輸入EV試乗会で『CITROËN Ë-C4 ELECTRIC』に感じた「エンジン車の因習」

11月25日に開催されたJAIA(日本自動車輸入組合)のメディア向け輸入電動車試乗会。複数のライターが参加して、最新EV&PHEV試乗レポートの連続企画。今回は、篠原知存さんによるシトロエン『Ë-C4 ELECTRIC』のレポートです。

輸入EV試乗会で『CITROËN Ë-C4 ELECTRIC』に感じた「エンジン車の因習」

外観もインテリアもデザインは上出来

『Ë-C4 ELECTRIC』(以下Ë-C4)は、シトロエンブランドでは日本で唯一購入可能なEVモデル。個性的な外観が特徴だ。装飾性の強いプレスラインには好き嫌いもあるかもしれないが、ぐっと四輪を踏ん張るようなイメージは、個人的にはかなり好み。独自のデザイン路線を貫くシトロエンのラインアップのなかでも、まとまりの良さを感じさせる一台。

モデルのイメージカラーは水色(ブルーアイスランド)だが、試乗した車は特徴的な赤銅色をしていた。「ブランキャラメル」というそうだ。

乗り込んでみると、内装のデザインも上出来。EVであることをそれほど強く主張してこないものの、細部までよく作り込まれている。気に入ったのはメーター表示だ。四角形を重ねたような液晶のアクセントが、独特のフォントの速度表示をかわいく見せる。バッテリーの残量計と、どれぐらいの電気を使っているか(回生しているか)をリアルタイムに表示するバーが、シンプルな2本の平行線になっている。

ミニマルさが好感度大。ちょっとしたことだが、運転中は必ず目に入る部分だし、大事だと思う。ドアパネルにもしゃれた装飾が施されている。同乗してくれたステランティスの担当者によると、デザインは女性層を意識しているそうだ。

操作系のインターフェースはオーソドックス

と、意匠には遊び心が盛り込まれている一方で、操作系はオーソドックス。センター部分の液晶パネルは10インチと大きめ(試乗車はナビなしだったが十分見やすいのでは)。センターコンソールのシフトは前後に動かすスイッチ式。カチッカチッと小気味よく「P・R・N・D」が切り替わる。その左側にドライブモードのボタンが配されていて、「パワー、ノーマル、エコ」を選べる。シフト右側に回生ブレーキの強弱を切り替えるボタンがつく。「B」が点灯すると回生強めモード。

都心部での短い試乗で、ほとんど中低速域しか試せなかったが、街乗りでの静粛性は良い方だと感じられた。かなり騒音を抑えている。

最高出力100kW(136ps)、最大トルク260Nmで、車両重量が1630kg。加速性能は必要にして十分だと思えるが、ガンガン振り回すような乗り方にはたぶん向かない。切れ味を期待するのではなく、ゆったりとスムーズな走りを心がければ、きちんと応えてくれそうな印象だ。

さまざまな道路状況を試せたわけではないが、パワーモードにすると、アクセルを踏み込んだ時にEVらしいトルクの太さを感じられる。気に入ったのは、パワーモードと回生強めの「B」にセットしてのドライブ。ワンペダルっぼく扱える。早めのアクセルオフでほとんど停止直前まで減速するので、最後にじわっとブレーキを踏めばいい。加速だけではなく、減速も面白いのがEVの魅力。そこは十分に楽しめそうだ。先述したメーターも回生をしっかり表示してくれる。

あと、シトロエンといえば、しなやかな足回りが代名詞。かなり期待していたのだが、正直言って実感するまではいかなかった。私の鈍感さもあるだろうが、担当者によると欧州車は高速域で本領が発揮されるそうなので、高速道路などが向いているかもしれない。できれば首都高などではなく、充電性能なども含めて長距離ドライブを試してみたいところ。ちなみに搭載バッテリーは50kWhで、カタログ上はWLTCモードで405kmの航続可能距離(実用に近いEPA換算推計値は約324km)を謳う。

担当者によると、プジョーブランドの「e-208」や「e-2008」よりは車格も上で、ファミリーユースを意識しているという。ハッチバックのラゲッジスペースも広めで、パネルを外せばさらに深く使えるようになる設定。キャンプ道具などもしっかり積めそうだ。家族全員でのんびり週末ドライブを楽しむ、という使い方が似合いそう。オリジナリティーも強いし、個性を楽しみたい人はお試しあれ。

おまけの話。停車して降りようとしたらメーターに警告表示が出た。「エンジンを停止してから下車してください」って? 「C4」にはガソリン車もディーゼル車も設定されているゆえの、エンジン表記。

せっかくのいいデザインなのに、こういうのを画竜点睛を欠く、というのだろう。細かすぎるツッコミかもしれないが、新しいモビリティであることを期待してEVモデルのË-C4を購入したユーザーは、がっかりするかもしれない。「EVであることを強く主張しない」という選択は過渡期なので悪くない。EVユーザーを広げるためには有効かもしれない。でも、たとえばプレスラインのデザインについてはミリ単位の狂いも許さないはず。なのにこういう表記が放置されてしまう。EV軽視とは言わないが、「エンジン車の因習」のようなものを感じてしまった。

シトロエンを含むステランティスでは、同車種にエンジンと電動のモデルを揃えていく方針で進んでいくそうだ。EVらしい、EVならではの新時代のインターフェースを生み出してくれることを期待している。

(取材・文/篠原 知存)

この記事のコメント(新着順)16件

  1. ステランティスのe-cmpを総べて比べて、かっこよさと室内の広さ、内装の良さを比較してe-2008を買いました。ハッキリ言って走行性能や充電性能はまったく同じと担当者も言ってました。シトロエンはサスが凝っていて乗り心地が少しフワフワしていましたが、そのためか内装は割とチープです。e-cmpの緊急停止問題、ハンドルロック故障表示、謎の充電トラブルはソフトアップデートなどで直っています。ステランティスのユーザーはディーラーら持って行かないと、黙ってるとトラブルが出るまでアップデートしてもらえないので、時々持って行った方が良いです。半年に1度はアップがあるそうです。それだけ過渡期と言うことでしょう。

    1. pokoさま
      貴重な情報提供ありがとうございます!リコール関係のトラブルは、話題になりやすいものの、なかなか「その後」の状況が伝わってこないので、とても参考になります。

  2. モーター(フランス語ではmoteur)を英語にするとengine またはmotorになると何かに書いてありました。ややこしいですね。

  3. 「エンジンを停止してから下車してください」
    エンジンの語源からすると間違っているわけではないと思います。
    エンジン=内燃機関 ではないです。(一般的にはそうですが)
    「システムを停止してから下車してください」
    とでもしておけば全ての場合に使えるかもしれません。

    1. habana3さま
      コメントありがとうございます。たしかに「システム」ならICEでもHVでも使えますね。名案です!
      あと、気になってググってみました。ラテン語の「ingenium」には「天才」とか「賢さ」とかいう意味があるんですね。勉強になりました。

  4. 今はEV車は買わずに、ディーゼルがよろしいかと思われます。EU圏内でも2035年からの規制に対しては反対する動きがあるのはご存知ですか?決してEUは一枚岩ではありませんよ。2035年.まだまだ先です。今の政治家、官僚はその時にはいません。無責任な彼らの言葉を鵜呑みにしない方がよろしいかと思います。EVのみにすると、何処の国が一人勝ちすると思いますか?そうです、C国です。政治家、官僚は何処の国でも先の事に責任をもちません。私もメルセデスEQCを買おう思っていろいろ調べましたが時期尚早と判断しました。これらが多くの自動車メーカーが本腰を入れてるとは思えない理由の一つではないでしょうか?五年先は分かりません、が今はディーゼルです。僕はシトロエンC5ディーゼル欧州仕様、BMW523dとC3エアクロスディーゼルに乗ってます。

  5. E-C4については今年の4月に宇野氏が長距離試乗レポートを書かれていますね。
    その記事では充電速度、急速充電器との適合性、謎の充電トラブルなど、EVとしての根本的な問題が指摘されていたと記憶しますが解決したのでしょうか?
    E-C4を購入すべきか迷っておりますので、是非お教えください。

    1. hatusetudennさま
      コメントありがとうございます。購入ご検討中なんですね。かっこいい車でした! が、おっしゃる通り、要確認ですね。ただ私は今回、きわめて短時間の試乗でしたので、充電は試せませんでしたし、質問も限られたものしかできず……お役に立てずに申し訳ないです。
      でも、充電能力は操縦性や動力性能と同じようにEVの基本性能ですし、ディーラーなどで聞けば、詳しく情報提供してもらえると思います。

    2. 篠原さま
      ありがとうございます。11月に地元ディーラーに質問したところ、答えを持っていませんでした。
      今はタマ不足で試乗車も無いため、自分で確かめることもできません・・

  6. 買い替え試乗で、気になった点としては、まず、リアシート床に出っ張りがあり、残念な所でした。加えて、完全停止まで、最後にブレーキ操作が必要で、真正ワンペダルじゃない点もマイナス要素です。その他、確か、停止後のブレーキホールドも実装されていなかったですよね。過去にC4ピカソを所有し、シトロエンは好きなメーカーだったのですが…また、デザインも気に入っていたので、ハンコを押す手前までいきました。(値引きも凄かったです)結局、その後に出た、ioniq5になってしまいました。

    1. ワンペダルでの最終停止は、国土交通省の基準改正で停止直前までしか出来なくなりました。最後はブレーキペダルを踏んで止める必要があります。基準適用は22年度の新しい型式登録からなので、リーフも現行型は引き続き停止まで出来ますが、アリアは出来ません。今では貴重な装備です。

    2. poco さま、コメントありがとうございます。

      ワンペダルの完全停止。メーカーの自主規制と理解してました。国交省の基準改正、参照URLなどあればご教示いただくことはできますか?

  7. 『EV軽視とは言わないが、「エンジン車の因習」のようなものを感じてしまった。』では篠原知存氏は何と表記するのか?提言がない批判は誰でも出来ます。なるほど!これはと誰にでも唸らせる文句がメーカーに提起されることを願っています。

    1. 鴨南ソバ さま、コメントありがとうございます。

      「電源をオフにしてから下車してください」ですかね?

      言葉選びはともあれ、この記事の結論が「EVらしい、EVならではの新時代のインターフェースを生み出してくれることを期待している」ことであり、それがこの投稿へのお答えになろうかと思います。
      少なくとも、EVに「エンジンを停止」というアラートはいかがなものか、ということですね。

      ちなみに、今試乗中の某社EVは、ドライバーが下車してロックすると自動的に電源オフになります。

  8. ec4とe-208は走行中にエアコンコンプレッサーの漏電が起きて、突然走行停止になり動かなくなる、命に関わる致命的な不具合が起きてリコール対象となってます。正直エンジンの表記がー云々より遥かに重大かつ深刻な問題なので、EVSmartブログで取り上げられないのが不思議なくらいです。
    また、FIATは500eはチャデモ変換アダプターがいつまで立ってもリリースされず、 ステランティスグループのEV開発能力にはがっかりです。
    イタフラ車は飾って楽しむもの!ということであれば納得ですが…

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この記事の著者


					篠原 知存

篠原 知存

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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