市役所の充電器を使うと、その電気代を丸ごと市の負担にするのは問題が起きそうなので、何か工夫や制限が必要になりそうです。

日本のEV社会はまだ草創期、ほかにもいろいろと思わぬ事があるかも知れません。ともあれ、前進あるのみ。柳井市のような事例が、より洗練されながら全国に広がることを期待しています。

取材・文/寄本 好則

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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