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「全日本EV-GP開幕戦」レポート/東大卒レーサーの地頭所光選手が優勝

「全日本EV-GP開幕戦」レポート/東大卒レーサーの地頭所光選手が優勝

16年目を迎えた電気自動車だけのレース「全日本EV-GP」の開幕戦が袖ケ浦フォレストレースウェイで開催されました。昨年に引き続き、ヒョンデ IONIQ 5Nとテスラ モデルS PlaidのEV頂上決戦が注目されるなか、雨天のレースを制したのは……。

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肌寒い雨中のレース〜PPはモデル3の地頭所選手

日本電気自動車レース協会(JEVRA)が主催する全日本EV-GPは、今年で16年目のシーズンに突入。10月までに全7戦が予定されています。その第1戦「袖ヶ浦55kmレース大会」が、2025年3月29日(土)に千葉県袖ケ浦市の袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われました。

雨がしとしと、気温は7度。体感的には真冬です。数日前までの初夏のような暖かさがウソみたい。急に季節が逆戻りしたようです。予選時には雨は小降りになっていましたが、コースは完全にウェット。このコンディションが、レース展開を左右することになりました。

エントリー&出走したのは12台。午前10時すぎに始まった予選で、素晴らしい走りを見せたのが、テスラ モデル3 パフォーマンスの地頭所光選手でした。滑りやすい路面でコントロールのうまさを発揮して1分17秒056をマーク。テスラ モデルS Plaidを駆るディフェンディングチャンピオン、KIMI選手(1分17秒820)を抑えてポールポジションを獲得しました。3位に入ったのはヒョンデ IONIQ 5Nのチェ・ジョンウォン選手(1分22秒209)でした。

地頭所光選手

今回はKIMI選手のGULF RACINGが、YUU選手(テスラ モデル3 パフォーマンス)との2台体制で参戦となりました。車両は1週間前に納車になったばかりで、しかもEVでのレースは今回が初めてというYUU選手でしたが、それでも豊富なレース経験を生かして4位(1分22秒511)をゲット。

予選5位(1分24秒834)は昨年のEV-2クラス王者、モンドスミオ選手(テスラ モデル3 RWD)。6位(1分34秒321)は、フルカスタムしたHonda eでEV-P(プロトタイプ)クラスに参戦しているモデューロレーシングチームの安井亮平選手となりました。

BEV組は日産リーフの本間康文選手も参戦。このほかFCV・トヨタミライのトンシトウ選手、さらに日産ノートやオーラといったe-Power組の4選手がEV-R(レンジエクステンダー)クラスで参戦しています。

地頭所選手は東大出身のレーシングドライバーで、EVレースで大活躍。2018年に東京大学自動車部のメンバーとしてEV-GPに参戦して年間チャンピオンを獲得。2020年から2023年にはチームタイサンから参戦して4年連続年間チャンピオンを獲得しています。

安全確保のためレギュレーションを変更

EV-GPは参加車両の多様化、高出力化に対応して、安全確保やレースの魅力アップを図るためにレギュレーションを手直ししてきていますが、今シーズンも一部が変更されました。全車に関係する大きな変更点はタイヤです。安全を重視してレーススピードを抑えるためにSタイヤ(セミレーシングタイヤ)の使用が禁止となりました。またタイヤウォーマーの使用も禁じられました。

さらに参加クラスも細分化。3段階だったBEVの市販車クラスは、EV-1(モーター最大出力400kW以上)、EV-2(同250kW以上400kW未満)、EV-3(同150kW以上250kW未満)、EV-4(同150kW未満)の4段階に。昨シーズンまでは250kW以上が一律にEV-1でしたが、モデル S Plaid(749kW)やIONIQ 5N(478kW)などが新たに最高峰クラスに区分されたことになります。

ModuloレーシングのHonda eは総合6位、EV-Pクラス1位でした。

そうした変更点のなかで注目されたのが、予選に基準タイムが設定されたことです。各クラスの予選1位のタイムを基準に「110%を超えた車両は決勝に出走できない」という新ルールです。ライセンスがなくても出走できる敷居の低さがEV-GPの魅力なので、ちょっと意外に感じました。そこで、JEVRA事務局長の富沢久哉さんに変更理由を聞いてみました。

「安全にバトルができるレベルを考えての基準タイム設定です。これからも、いろんな方にEVレースに挑戦してほしいというスタンスは変わりません。ただ、レースはひとりでやるものではないので、ある程度は練習してきてほしいということです」

なるほどです。EV-GPの決勝レースは全クラス混走。1000馬力のスポーツカーと大衆車が一緒に走るため、周回遅れも当たり前で、ドライバーには的確な状況判断とマナーの良さが求められます。事故防止、安全確保のためのタイム制限導入、ということですね。

ウェットの決勝で激しいトップ争い

決勝レースは、午後3時50分にスタート。ウェットコンディションの中、飛び出したのはテスラ+ヒョンデの5台でした。なかでも、他を圧倒するスピードを見せたのは地頭所選手とKIMI選手。元王者と現役王者が水しぶきを上げながらサイド・バイ・サイドの争いを展開して、3位以下を引き離していきます。1分21秒台で始まった白熱のバトルは中盤には1分18秒台にまでスピードアップ。一度はトップを奪ったKIMI選手が終盤に熱問題を抱えて減速するまで、見応えのあるレースを演じました。

トップ2に続いたのは、YUU選手とチェ選手、モンド選手の3台。このグループはYUU選手が引っ張る展開が続きます。そのうちにパワーに勝る2台でのバトルとなって、終盤にチェ選手がYUU選手をかわしてゴールしました。プロのレースドライバーのチェ選手は、韓国からの参戦。EV-GPは「ガソリン車と違って戦略的なのが面白い」と今年もエントリーしてくれました。「雨のレースは大好き」と話していた通りに、初めてのコースにもかかわらず安定した走りで表彰台をゲット。「今年は全戦は難しいけれど、半分ぐらいは参加したい」と話していました。

表彰式に登ったKIMI選手、地頭所選手、チェ選手(左から)

決勝の総合1~3位は、ポールトゥフィニッシュを飾った地頭所選手、続いてKIMI選手、チェ選手の順で、昨シーズンの最終戦と同じ結果となりました。

レースが終わってすぐ、ピットエリアではスポーツマンシップにあふれた光景が。激しいトップ争いを演じた2人のコミュニケーションです。車を降りるなり、KIMI選手に駆け寄った地頭所選手は「すごく楽しかったです。ありがとうございました」。KIMI選手も「パワーが落ちちゃった。おめでとう」と笑顔で応じていました。EV-GPっていいなぁ、と思わせてくれる一幕でした。

地頭所選手はレースについて、「雨の恩恵ですね。フェアなバトルになって本当に楽しかったです。前に出られた時は、抜き返すのは難しいかなと思いましたが、あせらずについていきました。バッテリーを温存できたのが勝利につながりました」と振り返っていました。

レース直後に言葉を交わす地頭所選手(左)とKIMI選手(右)。

EVで観戦に来た人の体験走行会も

地頭所選手が所属するWIKISPEED EV RACINGは、昨年ドライバーとして参戦していたジョー・ジャスティスさんが結成。レース活動をやめたチームの車両などを譲り受けてEV-GPにエントリーしています。じつは新ドライバーのオーディション(一般公募)も実施済みで、次戦からはそのドライバーも参加する予定だとか。楽しみです。19台がエントリーした昨年の最終戦と比べて、2025開幕戦の12台というのは少し寂しくなってしまいましたが、次戦以降も注目ポイントはたくさんありそうです。

なお今シーズンは、ヒョンデモビリティジャパンが、IONIQ 5NでEV-GPに参戦したドライバーに賞金(各レース上位者に10~3万円、年間王者に50万円)を授与する「ヒョンデN賞」を新設。今回は1台だけ参加のチェ選手に10万円が贈られました。5Nオーナーのみなさん、参戦のチャンスかも。

また、今回のレースでは、モンド選手が旗振り役となって、EVで観戦に来る人を対象にしたサーキット体験走行会も行われました。ライセンスもヘルメットも不要で、マイカーでサーキットを3周できるという企画(参加費3000円)。決勝レースが終わったばかりのサーキットを走るというのは、なかなか気分が盛り上がったのでは。私もエントリーしていたのですが、取材と重なって走れませんでした。残念。今後も同様の企画をしてくれるそうなので、いつか走ってみたいと思います。

EV-GP第2戦は、4月27日(日)に茨城県の筑波サーキットで開催されます。

詳細なリザルトや今後の日程は日本電気自動車レース協会(JEVRA)の公式サイトに掲載されています。

取材・文/篠原 知存

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この記事を書いた人

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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