英国の高速道路でバリアフリー化の状況を確認
日本国内でも急速充電器を中心とした充電インフラの整備が進んでいます。高速道路SAPAなどに設置された急速充電スポットのバリアフリー化はどうなのか。車いすレーサーとして活躍している青木拓磨さんと一緒に関越自動車道のSAPAを巡って確認したのは9月末のことでした。
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日本での確認の結果としては「液晶表示が見えない」や「駐車区画が狭い」といった課題があることがわかりました。今回は、英国耐久選手権に出場する青木選手に同行して英国へ。日本での確認企画と同様に、急速充電インフラのバリアフリー化の状況をチェックしてきました。
旧式でも車いすでのアクセスはスムーズ
訪れたのは英国のドニントンパークという名門サーキットです。イングランドのレスターシャーという街にあります。ヒースロー空港に降り立ち、そこから英国を南北に走るM1という高速道路で約2時間半という立地。今回はこのM1という高速道路にあるサービスエリアを中心に急速充電インフラの実情を見ていきます。
充電器の設置基数などについては、日本同様に充電インフラが進化の途上にあるという印象を持ちました。充電器が1~2基置かれた場所と、多くの充電器がズラリと並んでいる場所がありました。本格的なEV時代到来に向けて、英国の急速充電インフラも進化中です。
ただし、日本と印象が異なったのは、旧式でもきちんとバリアフリー対応していることでした。旧式タイプの充電スペースは、もともと路肩のコンクリート壁が高めに設定されているものの、余計な車止めやポール(ガードバー)は必要最低限になっており、アプローチがしやすく、かつ操作の邪魔をしないという配慮がなされています。
前回のレポートでも指摘した「下からの目線で液晶モニターが見えない!」についても、今回確認した英国の機種では強力なバックライトがあって、下からでもしっかり見やすい設計となっています。このあたりは、充電器の機種にもよるのでしょうが、今回訪れた英国の充電器はすべてきちんと配慮されていました。
充電器はチャデモとコンボの2本出し。認証の作業も別設置の認証器などはなく、充電器本体の操作だけでOK。会員用カードだけでなく通常のクレジットカード使用も可能で、使い勝手は上々でした。
この写真の場所の充電器スペースは駐車スロットがそれほど広くはなかった点が残念なところですが、それ以外は合格です。
ドライブスルーのコーヒーショップもありがたい!
次にもう一か所、こちらも同じ旧式充電スペースでしたが、何らかの理由で充電サービスが行われておらず、充電器に目立つカバーがかけられていました。残念、と思ったら「これって実はすごくいいことだ」と青木選手は語ります。もちろん充電器の情報は事前に調べておくことが重要かもしれませんが、クルマを止めて、車いすを下ろして、充電器に近づいたら故障だったっていうのは、車いすユーザーにとって最悪です。「故障中の張り紙ひとつで放置されているくらいなら、遠くからでも使えないとはっきりわかるようにこうしてほしい」ということです。
余談ですが、ドライブスルーのコーヒーショップも多くあり、これについても「いいことだ」と青木選手。高速道路のSAPAは健常者にとっては、クルマから降りてひと息つくスペースなのかもしれませんが「クルマの乗り降りを減らしたいというユーザーもいることをわかってほしい」と語ります。
次世代型のスポットは屋根が無い以外は理想的
続いて次世代型の充電スポットです。訪れたサービスエリアでは6基の充電器が並んでおり、そのうち2基がチャデモのプラグも備えた両用モデルでした。いずれも、充電プラグも操作パネルもきちんと手の届く高さにあり、スリムなデザインながら前面の低い位置にすべてが並んでいたので、車両の置き方に気を付けて、充電器本体の前に行ければ車いすでもOKです。
充電ケーブルは吊り下げ式ですし、ガードのポールは充電器前に2本立っているだけで、アプローチや操作の邪魔にはなりません。日本でも指摘したように、英国のような雨の多い地域では屋根が欲しくなりますが、雨でも傘をさしていないことが多い英国人は、そもそもそれほど雨を気にしていないのかもしれませんね。
この次世代型の充電スポットではさらに路面に緑色のペイントがなされ、通常の2倍ほどの幅のある車いす用のスペースが確保されているブースがありました。これは素晴らしいですね。もともとダイバーシティ意識の高い国ですから、小さな商店に行っても車いすOKのマークが入っていたりしますし、スーパーなどでも車いす駐車スロットはたくさん用意されています。英国でできるのだから日本でも、と思ってしまうところです。
今回は、たまたま訪れた英国での充電環境をチェックしてきました。今後もまたほかの国に出かけた際には、充電スポットのバリアフリーを、青木選手と一緒にチェックしていきたいと思っております。
取材・文/青山 義明