快晴に恵まれた「EVOCカンファレンス」は今回で7度目の開催ですが、参加者数はこれまでで最大となりました。「星槎(せいさ)レイクアリーナ箱根」は芦ノ湖北岸にあり、以前は「箱根総合体育館」として知られていた町の施設です。カンファレンス本体は10:00〜17:00、それに続いて懇親会が17:00〜18:45に2階の会議室で開かれ、様々な生の情報が飛び交いました。
早くも納車されたモデル3が!
駐車場には車種別に数十台のEVが整然と並べられ、なかにはFCVのトヨタ「MIRAI」や、日本で最初のデリバリー・グループ(9/13あたりの納車)に入るであろう「テスラ・モデル3」も展示され、人だかりができていました。
EV自体だけでなく、充電器などのインフラから、V2Hや充電マナーなど、幅広い話題が扱われ、じつに「濃い」議論が行われました。実行委員がお誘いした初参加の方々からは、「これほど濃密な情報が交換されるとは驚きました。あっという間に時間が過ぎた印象です。また来年も必ず参加します。」との感想も頂けました。
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全体のプログラム
午前の部 10:00〜
自治体プレゼン・企業プレゼン1
1.神奈川県
産業労働局産業部エネルギー課 笠井熱史 氏
「神奈川県 次世代自動車普及に向けた取組」
2.小田原市
環境部環境政策課 瀬下昌也 氏
「小田原市の取組について」
3.アユダンテ(EVsmart)
代表取締役 安川洋 氏
「テスラオーナーズクラブジャパンと世界のEV情勢、世界の充電ネットワーク」
4.フォーアールエナジー
代表取締役 牧野英治 氏
「自動車用リチウム電池を活用した中古ビジネス構築に向けた取り組み」
くまさん&カールさん ランチトーク(昼食時)
午後の部Ⅰ 12:45〜
企業プレゼン2
5.CHAdeMO協議会
会長 姉川尚史 氏
「EV普及に向けて大切なコラボ」
6.日産自動車
日本EV事業部 マーケティングマネージャー 島村盛幸 氏
・日産が取り組むNissan Intelligent Mobilityの概要
・日産が取り組む、他の企業や自治体を巻き込んだ日本電動化活動「ブルースイッチ」の紹介
・日産が目指すEVの今後の方向性
7.三菱自動車
EV・パワートレイン技術開発本部 (CTE) 百瀬信夫 氏
「電動化社会の普及に向けて」
8.ポルシェジャパン
E-Performance/WLTP担当 マネージャー 細川英祐 氏
「ポルシェの電動化と挑戦」
9.ニチコン
車載・V2H・急速充電器グループ ビジネスグループ長 関宏 氏
「急速充電器の市場課題とメーカー課題」
10.ユアスタンド
代表取締役社長 浦伸行 氏
『集合住宅におけるEV充電の課題』について
午後の部Ⅱ
座談会と懇親会
メーカー&EVオーナー座談会
テーマ 現在と未来のEV談義/オーナーご意見披露/メーカーへの質問&要望
写真撮影、懇親会準備
懇親会(17:00〜)
午前の内容
カンファレンスで行われたプレゼンテーションや話し合われた内容はかなり分量がありますので、当記事ではまず「午前の部」の内容をお伝えします。
「くまさん(EVOC代表桑原文雄 氏)」挨拶
今回7回目となるEVOCカンファレンスですが、参加登録は73名と過去最高となりました。今年は、各方面からプレゼンテーションをお願いしていまして、自治体さんからは、神奈川県、小田原市さん、そして、毎年お越しいただいているアユダンテの安川さん、フォーアールエナジーの牧野さん、お昼からは、CHAdeMO協議会会長の姉川さん、日産自動車の島村さん 三菱自動車の百瀬さん、ポルシェジャパンの細川さん、ユアスタンドの浦さんですが、初めてプレゼンしていただく方が4名となりまして、大変ありがたいと思っております。発表が目白押しで時間が足らないかと思いますが、ご参加の皆さん是非、最新のEV関連情報を吸収していただいて、普及活動にお手伝いしていただければと思います。
自治体によるプレゼンテーション
1.神奈川県
産業労働局 産業部 エネルギー課 笠井熱史(かさいあつし)さん
テーマ:「神奈川県次世代自動車普及に向けた取組」
・神奈川県が推進する次世代自動車・EV・蓄電池活用に向けた取組などについて説明。
・特に力を入れているところは分散型エネルギー源:「かながわスマートエネルギー計画」。
・蓄電池・水素の活用 … EVは蓄電池として捉えている。現在27.5万kWh分がある。
・日本の次世代自動車にはHVが入っているが、世界では普通入れない。
・県内のEVの普及状況 … 2018年度末 13,558台、日本でトップクラス。
・ワークプレイス・チャージングとV2Xに補助を出し始めた。
・SDGs推進協定 … セブン&アイ・ホールディングスと提携。リーフの中古バッテリーを蓄電池に。
・V2H啓発イベント・エコカー試乗会の開催 … 毎年11月実施。今年は11/17(日)。EVOCさんにも毎年協力いただいている。
・FCV補助70万円 … ミライの新型が2020年のオリンピックに合わせてお披露目される。
・パイロット・シティー・プログラム(PCP) … 世界30都市参加。東京・京都・名古屋も参加。
・350kW充電のバスが世界には出ている。
2.小田原市
環境部 環境政策課 瀬下昌也(せしもまさや)さん
テーマ:「小田原市の取組について」
・小田原市の紹介から始まり、二つの取組、「地域循環共生圏を活用して」と「おだわらスマート・シティ・プロジェクト」について説明。
・小田原市は人口19万、東京から新幹線で35分ほど、市の南西部には箱根連山、東部には曽我丘陵、中央には酒匂川が南北に流れ、南部には相模湾に面し、「森里川海」がコンパクトにまとまって温暖で住みやすい街。
・取組の一つ、「地域循環共生圏づくり」 … 「農山漁村」として、横浜市など大都市部に食糧を提供し、エコツーリズム、自然保全活動への参加を受ける。
・取組の2つ目、「小田原スマート・シティ・プロジェクト」 … 活動開始から昨年20周年を迎えた。「青く澄んだ空を子供たちにバトンタッチしよう」の合言葉にして、小田原市をスマートシティにすることを目指し、エコカー購入・再生可能エネルギー、および、省エネの普及を推進中。
・おだわらスマート・シティ・フェアを開催、昨年もEVOCの皆さんからEV展示車を提供いただいた。
・エコカーの展示と試乗は、このプロジェクトに基づいて行っている。ワークショップも開催。スマートシティの構築にむけて、一人ひとりライフスタイルの転換を促進することとしている。
・今年度は11/9(土)小田原ダイナシティウエストにて実施する予定。
企業によるプレゼンテーション1
3.アユダンテ(EVsmart)
代表取締役 安川洋さん
・テーマ「テスラオーナーズクラブと世界のEV情勢」
・テスラオーナーズクラブジャパン(TOCJ)の活動について。初めはメーリングリストで活動。2018年に結成。130名ほど。テスラ認定のオーナーズクラブ。
2018年11月の集まりでモデル3を見られた。米フリーモントのファクトリー・ツアーを実施。
社会貢献活動 … フードバンクへの寄付など。
課題 … 持続可能エネルギー社会を実現するために、発信をしたい。今はクローズド・コミュニティー。
・テスラの現状ついて
S、X、3の3車種構成。どのモデルもロングレンジとパフォーマンスを2車種が基本の構成。
パフォーマンスは後輪モーターの出力が大きく、ソフトウェアが大出力・高速向けにチューン。
モデルY … 2019年に販売か。日本へは少し先。ピックアップトラックとセミ(トレーラー)は米向け。
テスラ工場について … 中国のギガファクトリー3は24時間3交代で建設。2019年1月に更地だったのが、9月には建屋がほぼ完成。
・世界のEV情勢について
PHV … アウディーもGMもやめる方向か。ボルボが増やしているくらい。
電費基準 … 日本だけのJC08 、欧州のWLTC/WLTPと、アメリカEPAについて。
EPAは、誰が乗ってもまず出せる基準。 換算式:EPA = WLTP/1.12
・世界の充電ネットワークについて
超急速充電 …電費を5km/kWhだと仮定すると、30分で300km走らせるには48kWh必要。
今後は100kW超えの超急速充電器が必須。
EA:VW USAの子会社。全米ネットワーク構築中。2018年は数カ所だったが、2019年は286ヶ所、
台数だと1,000台を超える。150kmほどの間隔で設置。
IONITY:VWグループ、BMWグループ、ダイムラー
テスラのSCネットワーク
HPCVC:トラック用のQC
トラックのQCはどうなるか? … 日本の現行法制では電力が難しい。
充電設備専門の建設会社が現れ始めている。
4.フォーアールエナジー
代表取締役 牧野英治さん
・テーマ「事業説明」「電池の再利用の必要性」
「これまでの取組」「浪江町での復興に向けた取組について」
・フォーアールエナジーは日産自動車と住友商事の合弁会社。日産リーフができる前の2010年に設立 電動車で使い終わった電池を再利用する事業。4Rとは、「再利用(Reuse)、再販売(Resell)、再製品化(Refabricate)、リサイクル(Recycle)」。
・我々の役割は、電動車の価値を上げることと、二次電池を手ごろな価格で提供することで再生可能エネルギーの普及に貢献すること。
〇電池の再利用の必要性について
・昨年7月経済産業大臣議場となって、自動車メーカーがトップに出た「第二回自動車新時代戦略会議」では、「2050年までに、日本が販売するクルマを全て電動車輌とする」と目標となった。
・対して2017年は、日本の自動車メーカーが国内生産して日本販売数は約400万台。国内生産輸出が400万台、海外生産海外販売を合わせ年間1000台。これだけの車を支えるには、資源・廃棄物の問題から二次利用が必須となる。
大型の蓄電システムの例
・2014年大阪の夢洲(ゆめしま)のメガソーラーの出力ヘッドを吸収。リーフ16台分、270kWh、600kWの出力。
・2016年 鹿児島県薩摩川内市、甑島(こしきしま)に36台分の大型の蓄電システム導入。
・事業所の電力消費ピークカットに貢献:250kWのピークカットによって、事業所の電気代削減(50万)。
・二つ目は、電力会社さんに蓄電池として使っていただくいわゆるVPP。
・2018年3月に福島県浪江町に工場を建設。理由:①浪江のまちづくりに賛同、②国・県の支援、③トレーサビリティーの管理。
・認証機関ULによる認証済み。
・無電化地域 … 世界に15億人が住んでいる。よって、独立系の発電機器が大切。
以上が午前の部でした。午後の部では「企業によるプレゼンテーション2」から始まり、座談会、写真撮影、懇親会と続きました。次の記事で詳しくお伝えいたします。
(取材・文/箱守 知己)