2026年発売を目指す! 小型特殊免許で乗れるヤマハ『DIAPASON C580』の可能性

東京オートサロン2025で、ヤマハが研究開発中の小型低速EV汎用プラットフォーム『DIAPASON(ディアパソン)C580』の拡張モデルを展示しました。はたして、どんな乗り物なのか。モータージャーナリスト、諸星陽一氏のレポートです。

2026年発売を目指す! 小型特殊免許で乗れるヤマハ『DIAPASON C580』の可能性

普通免許を返納しても小型特殊免許で乗れる

東京オートサロン2025。ヤマハ発動機(ヤマハ)はフォーミュラeをステージに、小型低速EV汎用プラットフォーム『DIAPASON(ディアパソン)C580』の拡張モデル『C580 Fork 1』と『C580 Fork 2』をフロアに展示した。

DIAPASON C580 Fork 1
DIAPASON C580 Fork 2

展示された2モデルはオフロードマシンの様相があり、実用的でタフネスな印象である。とはいえ、そもそもの発想として、C580はユーザーから上がってきた声を生かしたモデルであった。つまり、運転免許返納後にも活用できるパーソナルモビリティである。

高齢者の運転による事故が増え、社会風潮として免許返納が求められている。では「免許を返納した後はどう移動すればいいのか?」は大きな問題である。コミュニティバスや乗合タクシーなどいろいろな手段が提案されているが、やはり多くの人が求めているのはパーソナルモビリティなのである。

普通免許を返納した際に残せる免許がある。それは普通免許を持っていれば運転可能な、原動機付自転車と小型特殊自動車の免許だ。つまり普通免許を返納したいからといって、すべての免許を返納する必要はなく下位免許を残しての返納が可能だ。

そこでヤマハが考えたのが小型特殊免許で運転できるパーソナルモビリティ。その結果がC580というわけ。なぜ、小型特殊免許かといえば、ユーザーからは2人で乗りたいという要望が多いという。原動機付自転車もパーソナルモビリティとしては優秀なのだが、2人で乗れない。そこで小型特殊免許で運転可能なパーソナルモビリティを作ろうということになったという。

現状の法規では最高速度は15km/hに制限

ただし、小型特殊自動車は最高時速が15km/hとかなり低速に制限されている。車両なので当然のことながら歩道の走行は不可。この2つの項目が小型特殊自動車のパーソナルモビリティでの大きな課題だというが、まずは第一歩ということで、現状の法規に適合するモデルの開発を目指しているという。

筆者が思うには、最高時速を30km/h程度まで上げること、歩道モードとして最高時速を4〜6km/h程度に抑えるリミッターを付けることでこうしたことは解決に向かうだろう。もちろん走れる歩道の制限は必要で、どちらかといえば歩道ではなく自転車専用通行帯の走行が可能にするのがいいだろう。そもそも歩行者と車両が混合通行するのは危険だ。また、車両側の横幅制限も設ける必要がある。C580のような横に2名が乗車するスタイルではなく、タンデム(縦に2席)にして車幅を抑えつつ、特定小型原動機付自転車と同じように特定小型特殊自動車という区分けを作るのというアイデアも思い浮かぶ。

ソフト面での運用も大切だ。免許を返納するということは、自動車の運転には自信がない方というわけなので、リミッターを掛けずに歩道を走るかもしれない。そうした際、警察官でなくても注意ができ、その注意を無視するような場合には運転を停止させられるような社会の仕組みが必要かもしれない。

農業機械としての活用も視野に開発中

という筆者の意見とは裏腹に、C580がこのレイアウト、このサイズに収まったのにはきちんとした理由があった。詳細な寸法は発表されていないのだが、軽トラックの荷台に積めるサイズにしているというのだ。何らかの原因で帰宅できなくなったときなどに、軽トラックの荷台に載せて運べることを考慮しているという。

また、農作業用として畑のなかで使う際に軽トラックで運べれば、ナンバーを取得せずに運用できるというメリットもある。また、軽自動車の積載重量が350kgであることから、C580の重量も350kgを切ることを目標としている。

バッテリーはホンダが開発したモバイルパワーパックe:(約1.3kWh)を2個直列接続して使う。現状はプロトタイプのため後部に収めただけとなっているが、市販版では開け閉めできるリッド内に収める予定だという。モーターの出力は10馬力程度だがトルクはしっかりと稼げているので、トレーラーを引くことも問題はないとのこと。

●モバイルパワーパック解説動画

ディアパソン)C580は現在市販に向けて開発を進めているところで、発売は2026年の中間点くらいを目標としている。

取材・文/諸星 陽一

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					諸星 陽一

諸星 陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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